MM9

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488018122

感想・レビュー・書評

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  • 自然災害の一種として『怪獣災害』が存在する現代。有数の怪獣災害国である日本においてその対策にあたっているのが『気象庁特異生物対策部』略して『気特対』である。彼らの任務は多種多様な怪獣の生態を調査し、警報を出したり対策を練ることであるが、たびたび予測を外し非難を浴びることもある。責任は重大でありながら、過酷で割に合わない仕事だ。
    怪獣の規模は『MM』で表わされ、これまで確認された最大の怪獣は『MM8.9』である。兵器の殺傷力の増大と堅牢なビルの増加により、以前に比べ被害は減少しているものの対応を間違えれば大惨事になりかねない。そして今、怪獣をテロに利用しようとする謎の組織が現れ『MM9』クラスの怪獣が目覚めさせられようとしていた。


    地震や台風被害の多い日本ですが、怪獣ですか!面白いのは怪獣がそれらの自然災害の一種となっていることです。なので管轄は『気象庁』、武器は持ちません。怪獣映画のように戦闘機で銃撃したりましてや隊員が変身したりなんてことは一切なく、彼らは予測と対策を立てるのがお仕事です(実際に戦うのは自衛隊)。なんだか突拍子もない設定なのにそこらへんが妙にリアルで微笑ましく思えました。
    設定は現在、といっても微妙に前、20世紀終ぐらいでしょうか。なぜなら
    未来の観測者によって過去は決定される。人の価値観が変われば、宇宙の過去も変化するということ。神が世界を作ったと信じられていた時代から、今では科学の発展によりビックバンが宇宙の始まりとされていますよね。そうなると神話はもはや物語でしかなく・・この怪獣災害もしだいに姿を消し、それが過去の自然災害と同化しているのが現在ということなんだと。昔話や伝承の中には災害を擬人化したとされるものも多数ありますので。逆を返せば、「一昔前は怪獣災害が本当にもあったかも」というロマンあふれるお話です。
    そして、消えゆく存在として妖怪が「自分が存在したという事実を完璧に否定されるのは、最大の恐怖であり屈辱だ」と仰っています。確かに人は、この場合彼は人間ではありませんが同じ知性を持つ種としていえば、何か生きた証というか自分に存在意義を求めるものでしょうから。それに対する答えが「自分のいる世界だけではなく、いずれ完成するはずの世界にも影響を与えるなら、こうしてやっていることも決して無意味でも無駄でもない」ということ。確かに宇宙から見たら平凡で取り立てて才能のない自分なんかほんとにちっさな細胞、いや原子かもしれないけど、その原子だってなければ遠い未来に大きな影響があるかもしれないですもんね。まあそう思って生きていきたいです。

    内容は、とても面白かったです。TV取材風にした「密着!気特対24時」とか、最後は怪獣大戦になったりだとか。巨大な少女の『ヒメ』ちゃんも可愛い。しいていえば最初に出てきた『灰田涼』、名前もかっこよかったのでもっと活躍してくれるのかと思ってたのが違ってた。まあ彼は戦闘員ではないしね。そんな彼らの活躍が現実世界で『ウルトラマン』的な特撮に繋がっていると感じさせるラストがgoodでした。

  • 怪獣のいる風景。現実世界と怪獣世界を組み合わせただけじゃなく、更に神話や妖怪なんかの民俗学を合わせてきてるのが面白かった。翻訳されて海外でも読まれているもよう。

  • 台風や地震と同様に「怪獣」が我々の日常を脅かす「自然災害」ってそりゃこわいわ。MMはモンスターマグニチュードの略。「気象庁特異生物対策部」略して「気特対」は予報・予測をするだけで戦うのは自衛隊(+アルファ)というところがミソ。
    終始明るめに読めて楽しい。
    SF苦手な人でも大丈夫。
    妖怪や怪獣の存在する理由もわかりやすく説明されている。神話宇宙の残存、人間多重原理ーなるほどねぇ。
    最終話、そう来たかって感じで、最後まで笑える。
    次作でもヒメが活躍するんだろうなぁ。楽しみ~♪
    映像化されたらおもしろいだろうなぁと思って調べたら、既に去年MBSでドラマ化されてるんだ!
    見てみたかったなぁ…

  • MM9はモンスター・マグニチュード9。
    地震、台風などと同じく自然災害の一種として”怪獣災害”が存在する世界。その怪獣災害の対策にあたるのが、気象庁特異生物対策部、通称「気特対」。怪獣災害対応が気象庁の管轄とういうのが面白い。(実際怪獣を攻撃するのは自衛隊だが)
    よくある特撮ものと違うのは、なぜ怪獣が存在するのかということを科学的に説明されているハードSF作品というところ。

    その説明はこうだ。

    ・多重人間原理:量子力学の観測問題と同じく、人間が今ここにいるという事実によって、物理法則や宇宙の過去状態が決定される。
    ・物理学者が解明してきた"ビックバン宇宙"のほかに、物理法則の異なるもう一つの"神話宇宙"が存在しえうる。
    ・人間が宇宙を認識する意識が無かった時代は、ビックバン宇宙と神話宇宙が共存していた。
    ・しかし人間に意識が芽生えるにつれ、二つの宇宙が同時存在する状態は不安定となり、神話宇宙が衰退し、ビックバン宇宙へと収束する”パラダイム・シフト」が起こった。
    ・かつて栄華を誇った超自然的現象はほぼ消滅しているが、巨大な実体を有し、大災害を起こし人々に恐れられることによって、その存在を認識されている怪獣は、例外として消滅しなかった。

    なるほど、説得力がある。

    この理論を聞いたあとだと、最後の気特対メンバーの会話が、妙にリアリティーがある。もしかしてあの作品も・・

  • 2009.05
    バリバリの怪獣もの。ウルトラマンは実は女の子?

  • 怪獣小説の分類になると言う。MM=モンスター・マグニチュードと表記され自然災害扱いとなっている。おもしろい!着眼点がおもしろい!戦うのは自衛隊で、防御戦略のみの設定が地味で良い。B級のテレビドラマ化したら、マイナーな者にはたまらない作品になりそうだ。

  • 間抜けな設定も、ここまでディテイルにこだわると芸術になります。理屈抜きで楽しめる超一流の娯楽作品です。最後のパラグラフに、きっと「ニヤリ」とさせられるでしょう。

  • ずっと読みたいと思っていた怪獣小説。とても面白かった!科学も物理学も数学も民俗学も宗教も使って怪獣を研究、特定、対策を練る気象庁特異生物対策部の活躍はカッコ良かった!

  • 【要約】


    【ノート】
    ・白倉さんがレビューしてるのは映像の方だが、小説もね。

  • 85:「怪獣による災害」が起こる世界で、怪獣対策のスペシャリストたちが怪獣相手に大活躍……と書くと、どこがSFなのか、って感じですが、「多重人間原理」のあたりからぐっとSFぽくなってきます。そしてラストの大オチ! これにはしてやられました。怪獣対策の担当が気象庁だったりするのが独特ですが、すごく好きでした。

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著者プロフィール

元神戸大学教授

「2023年 『民事訴訟法〔第4版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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