リガの犬たち (創元推理文庫) (創元推理文庫 M マ 13-2)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488209032

感想・レビュー・書評

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  • 「死者ほど雄弁な者はいない」

    と言ったのは十四世紀の劇作家ヒマーワリ・メーロンですが、誰にでも亡くなった人に想いを馳せて
    あの人ならこんな時どうしたろう?とか、あの人ならこんな時なんと言っただろうか?なんてことを考えたことが一度や二度はあったのではないでしょうか

    本作の主人公ヴァランダーも亡くなった同僚でもある先輩刑事リードベリに幾度となく意見を求めます
    思慮深く冷静で経験豊富でヴァランダーの良き相談相手であり、導き手でもあったこの刑事は時にはその過去の言動から相変わらず有効なアドバイスをくれますが、時には黙して語らずヴァランダーをいなくなってしまった彼に哀愁を募らせます
    しかし自分にはその沈黙はヴァランダーに独り立ちを促しているように思えました

    だけど結局ヴァランダーはこの別れから立ち直ることなくぐずぐずと語り掛け続けるのです

    さらに今回もその惚れやすさにも改善は見られずに、悲しみのさなかにある女性にがっつりと情熱的な片思いをしてわが身を危険にさらします

    もう本当に男の愚かでどうしもない、そのくせ自分ではわりと悪くないと思ってるという男の痛い部分がよく描かれていて女性には読んでほしくない一冊と言えます
    男ってほんとどうしようもない生き物だってことがばれてしまいますので、今後ヴァランダーの物語は「女人禁制」にして頂きたい!ってあれ?男がどうしようもないなんて女性にはすでにばれてます?しかもアダムとイブの時代から?あ、そうなんですね
    失礼しました

    • ひまわりめろんさん
      1Q8401さん

      伝わりづらかったかも「女人禁制」は登場人物じゃなくて女性には読んでほしくないなぁ~ってことですよね
      「男は誰でも心...
      1Q8401さん

      伝わりづらかったかも「女人禁制」は登場人物じゃなくて女性には読んでほしくないなぁ~ってことですよね
      「男は誰でも心の中に安田大サーカスクロちゃんを買っている」と言ったのは十三世紀の冒険家ヒマーワリ・メーロンですが、ほんとその通りで身勝手な思い込みで情熱的な恋に身を焦がしてしまうので男ってもんですが、一方女性の側は結構冷めた目で見ていて、後になって思い返してみると「うわっ恥ずかしい」と記憶を消してしまいたくなるようなことってあったりしますよね
      そういう男のちょっと子供じみたところがバシッと描かれていますのでほんと女性には読んでほしくないのです。鼻で笑われそう
      2022/12/24
    • ひまわりめろんさん
      もっちー
      1Q84さん

      ヒマーワリ・メーロンの一族は代々名言を残していることで世界的に知られていますね
      名前は世襲制となっているの...
      もっちー
      1Q84さん

      ヒマーワリ・メーロンの一族は代々名言を残していることで世界的に知られていますね
      名前は世襲制となっているので正確には3世とか15世とか付けないといけないのですが、私のレビューでは省略させてもらってます
      学校の授業では選択科目なんで知ってると人と知らない人がいて当然ですね
      私の高校では音楽、美術、家庭科、技術、ヒマーワリ・メーロンでどれか選んでたはずです
      2022/12/24
    • 1Q84O1さん
      冒険家まででてきたヮ(゚д゚)ォ!
      メーロン一族すげーぇ!!

      そして選択科目にヒマーワリ・メーロン
      なんて楽しそうな高校ですかw

      こうな...
      冒険家まででてきたヮ(゚д゚)ォ!
      メーロン一族すげーぇ!!

      そして選択科目にヒマーワリ・メーロン
      なんて楽しそうな高校ですかw

      こうなったら図書館でメーロン名言集を借りて勉強だ!
      2022/12/24
  • 第二弾で、いきなりのスケールの大きさに圧倒。
    願わくば、自作ではヴァランダーの相棒がいますように…。  

    偶然、二作連続で「スウェーデンとバルト三国」が舞台の作品を読了。地図を片手に読んだので、よりこのエリアを身近に感じる。

  • 「刑事ヴァランダー」シリーズ第二弾

    どうしようもなく「中年男」の主人公ヴァランダー、余計なお節介なんじゃないかなって思うラトヴィア行き
    動機がまたまた「女性」目当てって、なんだかコメディドラマ?
    いえ、とってもシリアスなミステリードラマで、そのアンマッチが、ヴァランダーの魅力かもしれません。

    相変わらず推理というより「体当たり」で、映画「ダイハード」のジョン・マクレーン並みのハードワーク

    なぜ読者が主人公に寄り添う感覚があるかといえば、この物語がヴァランダー一人の目線のみで進行するからかな〜
    だから主人公の困惑も疲労感も、すぐに読者に伝染する。

    突然のシーンチェンジもなく時系列で進むから、あれこれ頭を働かせることなく一本道で読むことができる。

    ぼちぼち好きです。

  • ヴァランダーのシリーズ2作目。2作目なのにいきなりスウェーデンを飛び出し、独立後においてもロシア支配が色濃く残るラトヴィアが舞台です。事件の発端は密輸船の乗組員が漂流する救命ボートを発見し回収しようと手繰り寄せたところスーツを着た死体が2体乗っているのに気づき、沿岸まで牽引してきたこと。歯の治療痕などから死体はラトヴィアのギャングであることがわかり、かの国の警察に引継ぎをするべく一人の刑事に来てもらいます。お互いに得意でもない英語で言葉少なに会話し黙って酒を飲んだリエパ少佐とヴァランダーはお互いに尊敬の念と親近感を持ちます。ラトヴィアに引継いだのでこれで一件落着したはずが、帰国したその日にリエパ少佐の身に起きたことによりヴァランダーは全く知らない土地であるラトヴィアに呼ばれ、良く状況がわからないまま大きな渦に巻き込まれてしまいます。距離的には近いラトヴィアとスウェーデンですが政治状況も歴史も社会制度も全然違っていて、ラトヴィアでは軍の支配の名残なのか警察の階級も大佐・中佐・少佐と称されているのでした。短い親交ながら信頼に足る人物とお互いに認め合ったリエパ少佐への義理という細い糸の繋がりだけで、土地勘も無く誰が敵で誰が味方なのかもわからないなかで、ほとんど不可能なのではないかというミッションを与えられて奮闘するヴァランダーの様子は、サスペンスの要素もあり、アクションもありながら、哲学的な思索もあって、不思議な作品でした。読み始めたばかりのシリーズでこの展開で少し戸惑いましたが、面白かったです。

  • 途中からソ連が崩壊する前後のラトヴィアを舞台にした物語に転換。旧共産圏社会が興味深いことと、ヴァランダーがラトヴィアに潜入した後のスリルある展開が面白い。翻訳が優れているためか読みやすかった。シリーズ1作目よりこちらの2作目のほうが個人的には好き。

  •  クルト・ヴァランダーもの2作目。このシリーズ、単なるドンパチではなく明確なテーマが据えられているので社会派警察小説というカテゴリーになるのだろうけど、何といってもヴァランダーの人間としての魅力が秀逸だ。ますます色濃くあらわれる人間的な弱さにとても共感をおぼえる。2作目にしてもはや僚友リードベリが亡くなってしまい、ヴァランダーは自問自答しながら独力での捜査を強いられる。事件は救命ボートで流れ着いた身元不明の射殺死体という発端だが、前作同様表向きの事件は本題ではなく、その根底にあるより巨大な邪悪なものがテーマとなっている。舞台はラトヴィアの首都リガへ飛び、そこでのロシアとの民族問題に巻き込まれてゆく。そうなるともう一介の警察官としての捜査という範疇を超越しているので、後半はもう警察小説というよりはそこまでやるかというミレニアムばりの破天荒なハードボイルド冒険譚のようになっている。これがリスベット・サランダーならもっと安心して見ていられるのだが、クルト・ヴァランダーなので結構ハラハラさせられる。二人の高官のどちらが悪の正体か。最後の最後にそれが明らかになるシーンは非常にスリリングでうまくできている。

  • 瓦解する共産主義。バルト海東岸のラトヴィアで暗躍する冷たい権力闘争。不確実な自由のため戦い続ける市井の人々。
    海岸に流れ着いたゴムボートの中に高級なスーツを身にまとった二人の男の射殺死体。調査を担当する田舎町イースタの刑事ヴァランダーは、思いもよらない形でスウェーデンからラトヴィアへ国境を越えた事件の主役を演じることに。諦観漂う警察小説の前半から想像もできない展開が待ち受けております。抑えきれない恋心。そのギリギリの踏ん張りに魅せられました。

  • スウェーデンの作家「ヘニング・マンケル」の長篇ミステリ作品『リガの犬たち(原題:Hundarna i Riga)』を読みました。

    「ヘニング・マンケル」作品は、今年の3月に読んだ『北京から来た男』以来ですね… 北欧ミステリが続いています。

    -----story-------------
    【CWAゴールドダガー受賞シリーズ】
    スウェーデン南部の海岸に、一艘のゴムボートが流れ着いた。
    その中には、高級なスーツを身につけた二人の男の射殺死体が抱き合うように横たわっていた。
    彼らはいったい何者なのか?どうやら海の向こう、ソ連か東欧の人間らしいのだが…。
    小さな田舎町の刑事「ヴァランダー」は、この国境を超えた事件に思いもよらぬ形で深入りすることになるのだった!
    注目のシリーズ第二弾。
    -----------------------

    警察小説「クルト・ヴァランダー」シリーズの第2作… 第1作の『殺人者の顔』、第4作の『笑う男』、第5作の『目くらましの道』、第7作の『背後の足音』に続き、本シリーズを読むのは6作目です、、、

    刊行順に読めてませんが… 古書店で探しながら読んでいるので仕方ないですね。


    1991年(平成3年)2月12日、イースタ警察署に「間もなく2人の死体を乗せた救命ボートが漂着する。」という匿名の電話が掛かってきた… 翌日、電話の通りに救命ボートがモスビー・ストランドで発見された、、、

    乗っていた死体を検分すると靴もネクタイもスーツは高価な物ばかりで、身体には銃創と拷問された痕跡があり、胸を銃で撃ち抜かれていた… 歯科治療の痕から東欧出身者だと推定され、救命ボートの特徴からもそれが東欧製であることが判明した。

    外務省(Utrikesdepartementet)を通じ各国に問い合わせるとラトビアから死体の身元に関する情報が送られて来るとともに現地から捜査官が派遣されて来ることとなった… ラトビアからやって来た「カリウス・リエパ中佐」によると殺された2人はマフィアの仲間でラトビアでの逮捕歴があるということであった、、、

    ヘヴィースモーカーの「リエパ中佐」に辟易しながらも、「クルト・ヴァランダー」は小柄でひどい近眼の「リエパ中佐」の熱心な働きぶりと鋭い洞察力に敬服する… イースタ警察署に保管してあった証拠物件の救命ボートが盗まれるという事件も発生したが、1週間の滞在後「リエパ中佐」が遺体を引き取って帰国すると共に捜査は全てラトビア側に引き継がれ、スウェーデン側にとっては一件落着に思われたのだが、実はこれは氷山の一角に過ぎなかった。

    「リエパ中佐」が帰国した翌日、イースタ警察署に「リエパ中佐」が何者かに殺害された旨を報じるテレックスが送られてきた… ラトビア警察からの捜査協力要請を受けて「ヴァランダー」は初めてバルト海をわたりラトビアの首都リガに飛ぶ、、、

    そこで「ヴァランダー」が垣間見たのはかつての社会主義大国ソヴィエト連邦が崩壊する瀬戸際で起きた、ソ連支配下の国における独立運動とそれを阻もうとする勢力との壮絶な闘いだった… 全てが軍によって、あるいはソ連に通じる人脈によって掌握されている社会で、自由を求める代償は、生命の危機である。

    地下で果敢に闘う人々、その動きを抑え込もうとする勢力、その中で裏切りや密告を警戒し、疑心暗鬼になって暮らす人々の姿が見える… また同じ人々が命懸けの信頼、同士愛、愛国心をもって独立運動を進める姿も見える、、、

    そのような人々の極限の姿が、それまで国家や政治にはあまり関心がなかった「ヴァランダー」の心を揺さぶる… 理想に燃え自由を求めて一介の田舎警察官にすぎない自分を信頼して、助けを求めるラトビアの人々をシニカルに見つめ、巻き込まれないとする「ヴァランダー」だが、しだいに自由と独立という大義のために闘う人々を信じるようになる。

    連絡係の女「イナセ」が襲撃で殺されたり、「リエパ中佐」の同士で「ヴァランダー」にこの国の事情を話してくれた「ウピティス」が逮捕されたり、ホテルの売店で働く女「ヴィラ」が危険を冒して自宅にかくまってくれたり、「リエパ中佐」の妻「バイバ・リエパ」と交流したり、という個人的体験をすることで、「ヴァランダー」はこの国の人々の置かれた状況を理解し、非合法なカタチで真相究明に協力することに… 「リエパ中佐」の上司である「ヤゼプス・プトニス大佐」や「ユリス・ムルニエース大佐」、その部下「スィズ軍曹」等のうちの誰かが黒幕と睨んだ「ヴァランダー」は、「リエパ中佐」が遺した証拠を入手するためにラトビア警察に侵入し、事件の真相に迫る。、、、

    終盤は、緊張感の続く、スパイ映画さながらのサスペンスフルな冒険活劇となっていて愉しめましたね… 旧社会主義国家であるバルト諸国の闇を見事に描いた快作でした。

    やっと、「ヴァランダー」と「バイバ・リエパ」の出会いを知ることができました… やっぱ、できれば順番に読みたいですね。



    以下、主な登場人物です。

    「クルト・ヴァランダー」
     イースタ警察署の刑事

    「リードベリ」
     故人。クルトの元同僚

    「マーティンソン」
     イースタ警察署の刑事

    「カール・エヴァート・スヴェードベリ」
     イースタ警察署の刑事

    「ハンソン」
     イースタ警察署の刑事

    「ビュルク」
     イースタ警察署の警察署長

    「ムルト」
     検死医

    「エッバ」
     イースタ警察署の交換手

    「アネッテ・ブロリン」
     イースタ警察署鑑識課の刑事

    「クルト・ヴァランダーの父」
     画家

    「ビルギッタ・ツーン」
     外務省の役人

    「スツーレ・ルンルンド」
     本部から来た刑事

    「バッティル・ロヴェーン」
     本部から来た刑事

    「カルリス・リエバ中佐」
     ラトビア警察の中佐(リガの犯罪捜査官)

    「ヤゼプス・プトニス大佐」
     ラトビア警察の大佐でリエパ中佐の上司

    「ユリス・ムルニエース大佐」
     ラトビア警察の大佐でリエパ中佐の上司

    「スィズ軍曹」
     大佐たちの部下

    「バイバ・リエパ」
     カルリスの妻

    「イネセ」
     バイバの仲間

    「ウピティス」
     バイバの仲間

    「スツーレ」
     クルトの別れた妻

    「リンダ・ヴァランダー」
     クルトの娘

  • 再読。こんなに激しい展開なのに、ヴァランダーが惚れっぽくてお腹が弱いところだけ覚えていました(前作でも早食いしてお腹を壊していましたね)。既読はここまで。“アルプスでのスキー“で本当は何があったのか、話せる相手は現れるのかな。孤独なヴァランダーに幸あれ。

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