タンゴステップ〈上〉 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M マ 13-7)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488209087

感想・レビュー・書評

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    下巻で

    孤独、秘密、理由のない不安。
    人が刻むタンゴの足音がそこに被る。
    まさにヘニング・マンケルが作る物語の香りが漂う。

  • 北欧ミステリの傑作。とにかく出来が素晴らしい。
    地名、人名とか日本人には馴染みない部分もあるけど、設定もお話の進め方も素晴らしくて、読みやすいし、謎の設定も無理がなくて、楽しめる。
    事件自体は、かなり生臭いんだけど、読むのが嫌になるほどではない。

  • この作家の単発モノを読むのは初めてだったが、やっぱり面白い。陰惨な事件を縦糸に、舞台となる土地と人々を横糸にストーリーを紡いでいく熟練の技に、相変わらずの安心感と満足感。
    今回は「死」というテーマが根底に横たわっているため、全体を通して重厚なイメージが強い。過去から逃げている男と現実逃避したい男──この対極にいる者同士がめぐり合った時から、物語はゆっくりと確実に動いていく。前半は、主人公が振り切ろうとしても振り切れない事件との奇妙な繋がりを中心に描かれており、後半は、関係者の心の闇と主人公の複雑な心理がクローズ・アップされている。
    ヴァランダー・シリーズは脇役も魅力的だったが、本作品でも各キャラが実にいい味を出している。微妙に「ご都合主義」と感じるシーンはあるものの、ことのほか重い事件の背景の影に、うまく沈んだように思える。ミステリとしての謎解きは肩透かし。エピローグとプロローグもどこか的外れで効果的とは思えないが、全体のバランスの良さと完成度の高さはさすが。

  •  ヘニング・マンケルの非ヴァランダーもの。クルト・ヴァランダーシリーズを読み終えてしまったので、手に取ってみたがこれがなかなかの力作で感心した。舌がんの診断を受けて落ち込む警察官ステファン・リンドマンが主人公。元の同僚が北部辺境の隠れ家で惨殺されるという事件が起こり、様子をうかがいに現地に向かう。そこで旧ナチスの残党の暗躍に巻き込まれて右往左往したうえに、真相にたどりついて間一髪解決に導く。まさにクルト・ヴァランダーものそのもののよう。ステファンはヴァランダーより一回り以上若いが、思考や行動様式がおかしいくらい似ていてすぐにはいりこめる。このあたりは作者とともに訳者が同じせいだろう。共同捜査をすすめる現地警察のジョセッペ・ラーソンがまたいい味だ。戦争の残像を引き継ぐ暗黒組織という社会性を主題に置いたところもこの作者らしく、ヴァランダーが登場しなくても十分読み応えのある作品に仕上がっている。もっともっと読みたいが、もう作品は残り少ないのが残念。

  • スウェーデンの作家「ヘニング・マンケル」の長篇ミステリ作品『タンゴステップ(原題:Danslararens aterkomst)』を読みました。

    『目くらましの道』、『背後の足音』に続き「ヘニング・マンケル」作品です… 読み始めると北欧ミステリは続いちゃいますね。

    -----story-------------
    〈上〉
    男は54年間、眠れぬ夜を過ごしてきた。
    森の一軒家、ダークスーツを着て、人形をパートナーにタンゴを踊る。
    だが、ついに敵が男を捕らえた……。
    「ステファン・リンドマン」37歳、警官。
    舌ガンの宣告に動揺する彼が目にしたのは、新米のころ指導をうけた先輩が、無惨に殺害されという記事だった。
    治療を前に休暇をとった彼は、単身事件の現場に向かう。
    CWA賞受賞作『目くらましの道』に続く、スウェーデン推理小説の記念碑的作品。

    〈下〉
    殺された元警官の住んでいた場所を訪ねた「リンドマン」は、独自に捜査を開始する。
    だが、調べを進める彼の前に、新たな死体が。
    殺されたのは「モリーン」の隣人だった。
    次々とあきらかになる、先輩警察官の知られざる顔、そして意外な過去。
    自らの病に苦しみ、迫り来る死の恐怖と闘いながら、「リンドマン」は真実を追い求める。
    「ヘニング・マンケル」が、スウェーデン社会の闇と、一人の人間としての警察官「リンドマン」の苦悩を鮮やかに描き出す。
    訳者あとがき=「柳沢由実子」
    -----------------------

    「ヘニング・マンケル」作品ですが、これまでに読んだ警察小説「クルト・ヴァランダー」シリーズではなく、初めてのノンシリーズモノ(「クルト・ヴァランダー」シリーズのスピンオフ作品、番外編と呼ばれているようです)です… でも、作品全体に感じられる暗く、陰鬱な雰囲気等は、「クルト・ヴァランダー」シリーズと共通していましたね。

     ■プロローグ ドイツ 一九四五年十二月
     ■第一部 ヘリェダーレン 一九九九年十月から十一月
     ■第二部 ブエノスアイレスから来た男 一九九九年十月から十一月
     ■第三部 石の下の虫ども 一九九九年十一月
     ■エピローグ インヴァネス 二〇〇〇年四月
     ■訳者あとがき 柳沢由実子

    1999年10月19日早朝、ヘリェダーレン地方の森で隠遁生活を送っていた元警察官の「ヘルベルト・モリーン」が殺害された… ウステルスンド警察の「ジュセッペ・ラーソン」が現場を検証すると「モリーン」の家の床には被害者の血染めの足でタンゴのステップを踏んだ跡があった、、、

    ボロース警察署で「モリーン」の同僚だった「ステファン・リンドマン」は医師から舌癌の宣告を受け病気休暇をとる直前に新聞で「モリーン」が殺害されたことを知った… 常に何かに怯えていた「モリーン」の姿を思い出した「リンドマン」は休暇を取得して事件現場へ向かい、「モリーン」の過去を調べたところ、「モリーン」は1950年代初めに軍隊を辞め、名前、住居を変え、結婚して2人の子供を儲けた後1957年に警察に事務員として勤め始め1960年代に警察官となっていたことが分かった。

    その後離婚し警察を退職したあとでヘリエダーレンに転居してきたが、そこでは隠れるようにひっそりと生活しており、その住居も数少ない友人の「エルサ・ベリグレン」を介して購入していた… 管轄外の場所で一個人として「モリーン」の周辺事情を探っていた「リンドマン」は「モリーン」の隣人でヴァイオリン奏者の「アブラハム・アンダソン」が殺害されているのを発見した、、、

    再び「モリーン」の家を訪れた「リンドマン」が「モリーン」の隠していた日記と手紙を見つけ出したところ、その中には若い頃の軍服姿の「モリーン」が写った写真が含まれていた… しかし、その軍服は「モリーン」の経歴に記されていたスウェーデン軍の物ではなくナチス・ドイツの親衛隊の制服であった。

    二つの殺人事件は同一犯の仕業として捜査が続けられ、休暇中の「リンドマン」は管轄外での事件に否応なしに巻き込まれていき、歴史の巨大な闇を知ることになる…  次々と明らかにになる、「モリーン」の知られざる顔、そして意外な過去、、、

    自らの病に苦しみ、迫り来る死の恐怖と闘いながら、「リンドマン」は真実を追い求める… 現代スウェーデン社会の闇と、一人の人間としての警察官「リンドマン」の苦悩を鮮やかに描き出された作品でした。

    「モリーン」を殺した「アーロン・シルベシュタイン」の正体は最初に明かされているのですが、第二の殺人犯は終盤まで伏せられているので、「リンドマン」等が同一犯の仕業として捜査を続けることにやきもきしつつ、一緒にもう一人の殺人犯を推理していくことが愉しめる作品に仕上がっていましたね… 暗く陰鬱なスウェーデン北部を舞台にした息詰まるような緊張感とハードな展開、、、

    第二次世界大戦でのスウェーデンとナチス・ドイツの関係や、現代社会におけるナチズムの台頭等、社会の暗部を抉り出す筆致は単なる警察小説には留まらない、社会小説として雰囲気を感じさせますね… 濃密で重厚な作品でした。

    そうそう… 本作品には、「クルト・ヴァランダー」シリーズ第5作『目くらましの道』で、最初に被害者となった元法務大臣「グスタフ・ヴェッテルステッド」の兄「エミール・ヴェッテルステッド」がナチスを崇拝する肖像画家として登場しています。



    以下、主な登場人物です。

    「ステファン・リンドマン」
     ボロース警察署の警察官

    「ヘルベルト・モリーン」
     定年退職した警察官、リンドマンの元同僚

    「ヴェロニカ・モリーン」
     情報通信のコンサルタント、ヘルベルトの娘

    「エルサ・ベリグレン」
     ヘルベルトの友人

    「アブラハム・アンダソン」
     モリーンの隣人

    「ハンナ・ツンベリ」
     モリーンの家の清掃人

    「エレナ」
     ステファンの恋人

    「ハンス・マークルンド」
     不動産業者

    「ビュルン・ヴィーグレン」
    エルサの隣人

    「エミール・ヴェッテルステッド」
     肖像画家

    「マグヌス・ホルムストルム」
     ヴェッテルステッドの護衛

    「ハンス・ヤコービ」
     老弁護士

    「ジュセッペ・ラーソン」
     ウステルスンド警察署の警察官

    「ニッセ・ルンドストルム」
     ウステルスンド警察署の警察官

    「エリック・ヨアンソン」
     スヴェーグの警察官

    「オラウソン」
     ボローズ警察署の捜査課長

    「アーロン・シルヴェシュタイン」
     ブエノスアイレスから来た男

    「マリア・シルヴェシュタイン」
     アーロンの妻

    「フルナー」
     ブエノスアイレスのドイツ人

    「スタックフォード」
     戦犯処理担当の英軍人

  • ゾクゾクする

  • ヴァランダー刑事のシリーズではなく単発のミステリ(ひとりだけ『ピラミッド』に収録されていた若い頃の作品に出てきた消防隊員で共通の登場人物が居ました)。犯人のモノローグと警察側の捜査が交差しながら話が展開するのですが、今回はその追われる犯人と追う警察という二極の対立構造に、中盤になってもう一極謎めいた軸が現れてきて、そこから話は単なる個人的な怨恨という動機だけでなく、歴史と社会に根深くはびこる偏見と差別と政治的見解という大きな問題の海原に漕ぎ出すような感じになってゆきました。警察側の設定も、30代で舌にがんが見つかり化学療法を始めるために病気療養中のステファン・リンドマン刑事が、病と死への恐れと未知なる闘病生活に自分を見失いかけ、寄り添おうとする恋人の気持ちさえ煩わしく感じられ、そういう自分のつらい現実から逃避するように元の同僚で先輩刑事の殺人事件の謎の解明にのめり込む(しかも他所の管轄地域で)という、ひねりのあるもので、病気や死を自分にも起こりうることだと実感していない30代でがんにかかり動揺しているとはいえ、主人公ステファンのいじけ具合や迷走や先走り具合はかなりのものでしたが、事件が起こり客員捜査員のように参加した地域の警察の人々の素朴で率直で気のいい人たちにいい具合に受け入れられて、それなりに活躍もしつつ襲われて死にそうな目に遭ったりもしながら、がんの発見と事件捜査(をきっかけとした過去の思い出の再構築)をきっかけに生まれ変わって恋人と自分の仕事場に戻っていく、という、再生の物語になっていて、良かったです。本編が終わった時点でひとつだけ不満なことがあったのですが、エピローグを読んだらその不満点もすっきりと解消されて、読後感もすっきりしました。面白かったです。

  • スウェーデンの小説である。今まで北欧の小説というのは読んだことがなかったけれども、今回の小説は読みやすく面白い。上巻なので結末は下巻になるだろうが、こうゆういろいろな本を紹介してくれるネットのありがたさをつくづく感じる。

  • ヴァランダーのシリーズだとばかり思っていたので読み始めて少しガッカリ
    でも読み始めるとやっぱり面白い スウェーデンのナチスについての話は興味深い やはりソ連が近かった国だからだろうか
    途中、他の本を読んでいたのでこの上巻を読み終わるのに時間がかかってしまったが、すぐに下巻に入ろう どう決着が付くのか楽しみだ

  • またもやナチ文学。登場するナチ信奉者の悪びれなさに呆気に取られた。これが現代ヨーロッパの現実なのか。

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