中井英夫全集〈1〉虚無への供物 (創元ライブラリ)

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著者 : 中井英夫
  • 東京創元社 (1996年11月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (760ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488070113

中井英夫全集〈1〉虚無への供物 (創元ライブラリ)の感想・レビュー・書評

  • 系推薦図書 総合教育院
    【配架場所】 図・3F開架 
    【請求記号】 913.68||NA
    【OPACへのリンク】
     https://opac.lib.tut.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=1777689

  • 日本三大奇書、アンチミステリと知らず読み出したので、その点途中まで楽しむことができた。洞爺湖の沈没事件やアイヌ、東京の五色不動、植物など中二心を擽るキーばかりでワクワク読みす進めました。しかし、いかんせん長い。それまでの探偵役四人の推理が悉く否定され続けるものだから、で、正解は結局何なの、と最後のページをめくりたい衝動を抑えながら後半読んでました。
    まあしかし友達の弟や身内が死んでそれをみんなでどいつが犯人か推理する、なんて悪趣味だなあと嫌な気持ちで読んではいたので犯人は読者だ、という指向は正しいと思う。自分がミステリが苦手なのもあるけど。紅司がゲイのマゾだった、と本人は思い込むことでなんとか生きていたのに、牟礼田に「弟の名誉を傷つけてまで、あの時、皆に鞭痕だと思いこませたのは、何より藤木田さんを始めとして、皆がおそろしい疑惑の眼で見たり、探偵気分でいるのに堪え難かったから」と告げたり「探偵ごっこみたいな真似をされるのは勝手だけれど、もうこれ以上橙二郎叔父さんを犯人呼ばわりするのだけはやめて下さい。気の小さい、子供っぽい人だったのに、可哀そうじゃありませんか」って蒼司が亜利夫たちに言うところは心から同情しました。
    牟礼田俊夫と蒼司は結局、なんなのかな…フィアンセの久夫ちゃんが捌けているけど可哀相。亜利夫が幸せにしてやれよと思うがこいつゲイだった。つーか登場人物ほぼゲイだった。

    それより解説の相澤啓三氏は作者とどういう関係にあったんですか……驚いて全部もっていかれた感。
    http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/touch/20130115
    ↑や〝一種のサバトめいた宴で、黒い司祭は中井さんであり、新しい生贄が私だった。汚辱感にまみれたが戻ってゆく場がなかった。君臨するA公・中居英夫に対してB公・田中貞夫は生涯そうであったように蛇ににらまれた蛙だったから、私が懐にとびこんだのはC公であるデザイナーの野田邦夫だった〟とあるように、藍ちゃんみたいなかわいい男の子を過剰にいじっていたんでしょう。で、助けてくれていた野田邦夫に裏切られた絶望感から自殺試みる相ちゃんわあ……。
    〝その若者に作家は相沢滋人の名を与え、私でしかありえない二、三の挿話を書きこんでいるが(私はそれ以後の詩集に相澤と記すようになり、理由を知らない中井さんはしきりに字画の少ない方がいいと言いつづけた)、「あなたは、なんという残酷な人なんだ」とは、あのとき私が中井さんに投げつけた言葉に他ならない。この作品集の栞に私の私信が「虚無への〈書物〉」の標題で転載されている以上、私の名と「残酷な人」よばわりが結びつくような仕掛けがほどこされていたことになりはしないか。もう一つの自己懲罰?〟
    〝『虚無への供物』の熱烈な愛読書がふえて、いわば中井作品への忠誠度が近付くための条件になってゆくと、一つのフィルターがかかって〈物語の核〉という供物がもたらされることが少なくなり、この世界に荒廃がしのびよる。やがて昔のA公の小悪魔が時と場所をかまわずに跳梁するようになって人間関係が難しくなり、私はひそかに「贋法王ハネギウス一世の反法皇庁」の抜け穴のない宮廷をうとましく思うようになった(羽根木に住む中井さんに私がつけた仇名は誰かが毒を抜いて知らせたとみえて、中井さんが自ら称しているのを後で知った)。田中貞夫という〈真実の人〉が陰にいて亀裂を修復することがなくなると、その半ば虚構の世界はおもむろに崩壊していった。
    中井さんが、自ら招いた孤独と不如意のうちに、『虚無への供物』の作中人物と等しく一箇の幽閉者となってゆくのを、私は危ぶみながらも、それが中井さんの深いところから発した願望であるという思いがした。最後の日々、中井さんの頤使に甘んじることとなったH君には感謝と同情の念を... 続きを読む

  • すでに読了済の『ドグラ・マグラ』『黒死館殺人事件』に続いて、ようやく本作を読み終えたのだが、はてどのように評価したらよいものか、少少困惑している。「奇書」というくらいなので真正面からレヴュウしてもおかしいし、枝葉末節にこだわって技術論などをぶつのはますますおかしい。作中で登場人物が勝手に作った推理小説に仮託して現実の殺人事件のトリックを暴いてみせるなど、細かなことを挙げてゆけば、そもそも本作はなんなのかという根源的な疑問にまでぶつかってしまう。おもしろいことはたしかであるが、さすがに冗長さも感じるし、ふつうのミステリイやエンターテインメントを読んだときに感じるおもしろさともまた違う。なんともとらえどころがない小説である。とりあえず、読むことができたことはすごくよかったと思っている。

  • スペシャル中のスペシャル! 何度目の再読となろうか。それでも胸の鼓動は高まり初読の時の衝撃は変わらない。愛して止まない大切な書物。

  • ゲイバー「アクラビ」での光田亜利夫と奈々村久生の会合。踊り子おキミチャンの存在。遅れてきた氷沼藍司。藍司の前に現れたアイヌの民族衣装を着た男。氷沼家に伝わるアイヌの呪。洞爺丸事故で死んだ氷沼紫司郎夫妻と弟夫妻。氷沼家の当主となった蒼司。従兄弟の藍司、弟の紅司、叔父の橙二郎と共に屋敷に住む蒼司。亜利夫が氷沼家を訪れた日に密室の風呂場で死んだ紅司。病死との判断。殺人として推理を進める奈々。蒼司と橙二郎の間を取り持つために新潟からやってきた藤木田誠。推理合戦を行う亜利夫、奈々、藤木田。ガス中毒で橙二郎の死。原爆で死んだ蒼司の従兄弟・黄司の存在。老人ホームでの火事。死亡した蒼司の祖父の妹・綾女。紅司が付き合っていたという男・鴻巣玄次が実在しないと結論つけた推理マニア達。新潟に戻る藤木田。アパートで殺害された鴻巣玄次。事件にかかわる氷沼家の番頭役・八田皓吉。屋敷を売る準備を始める蒼司。玄次のアパートに住んでいた黄司と思われる男の正体。帰国した奈々の婚約者・牟礼田俊夫。牟礼田の推理と彼の書いた小説に隠された真実。

  • 12月の4冊目。今年の206冊目。

    長い・・・。まずそれが1つ目の感想。2つ目の感想。アンチ推理小説って聞いてた割には、しっかりトリックがあって、まぁ一応最後に収拾がつくね。あと、こう何人もの人が出てきて推理を披露するんだけど、まぁそれがこの小説に必要なプロセスなことは認めるけど、もうちょっとなんとか短くしてほしかった。いちいち読んでる側でも突っ込めるような推理を何回も読まされると、さすがにイライラする。だけれども、最後まできっちり読んじゃったのは、「文体」なのかねー。そういうまどろっこしいものを抱えつつも、推理小説であるところをやめないところが、この作品の魅力なのかも。

  • この全集全巻揃える予定だったが、移ろいやすい嗜好と経済的理由により初めに出た三冊しか買っていないのです。

  • 600頁を超える長編。これでもか、これでもか、という位の推理の応酬に正直辟易しましたが、どうして、著者が、作中で著作当時の社会風俗を、冷たい視線を向けて描いているのか。どうして、推理の応酬を続けさせたのか。
    最後、その意味がわかったような気がしました。胸の詰まる思いがしました。
    本書は、日本三大奇書の1つ、かつ、アンチ・ミステリの巨塔だそうです。
    私にとっては敷居の高い1冊になりましたが、ミステリファンの方にはぜひ読んで欲しい一冊です。

  • アンチミステリとして期待して読んだかいがあった。

  • 毎年 12 月 10 日になると読み返してしまう。これはもう中井英夫ファンの習性のようなものだ。しかも今年は皆既月蝕も重なり「月蝕領主」の作品を読むには最適な日かもしれない。

  • -その人々に

    最初に読んだのはもう15年前になろうか。

    とある日会社から帰宅して、普段はサッカーの試合の時しか点けないTVを点けてしまったことに原因がある。
    これがアタシの過ちだったのだが。

    TVを点けるとニュース番組で先日起きたK市の7人殺害事件を放送していた。
    事件があったこと自体は知っていたが、所謂加害者の高校時代の教師や20歳くらいの時の友人(はっ!)、近所の住人やらにインタビューをしていた。
    もう、この時点で危険信号はアタシの中でピリピリ鳴っていたんだが、皆一様に「危険人物」だの、20歳くらいの時の友人に至っては「今になっても話を聞いてやってればこんな事件は起こらなかっただろう」などと抜かしていた。加害者の事を「はっきり言ってキライ」と直前に言っていたのにもかかわらず、だ。

    傲慢。
    ヒトがヒトを救えるだなんて本気で思っているんですか?

    もう耐えられなかった。
    もうやめてくれ。

    1千万年分の後悔が押し寄せて、トイレで吐いた。

    こういう事件が起こる度、いかにも「自分はコチラ側にいるので安心です」といった様に「異常者」、「危険人物」だのという一括りのカテゴリーに入れてしまい、多数決の常識こそが現実なのだと誤った認識をしている奴等、
    また、そのTV というハコを通じて見てる何百万人という物見遊山的な見物人共も自分には関係がない世界で起こった事柄だからこそ「あら酷いわね、可哀想ね」という被害者に対する同情意識を持つ奴等、

    貴方達が、気違ひ病院の鉄格子の、内か外か、一体どちら側に立っているのか、判らないのですか?

    自分では外にいると思っても、それが内側だったらどうしますか?
    自分は外側にいると思ったら、それが内側だったということもあり得るんですよ?


    さて、中井英夫が「塔 晶夫」の名前で唯一出版したこの本は、エドガー・アラン・ポーの「赤死病の仮面」の部屋を倣ってつけられた名前と部屋を持つ一族と、その屋敷内外で起こる殺人事件とその顛末が小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」とは違うペダントリックさで進む訳だが、断っておくが、これは推理小説のカタチを取っているだけで推理小説ではない。(「アンチミステリ」などと呼ばれてはいるが、それもどうかと思うのだが。)

    物語の初めのヴァレリーの詩を引用したものを書いておこう。

    -「虚無」へ捧ぐる供物にと 美酒をすこし 海に流しぬ いと少しを

  • 存在するのかしないのか分からない人物や、突飛な推理合戦、悲劇の一族など、時代を感じさせず楽しめた。

  • どれだけ、読み返したでしょう。
    好きな小説のひとつです。

  • 日本三大推理小説のひとつ。
    独特の文体と、ペダンティックな雰囲気が良い。
    やや、というかかなり長いが、いくつかの謎に対して様々な推理が述べられ、少しずつ真相が明らかになっていくのが良い。
    ただ、解決がやや納得ができない。

  • アンチ・ミステリなんだってさー
    最後の蒼司さんの長台詞がいいと思う

  • ミステリ史上で有名な作品らしいが、恥ずかしながら知らなかった。中井英夫の作品自体、読むのはこれが初めて。
    何度も繰り広げられる推理合戦には、正直途中で食傷したが、まあそれなりに面白く読めた。ラスト数行の描写はぞっとした。きらびやかな古典的推理小説。

  • 探偵小説でありながらそうではない、その閾を越える手応え。
    終盤、唸った僕が居た。
    「僕たち自身がお化けなのだ」

  • しつこい「推理合戦」にうんざりしながらも、その真の伏線の存在に気づいたとき、衝撃を受ける! きっと!

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