何が困るかって

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 144
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027445

作品紹介・あらすじ

切なかったり、幸せだったり、恐ろしかったり、美しかったり──あらゆる物語の楽しみが、ここにあります。待望のショートストーリー集!

感想・レビュー・書評

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  • 「和菓子のアン」シリーズのほんわかほのぼの系とは真逆の、ブラックユーモアたっぷりの短編集。
    まさに坂木司版「世にも奇妙な物語」。
    ひとつひとつの話が短いので、読みやすかった。
    少しゾクッとしたい方はぜひ。

  • 正直、この本を好まない人は沢山いると思う。

    もともと坂木司さんのハートフルな作品が大好きだ。小学生の頃にデビュー作を読んだときには「こんなにもハマった作者は東野圭吾ぶりだ」などと非常に感動、感心したものだ。(偉そうだが、あの頃は子供だったので許して欲しい)

    対して本書はそういうハートフルな作品たちと比べてまずタイトルから違和感と不安があった。それでずっと敬遠していたのだが、予想は当たり。読み始めてすぐ大人になってから手に取って正解だったと感じた。世界観が、暗い。やり過ぎではないかというくらい、黒い。ことばの端々からはある種の性格の悪さ、気持ちの悪さが感じられる。

    こういうストーリーが底に沈んでいるような小説は一歩引いて読める所為だろうか、逆に作者のテクニックや社会に対する目線がありありと浮かび上がって見えるものだ。坂木司さんならではの題材選びやコトバ選び、トリック、構成力……等々に注目すれば、意外にもあっさりと読み切ることができた。

    いや。作者が坂木さんだから、読めたと言うべきかもしれない。

    決して「和菓子」のように甘くはないが——。これはこれでオイシイ一冊だった。

  • 18の短編集。
    意地悪、鬱憤、鬱屈、孤独、、、人間の影の部分が詰め込まれていて、どの話にも不気味さや不穏な空気が漂う。読後は何とも言えず、落ち込んだ気分になってしまった。
    極端な話もあるけれど、実際には誰しもが似たような感情を経験していたり、結構近くに転がっている現実なのだと思う。

    著者の作品を読むようになったきっかけは、アンシリーズが最初で、その後ホリデーシリーズ、先生と僕シリーズと続いた。どれも登場人物の愛らしさや謎解きの高揚感が魅力的で、この短編集にも同じような要素を期待していたのだけど、毛色が全く違って驚いた。

    ただ、上記に挙げたシリーズの中には、この短編集のような人間の影の部分がしっかりちりばめられている。むしろそれがなければ、その面白さは半減してしまうのだろう。

    今後も著者の作品を読む予定の自分にとっては、読む価値があったと思う。
    再読するかどうかはまた別の話だが、、、。

  •  坂木司作品の中でも異色作中の異色作、『短劇』が帰ってきた。黒坂木と称されたあの作品群よりは控え目だが、それでも十分にブラックな作品が揃っている。

     「いじわるゲーム」。似たことをしている人が、実際いそう…。「怖い話」。オチのない怪談はたちが悪い…。「キグルミ星人」。中の人なんていないんですっ! 「勝負」。これだけやけに正々堂々としていて、何だかさわやかじゃないか。

    「カフェの風景」は傑作。坂木さんご自身、日常のミステリーを多数書いているが、実際の日常なんてこんなもんだよね。「入眠」。えーと、あの、そういうことですかね? 「ぶつり」。まあ、大体オチの予想はできたが…。「ライブ感」もネット時代を見事に切り取った傑作。あの問題を取り入れた社会性も評価したい。

     「ふうん」。わずか3pのありがちな話。ふうん…で終わりかよっ! 昔の「都市伝説」なんてかわいいもんだったよねと、デマが瞬く間に拡散するネット時代に思う。「洗面台」。どういうオチかと思えば、すっかり騙されました。洗面台冥利に尽きるだろう。「ちょん」。悪趣味というか何というか…こんな上司は嫌だ。

     「もうすぐ五時」。これまた日常の一頁。どことなく微笑ましく…ねえよっ! 「鍵のかからない部屋」。意味はわかるけど、迂闊にコメントはできんでしょ、これ…。「何が困るかって」。意味不明すぎてコメントできん…。「リーフ」。親子関係の難しさ。親の心子知らず、か。うーむ、何だか考えさせられるじゃないか…。

     最後は作り方が2編。「仏さまの作り方」。このご時世に、贅沢な悩みというか、ふざけんなと言いたくなるだろう。そんな日本人への皮肉か? 「神様の作り方」。信仰心はなくても群衆を苦にせず初詣に行く。そんな日本人への皮肉か?

     以上全18編、一部例外はあるものの、よくもまあ年の瀬にこんな作品ばかり集めたものである。『短劇』ほど弾けてはいないが、「あるある」感が強い作品が多い。とりわけ、ネット時代への風刺を感じるのは気のせいだろうか。

     あとがきを読むと、本来こういう話は得意ではないのだろう。坂木司さんが書くから意外性があるわけで。こういうのがまた読めるのはいつか。

  • 和菓子のアン・シンデレラティース・女子的生活以来なので、いつも明るくて軽快な話を書いてる作家だと思ってた。だからまず、表紙が黒いことにびっくりした。そういう雰囲気の話も書くんだ!?

    印象に残ってるのは「ぶつり」。めっちゃ怖!!!話しかけてる相手を殺すのかと思ったらまさかの展開でそんな…そんなことある!?
    「都市伝説」のサイコパス加減もすごかった。動物ネタが多いので、数ページの短編なのに途中で読むのやめるか悩んだほどやばかった。
    でもやっぱ「いじわるゲーム」がいちばん知ってる坂木司の味がしたかな。

  • なんとも気味の悪いお話ばかり。
    唯一いいなと感じたのはリーフ。それでも、他の作品と比べてだから、このお話だけ読んだら嫌な気持ちが残るだろうな。
    和菓子のアンシリーズから入り、女子的生活で大好きになったと思ったけど、坂木司さんてこういうお話も書くんだ。ふうん。
    やっぱり好きなのは作品であって、作家さんではないな、と強く感じた一冊だった。
    歌手もそうだけど、その人だから無条件に好き、ってわけではない。自分の好きなものがはっきりと分かって良かった。

  • なんだか少し不思議だったり、ぞっとしたり、びっくりしたりする作品を集めた短編集(ショートショート?)
    なんとなく坂木さんはあたたかくて優しい作品が多いイメージだったので、新しい顔を見せてもらった気分。
    一本目の「いじわるゲーム」は大好き。
    その他はそれなりだったり、あまり好きではなかったり…

    ただ、他の作品では「書きすぎじゃない?」と感じることも多いくらい丁寧に説明がある作家さんと思っていましたが、ちょっと謎を残すくらいで筆を置かれた作品たちは好印象でした。

  • 坂木司さんは本当に振り幅が広いなあといつも驚いてしまうのだけど、でもやっぱり読んでいくとほっこりもひんやりもぞわっとも全部両立されていたりして、「私の知っている坂木司さんだ…!」と安心するなどしました。

    日々の生活に潜んだ謎とか闇とか悪意とか、それをほっこりにもひんやりにも味付けできるところが本当にすきだなあ

    ちなみに、『ぜんぶ困ります』の何に引っかかるのか私は気づけなかったのですが、何かに引っかかった方がいたらぜひ私に教えてほしいです。切実に。

    …もしかして、「何に引っかかっているのか分からない」ということに困っていることこそが、作者の手のひらで転がっているということなのでしょうか。

    とりあえず、お話を忘れないようにタイトルだけのせておこう

    いじわるゲーム
    怖い話
    キグルミ星人
    勝負
    カフェの風景
    入眠
    ぶつり
    ライブ感
    ふうん
    都市伝説
    洗面台
    ちょん
    もうすぐ五時
    鍵のかからない部屋
    何が困るかって
    リーフ
    仏様の作り方
    神様の作り方
    ぜんぶ困ります

  • 18篇からなるショートショート集。
    坂木司さんの穏やかな日常系ミステリを読むつもりで手に取ったので、ブラックな物語が延々と続くので戸惑った。
    一つ一つの物語は短く、さらっと読めてしまう読みやすさでした。

  • 初めて読んだ坂木作品。
    あとがきまでおもしろかった。
    ちょっと不思議だったり、怖かったり。
    男なのか女なのか騙されたり。
    なかにはどういうこと?っていうのもあったり。

    18話も入ってます。
    ちょっと時間のあるときに読めちゃうね。

    好きなのは「ふうん」「仏さまの作り方」。
    話は短いけどそこからいろいろ想像できるのがおろしろいね。
    想像が追い付かないものもあったけど、満足な一冊。

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著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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