猿来たりなば (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488159160

作品紹介・あらすじ

イギリス南部ののどかな自然に囲まれた村、イースト・リート。トビーとジョージは、このロンドンから遠く離れた片田舎に誘拐事件を解決するためにはるばるやってきたのだが、そこでふたりを待ち受けていたのは前代未聞の珍事件、なんと、チンパンジーの誘拐殺害事件だった! イギリス・ミステリ界で半世紀にわたって活躍してきた重鎮エリザベス・フェラーズの傑作本格ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • 殺人事件ならぬ殺猿事件。
    エリザベス・フェラーズというのはしみじみと「ああ、上手いなあ」と思ってしまう作品を書く。
    派手派手しくはないけれども、プロットが整っていて、キャラクター造形も上手い。伏線の回収の仕方も綺麗。
    今回も、特にあっと驚くような真相ではないけれども非常に楽しめました。

  • 「猿誘拐殺害事件」
    難易度的には高くない、つまり現代の新本格に親しんでいるミステリファンなら解ける(真相を見抜ける)作品だとは思う
    しかし、キャラクター造形、文章の面白さ、よどみのないプロット展開、うまいもんだなあと感心した
    なによりもミステリにとっての「謎の魅力」の重要性を改めて教えてくれる
    「猿が誘拐され、ナイフで殺された。なぜ?」
    この答えが気になる人は最後まで読むしかない
    探偵役とワトソン役の微妙なネジレ具合も笑える

  • 誘拐事件の依頼と聞いてロンドンからはるばる南部の村までやって来たら、事件とはチンパンジーの誘拐殺害事件だった!トビーとジョージの名コンビが謎に挑むユーモアミステリ。それでもイギリスの黄金時代にトップを走ったフェラーズのミステリはしっかりしている。また迷探偵トビーと優秀なアシスタントのジョージは、ホームズとワトソン役を逆転させたユーモアミステリのお約束。さて、チンパンジーを殺したのは誰だ?

  • 誘拐事件の捜査の為、片田舎に訪れたコンビ探偵。誘拐されたのはチンパンジー!?と驚くやいなや、そのチンパンジーが死体として発見される。
    誰がなんのためにチンパンジーを殺したのか?
    軽やかな文体にユーモア溢れる掛け合い。とてもリーダビリティが高い。
    もうねすごいの。チンパンジーが殺される利用をメインに置きながら、どんどん村人の動機が飛び出してきて、全く飽きない。探偵と一緒に推理の構築を繰り返すことになるのよ。
    解説にシェリンガムという言葉が飛び出してきて嬉しい。そう迷探偵の物語でもあるんだよこれが!!

    後半事件が加速したのちに理解していく事の真相は正に驚愕。大胆な伏線に気づいた私はまんまと作者の罠にかかったのであった。

  • 2017/12/01読了

  • なかなかのトリックで、当時は素晴らしいものだったのかもしれないですね。
    ただ、現在では、あっと驚くとまではいかないし、平凡な真相と、イライラさせる展開とキャラ達に悩まされながら読んで、イマイチでした。
    とにかく探偵がショボいし行動に問題がありすぎて感情移入できない。

  •  相変わらずのトビーとジョージのドタバタ探偵譚。いやドタバタしているのは一見才走っているトビーの方だけで、鈍重そうなジョージの方は着実に真相をとらえているのだが。事件は殺人事件ならぬ殺猿事件とはまた振っている。なぜチンパンジーは刺殺されなければならなかったのか。それによって利益を得る者は、というところでそれぞれに事情をかかえた狭い田舎の限られた登場人物たちに嫌疑がかかっては消える。被害者が猿では警察も本腰を入れないので捜査はわれらが名コンビの独擅場だ。最後に意外なホワイダニットが明らかにされるとともにもう一つの事件が明るみに出されて幕となる。手がかりはすべて林の中へ、ってそううまくいくかいなと思うけど。

  • 初めての作者。クリスティが好きなので読んでみる。

    誘拐の危険を知らせる手紙を受け取り調査に向かうコンビ。
    現地に行くと狙われているのはチンパンジーだった。さらにチンパンジーと受け取るはずだった老婦人がいなくなり当のチンパンジーも殺されてしまう。

    奇をてらった様な導入だが、小さい範囲の中で展開し、ラストには驚きが残されているという英国本格の醍醐味を味わえる。

  • ダメ探偵と、デキル部下、という、コナン的なスタイルで、まぁそうであるならば笑いがないわけにはいかない。というわけで、いちいち間抜けな探偵っぷりに笑えるわけで、その点では外さない。というか、あまりにもキャラが出来上がっているので、むしろ出木杉君な感じなので。予定調和な世界をのんびりと楽しみつつ、でも割とギクッと来るラストは今の時代ではちっとばかし問題になりそうなところもあり、でもだからこそ妙な新鮮さを覚えてしまうのです。

  • 面白い。完成度高い。

    最初の謎はちょっと弱いかなと思ったけれど、さまざまな思惑が絡み合った人間関係、次々に繰り出される推理、「本格」の王道を行く作りで、ぐっと小説の世界に引き込まれる。
    そしてどんでん返しにつぐどんでん返し、大団円の圧倒的な伏線の回収の仕方。いやもうたまらん。すぐにもう一回1ページ目から読んじゃったからね。

    あまり知られていない古典だけど、紛うことなき名作だと断言できる。

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著者プロフィール

本名モーナ・ドリス・マクタガート。別名義にE.X.フェラーズ。1907年、ミャンマー、ヤンゴン生まれ。6歳の頃、英国へ移住し、ロンドン大学でジャーナリズムを専攻。1930年代にモーナ・マクタガート名義の普通小説で作家デビューし、ミステリ作家としては、「その死者の名は」(40)が処女作となる。英国推理作家協会(CWA)の創設メンバーとしてミステリの普及に尽力し、1977年にはCWA会長を務めた。代表作に「猿来たりなば」(42)、「カクテルパーティー」(55)など。95年死去。

「2020年 『亀は死を招く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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