- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488017279
感想・レビュー・書評
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序章にある、アイヌの神がシサムの行いに怒って鉄槌を下す、そんなファンタジーを想像していたら、実際はミステリーだった。自分としては、大木が天から降り注いで人々を懲らしめる方が好きなんですが、鳶さんの見事な推理も面白かった。
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霊 (ミステリ・フロンティア)
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4-488-01727-4 258p 2006.8.31 初版
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九州大学理学部生物科って石持浅海と同じじゃん、と思って、動機も凄く石持的で……このスケールのでかさ(はたから見たら何で?って思うかもしれないけれど)は結構好きだな、と思う。もしかして九州大学理学部は皆こんな感じなのか?と少し嬉しくなる。
夏海は男だと思っていたので、女と分かった時はビックリした。こういうところも若干石持浅海っぽいな、と笑った。
ただし文章や話運びは石持氏とはまったく違う。
そして、スケールがでかいのは動機だけかもしれない。
「木が動く」という事件から、もっと壮大でインパクトのある話を想像していたのだが、「地滑りしたミズナラ」「誰かが動かしたナナカマド」と実際は案外絵にならない地味さ加減。
鳶山の推理も、拍手してべた褒めするほどでもないような気がする。本格物に慣れている読者はあまり期待しない方がいいかもしれない。
事件現場の状況を想像するのが難しく、何度も文章と地図を突き合わせて考えた。その徒労分の驚きはなかった、というのが正直な感想。
解答編はもうちょっと整理してから書いて欲しい。ごちゃごちゃしていて「あっ!」という感覚がない。
どちらかというと、印象に残ったのは推理よりも鳶山の蘊蓄。「けんもほろろ」の語源は広辞苑では『「けん」も「ほろろ」もキジの鳴き声』と書いてあるのだが、それは大嘘で、辞書を作る人間は観察せず文献を引用するだけだからこんなミスが起こる、と鳶山は言っている。
そうか、辞書にも間違いがあるのか、鵜呑みはよくないな、と思った次第。 -
観察者・鳶山シリーズ。今度の舞台は北海道。
「木が動く」という事件が立て続けに起きる…この設定だけで好き。
失踪事件、首切断死体、墜落死体、毒殺死体とミステリ要素も盛りだくさん。
鳥飼否宇さんは、田舎の自然を描くのが持ち味なのか。このシリーズは作品全体の雰囲気が好み。 -
ミステリ作家は不可解な状況を作り出す必要があるが、一から十まで設定を考えつくのは無理。そういうとき自然に関する深い知識を持っていることは、強力な武器になる。自然の神秘=mystery=人間にとっての謎。
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わたくし世の中滅ばば滅べみたいな思考ですので、あまりにもくだらない動機であらあらみたいな感じでした。
まあフィクションですから。
しかし、死んだヘビにゴキブリが食らいついてる絵って、一体どんなシチュエーションでそんな絵が描かれたんだろうか。
女性エッセイストに取り上げられた、のだったっけ?
そのエッセイストの挿絵に使われて、(確認なりなんなりで)見た相手が卒倒した、かと思っていたのですけど、この解釈間違っているかしら。 -
巨木が移動⁈
次々起こる、木が移動する怪奇事件!
これは、面白そう!
と、ワクワクして読み始めた。
よほど、神秘的な体験が描かれるに違いないと期待したけど、ん!
本格派なの?
あぁそういう感じなのね -
「樹木の移動」の三つの謎「誰が」「何の目的で」「どうやって」がとても魅力的です。その他の殺人事件や、アイヌ文化と開発の対立を織り交ぜ、一筋縄ではいかない凝った造りになっています。
一つ一つの謎の真相は正直微妙ですが、それぞれを組み合わせて大きな効果をもたらすことに成功しています。異色の動機も印象的で、概ね良作と言っていい出来だと思います。 -
〈観察者〉探偵シリーズ。
北海道日高地方の村を舞台にした、不可解な現象と連続死。
森林の乱開発を巡る地元の対立、移動する街路樹と神樹の謎、道議会議員の失踪、続発する不審死。
犯人の真摯で急進的な論法は、人間と自然の共存の困難と欺瞞、途方に暮れたような虚無感を、聞き手に突きつける。
真相が解明されても事態は収拾せず、寧ろ混迷を残しながら、尚も人間が生存してゆかざるをえない世界の美しさを垣間見せる。