オルゴーリェンヌ (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
3.82
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本棚登録 : 272
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017798

作品紹介・あらすじ

再会した英国人少年クリスと検閲官エノを待っていたのは、オルゴールを作り続ける孤島の洋館で勃発した連続不可能殺人だった! 著者渾身の巨編、〈少年検閲官〉連作第2弾。

感想・レビュー・書評

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  • 75点

    ***
    書物の存在しない世界で、書物を取り締まる少年検閲官とミステリを書きたいという願いを抱いて旅を続ける少年、さらに音楽に魅了された少女のお話。

    クリスはオルゴールを作り音楽を後世に残すことだけを生業にする海墟から逃げてきたユユと出会う。ユユと共に検閲官から逃げるクリスは間一髪エノに助けられる。
    何故ユユが追われているのか、海墟には本当にガジェットが隠されているのか、真相を確かめるために海墟へ向かうがそこでは連続殺人が発生し……
    ***

    少年検閲官シリーズ2作目、1作目(http://booklog.jp/users/mametarou77/archives/1/4488017223)の感想がこちら。
    退廃的な世界観とそれを表現する著者の心地よい文章、そんな先の見えない世界で育まれるクリスとエノの友情が上手く描けており、またかなりの分量にも拘らず思った以上にサクサク読めることも評価したい。

    登場人物に関しては設定上仕方ない面もあるとはいえ、エノがクリスとしか絡まず、エノ-ユユのラインが途切れていて3人が絡み合わないのは正直非常に残念、次巻以降に少し期待したいところ。
    もう一人の少年検閲官カルテもキャラの位置付けの割にいまいちパッとしないのが残念。
    読者目線としてはおそらくスケープゴートとして登場していながら何も触れられることなくまた職能を発揮できずに終わったことにかなりモヤモヤさせられます。去り際を読むとこれまた次巻以降の展開に期待と言えなくもないですが……。

    トリックに関してはいろいろと疑問が多い。
    2つ目のトリックで梯子が外れていた点に関して言及されてない点、犯人の可能性のあった女性が消去法で削除されたがその根拠が弱い点、そもそも犯人にこれだけの犯行を実行できるだけの能力があったのかなど。
    とは言え良い意味で今時物理トリックをゴリゴリ使ってる辺りは感心しました。

  • 最初は本のぶ厚さと二段組の文章に読み終わるかと不安でしたが、読み始めたら早かった。風景描写や雰囲気が素敵。残酷なのに美しく、最後の手紙にうるっときてしまいました。

  • 多重解決の末に明かされるトリックは著者の代名詞とも言える類のものでややバカミス的ではありますが、ちゃんとオルゴールというテーマが活かされていますし、これによって意外な人物が犯人候補に浮上するという、物語上必要不可欠なものになっているところが秀逸です。
    また、冒頭の「月光の渚で君を」は出色の出来ですし、ヒロインの少女ユユの造形も魅力的。切ない余韻が残るラストも良い感じで、非常に充実しています。前作『少年検閲官』と比べると若干設定が緩いのが気になりますが、今年のミステリーランキングで間違いなく上位に入る傑作です。

  •  北山猛邦さんの新刊は、『少年検閲官』の続編だという。僕は前作に大満足していたはずなのだが、もう8年前なので内容をすっかり忘れてしまった。

     覚えているのは、徹底的に書物を取り締まるという作品世界。本作においても作品世界と主人公は共通である。あの少年検閲官も。近年、本格とは言えない作品が多かったが、久しぶりに物理の北山らしさを堪能できるだろう。

     旅を続けていたクリスは、検閲官に追われている少女、ユユと出会う。必死に逃げる2人だが、万事休すかと思われた場面で現れたのは…。ユユは、海墟にある屋敷から逃げてきたという。こうして、成り行き上、屋敷に向かう面々であった。

     ちょっと序盤が長すぎないか? それはともかく、「海墟」とは、元々陸続きだったが周囲が海に沈み、離島化した場所を指す。いずれは水没する場所に、わざわざ住み続けている主人。ここにも「ガジェット」があるというのだが…。

     屋敷ではオルゴールが作られていた。この世界では、音楽もまた取り締まり対象になり得る。主人の目的が、音楽を後世に残すことではなかったのが判明するのは、終盤になってから。さて、離島といえば、すっかりおなじみのシチュエーションですねえ。

     僕は前作の作品世界とミステリ性の融合を高く評価していたが、本作の読みどころは作品世界より推理合戦と言い切ってしまおう。それぞれもっともらしい推理が披露され、なるほどと思うとまた別の推理が披露され…。いずれも凝りに凝った物理トリックで、書物がご法度の世界でどうやって知識を仕入れたのか、苦笑してしまう。

     二転三転、最終的に何転したっけ…ともかく最後の最後に明かされた真相に、呆気にとられてしまった。そこに思い至らなかったのは迂闊だったな。この粋なプレゼントを、クリスは活用できるだろうか。というより、所持していいのか?

  • 油断した完全にやられた。物理トリック(図!!図!!)の量と多重解決の必要性。『少年検閲官』から続く書物の禁じられた世界とガジェットの存在。この題材との物理トリックが組み合わせれて起きたハウダニットの行く先には、とんでもなく美しい物語があった。
    「クロック城物理トリックは良かった」
    「アリスミラー城この犯人は意外だった」
    「少年検閲官の設定は良かった」
    私の読んだ北山作品は、面白いけどどこか物足りなさがあった。
    本作は全て詰め込んだ。私は詰め込まれた作品が好きだ。
    幻想的な物語に本格ミステリの舞台、仕掛け。
    甘く見ていた。読後ここまで心が揺さぶられるとは。恐ろしく本格ミステリであり、どうしようもなく切ない。

    傑作なり。

  • 私の評価基準
    ☆☆☆☆☆ 最高 すごくおもしろい ぜひおすすめ 保存版
    ☆☆☆☆ すごくおもしろい おすすめ 再読するかも
    ☆☆☆ おもしろい 気が向いたらどうぞ
    ☆☆ 普通 時間があれば
    ☆ つまらない もしくは趣味が合わない

    2016.4.4読了

    なかなか良かったが、少し読み進め難かった。

    序奏の物語がとてもムードが感じられて、良かった。
    そして、その序章を受けて少年検閲官というシリーズになっている物語に展開していくのだが、この少年検閲官の物語も独特なムードを持っていて、互いに似ているような雰囲気が重なりあって、かえってこの小説の良さを妨げている様だ。

    謎解きのところも作者が良く用いるらしい、いくつかの解を重ねて提示するもので、それなりに楽しめるが、私はシンプルな謎解きで良いので、最初の物語をもっと膨らませたものを読んでみたかった。

  • これは・・・ラノベとは違うんですかね?もう少年少女がちょっと異世界な感じの世界観で謎を解くとかもうお腹いっぱい。ありがちすぎて食傷気味です。
    それでいて謎もそんなに世界観に即したってこともなくてそこだけ取り出したら凡庸なミステリだし。主人公であるクリスにしても初めて会ったユユにたいして「そこまで思い入れするか?」という感じもしたし。「オルゴール」がずっと意味ありげに話の中心に語られてた割には最終的にその必要性はあんまり感じなかったし。。
    「少年検閲官」の続編ということで、読み始めたくらいの時は「そっちから読み直そうかな?」とも思いましたが、まあいいかなって。。。

  • 前作の『少年検閲官』では、タイトルにもなっている少年検閲官・エノが後半になるまで出てこなかったけれど、今回は割と序盤で出てきました。

    エノとクリスの組み合わせが好きなので早く出て来てくれてよかった‼︎

    クリスの心に触れるたびに少しずつエノの心に温かさが戻っていく感じがたまらんです。



    今回のお話はどこの国と明言されていたわけではないけれど、シグレだのマキノだのの登場人物の名前から推察するに日本あるいは日本をモデルとした国が舞台だった模様。

    ということは、この国が故郷だというキリイ先生ってもしかして、「キリー」ではなく「桐井」というイントネーションが正しいのかしらん。

  • 少年検閲官から3ヶ月後。書物がない世界で、ミステリの要素を記述したガジェットを巡る物語。
    ミステリを描こうとする主人公と、検閲官の二人、そして出会った少女の関係性がとにかく強烈です。
    オルゴールに彩られた館と終末に向かう世界。最高。

  • 独特の世界観による近未来(またはパラレルワールド)を舞台にしたミステリ。
    二転三転するトリックの解明と犯人当て。ラストに明かされる真相。

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著者プロフィール

2002年、『『クロック城』殺人事件』(講談社ノベルス)で第24回メフィスト賞を受賞しデビュー。代表作として、デビュー作に端を発する一連の〈城〉シリーズなどがある。

「2022年 『月灯館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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