- Amazon.co.jp ・本 (367ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488118099
感想・レビュー・書評
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4+
シンプルな筋立てで、しかも罠ですよと明言されているにも関わらず、泥沼に落ち込む程、深まる謎。終盤明かされる真相、その説得力にため息。まさに本格の醍醐味。そしてエリオット萌え。
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本書の内容とは全く関係ないが、積み本の中からタイトルに“色”が含まれる本を続けて読むミッションを気まぐれに実践中。
黄→緑→?詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フェル博士もの。子供の毒殺事件が発生した。その事件をマーカス・チェズニィは解決するため実験を披露していたがその最中殺害されてしまう。心理学的推理小説というだけあり密室だったりの物理的なトリックがあまりない。そのため派手さがなく地味な印象だった。キャラクタもあまり好感のもてるのが少なかった。その中でトリックはなかなか綺麗だったのでよかったけど、なんかすごいというところまでいかなかった。あと、あまり表題に関係ない気もするが――。いまいちなんだけどそれほど退屈もしなかったし、これといった感想がないなあ、で落ち着きそう。
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4ヶ月前に村の菓子屋で発生した毒チョコ事件と、富豪が道楽の犯罪研究の一環で行った心理実験中に発生した毒殺事件。同一犯の仕業か?そして心理実験はシネ・カメラで撮影されており、緑のカプセルを富豪に飲ませた殺人犯の姿もフィルムに映っているが…。
毒チョコ事件の方は序盤で奇術カバンが出てきたりとトリックはそれほど突飛なモノはなかったが、富豪の毒殺事件は「あっ」と言わせるカラクリに、見事に作者の罠にはまりました。
この作品、副題に「心理学的推理小説」と書かれている通りでしたね。
今回はオカルト風味はありませんが、ヒロインにエリオット警部がメロメロですよ! ちょっと笑っちゃいましたよ。
フェル博士による「毒殺講義」もあるよ。 -
読者にヒントすら与えてくれない
問題作、とでもいえるかもしれません。
まあヒントなし。鬼です。
みんなにアリバイがあるんでは疑えない(笑)
たぶん犯人がフェル博士を
思いっきり馬鹿にした作品も
そうはないでしょうね。
一番奇抜なやつです。
もうひとつ言えば
一人の人間がどうしようもなく
愚かではたきつけたくなりましたね。
このごに及んでこういうバカなことするか、と。 -
フェル博士シリーズです。
珍しくカーの怪奇、オカルト色が見られない作品です。
毒殺がメインテーマになっています。
犯罪研究を道楽とする荘園の主人が毒殺事件のトリックを発見したと称してその公開実験をし、その公開実験中に当の本人が緑のカプセルを飲んで毒殺されてしまいます。
公開実験を利用して殺人計画を立てた犯人は凄いです。
被害者が行った実験に仕掛けられた数々の罠が実に巧妙です。
心理トリックが見事な傑作です。
解決はシンプルですが魅力はあります。
フェル博士による毒殺講義も楽しんで読めました。 -
題名に惹かれて購入した一冊。
緑のカプセル…もうそれだけでご飯3杯いけちゃう!
二重のトリックにアッと驚かされます。
訳もなかなかよく、カーの作品のなかでは読みやすい一冊です。
カー特有の怪奇趣味ではないので、本格推理好きの人にお勧めの作品です。
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カーのミステリの特徴として密室がよく挙げられるが、それと双璧を成すほどよく扱われていた題材が毒殺トリック。古来ヨーロッパでは毒殺による殺人事件が頻発しており、しかもそれらが連続殺人事件であることが多かったこと、そして伯爵夫人や公爵夫人といった王侯貴族の夫人達による実行が多く、スキャンダラスな側面を持っていたことが大いにミステリ作家達の創作意欲を刺激したようだ。その中でも多数の毒殺トリックを扱った作品を著したカーはとりわけこの毒殺という犯行に魅了され、独自に研究をしていたように思われる。
というのも本作には『三つの棺』で行われた密室講義に続く毒殺講義がフェル博士から成されるからだ。このことからもカーが密室と毒殺を自身のミステリのテーマとして掲げていたに違いない。
物語は巷で毒入りチョコレートを食べた子供達が死ぬという事件が頻発しているという物騒な事件が起きていることがまず語られる。この事件を犯罪研究家であるマーカス・チェズニイ氏が解明し、その方法を友人や家族の前で実演している最中に覆面を被った何者かが入ってきて、なんとそのまま毒殺されてしまう。しかもその模様を見ていた3人の目撃者の証言はどれも食い違っていたという、非常に面白い題材を扱っている。
さらにこの模様を写したフィルムで彼らの証言を検証する行為がなされ、それに加えて生前チェズニイ氏が用意した10の質問に答えるという趣向も盛り込まれている。この映像による検証が本書のメインであり、最も面白いところだ。
カーが本書を著した際、バークリーの代表作『毒入りチョコレート殺人事件』が念頭にあったことはまず間違いない。識者によればカーがバークリーが長を務めるディテクティヴ・クラブに入会したのが1936年で本作の上梓が1938年。当時バークリーは英国ミステリ界において重鎮であり、しかもエース的存在であった。カーがクラブ入会後、彼と会員のミステリ作家たちの交流を通じて多大に影響を受けたのは知られており、本作は特にバークリーの影響を受けて創られたようだ。
やはり珍しいのは映像を使った心理的トリックだろう。毒殺された犯罪研究家が作った映像とそれに関する問いについて視聴者が喧々諤々の議論と問答を繰り広げるのは面白く、ロジックよりもトリックを主体にしたカーにしてみれば異色ともいえる展開である。
で、これが逆にトラブルとして起きた毒殺事件を複雑化しており、なかなか良く考えられた作品である。失礼な言い方になるが、全てが綺麗に納得でき、しかも精緻すぎてカーの作品ではないみたいだ。
とこのように非常にカー作品の中ではロジックを前面に押し出した作品で、読み応えがあるのだが、当時の私の感想を書いた一言メモでは、どうも多忙の中で読んだようで楽しめなかったとだけ残ってある。しかしそれでも内容についてこれだけ記憶に残っており、読み応えがあったように思えるのだから、やはり私の中ではカーの作品でも上位に来る作品であるようだ。もう一度読み直すべき作品として記憶にとどめておこう。 -
フィル博士