迷走パズル (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488147068

作品紹介・あらすじ

アルコール依存症の治療もそろそろ終盤という頃、妙な声を聞いて恐慌をきたしたピーター。だが幻聴ではなく療養所内で続いている変事の一端とわかった。所長は言う-ここの評判にも関わる、患者同士なら話しやすいだろうから退院に向けたリハビリを兼ねて様子を探ってもらいたい。かくして所長肝煎りのアマチュア探偵誕生となったが…。パズルシリーズ第一作、初の書籍化。

感想・レビュー・書評

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  • パズルシリーズ1作目です。
    妻を亡くした衝撃からアルコール依存症になってしまった入院中の演劇プロデューサーのピーターは治療もそろそろ終盤という頃に妙な声を聞いて恐慌をきたします。
    ですが、その声は幻聴ではなく療養所内で続いている変事の一端と分かります。
    所長はここの評判にも関わる、患者同士なら話しやすいだろうから退院に向けたリハビリを兼ねて様子を探ってもらいたいと言います。
    かくして所長肝煎りのアマチュア探偵誕生となります。
    犯人も意外ですし、思っていたより本格ミステリで気に入りました。

  • 「迷走パズル」
    アルコール依存症の治療もそろそろ終盤という頃、妙な声を聞いて恐慌をきたしたピーター。だが幻聴ではなく療養所内で続いている変事の一端と分かった。所長は言う「ここの評判にも関わる、患者同士なら話しやすいだろうから退院に向けたリハビリを兼ねて様子を探ってもらいたい」。


    1940年代に書かれた推理小説「迷走パズル」です。この「迷走パズル」の特徴は以下です。


    1.変わった主人公
    主人公であるピーターはアルコール依存に悩んでいるということ、アルコール依存から脱する為に精神療養所にいること、そして探偵として活動すること、この3つの特徴を持っています。この3つが揃う主人公による探偵小説は初めて読んだ気がします。


    また、事件の真相を探る舞台が常に療養所であること、犯人が常にピーターの傍にいる可能性があることも大きな特徴です。


    2.馴染む時代性
    この作品は随分昔に書かれていることから普通は時代を感じることもあると思います。例えば、日本文学でよくあるように文法使いや表現に違和感を感じたり、登場人物が妙にしっくりこなかったりなどなど。しかし、この「迷走パズル」ではそのような時代性を感じませんでした。


    理由としては舞台が療養所から出ないことやピーターが常に療養所内の人間について思案してくれていること、そして訳者が昔の良い表現(外国作品で良く登場するウィット感)を生かしてくれていることなどがあると思いますが、最も大きいと思うのが、まさに推理に迷走していることです。


    療養所内で起こる殺人事件やそもそものきっかけと思われるピーターや他の患者も聞いたとされる声の謎など破格の値段がつきそうな謎をいくら患者同士なら調べやすいからと言っても探偵なんかしたことの無いピーターが解けるのだろうか?と読者に思わせる迷走ぶりにまず惹きつけられます。


    そして、そんな迷走ピーターが傍にいるかも知れない犯人と事件の真相を追い求める捜査も様々な要素を巻き込みながら進み、とても心地よいです。話のテンポ自体は速いとは言えないと思いますが、それぞれの登場人物の拝啓とピーターの思案が描かれているので、テンポの速さよりも内容の中身に惹きつけられます。


    以上2つがこの「迷走パズル」の魅力だと思います。当時の流れを考えると、精神病の小説でこれだけ穏やかな要素を含んでいる作品は珍しいのではないか?とふと思いました。


    次回も読んでいきたいと思わせる作品です。しかし、もう少し長くてもいいかな。

  • ピーター・ダルースシリーズ#1。アルコール依存症の演劇プロデューサーが、社会復帰のために療養所の探偵役を引き受けたことからはじまる迷走劇。患者の症状がバラエティに富んでいて、証言の信憑性がわからないのもおかしみ。

    登場人物を把握するのに100ページくらいかかった。昼勤の介護士と夜勤の介護士が義理の兄弟とかややこしすぎる!

  • A07-01

  • 舞台が精神病院で被害者は職員と患者で、探偵役も患者である。このため誰が本当のことを言っていて誰が嘘をついているかわからない。このような状況を利用しているのか、それとも突発的なものなのか、色々な想定が浮かんでくる。解決としてはよくある本格物で、それなりの意外性があり楽しめるが、解決後のひとひねりにこの作品の特徴が現れている。依頼人である所長は探偵役である主人公を犯人ではないかと疑って、あえて捜査を依頼する。主人公はアルコール依存症のため、もしかしたら自分が犯人なのではないかと怖れる。自分自身さえ信じられない探偵が見出すもの、そして、それが生きる勇気につながっていく。

  • 「逃げるのだ、今すぐ逃げろ……殺人が起こる」
    深夜の病棟で聞こえた恐ろしい囁きは―――自分の声だった。これはケルビムの神託か、はたまたサタンの呪詛か…それともいよいよ頭がイカレてしまったのか。不安にかられつつも治療を受けるピーターの周辺に更なる警告が……療養所という名の精神病院で起こる不可解な現象に、混迷しながらも解明しようと奮闘する主人公。『パズルシリーズ』最初の事件。

    患者達の異様な挙動と、職員の不審な行動。多種多様な登場人物達により描かれる全容は…殺人事件としての例えにはおかしいが…まるでパズルゲームのピースを埋めていくように軽快に読み進められ爽快に終わる。たまにはこんなミステリーもいい。

  • 精神に何らかの疾患を抱えた人達が集まる診療所で起きた殺人。
    しかし、これから想像される躁鬱とした雰囲気はなく、むしろコメディのようでした。登場人物皆キャラがしっかりしているので読みやすく、展開も早いので、翻訳ものに苦手意識を持っている人でも安心して読めるでしょう。
    真相自体も意外性があって良いのですが、犯人を炙り出すために仕掛けられた罠がとても興味深かったです。
    それぞれの患者の症状を考慮し、それによって起こされる事象を想定する。これはどこか異形の理論にも通じるものであるような気がします。
    次の『俳優パズル』も楽しみです。

  • 本格ミステリベスト10に軒並み入っているダルースシリーズ第1作。1930年代に書かれたことを考えるとすごいけれど、トリックは今一つ。ただ次作からは夫妻で登場とのことでちょっと期待。

  • 「女郎蜘蛛」が面白かったのでパズルシリーズ一作目を読んでみたが、かなり期待外れ。精神的な病人たちの施設で起きる殺人。患者も医師、看護人たち全てが怪しく見えて出だしは面白いのに。真相が明らかになる前にもっと伏線しいて欲しかったし、犯人分かっても全然ぴんとこない。ピーターとアイリスの出会いが分かったのは良かったけどね。

  • 妻をなくしたショックでアルコール依存性になり精神病院に入院するピーター・ダルース。夜中に自分の声で殺人を警告する声を聞く。院長のレンツ博士の依頼で調査を開始した矢先におきた看護師フォガティの殺害事件。拘束衣を着た遺体。入院患者で投資家のラリビーを怨む入院患者のアイリス・パティスン。ラリビーが恋する看護師のイザベル・ブラッシュ。遺産をブラッシュに残そうとするラリビー。ラリビーの娘と娘婿の存在。殺害されたラリビー。現場にいたメスを持ったアイリス。入院患者仲間のゲディスと共に捜査するダルース。

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著者プロフィール

Patrick Quentin

「2010年 『悪魔パズル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

パトリック・クェンティンの作品

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