回想のシャーロック・ホームズ【新訳版】 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (465ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488101176

作品紹介・あらすじ

レースの本命馬が失踪し、調教師の死体が発見された。犯人は厩舎情報をさぐりにきた男なのか?錯綜した情報から事実のみを取りだし、推理を重ねる名探偵ホームズの手法が光る「"シルヴァー・ブレーズ"号の失踪」。探偵業のきっかけとなった怪事件「"グロリア・スコット"号の悲劇」、宿敵モリアーティー教授登場の「最後の事件」など、11の逸品を収録するシリーズ第2短編集。

感想・レビュー・書評

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  • 積読してたのに、読み始めると面白くてすいすい読んでしまう。
    ロンドン中の犯罪を裏で画策し、且つ絶対に己の存在を気取らせない天才的犯罪計画者モリアーティ教授や、ホームズが自分よりも推理能力が上だと認めている7つ年上の兄マイクロフトなど、かなり存在感のある登場人物がシレっと出てくる。しかもモリアーティ教授は出てきたと思ったらあっさりとホームズと一緒にライヘンバッハの滝に堕ちて消えていく。「今まで一言もこんなすごい敵のこと言って無かったよね!?」とツッコミながら読まざるを得ない。
    だいたい、この短編集、度々ワトソンが「わが相棒」「わが友」とか、挙句「長年にわたる親密な交際」とまで言ってるのに、モリアーティというヤバそうな奴のことをずっと黙っとったんかい。

    それはそうと、この巻はホームズが探偵になるきっかけになった一番最初の事件のことや、「初歩的なことだよ」というセリフが出てきたり、221Bでの自堕落な暮らしっぷりなどが出てきたりする巻で、楽しい。
    特に、そろそろ片づけない?とワトソンに提案された後に「ほらほら、ここに面白い事件の書類があるよ~」と子どもの意識を逸らせるオカンみたいな行動で片付け回避するホームズや「合点承知」とか言っちゃうホームズまで見られて、ホームズの色んな表情が見られる巻なんじゃなかろうか。

  • ■書名

    書名:回想のシャーロック・ホームズ【新訳版】
    著者:アーサー・コナン・ドイル、深町 眞理子

    ■概要

    「黄色い顔」「株式仲買店員」「海軍条約事件」、そして宿敵
    モリアーティー教授登場の「最後の事件」──。
    新訳で贈る、粒ぞろいの名作11編を収録するシリーズ第2短編集。
    (amazon.co.jpより引用)

    ■感想

    なんだろう、この面白さは。
    読んで数分で小説の世界に引きずり込まれ、気が付くと時間がたっている感覚。
    本当に面白い本を読むと起きる現象が、ほーむずでは必ず起きます。
    自分と水が合うんだろうな~

    モリアーティーとか実は頻度的には、全く登場回数多くないのに、このラスボス感。
    伏線でその名前とか全くでないのに、この印象操作はお見事。
    短編1つ1つも、内容がしっかり練られており、ホームズの推理の精密さも冴えわたっています。

    推理好きなら楽しめると思うけど、嫌いな人は嫌いなんだろうな~

  • 『〈シルヴァー・ブレーズ〉号の失踪』
    近く開催される予定の〈ウェセックス・カップ〉の本命馬である〈シルヴァー・ブレーズ〉号の不可解な失踪と、同馬の調教師ジョン・ストレーカーの惨死という事件です。馬が無事でよかった、調教師ストレーカーは卑劣だ、と思いました。

    『黄色い顔』
    ノーベリーに別荘を借り、しあわせに暮らしてきた夫婦ですが、あるときから夫は妻の秘密に悩まされることになります。夫の話を聞いていると、途方に暮れて苦しくもなりましたが、最終的にはやさしい、しあわせな物語でした。
    また、ホームズの“見込みは結果的にまちがっていたものの、事の真相だけははからずも明らかになる(p56)”、ホームズにとって“ノーベリー”という言葉が意味を持つようになった事件でした。

    『株式仲買店員』
    パイクロフトは、コクスン・アンド・ウッドハウス商会を解雇されてしまいますが、ロンドンでも最高に資金の潤沢なモースン・アンド・ウィリアムズで採用されることになります。しかし採用の手紙をもらったまさにその晩、ピナーという男がやって来て多額の給料で雇うと言い、パイクロフトは幸運に舞いあがります。
    この話にはやはり、裏がありました。犯人は同情できない、悪党でした。

    『〈グロリア・スコット〉号の悲劇』
    ホームランが大学時代に手がけた最初の事件の話です。“帆船〈グロリア・スコット〉号で起きた凄惨な事件の記録”と、“トレヴァー治安判事がこれを一読して、恐怖のあまりその場でショック死してしまったという、いわくつきのメッセージ”(p127)にはどんな関係があるのでしょう。トレヴァー氏はどうして船乗りハドスンに頭があがらないのでしょう。
    ホームズが“手がけた”と言えるのかはわかりませんが、今の仕事をするきっかけを知ることができてよかったです。

    『マズグレーヴ家の儀式書』
    奇妙な〈マズグレーヴ家の儀式書〉にまつわる物語です。歴代のマズグレーヴたちが見のがしてきたなにかを、利口者の執事ブランドンと、ホームズが見つけました。

    『ライゲートの大地主』
    ホームズが二ヵ月以上にわたる捜査の重圧から病床に臥してしまったため、ワトスンとともにヘイター大佐の住む田舎で療養することになります。しかし、侵入盗と、殺人事件が起きてしまい、ホームズも捜査に関わります。その結果、ホームズは以前と変わらない元気のよさになり、田舎で静かに静養するという計画は、ホームズにとって大成功でした。

    『背の曲がった男』
    バークリー夫婦が口論をした後、夫は息絶え、妻は気を失って倒れていました。とてつもなく奇怪で、わけのわからない事件でした。そして、“卒中の発作による死”という“まるきり単純な事件”(p271)でした。

    『寄留患者』
    ブレッシントンは、あるときから、何事か、何者かを極度に恐れているような、奇妙にそわそわした興奮状態がつづきます。そしてその後、ブレッシントンは自殺してしまいます。
    ブレッシントンが、医師パーシー・トレヴェリアンに投資し、ブルック街で開業させたという話もおもしろいですが、本筋とは関係ないのが意外でした。

    『ギリシア語通訳』
    まずシャーロックに兄マイクロフトがいるということ、そして彼がシャーロック以上に資質をそなえていることに驚きました。今回はそのマイクロフトから聞かされた一件の物語です。
    語学の達人であるギリシア人メラス氏は、月曜の夜にあらわれたラティマーに通訳がいると言われ、辻馬車に乗せられます。その後目隠しされ連れて行かれた先には、顔に絆創膏を貼られた男が脅迫されており、また謎の女性がいました。ワトスンの推理が的中していたのが意外で、自分にわからなかったのが少し悔しくなりました。

    『海軍条約事件』
    外務省にいるパーシーのもとから、イギリスとイタリアで結ばれたきわめて重要な秘密条約が書かれている灰色の巻き物が盗まれてしまいます。そのため彼は、脳炎をわずらい九週間も寝こみ、衰弱してしまいます。
    あまりにも証拠がありすぎたため、肝心な点が隠されてしまっていた事件でした。

    『最後の事件』
    犯罪界のナポレオンであるモリアーティー教授と、ホームズとのあいだにあった出来事です。彼らはつかみあいの争闘をし、取っ組みあったまま滝壺に転落したと思われます。
    モリアーティー教授は急に登場して急に去ってしまっていて、ドイルがホームズものと訣別したかった思いを感じました。でも私はやはりホームズが好きで、こんなにあっさりいなくなるなんて思っておらず、復活するとわかっていても悲しい気持ちになりました。

  • 「ホームズの冒険」に収録されている12編に続き、出版社から要請されてさらに筆をとった12編を短編集としたもの。当時、2作目の「ボール箱」が省かれ11編とされたが、本全集でも、「ボール箱」は『最後の挨拶』に収録されている。 なので、作品発表順にこだわって読むのであれば、「黄色い顔」の前に「ボール箱」を読まれたし。 ワトスン自身が共に事件に関わるのではなく、ホームズが語る事件をワトスンが記録しているという形の作品が混じってくるのが、ホームズとの別離を暗示しているようだ。
    聞きなれない訳語が出てくる。「合点承知」とか「よござんす」とか。。

  • シャーロック3が楽しみです!

  • 前作以上にさらにパワフルに語られる事件の数々。
    展開が早すぎてついていくのに必死(笑)
    このテンポの良さが魅力の一つなんだな~と実感。
    それにしても【最後の事件】の衝撃といったら…。゚(゚´Д`゚)゚。
    ワトスンの心情を考えるだけで胸が締め付けられる思い。

  • 創元社版。
    『〈シルヴァー・ブレーズ〉号の失踪』
    『黄色い顔』
    『株式仲買店員』
    『〈グロリア・スコット〉号の悲劇』
    『マスグレーヴ家の儀式書』
    『ライゲートの大地主』
    『背の曲がった男』
    『寄留患者』
    『ギリシア語通訳』
    『海軍条約事件』
    『最後の事件』
    解説に「ホームズと鉄道」があり、なかなか興味深い。

  • 噂に聞いていたけど、やはり『最後の事件』は凄いなあ。

    ホームズ「モリアーティ教授、お前が世界の歪みか!!」
    モリアーティ「こいホームズ!私が直々に引導を渡してやる!実は私は滝に落ちただけで死ぬぞー!」

    これ、当時の人は、既刊引きちぎった写真をネットに上げるくらいキレたであろう。

  • よくぞまあ、こんなにも短編を創作できるなあ~。
    でもドイル先生お疲れだったんだね……
    世界のアイドル、ホームズを滝つぼに落としちゃったもんね……

    人気が出過ぎると、たとえ著者にもキャラクターは制御しがたいのですな。

    馬の失踪の話、面白かった!
    カレーかあ。なるほどねえ。
    時代的に、インドの描写が多いのも興味深い。

  • 「黄色い顔」いつもホームズが完璧に解決する、わけではない、ところも、いい。
    「ギリシア語通訳」でホームズのお兄様、登場。

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著者プロフィール

アーサー・コナン・ドイル(1859—1930)
イギリスの作家、医師、政治活動家。
推理小説、歴史小説、SF小説など多数の著作がある。
「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者として世界的人気を博し、今なお熱狂的ファンが後を絶たない。

「2023年 『コナン・ドイル① ボヘミアの醜聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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