- Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488110031
感想・レビュー・書評
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事件のあるところ様々な場所に出没し鋭い推理力にて事件を解決するブラウン神父。今回も南アメリカから始まり、アメリカ、イギリスと奇怪な事件の解決に縦横の働きをみせるブラウン神父の活躍が満載の短編集です。短編集としては第3作品目とのことです。
黒づくめの神父の出で立ち、黒いコウモリ傘、小柄な体格、くりくりの目。一見して名探偵とは思えないのに、鋭く急所をつき真相をずばっと解明してみせるのがブラウン神父の魅力です。そして、彼が出くわす謎とは、密室殺人、鉄壁なアリバイなどの巧妙なトリックに、ベッド・ディティクテブや入れ替わりネタといった多様なプロット、まさに推理小説ネタのオンパレードなのですが、それだけをみてかつて「日本のチェスタトン」と呼ばれた女性作家もいましたが、チェスタトンの魅力はふんだんなプロットやトリックだけでなく、神秘的で奇想天外な状況や背景、逆説的なセリフやトリック、それに信仰に根ざしながらもあくまでも真相を合理的に見通す冷徹な真理眼など、それら全てが合わさって構成されているものなので、そうそう彼に匹敵させることはできないです。
今回の収録作品は8作品で、なかでも『犬のお告げ』は高評価の作品のようですが、確かに推理物の要素満載の面白い作品ではありましたが、自分としては、密室物の『天の矢』や、凝った始まりとトリックの『ムーン・クレサントの奇跡』、前近代の雰囲気を濃厚に醸し出していた『金の十字架の呪い』『ダーナウェイ家の呪い』なども好みの作品でした。それに『翼ある剣』や『ギデオン・ワイズの亡霊』も推理小説っぽいトリックでこれもなかなか楽しめました。
ブラウン神父物は学生の時に読んで以来だったのですが、あらゆるアイデアとプロットがぎゅっと凝縮された短編集であり、短編推理物としていろいろな味が楽しめる贅沢なバイキングのような短編集であることをあらためて認識しました。
内容そのものが説教と逆説めいているためか、文章は少し読みづらかったかな。あと、活字が小さいのは改善してほしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ブラウン神父シリーズ3作目。ちょっと文体が読みにくかったが、まずまず面白かった。
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twitterで「なぜフェンスが建てられたのかわかるまで、決してフェンスをとりはずしてはならない」というチェスタトンの名言がやたら流行っていたのを見て、この本を思い出し再読。その昔ミステリーのタネばかりを解説した本を読んだ時に「犬のお告げ」が印象に残ったのを覚えている。今読むとブラウン神父の持って回った話し方がまどろっこしいが、刊行されたのが1926年というから当然かと思う。
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ブラウン神父シリーズ3作目。以下、収録作。
「ブラウン神父の復活」B…12年ぶりの新作ですが、それをうまくネタにしています。
「天の矢」A…思い込み系のトリック好きです。
「犬のお告げ」A…安楽椅子探偵。本書ベスト。
「ムーン・クレサントの奇跡」A…トリックもいいですが、そこへもっていくまでの話運びが巧緻です。
「金の十字架の呪い」C…理解できませんでした。
「翼ある闇」B…悪くはないのですが。
「ダーナウェイ家の呪い」B…お茶目な反則?
「ギデオン・ワイズの亡霊」A…秀逸なアリバイトリック。 -
トリックはなかなか斬新なブラウン神父の短編集2冊目。中で良かったのは翼ある剣、ムーンクレサントの奇跡。訳がむつかしいが慣れると面白い。新訳で読みやすくすればもっといいのにと思う。
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意外とブラウン神父の行動範囲って広かったんだなぁと思った一冊。
南米へ行ったり、アメリカへ行ったり。
いかにもなイギリス的な風景がかいま見える「犬のお告げ」や「ダーナウェイ家の呪い」が好きです。
引用した文は、今もやっぱりそういう人が多くいるようで…としみじみした次第。
110P-「こういうタイプの人間にとっては、振りかえってみてすばらしいものになるからという理由で常軌を逸したことをやらかすのがたまらない魅力なんですね。」 -
むちゃくちゃ読みにくい。
ちょっと、ぼーっと読んでると何が起こっているのかもよくわからない。
しかし、このよくわからない、読みにくい部分が、実はこの作品のキモだったり。
分かりやすく整理されちゃうと、別段どうってことない話になっちゃう。
分かりやすい、読みやすい、だけが本の魅力ではない。