- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488243012
感想・レビュー・書評
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ウェクスフォードもの。アンという女性が殺害されたと警察署に手紙が届いた。その頃、アンという女性が行方不明になっており、ウェクスフォードたちは捜査を開始する。その捜査の先にあった結末とは。とりあえず思ったのは題名がなぜ「運命のチェスボード」なのかということ。チェスっぽい表現は冒頭の警察署の床がどうのこうのというだけ。その捜査がチェスの試合のようだからということなのでしょうか。ストーリーは確かにそれで、地道な捜査による成果を組み合わせたもので読みごたえはありましたね。ラストもひっくり返され驚きましたね。推察はできるんだとは思いますが、この入り組んだ人間関係を巧に操り、ストーリーに欠陥なく最後にもってかれて、ストーリーも犯人という結果も両方楽しめました。
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どうにも、今の私には、合わない本だったらしい。
まず、どこに重心を置いて読めばいいかわからなかった。
犯人なら犯人、
被害者なら被害者、
刑事なら刑事、
中心になる人物があって、彼に着いていく形で話が進んでいくかというと、どうも違う。
いや、そういう人物がいたにはいたが、これがさっぱり魅力が無い。
人格が冷たいというか人間味がない。
人を人とも思わない。
しかし、いっちょまえに色気づきはしている。
なんだこいつ。
嫌なやつを通り越して、もはや蔑むべき男である。
「クリスティは人物が書けていない、私は違う」と、
後書きによれば、作者ルース・レンデルはインタビューにそう答えていたようだが、
人物に深みがあろうとなかろうと、いっそペラペラ人間だろうと、
読者が魅力を感じる人物であるかどうかのほうが、よほど重要ではないかと、
私は強く彼女に言いたくなった。
こんな男の後を追う形で話を追いかけていくのは苦痛である。
が、しかし、話の先が気にならないわけではなく、
最後にあっと言わせてくれるかもしれないので、
渋々ながら読み進めていった。
なるほど、うなるべき点のある話ではあった。
実はこれはシリーズものの一冊で、シリーズの中心人物は、ウェクスフォード警部だという。
件の嫌な人物の上司だ。
このウェクスフォード警部は、嫌なやつではなかった。人間味も覗えた。滑稽味さえあった。
シリーズは18冊まである人気作で、これはその3作目なのだそうだ。
『運命のチェスボード』なる邦題は、不評らしいが、私にはそうは思えない。
ルース・レンデルの他の作品は知らない、その書き方もわからないが、
この一冊についていえば、人物を、ひとつひとつの駒のように俯瞰で捉えているようにみえる。
そしてその駒それぞれを、緻密で確かな計算によって、一つ一つ動かしていくのだ。
運命の女神さながらに。
その作風をあらわすのに、ふさわしい邦題だと思う。
この『運命のチェスボード』の評判はよい。わざわざ復刊される本でもある。シリーズ18作もある。
他のシリーズも読んで、たとえばウェクスフォード警部の、作者ルース・レンデルの魅力にいつか気付いたならば、この話の魅力も、私に伝わるかもしれない。
他の作品を読んでみたい気もしている。