三幕の殺意 (創元クライム・クラブ)

著者 :
  • 東京創元社
3.24
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (257ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025267

感想・レビュー・書評

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  • いわゆる雪の山荘もの。

    尾瀬の山小屋の離れに住む男が殺され、山小屋の客やスタッフたちが雪で閉じ込められる中、犯人探しが始まる。
    しかしこの被害者、よくぞここまでというくらい様々な人たちの恨みを買っている。恐喝あり詐欺あり、苛めやからかいあり。
    客たちの多くは被害者に恨みや憎しみを持っていて、動機だけで言えば誰が犯人でもおかしくない。さらに読み進むに連れて被害者との関係が明らかになる者も出てくるし、何と探偵役の刑事まで実は被害者に何らかの弱味を握られていた様子。つまり関係者全員容疑者という設定だ。

    ここまで被害者のキャラクターが酷いと犯人探しなんてしなくても良いんじゃ…と思ったりするのだが、法的なことは置いておいてもミステリーとしてははっきりさせないわけにはいかない。

    図解がいくつも出てくるが、そこはトリックには関係ない。アリバイ崩しがメインだが、昭和四十年の設定なので出来ること。同時にこれなら誰がやっても良いのでは?とも思ったりもする。しかしそれよりブラックジョークのような結末が印象に残った。

    結局この被害者は何が楽しくてこんなことを繰り返していたのか。人をいたぶって苦しんだり困ったりする姿を見るのが楽しかったのか。

    解説にあるもう一つのエピローグはそのブラックジョークを膨らませた形でなかなか面白かった。だが人によっては蛇足と映るかも知れない。

  • 雪の山荘もの。一人の悪人に動機をもった人間が、集まった上でのフーダニット。どんどん隠された動機がわかってくるところも面白い。真犯人の動機が一番無意味というか無価値だったところも面白い。謎の男の設定はいまいちぴんとこなかった

  • おもしろかった。

  • いちおうこのカテゴリに入れるものは、「クローズド・サークル」で検索してヒットした作品に限定している。よって、けっして私の個人的予断で先走っているわけではないのだが…それにしても毎度毎度の、吹雪の山荘で殺人が起こる「だけの」ミステリである。
    それぞれに赤の他人(?)である数人が集う山荘が雪に降り込められ、外界と途絶した中で嫌われ者のおっさんが殺される。「犯人はこの中にいる」が、しかし「次は私が殺される…!?」はない。個人的には後者がないものをクローズド・サークルと呼びたくはないのだが、まあそんな次第でしかたがない。

    さて、「クローズド・サークル」という枠というか期待を外せば、普通に楽しめる一篇のミステリである。著者は高齢で、昭和40年という舞台設定なのに2008年刊の新作。「?」と思ったが、原型は昭和42年に書かれた中篇らしい。著者は当時の尾瀬で作中人物と同じくバイト経験があるらしく、そのへんの臨場感はばっちり。今にして読むと隔世の感がある「時代の匂い」が興味深い。それを除けば手堅い佳品なのだが、ラスト3行でやられた。
    なお、巻末の評だけは読んではならない。本編と、著者によるあとがきで充分である。ネタを割るのみならず、上記ラスト3行の余韻をめちゃくちゃにする、最低最悪の批評である。

    2016/2/28~3/1読了

  • タイトルから連想した『三幕の殺人』とは全く関係ありませんでしたね。佳多山大地氏のあとがきのツッコミに笑った。被害者が広く浅くの才能と知識の持ち主だという設定が生きていた。

  • 雪の降り積もる密室の山の旅館で起こる殺人事件。
    『模倣の殺意』に続く二冊目の中町作品読破。

    中後半からのスピード感やエピローグ最後三行の「ど、どひゃ〜」とため息が出る感じは非常に癖になる。中町氏は叙述トリックを得意とするとあったが、本作は「読者のミスリードを誘う」...程ではない?

    ミステリー初心者としては、登場者の一挙手一投足を見るだけでなく、起こっている出来事の"仕組み(=仕掛け)"までもっとよく目を凝らさなければなぁと学ばされる作品でした。かなり面白かった。

  • 作者の言葉の付いた帯を読んで最後の三行に期待していたのだが、肩透かしを食った感が今も拭えない。実に皮肉な結末で、解説で蛇足的に提供されるエピローグと合わせるととても面白いのは間違いないが、期待していたどんでん返しと少しベクトルがずれていた感じがする。初冬の尾瀬の山小屋で雪に閉じ込められた晩、殺人が発生すると言う作中の人物が指摘している通りベタな展開。だからこそ最後の三行に期待していたのだが・・・作者で少しハードルが上がっていたかもしれない。決してつまらないということはないと最後に繰り返し書いておく。

  • 「湖畔に死す」を改稿・改題

  • 複雑に入り乱れた人間関係と、それを傍観する謎の人物。犯人は一体誰なのか?……というより、誰が犯人でもおかしくないほど動機がわんさか。どうあってもこの人殺されてますよね(苦笑)。
    真犯人とその動機、そしてその裏に隠された真相には絶句。つまりこの殺人の動機ってのは……! うわー、後味悪いなあ。でもこういうの好きだけど(笑)。

  • 面白かったです。堪能できました。本格物。おいらの推理では犯人は見抜けませんでした。最後も驚きでした。脱帽です。

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著者プロフィール

1935年群馬県生まれ。早稲田大学文学部卒業。 66年に「闇の顔」で第1回双葉推理賞候補になる。『新人賞殺人事件』(後に『模倣の殺意』に改題)で単行本デビュー。叙述トリックを得意とし、『空白の殺意』『三幕の殺意』『天啓の殺意』などの著作がある。2009年逝去。

「2022年 『死の湖畔 Murder by The Lake 三部作#2 告発(accusation) 十和田湖・夏の日の悲劇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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