北極星号の船長 <ドイル傑作集2> (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488101114

作品紹介・あらすじ

氷に閉ざされた極地の洋上を舞台にした怪異譚「北極星号の船長」を表題に、高空飛行の限界に挑むパイロットが目撃した怪物たちの世界「大空の恐怖」や、アンティークが呼びさます古の出来事「革の漏斗」「銀の斧」、ファム・ファタルに翻弄されてゆく男の曲折をつぶさに描く「ジョン・バリントン・カウルズ」「寄生体」など十二編を収録。シャーロック・ホームズを生んだコナン・ドイルの、怪奇小説作家としての横顔に焦点を定める。理趣と夢想・幻想のあわいを軽やかに住還する、ドイル・コレクション第二集。

感想・レビュー・書評

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  • ドイルのホームズ物でない短編集。東京創元社はこれからドイル・コレクションと銘打ってシリーズで5集刊行していくらしい。これはその第2集。

    収録作品のうち、「大空の恐怖」、「北極星号の船長」、「樽工場の怪」、「青の洞窟の恐怖」、「革の漏斗」は新潮文庫の『ドイル傑作選』シリーズで既読だが、その他6編は未読作品で今回購入の動機となったのもこれらが気になったため。

    今回収められた作品は大きく分けて3つに大別できると思う。①「怪物譚」と②「超常現象物」と③「奇妙な味物」。
    ①は初めの方に収められている「大空の恐怖」、「北極星号の船長」、「樽工場の怪」、「青の洞窟の恐怖」の4編が該当し、②は「革の漏斗」、「銀の斧」、「ヴェールの向こう」、「火あそび」、「寄生体」の4編、③は「深き淵より」、「いかにしてそれは起こったか」、「ジョン・バリントン・カウルズ」の3編が当たる。

    ①はそれぞれ高空領域、北極、未開の島、洞窟と未知の領域が多く潜んでいた時代において誰も見たことのない怪物が潜んでいる、誰も遭遇したことのない奇怪な現象に囚われるといった古式ゆかしい形式のお話。
    ②は過去の因縁がを宿した物や降霊会によって起こる奇怪な現象といった内容でこれも特に目新しいものでもない。
    ③は偶然によって起こる出来事や皮肉な結末、悪女譚といった理屈を超越した話。これも19世紀ごろでは斬新だったのだろうが、今となっては・・・という域を脱していない。

    総合的に判断すると、一昔前の怪奇短編集と評せざるを得ない。個人的には最後に読んだ「寄生体」が興味本位でかけられた催眠術が次第に主人公の主体性を乗っ取られていく様子をつぶさに語っており、現代にも通じる怖さを持っていると感じた。特にラストの主人公が催眠術師を殺害しに行ったときに当人が既に亡くなっていたこと、道中、教授仲間の一人とすれ違ったことが色々な想像を巡らさせられ、手法としても優れていたように思う。

    またホームズ物がワトスンの手記であるように基本的にこれらの短編もドイルは誰かの手記、日記といった一人称記述物の体裁を取っており、おそらく作者自身、これが作品にリアリティをもたらすものだと考えているようだ。確かにクライマックスまで徐々に徐々に盛り上げていく効果はある。

    今回の短編集シリーズは多分にコレクターズ・アイテムになるであろうが、まあ、「五十年後」といった優れた作品もあることだし、ドイル作品コンプリートの一環としてこれから付き合っていこう。

  • ■書名

    書名:北極星号の船長 <ドイル傑作集2>
    著者:コナン・ドイル

    ■概要

    氷に閉ざされた極地の洋上を舞台にした怪異譚「北極星号の船長」
    を表題に、高空飛行の限界に挑むパイロットが目撃した怪物たちの
    世界「大空の恐怖」や、アンティークが呼びさます古の出来事「革
    の漏斗」「銀の斧」、ファム・ファタルに翻弄されてゆく男の曲折
    をつぶさに描く「ジョン・バリントン・カウルズ」「寄生体」など
    十二編を収録。シャーロック・ホームズを生んだコナン・ドイルの、
    怪奇小説作家としての横顔に焦点を定める。理趣と夢想・幻想のあ
    わいを軽やかに住還する、ドイル・コレクション第二集。
    (From amazon)

    ■感想

    シャーロックホームズの生みの親として有名な、コナンドイルの短
    篇集です。

    色々な形の短編がおさめられていますが、超常現象、心霊現象、未確認
    生物、と結構多彩な短編を楽しむ事が出来ます。

    シャーロックホームズが描けるのだから、こういう短編集を描ける
    のも当然だと思うのですが、読むまでは、どうなのかな?と思って
    いたので、期待を裏切られる出来でした。

    他の短篇集も全部読んでみたいですね。

    こういうミステリー短編集、大好きです。

    ■自分がこの作品のPOPを作るとしたら?(最大5行)

    コナンドイルが描くミステリー短編集です。
    多種多彩な短編がおさめられています。
    一話毎に起承転結がしっかりしており、オチもしっかりしています。

  • 怪奇小説作家としてのドイル先生傑作選。
    当時の流行りだったのかな。現実と虚構と科学と非科学。ホームズだけではもったいない、なドイル先生の筆が走ってます。
    それぞれが、それなりに面白い短編だけど、あえて一編上げるなら。
    「いかにしてそれは起こったか」
    最後の一行が、おぉ、ドイル先生がこの手の作品を書いていたとは!と思わせる秀作。

  • ドイルの怪奇幻想ものを集めた短編集。
    今まで読んだミステリや冒険譚と異なり、オカルト的な話が中心だが説得力のある描写はさすがドイルと言ったトコか。
    多様性・意外性に富んでいて面白かったです。

  • ホームズの生みの親であるコナン・ドイルが書くホラー小説集、表紙の絵と時々ある不気味な挿絵がいい

  • 2

  • 『大空の恐怖』
    高度2万フィートの上空で続く事件。首をもがれた操縦士。発見されたジョイス・アームストロングの手記。手記に書かれた大空の怪物。海月のような怪物との戦い。

    『北極星号の船長』
    ジョン・マカリスター・レイの手記。北極星号の船医として乗り込んだマカリスター。謎の北極星号の船長クレイギー。マカリスターの婚約者の話に怒りを表す船長。北極海での謎の女の目撃証言。消えた船長の謎と船長の過去に隠された秘密。

    『樽工場の怪』
    闘鶏号で冒険中のメルドラムが立ち寄った島の樽工場。イギリス人ウォーカーと医師セヴラル。現地人が恐れる夜に現れる怪物。3日ごとの惨劇。謎の怪物に殺されたウォーカー。体中の骨がバラバラにされた死。怪物の正体は?

    『青の洞窟の恐怖』
    ドクター・ジェイムズ・ハードキャッスルの手記。現地の人間アーミティージの恐れる青の洞窟の怪物。殺される羊。怪物により殺害されたアーミティージ。ハードキャッスルと洞窟の怪物との戦い。

    『革の漏斗』
    友人リンネル・ダクルの家で見せられた革でできた漏斗。漏斗の中に書かれた謎のイニシャル。その日から夢に現れるようになった美しい女性。ルイ14世の時代に起きた事件との関係。

    『銀の斧』
    何者かに頭を割られたホルフシュタイン教授。同じ街で殺害されたユダヤ人シッファ。美術館から消えた銀の斧を見つけたオットーとレオポルド。突如レオポルドに襲いかかったオットー。警察での取り調べ中にヴィンケル警部補に襲いかかったバウムガルテン警部。銀の斧に隠された秘密。

    『ヴェールの向こう』
    ニューステッドのローマ人の砦を訪れたジョンとマギー夫婦。時間を超えたローマ人との出会い。

    『深き淵より』
    妻と離れて暮らすヴァンシタート。体調がすぐれないままに旅立ったヴァンシタート。彼の帰りを待つ妻マギーの元に届けられた手紙。船上で生死をさまようヴァンシタート。天然痘の発症。彼に会いに行く前日に海の中から現れたヴァンシタート。

    『いかにしてそれは起こったか』
    自動車事故を起こした男。事故後気が付くと友人のスタンリーが彼の横に。使用人パーキンスが捜す彼。スタンリーの過去の秘密。

    『火あそび』
    ジョン・モイア、ハーヴィー・ディーコン、ミセス・デラミアによって行われた交霊会。一角獣の絵画。ミセス・デラミアによる交霊。交霊会中に起きた不思議な出来事。

    『ジョン・バリン・カウルズ』
    ミス・ノースコットに恋をした男たち。彼女との婚約を破棄したリーヴィの没落後の死。彼女と婚約したカウルズに迫る死。ミス・ノースコットの正体は?

    『寄生体』
    催眠術の実験に参加したオースティン。徐々に催眠術師ミス・ペネロサに追い込まれていくオースティン。彼女を愛するか報復を受けるかの選択を迫られた彼の運命。

     2009年6月7日購入

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著者プロフィール

アーサー・コナン・ドイル(1859—1930)
イギリスの作家、医師、政治活動家。
推理小説、歴史小説、SF小説など多数の著作がある。
「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者として世界的人気を博し、今なお熱狂的ファンが後を絶たない。

「2024年 『コナン・ドイル⑥緋色の研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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