王とサーカス

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著者 : 米澤穂信
  • 東京創元社 (2015年7月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488027513

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王とサーカスの感想・レビュー・書評

  • 舞台設定がすごい!
    ネパール、カトマンズ。王族殺人事件。
    最初は創作の世界のお話だと思っていたら、実際にこんな事件があったなんて。それだけでも驚き。
    目の付けどころが違うな~。

    外国の王族殺人事件を題材にするなんて大風呂敷広げちゃって大丈夫?なんてのは全くの杞憂だった。
    当たり前と言えば当たり前なんだけれど、それはあくまでも本筋へのトリガーであって王族事件の真相を解明するわけではないのね(^_^;)

    ミステリーとしては割とシンプルなストーリーでオチも想像がつく。しかし舞台設定も面白いし、日本人にはなじみのない国の世界情勢、ジャーナリズムのあり方など色んな角度から考えさせられて奥の深い作品になっている。

    初読みの作家さんだったけれど、面白かった!
    話題作となった「満願」をはじめ他の作品も是非読んでみたい。

  • 買う前に、Amazonで書評をつらつらと読んだら、イマイチみたいな書き込みをしている方が意外に多くて心配だったけれど、読み始めればそんなの吹っ飛んだ。
    個人的にはとても面白くて、好きな作品だ。

    カトマンズの街並みや喧騒、時々出てくるチヤの味まで、読み手となるこちら側にリアリティがあって本当に現地にいるような錯覚になれた。

    史実とフィクションの掛け合いがとっても素晴らしく、結末はビター。でもこの物語の本筋はフリーのジャーナリスト 太刀洗 万智が遭遇する出来事を通して、報道する側とそれを受け取る大衆へのアンチテーゼなんだと感じる(詳細はネタばれになるので、ここでは伏せておく)
    私はこの本の14章"ハゲワシと少女"に、その全てが集約されているように思えた。

    特にここ数年、スマホの普及率やSNSの躍進によってファストフード感覚で情報を手にできて、何なら 自分から発信することも、いとも簡単に出来るようになった。
    それが当たり前になって麻痺しかけている今、物語の内容が持つ本当の意味は大きい。

  • ベルーフ(大刀洗)シリーズ
    新聞社を辞めた太刀洗万智はフリーとなり、海外旅行特集の取材のためネパールに。まもなく、ネパール王族殺人事件(ナラヤヒンティ王宮事件)が起こる。情報を集めようと取材を開始するが、彼女と会った王宮警備の軍人が何者かに殺害される・・・
    実際に起こった事件が舞台となっていることに途中まで気付かず、当初は真相を暴くミステリーかと思っていた。ジャーナリズムの正義とは何なのか?マスコミは誰のために何を伝えるのか?ミステリー仕立てに進むが、オチというか動機はいい意味で裏切られた。

  • 「このミステリーがすごい」2016年度第1位。前年「満願」に続く2連覇は日本人作家として初。米澤氏を名実ともにトップミステリ作家へ押し上げた記念作と言えよう。

    結論から言えば大傑作であり、氏の創作の歴史の現時点での集大成とも感じられた。このミス1位に文句はつけれれない。

    読み始める前に、ある情報を得ていた。今作の主人公フリージャーナリストの太刀洗万智が初めて世に出た「さよなら妖精」が、wikiによると氏の知名度を上げた「古典部シリーズ」の完結編として構想されていた、ということ。これには驚くとともに納得もしたのだ。

    「古典部」で描かれる青春の煌きと「さよなら妖精」の青春の挫折は、相容れないながらも、その存在は表裏一体であり反転しうるモノであると考える。奉太郎の進化形とも、千反田の進化形とも思える「太刀洗」が10年以上の時を経て、どのような存在感を持って読者の前に現われたのか?個人的注視ポイントである。

    物語の背景には「ネパール王族殺害事件」というセンセーショナル直下の、2001年のカトマンズが選ばれた。フリージャーナリストとして「取材」という行為を通して事件に臨む太刀洗の前に、新たな殺人事件が発生し・・・

    多くの登場人物がいるわけでもなく、適切な個性と適切な伏線が微妙に絡まり、読了してから「散らされたヒント」にも気づく。ミステリとしての構成は米澤氏が守り続けている本格派と言える。僅かな時間の中で太刀洗が辿り着いた真相は、読者をも唸らせ、ヒロイン太刀洗にとっても痛切なものであった。

    今作が優れていると思える点は、より一層洗練されたミステリ構造や伏線等でなく、ジャーナリスト太刀洗が苦悩し、何度も反芻する「ジャーナリズム」について、大きくページを割き、彼女の行動と心象を常に「ジャーナリストとしての自分の行動原理」に照らし合わせて、読者に語りかけている点である。と思う。

    米澤氏の今まで見られなかった社会派としての側面が、異邦の地での物語と融合し開花したと思える。ヒロイン太刀洗の人物造詣が、古典部の発展形として生まれた「さよなら妖精」を出自としていることからも、米澤氏の中で、どのような紆余曲折を経て編み出されたのか?興味深く思う。

    太刀洗万智は米澤氏の新たなシリーズの主人公であり、次作短編集­「真実の10メートル手前」は上梓されている。これも非常に楽しみである。

    ますます活動が幅広くなる米澤氏であるが「小市民シリーズ」の完結を最も待ち望んでいる。

  • 太刀洗万智が主人公の長編。
    前年の「満願」に続き、ミステリのいろいろなランキングで1位を獲得した作品です。

    2001年。
    太刀洗万智は新聞社を辞めて、初仕事。
    海外旅行特集の取材のために、ネパールの首都カトマンズへ。
    雰囲気をつかもうというゆるいスケジュールのはずで、宿で懐いてきた少年にガイドを頼んだのだが。
    突然、王宮で国王たち王族が何人も殺害される事件が起き、あっという間に異様な空気になる。
    太刀洗は、ジャーナリストとして取材しようとするが、暴動寸前の空気と報道規制に阻まれる。
    そして、取材しようとした関係者に事件が‥!

    『さよなら妖精』の出来事から10年がたち、海外のことも他人事ではないと感じている万智が遭遇した、思わぬ事件。
    報道に携わる人間として、情報をどう集め、どう発信すべきなのか?
    クールで真剣なヒロイン、太刀洗万智のこれからの生き方が問われると同時に、読んでいる人へも疑問を投げかけてきます。
    実際に起きた事件を背景にしているため、重厚感も。
    鋭い切り口と壮大なテーマが新鮮で、強い印象を残します☆

  • ミステリー作品として読むと謎解きなどはそれほどではないがヒューマンドラマとして読むと人間性を深くえぐるような鋭さがある。

    「満願」同様完成度は高い作品だと思いますが、もう少しエンタメ要素がある作品の方が好み。

    それでも他の作品も読んでみたいと思わせる作家です。

  • 誰でも
    (自分とは何者なのか?)
    フト、わからなくなる時がある。

    ここ、カトマンズに滞在している
    日本からやってきた女。
    彼女もまた、魂が抜けた線の様なシルエットしか見えず、
    (私は前作を読んでいないので特に。)
    最初、見知らぬ女の案内で
    初めて訪れる異国を巡ってでもいるかの様な旅気分でぼんやりと、ページを捲っていた。

    そんな女の二の腕を
    いきなり掴む冷たい手。

    「おい、
     この国の王が今、死んだぞ!
     殺したのは息子で
     家族も巻き添え、
     しかも自身は自殺を図ったそうだ。」
     
    そのNEWSを聞いた途端、
    彼女の体に熱い血がどっと流れた。
    (そうだ、私はジャーナリスト!)
    我に返った彼女は
    さながら目を描き入れた仏像に魂が宿るがごとく
    自分が何者であったか?に気付いた。

    なぜ、息子は王を殺した?
    さらに、家族をも殺す必要がどこにあった?
    そして
    自分の命を立つ事情とは…

    国は必死で事実を隠蔽しようとする。
    彼女は自らの身に危険が迫りつつも
    (それでも事実を暴き、
     国民に伝えるのが私の役目。)
    と、使命に燃え、ペンを握るのだが

    「一体、それは何の為だ?
     民衆とは自分の身に降りかからぬ陰惨な事件は好物だ。  
    それは、さながらサーカスでも見るようにな。
    お前らジャーナリストは
    民衆の好奇心を満たし、その見返りでただ飯を食っているだけじゃないのか?」
    と、問う者。

    更に
    ジャーナリストの存在意義に対する否定的な正論に揺らぐ彼女。

    何の罪もない市民を無残に殺す兵士を撮った写真を世界に配信し、賞賛を受けるカメラマン。
    それで戦争の悲惨さを伝えたつもりか…
    写真一枚撮ってるヒマがあれば、人の命を救えたのではないか…

    読者はジャーナリストなんかじゃない。
    が、それは
    死刑制度の賛否を問われて
    正しい答えを導き出せぬ事と同様、
    全ての人達に隣接している真っすぐな問いかけ。

    ミステリー要素も加わり、
    深い霧の中を彷徨うような物語の中にあって、
    それでも
    彼女が一歩一歩すすむべき方向を選択し、
    歩む道の後からは、柔らかい光が追いかけている様に思えた。

    正解も間違いもないこの世界で
    <正しい>を導き出すのは
    やはり人が持つ信念なんだなぁ。

    貴重なゲラ刷りの献本、ありがとうございました!

  • 大刀洗万智のフリー記者としての初仕事であり、取材すること報道することに対する意味を見つけていくネパールでの事件。ネパール王族殺害事件を題材にとりながら、それ以外のネパールの国情、そして報道による影響といった重いテーマを思いがけない事件の真相としてエンターテインメントにしている。
    17-75

  • 記者 太刀洗万智がネパールに訪れた際に遭遇した王宮虐殺事件に端を発した事件の情報源と思われる人物の謎の死の真相を追っていき、謎の死が起きた背景に太刀洗が徐々に迫っていき、記者として王宮事件と謎の死の絡みをどう正確に伝えつつ、やがて謎の死の真相にもたどり着いたときに太刀洗が事件の真相の背後にあったものを目の当たりにして何を感じたかという物語で、なかなか面白い展開で、あっという間に読了したような感じでした。
    なかなか面白いシリーズものになるのではないか?と思います!

  • ネパール王族の惨劇、不可解な軍人の放置死体、そしてその背中に刻まれたメッセージに遭遇するフリージャーナリスト大刀洗万智。彼女をして舞台は動き出す。ミステリーとしても十分堪能でき、同時に歴史的事実とフィクションを絡め報道の意義を問う社会派小説としての面も持ち合わせる。悲劇がサーカスの見世物となって世界に晒される事実に揺れ惑う万智、真実は一つでも書き手伝え手が介在すればその数だけの事実になる。何より伝えるのは誰のため、自己満足、利権、会社であるならば伝えぬことも報道。舞台の曲芸師たちの拍手喝采が聞こえそうだ。

  • 作品の舞台であるネパールに馴染みも興味もさほどなかったので、街や人々、習慣などの描写になかなか馴染めず読み進められるか最初は苦労したが、それを補って余りある太刀洗万智(主人公)の活躍とキャラクターにどんどん引き込まれた。

    タイトルの意味は途中(序盤に近い)に出てくるけど、すごくストンと落ちると言うか大きく納得するし、登場人物のキャラクターの濃さや裏表の描き方がとても興味をそそられる!
    作家の意図するままなのかもしれないけど犯人が何となくわかった状態で最後まで引っ張られるようにして読めた。

    太刀洗万智シリーズをどんどん読みたいなぁー。

  • 2001年6月1日にネパールの首都カトマンズ、ナラヤンヒティ王宮で発生したネパール王族殺害事件。別の取材でカトマンズを訪れていたフリーライター太刀洗万智は、この千載一遇のチャンスを生かしてフリーライターとしての地位を確立しようと事件の真相を追いかけるが……

    この小説で題材となっているネパール王族殺害事件は実際に起こった事件で、情報統制されたことで未だに多くの謎が残っているそうです。

    “自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ。意表を衝くようなものであれば、なお申し分ない。恐ろしい映像を見たり、記事を読んだりした者は言うだろう。考えさせられた、と。そういう娯楽なのだ。”

    自分の信じる真実を世の中に伝えるということはどういうことか。そんな問いに真摯に答えている作品でした。

  • ネパールの首都カトマンドゥにおいて実際に起こった王室内での惨殺事件を背景にした作品。
    フリーの記者太刀洗万智は、取材準備にカトマンドゥを訪れるが、その滞在中に国王夫妻をはじめとする王室メンバーが、国王の甥に射殺される事件が起こる。
    投宿するトーキョーロッジをベースに、事件の取材を始める太刀洗は、事件当時王宮内にいたかもしれない軍人とのコンタクトに成功する。
    ところが、その翌日、その軍人が射殺体で発見され、むき出しの背中には INFORMER の文字が刻まれていた.....

    前半はカトマンドゥ案内から、王家の悲劇につながり、後半はミステリー仕立てながらも、取材するものとされるもの、その影響など、ジャーナリズムとは何か?人間の素顔とは何か?という問いをつめていく作品。
    無差別殺人や、大きな天災、あるいは政治による圧力など、報道のあり方が疑問視されることが増えた世相と重なる。

    最後はサービスしすぎか .....
    声変わりもしないサガルがそこまで?と思うが、でも、y逆境は人を育てる。わからないね。。

  • 読み始めから読み終えるまで一貫したテーマは「書くとは何か」「真実を伝えるとは何か」。
    自問自答する主人公太刀洗万智と一緒に私も悩み、考えしました。

    さて、本の舞台はネパールと言う未だ開発途上の国。
    政治は腐敗し、権力は汚職と容易に親和し、危うい王制の下、麻薬や暴力や犯罪は、なんでもアリと言う猥雑で、なおかつ生命力溢れる町の雰囲気が丁寧に描かれています。読み進むうちに、まるでそこに立っているような臨場感に作中にドンドン引込まれていきます。私もいつの間にか主人公と同化して、一緒に考え動き、ハラハラドキドキ。
    ここで起きた事件自体は、不思議な謎や荒唐無稽のトリックでもなく、簡単に想像もできるし、受け入れることができるものでした。
    が、
    が、
    作者である米澤穂信さんは読者である私にカミソリのように鋭利な切っ先を向けた来た気がします。
    まさに「王とサーカス」と言うタイトルです。
    王とは「出来事」の象徴。
    サーカスとは「見えているもの裏にある哀しみ」のメタファーなのでしょうか?
    記者として書く事は興味本位で扇情的な情報ではなく、真実を書かなかければならない、伝えなければならないと凡その善人として記者は思うと想像します。
    しかし、真実を伝える事が「その事件をそのまま見殺しにしていいものか」と言う事は多分、ペンを職業にする者なら考える事でしょう。二律背反した思いの揺れ動きで記者は目の前の事柄を書いていく、その苦悩を見事に描いていました。

    しかし、
    私はこの本を読みながら、
    記者である太刀洗万智が相手にしている「多くの見えない一般読者」としての自分の立場で読み進めたのです。
    私は扇情的な記事を好まないだろうか?
    その記事の背景よりは、そこに描かれている「いま」を目にして、涙したり、驚いたり怒ったりしながら、ほんのひと時の日常のアクセサリーのように記事を読んでいるのではないか、、、と、自問自答したのです。

    記事を読む側である私自身が読者としてのリテラシー力について考えさせられる良書でした♪

  • 2001年6月1日。カトマンズ。
    ニュートーキョーロッジ202号室。

    フリーの記者・太刀洗万智は、雑誌編集部から海外旅行記事の依頼を受け、スケジュールに間があったので個人的に下調べを、とネパールに旅に出た。

    現地の物売りの少年と仲良くなったり、アメリカ人の若者に口説かれそうになったり、長期滞在の日本人の僧と知り合ったり。
    異国情緒漂う、旅行記のような始まりだ。

    しかし、王族間の大量殺人事件が勃発し、のんびりした旅行記どころではなく、国の存亡に揺れる緊迫した情勢を取材することとなる。

    アメリカの青年は言う。
    面白くなってきたのに…
    アメリカの自分の部屋でこの事件を楽しみたかった。
    今、自分は危険に近すぎる…と
    万智は、自分は記者として近くに居られたことをチャンスと思う。
    自分は情報の送り手で、彼のような受け手がいることを意識する。

    彼女の取材を拒む王宮軍人。
    今回の事件は国の恥。
    「自分に降りかかることのない惨劇は、この上もなく刺激的な娯楽だ」
    それを待っている人々の望みを叶えたくはない。
    『なぜ報じなければならないのか』
    軍人の問いに答える事が出来なかった。

    万智の前に死体が転がる。
    裸の背中に文字を刻まれた衝撃的な姿。
    良い写真が撮れた。
    これは、王宮の事件に関係するのか、しないのか。
    これを使えば非常にインパクトのある記事に仕上がると思うが…

    そして、万智を取り巻く人々の意外な秘密が明るみに出る。
    少年の、ジャーナリズムに対する激しい憎しみに、しかし、万智は、自分の居る場所を確かめるため、ここはこういう場所だ、と知らせるため、見る事、書くことをやめるつもりはないと言いきった。

    毎日、「報道」の無い日は無い。
    国民の「知る権利」を満たす、政治にかかわる重要な報道や、芸能人の下らないゴシップ。
    「今のお気持ちは~?」という、ファストフード店の店員のようなマニュアルの問いかけ。

    『何を報じないか』それが重要である、と万智は、時に立ち止まり、自分を振り返るのだ。
    ジャーナリストが皆、万智のような良心を少しでも持ってくれたらいいと思うけれど、下衆な記事を求める人々がいる限り、与える者も絶えないのだろうなと感じる。

    旅の終わりを読む時はいつも、夢から覚めて日常に還る感じ。
    読書の終わりに似ている。

  • 読了後すぐの感想は、重い。
    読後感はあんまり良くなかったけど、折に触れてシーンや台詞を思い出す。
    サガルが突きつけた現実は答えのない問いで、これから何度も思い出しては考えることになるだろうなと思った。

  • 読み始めた瞬間から、砂埃が舞い色彩が乏しく混沌としたネパールの都市カトマンズへと引きずりこまれた気分になる。
    2001年に実際に起きたネパール王族射殺事件を題材としている。
    日本人フリーライター太刀洗万智が事件を取材する中で、異国の慣れない事情や慣習や、奇妙な人間関係に翻弄されながら、時に立ち止まり、時に戸惑い、真剣に悩む姿が、そして、心の移り変わりが、丁寧に描かれていた。
    悲劇とは、どう伝えられるべきなのか?日本や世界各地で毎日のように起こる悲しい出来事、悲惨な出来事を、人はメディアを通して知り、かわいそうと思い、同情し、時に涙を流し、時に怒るものだが、しばらくすれば記憶の隅っこへと追いやられてゆく。でもその出来事の当の本人はどうか?哀しい思いつらい思いをして世間晒されて、そして忘れられて行くって、どんな思いなんだろう?
    今後のメディアの在り方を今一度考えてみる良い機会になったであろう。

    「もしわたしに記者として誇れることがあるとすれば、それは何かを報じたことではなく、この写真を報じなかったこと。それを思い出すことで、おそらくかろうじてではあるけれど、誰かのかなしみをサーカスにすることから逃れられる。」

  • 上から目線で申し訳無ですが、腕を上げたなと思った。最初はノンフィクションか?と考えてしまい、王族の殺人事件なんて小説だとしてもその様な内容を書いて世に出してしまって良いものかと少しハラハラしてしまう。

    フリーのライターがネパール滞在中に王族の殺人事件が起こり、不可解な事件に巻き込まれる。王族の殺人事件との関わりは?ミステリー。

    もう20年も前になるか、私もネパールに遊びに行ったことがあり、その風景を思い出したり、今はどんな風に変わっているのかな、など空想しながら読む。

  • 展開が上手い。引き込まれて読んだ。
    「多分こういうことだろうな」という想像の元、順当に色々と明らかになっていくのだけれど、最後に一捻りある。思わぬところから銃口を向けられていたのだと、気づいた瞬間少しゾワっとくる。
    面白かった!

  • ミステリとかそういうジャンルわけじゃない、小説として良かった。
    一人の記者の事件とそれを見る目に対する真実や生き方を事件に関わるうちに苦闘しながら見つけ、見つめていく。
    そして、事件の真実に至る。
    ミステリとして、伏線がちゃんと張られていてミステリの面白さを味わえる。
    それを含めていい作品です。

  • タイトルからは、内容が全くわからず読み始めました。
    ネパールに滞在中偶然に、王宮内で悲惨な殺人事件が起こる。フリーの記者大刀洗万智は、危険な目に遭いつつも「伝える」という使命感で取材を進める。

    期待していたあっと驚く結末ではなかったけれど、万智の自分自身への問いかけ、貧しい国の子供達の過酷な人生、それを世界に知らせる事の皮肉な結果など、深いものがあった。
    カトマンズの街の雰囲気も感じられた。

    それにしても、サガルの考えていたことがわかった時はぞっとした。恐ろしい子供だ。

  • フリーランスの記者となった太刀洗万智。ネパールのカトマンズで王の一家が殺される事件に巻き込まれる。万智はネパールの軍人の一人に接触することに成功。だがその軍人は殺害され、遺体を晒される。犯人はもちろん意外な人なのだが、その謎解きなんかどうでもいいと思わせるほどのミステリがネパールという国に潜んでいる。また、最後に意外な人物が、思いもよらない秘めた感情に胸を締め付けられる。いや、本当は気づかなければならないのかもしれない。正論が人々を不幸にすることに。ジャーナリストとなった万智には正論を語るしかない。真実と正義を報じるしかない。ジャーナリストの仕事の苦悩も本書では味わえる。

  • タイトルから、単純に「サーカス」が出てくるものだと思っていた。
    さらには、史実であるネパールの王族殺害事件がメインなのかと。
    どちらも違っていた。が、主人公の葛藤、奮闘が細やかに描写されていたため、非常に読み応えがあった。

    正直に言えば、ミステリーとしては物足りない。経過も動機も何もかも。
    だが、登場人物たちはそれぞれとても多様、魅力的で、加えて異国で起きたこの突発的大事件が、彼らの人物像にさらに深みを持たせる一篇になっていたと思った。

    私にとって、当たり外れの多い著者なのだが、これは面白かった。
    シュクマルはまたほかの作品に出てくる気がしないでもない。

  •  ネパールであった実際に事件に合わせて、報道のあり方を問う話。と言っていいのでしょうか。
     読んでいると、土埃を感じます。雑踏を感じます。静粛を感じます。それほど重苦しい印象はないのですが、何ともリアリティがある。
     米沢さんが、2年連続で・・・と思いながら読みましたが「満願」より好みです。
     主人公の太刀洗は、以前の米沢さんの作品で登場していて、次のにも出てる!ってことで、まずは阿知洗いが登場する「さよなら妖精」を読んでみたいと思います。

  • 今年のこのミス1位作品です。
    2年連続1位の快挙。
    あちこちに散らばった伏線が効いています。
    こまかな手掛かりが、最後に収束します。
    見事です。
    歴史的事件に絡めた殺人事件から始まり、結末はなるほどと納得し、そして最後はそうきたかとうなります。
    最後の最後まで二転三転する作品です。
    面白かったです。

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