沈黙の書

著者 :
  • 東京創元社
4.03
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本棚登録 : 276
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027308

作品紹介・あらすじ

天と地のあいだ、オルリアエントの激動の時代と、戦と絶望、荒廃に満ちたその時代を生きた少年〈風の息子〉の運命を描く人気ファンタジー〈オーリエラントシリーズ〉最新刊。

感想・レビュー・書評

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  • 物語の年代は逆になるが、『夜の写本師』から本作までの「オーリエラントシリーズ」完結。この世界の神話にあたるような印象だった。地形が変わり、言葉が、「沈黙の書」から、皆に理解されていくための書物になる。それは人々に行きわたっても、言霊の力は変わらないだろう。争いは避けられないが、その後に生を芽ぶかせることを学ぶことに希望を見出していく。そんな世界の循環は、物語の形を取り、読者の現実世界と同じもの。死んだ者は、大地に還ったか、空気に溶け込んだか。「またいつか姿は別のものであれ、また会える」著者の世界での死生観は、生死という二元論ではなくて、自然に還り何ものかになってまた生きるという循環でもあり、主人公が最後に出会う少年に感じるように、転生をも含んだおおらかなもの。
     決して滅びることのない太古の闇の澱「暗黒の種」は、風と月光にくるまれて封印された。
    オルリアルラント(天と地のあいだ)から、オーリエラント(言の葉のあまねく広がる大地・言葉の満てる大地)へと時代が移っていく。

  • オーリエラントシリーズ。
    夜の写本師より時代をさかのぼるためだろうか、どこか言い伝えを聞かせてもらっているような語り口。

    星を背骨で支える竜とか、
    海へ還りたいと泣き続けている巨人とか。
    やっぱりちょっと、ゲド戦記と雰囲気も似ているな、と思った。

    希望が星となり世界へ散り散りに飛んでいくシーンはとてもきれいで目映い。
    晴れた日の冬の夜空を見上げ、星のまたたきにであうたびに、わたしはそれを思い出す。

    言葉の力。
    絶望も欲望も、己の裡に消えてなくならないけれど、
    それと同じように、
    希望もまた、潰えることはないのだと。

  • オーリエラント(言葉の満てる大地)が、オルリアルラント(天と地のあいだ)だった頃の話。

    「風の息子」ヴェリルは、白狐から差し出された品物の中で“巻物<沈黙の書>”を選んだ時から、大きな運命を背負う事になります。
    時は火の時代、殺戮や略奪がはびこる混沌とした、まさに“パンドラの箱”の中身のような世界で、ヴェリルは利用され、裏切りに合い、辛い経験を余儀なくされます。
    この世界を安寧なものに導く為、ヴェリルは、竜から<星のかけら>を受け入れます。
    そして、パンドラの箱もそうだったように、最後に残った光=希望。沈黙の書もそれを示していました。。。

    物語の壮大さに思わずため息。。。乾石さんは流石です!

  • あいかわらず表紙が美麗。明日に飛ぶカラスの昔語りに登場の面々。風の息子、が山で竜に出会った時点で、あ、表紙の、と気づく。よくみると小鳥が涙を流している。かわいい。

    今回は風。さすが乾石さん、風といっても千差万別、その色の多種多様さに目を見張る。ほんっとこの人の描く世界の彩は、私にとっていつも新しい。大っ好きだっ!!
    あと言葉。今回はこれでもかっというほどに、不思議な名前がどんどんでてきて、それがまた、その人の能力をも意味しているのだが、村の豊かな暮らしぶりともあいまって、「風森村」の風景はとても幸せな気持ちにさせてくれた。
    まあ、冒頭に火の時代の予言あり、なため、この村もいつかは・・・、とゆー思いもありつつ読んだわけだが・・・。
    そうそう、預言者。火の時代かあ。その火を、くい止めることは、できないのだなあ。そこはちょっと哀しい。
    灰となったものの中から生まれくるものはあるとしても。
    火の時代の止めとして襲ってきたのが、蛮族、とゆー流れになるほどなあっと。敵の敵は味方ってなもんで、
    その後の大円団、とまではいかなくとも、それなりの安寧にほっとする。そして言葉、ですね。
    蛮族を退かせたのも少年の発した言葉から、とゆーのが
    ひっじょうにうまいなっと。いやーあのへんからのラストへの流れは気持ちよかったーーー。
    そしてなんといっても、弟が生きてたのがメッチャ嬉しかった~~~。いやー涙でそうになったぞ。
    これはコンスル帝国建国前、のお話なわけだから、
    あの閉じ込められた黒いやつがまたでてきて、魔導士の月、とかに話が続いていくってことなんだろうなあ。
    うわあ、もう、この世界が繋がっていく感じがなんともいえないわあ。やっぱこれは全部そろえるべきか。
    ああ、文庫にするか単行本にするか、それが問題。
    やっぱ単行本のイラストで文庫化にしてほしかった~~~!!

  • この本は「沈黙の書」だったのか!!
    と遅まきながら気づく。表紙の絵の隅にある4つの絵は何となく分かったが、中央のひっくり返る生き物は一体何なのか。頭をひねりながら、読み進めていくうちに、最後の方になってやっと理解。
    この本をとめていたのは、この生き物だった!よくよく見れば、ちゃんと留め金としてつながっている。そしてこれもオーリエラントのために一役かっているところがいい。
    そしてやっぱり好きなのは、太古の闇!!絶対的な悪、悪の中の悪!!絶対滅びたりはしない闇だけど、希望もまた滅びることはない。そこもいい。

  • 装丁が美しい
    オーリエラントが生まれた話

  • 火の時代、絶望の時代が近づいている。戦がはじまる。天と地のあいだ、オーリエラント 激動の時代に生をうけた“風の息子”。平和を求めながらも、力を持つがゆえに否応なく時代の波に呑みこまれていく。若き魔道師の、戦いと成長の物語。“オーリエラントの魔道師”シリーズ。

  • 夜の写本師シリーズ改めオーリエラントの魔導師シリーズ第5弾!...かなり時を遡った時代のお話?ちょっと難解化してきたゾ。なのに最後の締めがチャンチャン的でうーん、ちょっと残念だったか。シリーズの中で世界観は確立してるので大風呂敷を広げなくても、世界の片隅の物語を丁寧に描いてもらえたら楽しい。

  • 風森村に生まれたヴェリルは風の息子と言われるように風を操ることができた。村の子供たちは他には雨の娘という天候を操るムベル、山をまたぐウサギという素早くうごくドゥーラ、などがいた。みんな不思議な力をもっていた。平和な村も外の世界の争いに巻き込まれ、不思議な力を持った村の子供たちは、エトルリウスという男が引き連れて訓練をすると言って連れて行った。王のための魔導師や兵士にするつもりのようだ。オーリエラントの激動の時代を描く。

  • 61:オーリエラントシリーズの最新作。年表としては、コンスル帝国が生まれる前(作中にちょっとコンスル帝国の前身だよ、みたいな仄めかしがありましたが)、自然の息吹をごく当たり前に人々が受け継いでいるという神話時代のお話。
    濃厚で色鮮やかな自然、魔法、超自然描写に今回もうっとりめろめろ。
    このシリーズは、邪悪な存在を完全に排除してしまわないのが素敵。邪悪なものを含めてのゆたかさだと肯定する懐の広さに惹かれます。
    「魔道士の月」「太陽の石」へとつながるのかなーと思わせる、「太古からの闇」だから、排除しようにもできないのかもしれませんね。
    今作はより高らかに生命賛歌がうたわれていて、ちょっと涙ぐんだりもしてしまいました。

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著者プロフィール

山形県生まれ。山形大学卒業。1999年、教育総研ファンタジー大賞を受賞。『夜の写本師』からはじまる〈オーリエラントの魔道師〉シリーズをはじめ、緻密かつスケールの大きい物語世界を生み出すハイ・ファンタジーの書き手として、読者から絶大な支持を集める。他の著書に「紐結びの魔道師」3部作(東京創元社)、『竜鏡の占人 リオランの鏡』(角川文庫)、『闇の虹水晶』(創元推理文庫)など。

「2019年 『炎のタペストリー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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