亡霊ふたり (ミステリ・フロンティア)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 141
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (273ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488017811

作品紹介・あらすじ

名探偵志願の女子高生と、殺人者志願の男子高生。おかしな2人が出合うのは、謎とも呼べないような謎で……ミステリというフィルターを通して描いた、鮮烈な傑作青春小説!

感想・レビュー・書評

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  • 確か、ダ・ヴィンチで誰かがお薦めしていたので図書館予約した本。

    これはちょっと趣向の変わった面白いミステリー作品である。
    舞台は、とある高校。
    かたや、高校時代にひとを一人殺そうと考えているボクシング部の男子高橋和也。
    かたや、名探偵に憧れ、どこかで事件がないかと探している女子若月ローコ。
    この二人がひょんなことで知り合い、友達になる。

    まず、このキャラクタ設定が面白い。
    高橋は高校時代になぜ殺人を犯したいと考えているのか?
    一見、力は強いが心は優しい普通の高校生にしか思えないのに。
    彼の語りは、殺人に悪しき観念など持っていないような軽い口調なのだ。
    冗談のようにも思えるが、何度も繰り返し語られるところを見ると本気らしい。
    殺人の準備、殺人場所、その後の死体遺棄方法など、頭の中で細かく計算している。
    でも、学校では何ら変わりのない普通の高校生。

    その高橋が第一の殺人のターゲットに定めるのが、友人になった若月ローコ。
    彼女に殺されるべき理由などどこにもないのに。
    ただ、殺しやすいということだけで、高橋が殺人を犯す一つの駒にしか過ぎない。
    なんと不条理な事だろう。なんと自分勝手な考えなのだろう。
    ここまで書くと、高橋は凶悪な殺人鬼に思えてくるかもしれないが、
    それでも彼の日常の行動と語りは飄々としているのだ。
    さて、その後このストーリーはどういう展開になっていくのか?
    ひたすら、先が気になって仕方がなかった。
    どういうエンディングが用意されているのか、興味津々だった。
    途中、高橋に告白する女子高生なども現れ、この子がどういう役回りを演じるのかも気になり、最後まで一気読み。

    いやあ、久しぶりに変わった雰囲気の面白い小説を読んだ。
    結末はある程度予想されていたことであれ、かと言って、それがこの小説の面白さを台無しにするほどではない。
    詠坂雄二、興味深い小説を書く作家だ。
    他の作品も読んでみたい。

  • リロ・グラ・シスタのあとで読んだせいか、文体のせいか、大変読みやすく感じた(笑)

    他作品も読んでいるので、こういった形でリンクが出てくると嬉しく思える。あの高校閉校したの、とか。さとうまこと?!とか。
    全体的にボクシング少年高橋がいいやつというか、結局その夢は叶わないし、振り回され続けるんだろうな、と。だからこそこの話の続きは別になくてもいいな、とも。冒険は、まだまだ続く。的なやつ。

  • ボーイミーツガール、ただし、少女は名探偵をめざし、少年は殺人者をめざす/名探偵になるのに必要なものって何だと思う?(p.54)/人を殺せるようになれば人生の選択肢は広がる。(p.48)/よし。殺すのは若月にしよう。(p.61)/普通に考えればいかにして高橋は殺人者であろうとすることをやめたかという展開になると思われるが?/いきなり出てきた脱法ハーブ「アスカ2」はターニングポイント?

    ■単語集

    【アスカ2】若月が撲滅させようとしている脱法ハーブ。
    【糸井/いとい】若月から預かったものを高橋に届けた。文芸部員。高橋《お前との絶交が、あいつの夢を固定させたんだ》p.192
    【和也】→高橋和也
    【郷本武/ごうもと・たけし】とある紳士。ある意味高橋を救けてくれた。
    【近藤大樹/こんどう・だいき】高橋のクラスメートで数少ない友人の一人。両親が十六歳のときに生まれた。
    【佐々木辰人/ささき・たつと】高橋のクラスメート。首が見えないほど太っている。
    【殺人】高橋は殺人者をめざす。自由でいるための選択肢を増やすために、数日前に読んだ米澤穂信さんの『栞と嘘の季節』のトリカブト入り栞と同じような意味合いかも。殺人の第一の条件は捕まらないこと。そのためには殺人そのものが発覚しないことが望ましい。
    【佐藤誠/さとう・まこと】伝説の殺人鬼。三年前に警察に自首した。百人殺しとか言われている。遠海西高校出身。
    【清水】若月の友人。純粋なタイプ。眼鏡。髪がきれい。
    【高橋和也/たかはし・かずや】視点役の主人公。殺人者をめざしている高校一年生。《人を殺せるようになれば人生の選択肢は広がる。》p.48/なぜか若月の手伝いをさせられている。ボディガードも兼ねる。アマチュア・ボクシングの選手でかなりの強豪らしい。ウェルター級。同じ県内に全国チャンピオンの野崎健吾がおり高橋はいつも県内二位。
    【月島凪/つきしま・なぎ】若月が昔会ったことがあり憧れてるという名探偵。月島前線企画という会社を経営していたが現在は行方不明。仲間では荒事が得意な藍川慎司(あいかわ・しんじ)が有名。雰囲気的にこの作品用の設定というよりは他の作品の主人公やったりしそうやなと思う。この著者は今回のがお初なんで知れへんけど。
    【遠海西高校/とおみにしこうとうがっこう】若月や高橋が在籍している県立高校。
    【野崎健吾/のざき・けんご】高橋と同じウェルター級の全国チャンピオン。
    【名探偵】名探偵になるためにはまず事件に遭遇しなければならないがこれが難しい。特に殺人事件なんてものになると。遭遇するためにはまず確率を上げなければならない。そのためには人脈だと若月は言う。恨まれるとかの負の人脈でもいいからと。最近読んだ本でも自称名探偵、ただしいまだ事件には遭遇していないという人物が出たが。まあ、名探偵をめざすというキャラクタはフィクションでは少なくない。でもターゲットが特にいないのに殺人者をめざす人物は少ないのでこの作品のオリジナリティはやはり高橋の存在やろう。
    【のんき】のんきな学園生活は、自分にも他人にも期待しないところに極意がある。(p.20)
    【理屈】元が理屈じゃないから、理屈でも砕かれねえし(p.238)
    【吏塚高校//りづかこうこう】今年の春廃校になった私立高校。「死神吏塚」と呼ばれ短期間のうちに大勢の生徒が死んだので死神のいる高校という噂あり。死んだ生徒の死因はさまざまで関連性もなく警察が介入して解決もしているがなんらかのつながりがある可能性もある。
    【ローコ】→若月ローコ
    【若月ローコ/わかづき・ろーこ】名探偵をめざしている高校一年生/いいね。秘密の匂いがする(p.27)/自分のルールを押し通すタイプ。探偵向きではない…いや、探偵向きか…。多くの枝分かれする論理から確証もなくなぜか正解を当てられるらしい。推理し予測した範囲内では躊躇がないがアドリブには弱い。本名は「浪子/なみこ」。

  • 人を殺したいと思っている少年と名探偵になりたくて事件を求める少女の物語。

    少年の殺人者願望も少女の名探偵を志望する動機もさっぱり共感はおろか理解すら出来なかったので微妙だった。中二病ってのは誰かしら多少は覚えのあるものだから、今の自分で共感出来なくても「そういう時期あるよね」という納得の仕方も出来るはずだけれど、この主役二人の目指しているものは残念ながらさっぱり理解不能。人を殺せば自由になれるってどういう思考回路だ。少女の憧れの名探偵(著者の他作品の登場人物…?)も何が凄いのかさっぱり分からない。廃校の件も全てがご都合主義過ぎて唖然としている内に片がついてしまった。
    納得出来ないままに事件が起きて無理やりな理屈をつけて畳み込まれるので気がつけば物語が終わっている。もちろん夢中になって読み進めたという訳ではなく。

    ミステリーとしても青春物としても個人的には今ひとつ。

  • 少し特殊なボーイミーツガール小説。
    殺人者になりたい少年と、探偵になりたい少女の青春を描いた作品。

    憧れに近づくために、お互いに多少の無茶をしたり失敗したりする姿にはやきもきしました。

  • 名探偵になりたい女子高生と、殺人志望の男子校生。ローコが浮き過ぎてる感じがしたが、一気に読み進んでしまった。この作家さんは初読みなのだが、過去作品とリンクしてるとか?そっちも気になるし、二人の行く先も気になる。

  • (ミステリ・フロンティア78)

  • 思ってた感じ通りで、それ以上ではなかったかも。でも好きです。

  • 微妙。おもしろくない。登場人物のキャラで成り立ってるけどそれも薄っぺらくて本当に微妙。ミステリだと思うと拍子抜けだし(これで本格ってどゆこと?)青春ものと思えばまあ…でも高校生にもなって殺人鬼志望と名探偵志望は無理あるだろ…。

  • 「俺はお前が夢を叶えるところが見たい」
    名探偵志願の女子高生と、殺人者志願の男子高生。
    出会ってはいけなかったはずの裏表の二人は、運命か偶然か、なんのドラマもなしに出会ってしまった!
    サスペンスフルで、ときにコミカルで、最高にヴィヴィッドな、いま最も注目されるべき実力派が放つ傑作青春小説!

    まず「佐藤誠」「月島凪」「吏塚高校」などなど、本作には著者の過去作との多くの関連性が見受けられる。
    それを踏まえていない人はあまり楽しめないのではないかということ、
    またミステリ要素はあるけれど青春小説であるのは、このレーベルでどうなの?と感じた(この著者の場合それはあえてなのかもしれないが)。

    内容はというと、名探偵になりたい女子高生と、殺人をしておきたい男子高生のボーイ・ミーツ・ガールであり、
    「じゃあ彼は彼女を殺してしまうのだろうか」と思いながら読み進めることになった。
    彼にもその思惑はあるようで、彼女を殺すタイミングをうかがったりするのだけれど、彼女に振り回される日々が続く。
    章ごとに小さな謎が設定されてはいるものの、現実はそんなものかと思うことばかり。
    最後のある事件はけっこうおおごとなのだけれど、彼女はそれにすら自分ひとりの力で成し遂げられないと一時凹むことになる。
    その様子に彼も凹んでしまうのだった。
    読後感はいやに爽やかさを残す。設定はラノベっぽいともいえるが、かろうじて一般小説の体も残しているあたりに、著者のひねくれが垣間見える。

    とてもいいレビューがあった↓
    http://blog.livedoor.jp/azumaakira/archives/7627836.html

    ミステリ  :☆☆
    ストーリー :☆☆☆☆
    人物    :☆☆☆☆☆
    文章    :☆☆☆☆

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著者プロフィール

1979年生まれ。2007年、カッパ・ノベルスの新人発掘プロジェクト「Kappa‐One」に選ばれ、『リロ・グラ・シスタthe little glass sister』でデビュー。クールな文体で構成される独特の世界観と、本格マインド溢れる謎解きがミステリ通の熱い支持を受けている。

「2022年 『君待秋ラは透きとおる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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