夏の沈黙

  • 東京創元社
3.16
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本棚登録 : 238
感想 : 38
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010454

作品紹介・あらすじ

テレビのドキュメンタリー制作者のキャサリン。彼女は順風満帆の生活を送っていた。手がけた番組が賞を獲得、夫は優しく、出来がいいとはいえない息子も就職して独立している。だが、引っ越し先で手にした見覚えのない本を開いた瞬間、彼女の人生は暗転した。主人公は自分自身だ。しかもその本は、20年間隠してきた秘密を暴こうとしている! 刊行前に世界25か国で出版決定。今年最大の新人による、一気読み必至の驚異のデビュー作。解説=三橋暁

感想・レビュー・書評

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  • まさかまさかの真実が隠されていた。
    しかしどの伏線も読めば納得。
    最後の最後までしっかり読みきった!納得いった!こんなにすっきり落ちる話もなかなかない。
    登場する主要な人物像もはっきりとしていて心理描写もわかりやすい。まるで映像を見ているような感覚になれる一冊でした。

  • 前半は特に読むのに難渋した作品。各パートで時と視点が切り替わるのだが、当然一人称だろうと読み始めると突然三人称になったりする。処女作による稚拙な文章力のせいかと思ったら、解説では著者の巧みな切替と評価されていて違和感。ただ後半になって物語が進んでくると夢中になって一気読み。著者の描きたかったのは、いかに我々が周りの親密な人たちの沈黙を見過ごし、自分の見たいものだけを見て、自分自身をごまかし、避けがたい結末に至るまでその変化を放おっておくかという点にあって、母子のつながりの強さや沈黙の是非は主題ではない。

  • つまらないわけじゃないけれど、雑誌で読んだ絶賛評ほどのものではないような…。他の方の感想にも同様のが結構ある。やっぱりねえ。

    後の方まで引っ張る「真相」に意外性はないし、複数の登場人物の行動に説得力がない。家族、特に母親というものについて考えさせられはするけれど、それが主眼ならミステリ仕立てはいらないんじゃないかな。

  • 物語は面白いと思う。また、人物の心理も深くえぐるような感覚。

    ただ、結末を知って、通読したことを振り返ると、いろいろな疑問が残る。
    書いたことと矛盾するかもしれないが、登場人物の心理がコロっと簡単に変わってしまう(ように感じられた)のは、物語の進行に合わせるためか。

    主要人物の視点が交互になり、また時間も行き来するというのは、よくある物語の進行かも知れないが、これは、『夏の沈黙』において成功していると思う。

    前半部分のおおまかな「過去」のことと、後半から結末のどんでん返しまで、楽しめた。

  • あらすじに惹かれて期待して読んでみたがつまらなかった。前半はふたりの視点を入れ替えながら進むが、途中から家族の視点が加わり何となくややこしい。台詞は少なく、段落が大きな塊になっているから、単純に読みにくい。

    序盤はモタモタしているのである程度の忍耐が必要かも。20年前の秘密を引っ張るのかと思いきや、明らかになった後半からようやくストーリーが動き出す。当事者と関係者たちの不穏な心理を描写してあるが、理解不能な言動が多く、誰にも共感できない。真相の矛先に沿ってころころと立ち居地の変わる人物たち──非難してたかと思ったら急に擁護し始めるので徐々に興醒め。気持ちの悪い夫婦、気持ちの悪い親子、といった印象しか残らない。

    ドキュメンタリー制作出身の作者だと知って、なにげに納得。つまりはドキュメンタリーです。ある出来事に翻弄される夫婦と親子。そこにミステリなストーリーは存在しません。

  •  本を開いた途端、ばらばらにちぎれた破片が舞っている。

     引っ越し先で開いた本に20年前の自分が描かれていることにキャサリンが激しく動揺するシーンでこの物語は幕を開ける。誰も知らないはずのできごとが出版されて厳然と目の前にある事実に吐き気を覚えるキャサリン。

     一方で、異常な独白を続ける元教師。死んだ妻ナンシーとは? この元教師はキャサリンの物語にどう関与してくるのか?

     そうしたばらばらの破片は、ページを進めるとともに、パズルのように空白の場所にあてはまってゆく。時間的にも空間的にも飛散していた文章のピースが、現在のヒロインの家庭に集まってゆく。

     二十年前の秘密が少しずつ周囲に漏れ出してゆく。しかし本ではそれは暗示にとどまる。読んだとしても、それがキャサリンを描いたノンフィクションだとは家族であれ気づかない。

     しかしそこに元教師の復讐の老いた足音が迫ってくる。彼とキャサリンの過去の関係とはいったい? 元教師がキャサリンに求める者がなんであるのか? 失われた家族と、幸せの渦中にある家族。この差を埋めるために元教師は何をやろうとしているのか?

     最小限の登場人物で交わし合う愛・怨嗟・疑惑・誤解・不信・決意などの感情が、緊迫した人間ドラマを構成する。

     物語がどこに着地してゆくのか最後までわからない究極のサスペンスであり、一気読み必然のスピード感である。

     新鋭作家ルネ・ナイトは、まさに英国版湊かなえと言えよう。

  • 色々な事をぼんやりと描き過ぎていて読むに耐えなかった。読解力が足りていないと言われればそこまでかもしれないが、ただ右往左往する人々を見せられるだけのような気が。

  • 引っ越し後、荷物の中に見覚えのない本が一冊。読み始めたら中身は自分自身のことが書かれていた…その恐怖に怯えながらも対峙する彼女と、2年前のある男性の視点との交互で物語は始まります。なかなか明らかにならない過去の事件。すでに亡くなってしまった者の思いものせて「圧倒的リーダビリティ」に嘘はなく、一気に読まされてしまいました。最初から最後まで、男と女の強さの違い、父親と母親の思いの違いを痛切に感じずにはいられません。全てが終わった後の彼女の決意もわかる気がし、ラストシーンではさらに母親として胸を抉られました。

  • ハラハラしながら読んでいて、こうなるんじゃないかな、こうなったら良いな、ということにはなったのだけど、それをはるかに上回る展開。
    予想よりずっと悲しくて、ずっと深くて、でも希望の持てる最後。
    というより、最後の最後でまだ判明することがある、というワザ。
    とても読み応えのある作品。

  • ミステリ

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著者プロフィール

英国BBCで美術ドキュメンタリー番組のディレクターを担当したのち、著作活動に転向。テレビ番組や映画の台本を手がける。2013年4月、大手出版社の小説創作コースを卒業。在籍中に執筆を始めた『夏の沈黙』の出版権をめぐって、熾烈なオークション合戦が勃発した。2016年には短編Mother’s Dayを発表。ロンドンに夫と二人の子供と暮らす。

「2022年 『完璧な秘書はささやく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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