暁の死線 (創元推理文庫 120-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (369ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488120023

感想・レビュー・書評

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  • 『幻の女』よりこっちの方が好き。サスペンスではあるんだけど、ボーイ・ミーツ・ガールな青春小説でもある感じ。最初は頼りなかった男の子が、最後はすっかり頼りがいのある男になってるのも、いいんじゃないかな。

  • 都会と言う巨大な敵の中で事件の解決のために奔走する二人。が、実は二人が出会った時にその敵にはほとんど勝っていたんじゃないかな。都会は孤独の象徴で、それを克服出来なければ結局どちらも都会=孤独に飲まれてすぐに終わっていたことだろう。

  • 他殺体を発見した若い男女が、わずか3時間のタイムリミットの中、犯人捜しにのり出します。2人で故郷へ帰るため。時間に追われる急速な展開に、はらはらどきどきしながら読んだ少女の頃の自分を思い出しました。

  • 遺体を確認したのが2時半、犯人探しに乗り出したのがほぼ3時、6時初の長距離バスが出る前に犯人を捜すって…ムリっしょう?

    ロバート・ラングドンよりも短い時間で事件を解決する。一晩で左利きの人にそんなに会えるの?などなど、不自然なところはあるもののスリリングで展開が早く面白かった。

    アイリッシュの小説はヒッチコックの「裏窓」やジャンヌ モローの「黒衣の花嫁」など多くの映画原作になっている。本書は日本のサスペンスドラマとして何度も作られ、他にも日本のドラマの原作になった作品が多数存在する。

  • 『暁の死線』の何が好きかって、章と章の間に入っている時計マークがおしゃれだなと思ってました。乙女の読書は見た目から入るのです★
    (この時計マークには、使い道があります。きりのいいところまで読んで、時計マークまで来たところで休憩、トイレに行ったり飲み物をとってきたりできる。ふざけた利用の仕方でしょうか…)

    「時計だけが友達だ」と言うヒロイン・ブリッキーに、淋しさを感じたこともありました。都会暮らしの孤独がしみついた、暗い考えのような気がして。
     いまは淋しいとは感じなくなりました。そうやって自分を奮い立たせてきたんだものね☆
     ブリッキーたちの心が都会の生活にすり切れそうなときも、パラマウント塔の時計は常にそこに立ち、じっと見守っていました。そして、毎晩ブリッキーの仕事を終わらせるために、懸命にコチコチと時を刻み、針を進めていたのです。

     若者たちが無謀な賭けに出た夜、時計はついに決心しました! できるだけ時間を引き止めようと。ブリッキーとクィンは、たった一晩のうちにいくつもの危険をくぐり抜けて、事件を解決しなければならなかったのですから。
     時計の文字盤は章ごとに送りこまれてきて、時間を引き延ばし援護します。そうでもなければ、この深夜の捜査と冒険は一晩では終わらなかったでしょう。

     最後に、夜の闇との戦いに力尽きた時計塔が、朝を告げます。そのギリギリのデッドラインで、ブリッキーとクィンと時計塔は、ニューヨークの夜に勝ったのです!
     彼らをしあわせに導こうとする誰かの視線、章ごとに姿をのぞかせる時計の文字盤、あれはひょっとしてウィリアム・アイリッシュの眼だったのでしょうか?

     その朝、恋人たちを乗せたバスは、パラマウント塔の時計盤に別れを告げ、すがすがしく走り去ります。もう視線の届かないところに行ってしまった二人、その先は書かれていないけれど、希望の匂いがします……♪

  • わずか5時間25分の物語。この短い時間の間に、これだけの出来事が起こったというのは信じられないくらいだ(実際、信じられない!)。
    しかしながら、二人の出会いに始まり、奇妙な殺人事件との関わり方、そこから脱け出すための必死の闘いへと、話を膨らませていく作者の手腕は実にすばらしい。
    微に入り、細を穿つ懇切丁寧な状況描写、情景描写、心理描写。これが作者の真骨頂。多少、くどいとも感じられるが。
    ご都合主義で、いかにも小説上での出来事としか思えないストーリー展開ではあるが、手に汗握るサスペンスミステリ―。

  • テンポよくあららぁ…と思わせながら、時間にも追い詰められながらつい急いで読み進めてしまった。

  • 田舎から都会に出て来て挫折した同郷の若いカップルが殺人事件に遭遇し、手分けして犯人を捜すサスペンスという設定だが、警察に通報して立ち去ればいいのに執着する理由がちょっと弱い。

  • 流行歌の歌詞から汽車や列車が消えて随分たちます。
    まして長距離バスとなると今の読者には
    ピンとこないかもしれません。
    でも、このタイムリミットサスペンスは
    ある種の人間にとっては
    とても切ない物語なのです。

    朝6時に出発するのは、
    都会に疲れた若い二人を
    故郷へと連れて帰る長距離バス。
    だが、そのバスに乗る為には
    自身の身に降りかかった濡れ衣を
    晴らさなければならない。

    章ごとに冒頭に付けられた
    アナログ時計の絵、
    その針が一章ごとに進んでいくのですが
    設定されるタイムリミットが
    心理的タイムリミットであるところが、
    この作品の最大の魅力。
    彼らにとってはどうしても、
    明日の朝のバスでなければいけないのです。

    その夜出逢ったばかりの若い男女、
    恋人同士ですらない彼らの
    挫折と再生の物語は、
    確かにステレオタイプかもしれませんが
    それでも力強く人間の根源を揺さぶる
    感動があります。

  • 「幻の女」「裏窓(短編集)」「ニューヨーク・ブルース(短編集)」に続いて4冊目のアイリッシュ。
    物語の出来不出来とは関係無く、間違いなく好きな作家だ。(私にとって「好き」かどうかは、「共感できるかどうか」にかかっている気がする。)

    そんなわけでこの作品も最後まで面白く読むことができたのだが、
    しかし出来云々で言えばあまり良くないんじゃないかと思った。

    「幻の女」ではきちんと最初から最後までプロットが練り上げられていて、ラストで伏線がきっちり回収(…いや、細かく見ていけば回収し切れてない部分もあるのかもしれないけど)されるカタルシスのようなものを感じることが出来た。
    しかしこの「暁の死線」では、「最終的にはバスに間に合う。ハッピーエンド」というようなことだけ決めて、いきあたりばったりに書き進めていってる印象が強い。そのぶん物語のスピード感、勢いのようなものは増しているのかもしれないが、物語の序盤、ブリッキーとクィンが出会い、お互いの身の上が知れるまでのあの重厚さとは比べようも無いくらい、後半は軽い(もっと言えば軽薄な)調子となってしまっている。序盤は、読み進めるのが辛いくらい救いの無い沈滞した空気が漂っていたのだが、中盤からは嘘のようにその空気は消え去ってしまった。いや、良し悪しだとは思うけど。

    あとはいくらなんでも一介の小娘に過ぎないブリッキー、頭切れすぎだし度胸ありすぎだろう、と。そこらの名探偵を軽く凌駕する活躍っぷりですよ。ここらへんは、ちょっとアイリッシュの怠惰さが表れてる箇所なんじゃないかと。物語を進めるにあたっては、「愚鈍な人間」よりは「鋭敏な人間」のほうが、はるかに製作者にとっては都合がいいものだから。

    ブリッキーとクィンのコンビは十分魅力的なので、シリーズ化してたらそれもまた面白かっただろうなと思う。この軽さはシリーズ向き。読みたい。
    ところどころ、描写がくどいように感じる所もあった。
    星は3・5くらい。

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