名探偵の証明

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488025458

作品紹介・あらすじ

かつて一世を風靡した名探偵が、現代のアイドル探偵とともに再起をかける。“老い”という人間の宿命を、2人の名探偵を通じて活写する、第23回鮎川哲也賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • '22年8月13日、Amazon audibleにて、聴き終えました。市川哲也さんの小説、初体験です。

    とても、面白かったです。楽しめました!

    でも…いわゆる「本格」としては、どうかなぁ…と思う点も。
    僕には、本作のトリックは、ちゃっちいなぁ、と思えました。いわゆる、「騙される快感」は、感じませんでした。
    主人公(と、僕には思えましたが)、屋敷探偵の、「名探偵」としての生き様を楽しむ小説かな、なんて感じました。でも、「ハードボイルド」じゃないしなぁ…。
    あと、知らずに読み始めましたが、どうやらシリーズ物らしく、主人公は蜜柑花子?その点も、まあ、本作の面白さとは関係無いかもしれませんが…僕には「へ?」って感じです。

    要は、「ちょっと残念!」感が┐(´ー`)┌
    でも、蜜柑さんのキャラ設定も素敵で、面白かったんだけどಥ‿ಥ

    次作も、audibleにアップされるか、眼の不調が解消されたら、是非読んでみたいと思います!

  • 冒頭からいきなり解決編が始まるが、あまりにも稚拙でビックリ、と思えばそれはただの導入で…。

    1人の名探偵の凋落・再生をもう1人の若い名探偵との協同作業を通じて描く。なので、単に孤島に閉じ込められて…などではなく、いくつもの短編を連ねたような構成で主人公の一人称で物語が語られて行く。
    これ自体変わった構成で、ラストは余韻があって悪くない。

    一方で、再起を図る主人公の自己疑問などの心情吐露の文章が長くてウンザリさせられるし、話自体が無駄な描写が多くて退屈するシーンが多い。何より会話のシーンが変で、主体や文体がおかしいところが散見される。

    デビュー作で仕方ないかもしれないし、シリーズ化されているようなので、今後の作品に期待。

  • 胸がいっぱい。設定も面白かったし、過程も面白かった、キャラクターも超魅力的だし、エンドも予想付かなかったけど、それらよりも人の描き方が一番印象的だった。

    かつての栄光があったからこそ、能力の衰えを恐れ、思うように行動できなくなってしまった屋敷。憧れの存在を目の前にして、その人を越えたくないと行動した蜜柑。正しいことをしてきたのに、報われず憎しみの感情に蝕まれた竜人。
    結局悪いのは、秀でた人を目の敵にする社会なのにというやり場のない感情が込み上げてきた。

    屋敷が探偵を続けると決意表明したあとの展開は、社会の理不尽さと残酷さを描き、それを見てしまった若い探偵は今後どうなるんだろう。

  • 名探偵はいついかな時でも名探偵であるべしΣ(°_°)カッ(ただし叙述物は除く←)という不文律が好事家の中では大前提としてあると思うんですが、今作はその前提を軽々と越えてくれました。名探偵が、まさかの二番手に甘んじるという衝撃の問題作(笑)。

    【かつて連戦連勝だった名探偵が、第一線を退いて燻っている】上に、そんな元・名探偵に追い打ちをかけるように、【現代のアイドル】が現れます。この現代探偵のキャラクタが、今時っぽいですね〜( ^ω^ )何となく、この2人の対立の構図がそのまま【本格】対【新本格】の過渡的現象にも置換できるような気がしました。主にキャラクタの部分で。

    肝心のミステリのトリックは、再三に渡って伏線を張ったり、アイドル探偵が意味深な示唆をしてくれたりだったので、私でも元名探偵に先んじて指摘できました。
    ハッキリ言ってしまうと、ミステリ部分だけでなくストーリー展開にも粗が目立つし、ビターな食感のエピローグも「そんな決着を付ける必要があったのか」首を傾げざるを得ない蛇足感が拭えません。

    ですが、「皆を集めてさてと言い」終わった後の探偵の後日談に焦点を当てたことが、今作の最大の特徴であり魅力でもあるのかなあとも思います。
    自身の限界を悟って引退を決意した元名探偵が、それでも己の存在意義を「探偵する」ことに見出さざるを得ないのだと覚悟を決める契機となった、エレベーター中で起こった事件。
    名探偵の存在が事件を招くのではなく、起こる事件が須く名探偵のいる空間で起こるのだということを、私達読者はもちろん、名探偵自身にも改めて思い出させる作品です。
    ……いや、でも、コ○ン君はどこにもお出かけするべきじゃないとは思うよ、うん(笑)。



    かつて100%の解決率を誇った名探偵・屋敷啓次郎。1980年代の新本格時代を作った彼も、現在は老いてひっそりと余生を過ごしていた。
    ところがある日、そんな彼の元をかつての相棒が訪ねてくる。ある一家に届いた脅迫状を巡り、現代の名探偵・蜜柑花子と対決することになったのだが…

  •  80年代に一世を風靡し、新本格ブームの火付け役となった名探偵・屋敷啓次郎。しかし、30年余りが過ぎて還暦を迎えた今は、ただの老人でしかなかった。
     そんな屋敷の元へ、かつての相棒だった元刑事の武富が事件を持ち込んできた。今をときめく名探偵・蜜柑花子を別荘へ呼べという脅迫状が、資産家に届いたのだ。
     名探偵として返り咲こうと、屋敷は蜜柑と共に犯行を阻止するべく別荘の警戒に当たる。だが、資産家の息子が密室内で殺されてしまい……。


     図書館本。
     表紙にポップなおねーちゃんがババーン!と載っているが、主役はこの人ではありません、完全に脇役。準主役ですらない。
     活躍するのはオッサン、もといオジーサンである。今時の60代前半をあまり老人扱いしたくはないんだけども。

     冒頭のベッタベタな“安っぽい”本格風のノリは読んでいて疲れた。場面が現代に移ってからは、ハードボイルドと本格が混ざったような感じに変わる。
     老いた探偵がもう一花咲かせようと奮闘する話はこれまでにもあり、さほど目新しくは感じなかった。

     過去と現在の名探偵の競演というのは面白そうに思ったのだが、現在の探偵・蜜柑花子の扱いがなんとも……。いなくてもストーリーが成立するんじゃないだろうか。

     肝心の事件の方は……これってアレじゃないの?と感じた読者も多かったのではないだろうか。“アレ”なら登場人物の言動やら密室トリックやら、無理なく説明がつくんだもの。
     そこから更に一捻りあるのだが、“アレ”を疑った時点で興味が薄れてしまった。真相通りのことって、バレずにやれるものなのかねえ?

     それなりに面白く読めるが、新しい意外性は無かったかな。
     頑張る高年や、マイルドなハードボイルド調が好きな人なら楽しめるんじゃないだろうか。

  • 探偵というのは生き方そのものである。本書に登場する探偵はそういった生き方に囚われている。輝く者がいればその陰に隠れてしまう者もいる。
    展開が単調で今ひとつ面白みがない、といったところが痛い点だが、キャラクターとして、人間ドラマとしては悪くない。なかなかに惜しい作品だった。

  • 2021.1.23 読了

    かつて一世風靡した 名探偵 屋敷啓次郎と
    相棒の刑事 竜人(たつひと)、
    新進気鋭の若い名探偵 蜜柑花子。
    世代交代と 新たな事件と
    その裏に隠れた謎。

    面白かったけど、なんか ポンポンと
    読み進められなかった。。。
    なんでだろ?

  • 最初から華やかな謎解きシーン。
    名探偵・屋敷啓次郎。
    ミステリはこのシーンを読みたくて読んでいるのに最初からとは!と先が気になる幕開け。
    そして続く場面に愕然とする。
    「名探偵」が実在したら、こうなんだろうか。
    科学捜査の進歩、加齢による頭脳の疲弊。
    情報社会からの批判。
    最近の「名探偵」はある程度地位があるのは、無名だと警察に相手にされないからか。教授とか警察上層部の身内とか。
    視点は新しいけど、切なく苦く気分が沈む展開。
    最後はハッピーエンドなのかも、彼にとっては。

    それにしても、事件のトリックがチープで残念。
    おおお!というトリックが織り交ぜてあれば、もっと名探偵っぽかったのにな。

  • 第23回鮎川哲也賞受賞作、2014本格ミステリ・ベスト10国内編第17位の作品。
    いつもの事ながらジャケ買いっぽい読み方で読了

    非常に興味深い作品。
    本格派と呼ばれる推理小説に登場する「名探偵」。事件解決を協力する刑事や、彼を支える美人秘書、密室やアリバイといった名探偵を彩る舞台に名探偵の謎解き……ミステリファンにはお馴染みのプロローグにニヤリとさせられながらページをめくると、名探偵は老い、事件で負った怪我で完全に自信をなくしてしまい、かつての秘書の妻とは別居状態で引きこもりに。テレビではアイドル探偵・蜜柑花子がちやほやとされている。

    完全無欠の名探偵を、ただの”人”に引き落とし、そして復活させようとする展開が面白い。
    名探偵に情報を流す刑事の悲哀、名探偵が「なぜか」事件に遭遇し続けること、無理のあるトリックなど推理小説を揶揄しながらも、その分野が好きなんだなという著者の気持ちが覗き見ることが出来て本当に楽しい作品でした。

    トリックが弱いとか、蜜柑花子のキャラが弱いとか色々と言われているようですが、物語の閉じ方も含めて結構好きですけどね。
    調べてみると、受賞後の2作目が出ているようなので、今度探して読んでみようと思います。

  • 鮎川賞との事だったが、疑問がある。
    探偵小説は免罪符では無い筈だ。読者と共に推理に帰結していく面白さが命だと思います。この小説は探偵を天秤に掛けて、読者を欺きかけない危惧を持っている。探偵に新旧の差も、年齢の差も存在しない。在るのは、本格推理の妙味だけだと思います。作者の真意とは裏腹の手法で作品が出来たと思いたい。で無ければ、本格は一度死ななければ成らなくなる。まだその時期は早いと想うのは私一人か?

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