マチルダ: ボクシング・カンガルーの冒険 (創元推理文庫 M キ 2-2)

  • 東京創元社
3.85
  • (9)
  • (8)
  • (7)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 82
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (508ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488194031

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  •  この本の中の一場面で「いやいや……」と思わず苦笑してしまった場面があります。カンガルーのマチルダがショーン・コネリー相手に、キスの雨を浴びせるのです(笑)

     ちなみにその際ショーン・コネリーは『ラブシーンに関するかぎり、マチルダには生まれながらの演技の才があった。危うく溺れかけるところだった』と話したそうです。(P339より引用)

     曲芸の出し物としてボクシングをすることで、日銭を稼いでいたマチルダとそのトレーナー。しかし、ひょんなことからその曲芸で世界チャンピオンを倒してしまい、世間は大騒ぎ。
    それはマスコミやマフィアまで巻き込む、大騒動となります。その騒動の顛末を描く小説です。

     裏表紙の内容紹介を読んだ限りでは、設定倒れになるのでは、なんて不安もゼロではなかったのですが、
    マチルダのエージェントを務めることになる野心家のビミーや、マチルダの飼い主兼トレーナーで、マチルダ第一のビリー・ベイカーなど、個性豊かなキャラクターたちのやりとりが、しっかりと描かれていて面白い。

     物語も単にマチルダの活躍を描くだけでなく、次々と仕掛けられるマフィアからの妨害工作、一方でマチルダの騒動を、マフィアの壊滅に利用しようとする記者のバークハーストの存在、
    そして上記したように、ショーン・コネリーを引っ張り出すなど、奇想天外な展開をテンポ良く用意し、読ませる側を飽きさせません。

     そして、クライマックスの読み応え抜群の試合シーンから、明らかになるあまりにも意外な真実。

     奇想天外な展開が続く物語のため、当たり前のことに思い至らず完全に騙されてしまいました……。それだけ、ボクシング・カンガルー”マチルダ”という物語にワクワクしていたのだろなあ。

     なのでこの結末に対して自分は、いいものを見させてもらった、と妙にさっぱりとした気持ちで、受け入れることができた記憶があります。

     ビリー・ベイカーが語る最後のマチルダの姿も印象的。散々読んでいる自分を引っ張り回したのに、最後はそうなのか、と。
    でも、これこそが本来のマチルダの姿だったんだろうな。ある意味マチルダだけが、この本の中で、損得なんて考えず行動していたのかもしれません。

     この本と出会ったのは、野外で行われていた古本市でした。上記したように、設定倒れの可能性も考えはしたのですが、外れなら外れでネタになるか、と思い購入しました(それに100円だったし)

     結果としては、普段読まないような展開の連続で、大当たりでした。おそらくもう在庫はないと思うので、そこが残念ではありますが。

     次回の東京創元社の復刊フェアで、アンケートが取られれば、リクエストしようと思いつつ、果たしてそこまで記憶が持つか、心配でもあります(苦笑)

  • ボクシングをする雄カンガルー、マチルダの話。

    ポール・ギャリコの話はいずれも素晴らしいが、中でもこの話は傑作だと思う。

  • なんとボクシングをするカンガルー、マチルダ。
    田舎の祭りの催しで、ミドル級チャンピオンのドカティをノックアウトしてしまう。
    そこに有名新聞記者のパークハーストが居合わせたせいで、一躍有名に。
    マチルダをめぐり、マフィアも巻き込んで、周囲の人々はジタバタ劇を繰り広げる。
    そしてクライマックス、マチルダvsドカティの正式なタイトル戦へ。

    とても面白かったです。小説の醍醐味が、惜しげもない山盛りでした。
    まず挙げるべきが、もちろんマチルダ。極端な擬人化などしていないのに、なんだかめちゃくちゃ面白くてにやにやしてしまう。マチルダの強さと愛らしい様がユーモラスに描かれていて、正直これだけでも読んでお得まちがいなしです。
    でもそれだけではなく。
    ストーリーラインが見事なまでに賑やかで、短くない作品ですが中だるみとは無縁。全然飽きません。
    そこに深く関わるのが、マフィアを牛耳るアンクル・ノノの存在。ここはあえて「アンクル・ノノ vs パークハースト」と独立させたい。ふたりの静かな攻防がじわじわと牽引力を発揮し、どうなっちゃうんだろうとどんどん読み進めてしまいます。

    結局悪い人いないんだねという結末を、ひねくれ者の私でも受け入れられました。
    清濁まるっと併せ呑みっぷりが見事なのと、やはりマチルダというキャラクターの勝利かな……。

  • ボクシング・カンガルー、マチルダが大活躍のボクシング小説(?)。

    マチルダはとても可愛いし、とても愛おしい。
    ただ、なんだか…すっきりしないというか、私はどうもマチルダを担ぎだし諸々を画策する男性たち(特にパークハースト氏)が好きではない。

    この結末がハッピーエンドなのかどうかも微妙…。

  • 痛快で、ユーモラスで、やさしくて、アイロニックで、世界を愛すべきものだと思わせるような本。
    ていうか電車の中で読んでると、くつくつ笑いそうになる。
    ボクシングを真剣に純粋に愛してるマチルダはもちろんだけど、彼を(そうマチルダって名前だけど男の子)取り巻く人たちも面白い。
    こんなの高校男子が読んでたらときめくなー。

  • チャンスに恵まれない芸能エージェント、ビミー。彼のもとに転がりこんできた天才ボクシング・カンガルー、マチルダは、ひょんなことから世界チャンピオンをKOしてしまった! たちまち新聞社からマフィアまでを巻きこみ大騒動! 一頭のカンガルーに夢を賭ける男たちの奇想天外な冒険と、その意外な顛末を痛快に描く傑作。

  • 一筋縄ではいかないポール・ギャリコ。いろんな仕掛けで読者を楽しませてくれます。

  • カンガルーのマチルダ。世界チャンピオンをKOしてしまったことから始まる奇想天外なおはなし。
    爽快で痛快、登場人物が最高!

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

1897年、ニューヨーク生まれ。コロンビア大学卒。デイリー・ニューズ社でスポーツ編集者、コラムニスト、編集長補佐として活躍。退社後、英デボンシャーのサルコムの丘で家を買い、グレートデーン犬と23匹の猫と暮らす。1941年に第二次世界大戦を題材とした『スノーグース』が世界的なベストセラーとなる。1944年にアメリカ軍の従軍記者に。その後モナコで暮らし、海釣りを愛した。生涯40冊以上の本を書いたが、そのうち4冊がミセス・ハリスの物語だった。1976年没。

「2023年 『ミセス・ハリス、ニューヨークへ行く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ポール・ギャリコの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×