ロイスと歌うパン種

  • 東京創元社
3.53
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本棚登録 : 210
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488010881

作品紹介・あらすじ

IT企業の激務で疲れはてたロイスを救ったのは、近所の宅配レストランのパンとスープ。親しくなった店主がアメリカを去るとき餞別にもらった不思議なパン種(夜中に歌いだしたり、完成したパンに笑顔が浮かんだりする)でパンを焼きはじめた彼女は、思いもよらぬ体験を次々することに!? 不思議なパン種を巡る奇妙な一族の物語、ロボットアームを駆使したパン作り、謎の地下ファーマーズ・マーケット……。『ペナンブラ氏の24時間書店』の著者がサンフランシスコを舞台に描く、奇想天外で爽やかなフード・エンタテインメント!

感想・レビュー・書評

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  • 日々の労働に疲れ果てていたロイスが気まぐれで頼んだデリバリー。その美味しさにつられて常連となったもののその店が閉店することになり、彼女はパン種を譲ってもらう。そのパン種は実に奇妙で、夜中に歌ったり出来上がったパンに笑顔を刻んだりさせる…

    というなんだなんだという序盤から、あれよあれよと不思議な世界が展開していきます。やたら規模の大きな謎の地下マーケットや代々受け継がれるパン種の秘密、そしてロボットアームが卵を割りパンをこねる……コメディのようで実際読んでいて笑える描写や比喩も少なくないのですが、その実、活力を見失っていた女性が自己を取り戻し生きる道を見つけていくお話でもあり、彼女の行動や選択ひとつひとつを気持ちよく追っかけて読んでいくのでとても軽やかな気分になれました。

    こういう話では、だから現代のシステム化された労働は!ブラック企業は!自然こそ素晴らしい!みたいな極論に走りそうですが、そんな単純には描かれてないのが子の本のいいところです。
    先端技術開発に携わる女性が主人公が、その現代の最新技術を生かしてこその展開になっています。つまり「文明と文化の共存」が楽しく愉快に、ちょうどいい程度のファンタジックさを添えて描かれているんですね。そのバランス感覚がちょうどいいな、と思えました。

    海外文学はどうしても合うかな、どうかなと考えながら読み始めるのですが、序盤の文体の軽やかさから一気に話に惹きこまれて、大変楽しく読ませて頂けました。

    • ikezawaさん
      はじめまして。
      読んでたら尚更読みたくなりました…ふ、懐具合が…
      はじめまして。
      読んでたら尚更読みたくなりました…ふ、懐具合が…
      2019/12/13
  • 現代的であり、ファンタジーでもあり、
    ロイスの性格がいいせいで出会う事柄が面白い方向に進む。
    面白い小説でした。
    パン食べよう。

  • こんなお話も書けるんだ~~
    タイトルが不思議だったし
    表紙も・・・
    中身は最高!!

  • ・ちゃんとパンが焼けるので良い話
    ・行動力のある主人公
    ・前作より好き

  • IT企業の激務に身も心も疲れ果てたロイスを救ったのは近所の宅配レストランのスパイシースープとサワードゥ。
    サワードゥってなんだ?って感じでしたが、普通のパンとはちょっと違うんですね。レストランの店主から餞別で分けてもらったパン種をきっかけにパン作りに熱中していくロイス。
    読後はパンを作りたくなりました。出版社の中の人たちがホームベーカリーにハマってしまった理由も納得。長い時を受け継がれているパン種と最先端テクノロジーの融合もなかなかおもしろいテーマ。明るい未来を感じさせる終わりで読後感もよかった。

  • 古来から伝わるものと最先端のテクノロジーを発酵させるとこんなに面白いものができるのかと、同じ著者の作品を続けて読んで感動した。ロビン・スローンは職人だ。旧作にあたる「ペナンブラ氏の〜」を読んでいるとニヤッとできるファンサービスあり。
    ベオのメールがだんだん長文になっていき(おそらくロイスのメールもそうなのだろう)、全てを受け入れてほしいという気持ちからか先祖の黒歴史っぽいことまで話しておきながら一応創作の可能性を匂わせておくのが微笑ましい。

  • ちょっと翻訳にぎこちなさを感じて、読み辛い。
    主人公がプログラマーで、専門用語なのか、それとも造語なのか、とにかく界隈に詳しくない私にはすんなり入ってこない部分もあり、導入で躓いた。
    現実と非現実(創作)の境界がわからない部分が割とあって、“アメリカにはそう言うものがあるのだろうか……? 調べてみても出てこない。”とか、すんなり読み進められなかった。

    同著者の『ペナンブラ氏の24時間書店』はこちらでも星4つつけているのですが、同じく現実と非現実が区別し辛いとも書いているので、読んでいく内に解消されるかもしれません。著者の持ち味なのかも。

    主人公は食に疎い家庭に育った食に疎い人。
    何だか読んでいて腹が立ってくるレベル。これは逆に私が食べること大好きだからかも。

    時間はあったにも拘らず、どうしても一気に読み進めることができず、図書館の返却期限を延長したのに、更にそこから一週間経っても半分も読めていなかった。

    好きな登場人物がいないせいかも。いつも誰かしらお気に入りの登場人物がいると一気読みできる。本作には移入できる人物がいなかった。憧れる人物も。面白いと思える人物も。

    時折面白げな何か、片鱗、のようなものを作中に見つけるけれど、深くささらないまま興味が薄れていってしまう。ほぼ義務感に似た感覚で読み進めていった。

    皮肉っぽいユーモアが多く散りばめられた一人称の文体。恐らくはこのユーモアが売りなのだけれど、本作ではそれがしつこく感じられた。主に自嘲を含む皮肉っぽさが。これらは個人の好き嫌いに由来したものなので、好きな人は好きだと思う。

    他社から譲渡されたスターターで作ったパンで個人ビジネスをスタートさせようと思う主人公。譲渡主に断りを入れないのは筋が通っていない気がするけれど。譲渡主からのメールの返信ばかりが作中に登場するので、ひょっとしたらメールで知らせている可能性はある。寧ろそうでなければこの主人公への評価がまた下がる。

    主人公が招待された地下のマーケットは、革新的過ぎて、これが作中で評価されているのか、皮肉なのかわからず読み進める。私個人は、分子ガストロミー的な革新的な料理が苦手。現代アートを理解する感性も持ちあわせていない。なので、これで主人公が成功するのだろうかと疑問を持っている。

    大学四年生の時以外卵を割った経験が殆どないと言うのが主人公の食への興味のなさを物語っている。更に付け加えると、両手割りも完璧に習得していない。
    そして、プログラミングのことはさっぱりなので、成し遂げたことの偉大さにピンとこず。感動をシェアできなかった。

    人の唾液を組み込んだマシン、きちんと殺菌されてるのかが気になって気持ち悪くなった。

    アグリッパの章も、菌についての話は何となくわかるものの、それに対するリアクションは狂気と言うのか、ついていけない部分が殆どだった。

    いやあ、最終的に不思議な話でした。言いたいことはちょいちょいわかるような気がするんだけど、それこそパンのクラムみたくスカッと穴が空いている感。
    人物描写も控えめなので、今回あまり頭に像が浮かばず。
    ミトラは山根舞さん、リリーは朴璐美さんで脳内再生されるくらいだったかな。

    あと、本書の解説を声優の花澤香菜さんが書かれていて、そこが一番の驚きでしたが、彼女、池澤夏樹さんの御息女だったんですね。初めて知りました。学生時代夏休みの課題図書で読んだなあとか思いつつ。

  • 翻訳の独特の言い回しやテンポに苦戦した。あとロイスたちが途中で誰が誰だかよくわからなく…。

    主人公の心情に深く入り込んで、それをぐちゃぐちゃかき混ぜるみたいな小説じゃなくて、そういうところはさらりと描写して進んでいくところが、なんと言うか、新鮮だった。
    登場人物たちの繋がりや関係がドライというか、ベタベタしてなくて誰にも肩入れしてないところも。

    心身ともに疲れた主人公がおいしい食事と提供者に癒されて、自分も食事を作って人生が変わっていくっていうストーリーは日本でもよく見かけるけど、謎のサワードウ・ロボットアーム・未来食的アプローチなどの要素が散りばめられてて癒し小説に収まらないエネルギィッシュな小説になっているなと感じました。

    まぁ正直キャラクターたちの行動理由や考え方などは、あまり理解できなかったけど、なんというかアメリカの爽やかさ、カラッとした雰囲気、みたいなものを感じた。
    あと社畜はどこの国でも似たようなものなのだな、と思ったw

  • 図書館で。姉が面白かったよ、というので借りてみました。
    サワードウ、天然酵母パンだと思ってたんですがそうでもないんですかね。海外ではそちらの方が主流というのはよくわかる気がする。 
    日本のふわふわのカロリー高そうなバターやら牛乳やらの入ったパンよりも、みっちりどっちりしたパンの方が自分も好きだな。何より食事には合う気がする。

    というわけで謎の兄弟からパン種をもらったプログラマーのスローライフ回帰、みたいな話。個人的には人からもらったパン種ですぐに商売に持っていく辺りアメリカ的だなぁと思う。というか、食品を売るのに調理師免許とかそう言うのは必要ないんだろうか?小説だから割愛しているんだろうか?ま、それはそれとして。

    得体のしれない出自だけど、出来たパンが美味しいから!と作って近所に配ったり職場の同僚に配るのはわかる。でも食堂に卸してくれと言われて快諾する辺りからんんん?と言う感じ。私ならパン種をくれた兄弟に断ってからとか、体制を整えてから(例えばロイス会とか隣人に共同事業を持ちかけるとか)出店しようかと思うけど…良くも悪くも個人主義だなぁ、アメリカは。後は修行もせず自己流で作ったパンに絶大の自信を持つのもちょっとんん?と言う感じ。主人公は別にパン職人になりたい訳ではないんだろうけど…。だったら売るとか有名になるとかそう言う方向じゃ無くて職場の食事改善とかそういう方向に行けば良いのになぁとか思いました。

  • IT企業に勤務し疲れ果てたロイスは、近所の宅配レストランのパンとスープに活力をもらう。その店主が去る際に譲ってくれたパン種は実に不思議。歌を聴いて育ち、焼き上がったパンには笑顔が浮かぶ。
    パンを作るのが好きなので読み始めた作品ですが、これは一体ファンタジーなのか何なのかと思いながら読み進めた。
    ロボットとの融合、菌の増殖が出てきたりと、読み終わってみれば現実的な部分と少しのファンタジー要素が混ざり合った話なのかと思うが、そういうのはあまりこだわらずに読んだ方がいいのかもしれない。

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