太陽の石

著者 :
  • 東京創元社
4.07
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感想 : 58
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488024987

作品紹介・あらすじ

歴史に名を轟かせたコンスル帝国も、内乱や疫病、隣国の侵攻によって衰退し、いまや見る影もない。霧岬はそんな帝国の最北西に位置する。三百年ほど前、魔道師イザーカト九きょうだいのひとりリンターが空からふってきて、地の底に達する穴をうがち、ゴルツ山を隆起させたのだという。霧岬の村に住むデイスは十六歳、村の外に捨てられていたところを姉に拾われ、両親と姉に慈しまれて育った。ある日ゴルツ山に登ったデイスは、土の中に半分埋まった肩留めを拾う。金の透かし彫りに、"太陽の石"と呼ばれる鮮緑の宝石。これは自分に属するものだ…。だが、それがゴルツ山に眠る魔道師を目覚めさせることになろうとは。『夜の写本師』『魔道師の月』で話題沸騰の著者の第三長編。

感想・レビュー・書評

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  • 許すことで自分も解放される。三作読んだ感想としては、テーマは許すこと、で、その許せない工程、許すに至った工程をいろんな本で書いているんだと思う。許すこと、笑うこと。当たり前のことを当たり前にすること。感謝すること。一人一人の人物像を丁寧に書くことで、どうすれば絶対に許せないような人を許せるのかを浮かび上がらせている。

  • 82:「夜の写本師」「魔道師の月」に続く第三話、ということで、大地の魔法に長けた九人きょうだいによる壮大な兄弟喧嘩の顛末が描かれます。タイトルが示す通り、前作のキーアイテムが今回も重要な役割を果たしますよ! 怒涛の描写に心地よく酔える、重厚なファンタジー。
    時系列的には「月」のあと、「写本師」の前。歴史ものを読んでる楽しみも味わえるのが、同一世界ものの醍醐味ですね。「写本師」と比べて、登場人物たちが生き生きと描かれているのが、読んでいてとても楽しかったです。

  • 副題Legacy of sorcerers 。彼等の祖先からのものだけでなく、兄から弟たちへ。闘いを経て大地へと継ぐというもっと大きな意味を持っていた。エズキウムは「彼」の支配下にある時代。先祖の血に封印された暗樹は、外に出ずとも自分を受け継いだ者の心に付け入った。兄弟という血の繋がりがあるだけに争いは激烈で、暗樹はさぞ楽しんだろう。先祖が身を挺して封じ込め、長い時間はかかったが子孫で抑え込んだ。命を創造し育む力は、破壊者のもっとも恐れるもの。ネアリイがいたから、若い魔道士たちは、やり切ったのだと思う。

  • うぇぇ。
    壮絶な兄弟ゲンカの話と言ってしまえばそれまで。

    「千年の闇クロニクル」を読んだ時と同じような感覚を覚える。(東か北あたりの)ヨーロッパの神話を読んでいるような壮大な物語。
    さっそく続刊「オーリエラントの魔道士たち」も予約しました。

    今後も乾石智子さん、要チェックです!

  • とても、よかった~~~。

    表紙のなごやかなイメージとは裏腹に内容はなかなか痛々しい。

    三百年前のイザーカトきょうだいの争い。
    再び目覚めたリンターは少し、早く目覚め、人としての時間でその心をはぐくんだ一番下のデイサンダーを連れ、ナハティとの決着をつけるべく
    不動山への旅を始める。

    最初の盛り上がりは、イリアの登場部分。
    いやーすっかり騙されてたな。
    あの術が発動するシーンは、捕まっちゃったぞーという心配が前にあったもんですっきりした。

    合間、イリアとネアリイとの恋話が入りこんで、思わず頬がゆるむ部分もあり。

    が、が!!!
    いやー怒涛のラストはすごかった。
    カサンドラの死にざまとか、ネアリイの最期とか、もう
    これでもかってぐらいの心臓、痛いシーンだらけで、苦しい、苦しい。
    だが、、その苦しみ具合の表し方が、また美しいんだなあ。
    最も輝かしいものが砕け散っていく、というふうに。
    全く、この豊穣極まりない文章!それを目にするだけで、なんだか嬉しい。
    解説で、なんだが具体的な状況は分からないけれど、すごい、というような
    ことが書かれていたが、ホント、その通り!
    ただ、そこから受けるイメージの豊富さだけは分かる。
    いやーホント、読むだけで幸せになれるわあ。

    ナハティのもとへの旅という横軸、今と昔、という時間の縦軸、
    それが上手にからまって、それに、人と魔術師の心のありようの違い、とか、ナハティの孤独、とか、さらに、あの、例の、闇の存在、そゆーのが
    どんどん詰め込まれて、読みどころ満載の作品になっている。

    その後の彼らの話もきっといつか誰かの歌物語になっていそう。
    うーん、やっぱ乾石さん、すごすぎだー。

  • 「魔道師の月」の地図を少しアップにした地図有り。「写本師」にも地図が欲しかったな。

    9人の魔道師兄弟の物語。簡単に言うと、壮大な兄弟喧嘩です。
    彼らは2作目に登場したレイサンダーの子孫たち。
    レイサンダーが暗樹の封印に使った太陽の石のフィブラが登場。自分と同じ9番目の子供に渡すよう子孫に伝えているよう。「呪われた魔道師として帝国の歴史から抹殺」と書かれているけど、どんな一生だったのか気になる。

    次女であるナハティが孤独から暴走し多くの人を手にかけてしまうけれど、暴走前のナハティはむしろかわいそう。父親の死後何もしない長男長女やミルディ死後の周りの態度とか。デイサンダーはナハティの孤独や姉としての暖かさがあった事に気付くけどそれを伝えずに終わってしまったのが悲しい。

    白皙&紫水晶のあの人が出てきます!シリーズファンへのサービスかな?

    イスリルの歴史や、魔道師の種類(?)についての話も。
    イスリルはコンスル帝国の2倍の歴史があるとザナザが言ってたけど、「イスリル」と名がつく前も含めての歴史ってことでいいの?ノーランノールの話も出てきたし、イスリルはテイバドールがイスランから名前をとって作ろうとした国だからすでにコンスル帝国はあったはず。

    黒蝶湖にいた頬に傷のある男は特に誰という訳ではないよね?ミルディが「大昔からいる」と言ってたけど。今後のシリーズの伏線だったりしないかな。かなり意味ありげに登場したし。

    イザーカト、フィブラ、イスリル等前作の「魔道師の月」とかなり繋がりの深い作品。
    シリーズ2作目が1作目のスピンオフなら、この3作目は2作目の続編といってもいいと思う。
    時系列がややこしいので、シリーズ通しての年表が欲しい。解る範囲で自作してみたものの合ってるのかわからない・・・。

    webのあとがきによるとリンターのモデルはアラゴルンだそうです。見た目のイメージだとリンターのほうが若い印象を持ったけど、見た目の年齢とかは書かれてない。本にもあとがき欲しいなあ。

    解説で気になったことが。
    基本素晴らしいファンタジーであると褒めてはいるんだけど、「作品によって魔道師と闇の関係や魔法について描かれ方が違う、多様性、自由奔放な広がりがある」という内容の部分。ひねくれた見方をするとブレがあると言いたそうに感じる。
    「夜の写本師では闇に縛られていない」と書いてあるんだけど魔道師は闇を背負うものだとしっかり書いてあるし、魔道師の月でもキアルスが闇について教え子に語るシーンがある。
    魔法の種類に関しても、本屋にあった十四大魔法について書かれているチラシを見ると、世界観の設定はしっかり造り込んでいるように感じる。
    読み手の感じ方によって色々違ってくるんだろうけどこんなに解説に反論したくなるのは初めてで少し残念。


    まだまだ続いてほしい作品です。

  • あとがきによると、主人公はヴィゴ・モーテンセンのアラゴルンがモデルらしいです。
    乾石智子『太陽の石』ここだけのあとがき[2012年10月]|Webミステリーズ!
    http://www.webmysteries.jp/afterword/inuishi1210.html

    東京創元社のPR
    「かつて繁栄を誇ったコンスル帝国の最北西に位置する霧岬。そんな霧岬の村に住むデイスは、捨てられていたところを拾われ、両親と姉に慈しまれて育った。ある日ゴルツ山に登ったデイスは、土の中に半分埋まった肩留めを拾う。金の透かし彫りに、〈太陽の石〉。これは自分に属するものだ、一目でデイスは悟った。だが、それが眠れる魔道師を目覚めさせることになるとは……。『夜の写本師』『魔道師の月』で話題沸騰の著者の第三長編。解説=金原瑞人」

  • 馴染んだ翻訳物を読んでる感覚だった。これからも乾石さん 追いかけるだろう。

  • イザーカトきょうだい喧嘩二回戦

    一回戦のほうが派手だったのでは?
    地味でやっつけ仕事な二回戦でし
    ザナザ好きだわ

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著者プロフィール

山形県生まれ。山形大学卒業。1999年、教育総研ファンタジー大賞を受賞。『夜の写本師』からはじまる〈オーリエラントの魔道師〉シリーズをはじめ、緻密かつスケールの大きい物語世界を生み出すハイ・ファンタジーの書き手として、読者から絶大な支持を集める。他の著書に「紐結びの魔道師」3部作(東京創元社)、『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川文庫)、『闇の虹水晶』(創元推理文庫)など。

「2019年 『炎のタペストリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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