埋葬された夏 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (488ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488270063

作品紹介・あらすじ

1984年初夏、海辺の町で起きた残酷な殺人事件で、ひとりの少女が犯人として断罪された。そして20年が経ち、新たな証拠の出現と私立探偵の調査により、終わったはずの事件が再び動きだす。殺人に至るまでの一年間、少女と周囲の人々が本当は何をして、何をしなかったのか? 過去と現在を行き来する語りが読む者にもたらすのは、“被害者捜し”の趣向、衝撃の真相、そして鮮烈な幕切れ。創元推理文庫が贈る、英国発傑作ミステリ。

感想・レビュー・書評

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  • イギリスの作家「キャシー・アンズワース」の長篇ミステリ作品『埋葬された夏(原題:Weirdo)』を読みました。
    ここのところ、イギリスの作家の作品が続いていますね。

    -----story-------------
    1984年、イギリスの海辺の町で、ある少女が殺人者として裁かれた――そして20年後、弁護士に依頼された私立探偵が町を訪れ調査を始めたことで、終わったはずの事件が再び動きだす。
    あの夏、少女のまわりで、本当は何が起きていたのか。
    現在と過去の交錯する語りがもたらす「被害者捜し」の趣向、深く心に刻まれる真相の衝撃と幕切れの余韻。
    現代英国ミステリの傑作、ここに登場。
    解説=「霜月蒼」
    -----------------------

    2012年(平成24年)に発表された「キャシー・アンズワース」の長篇第4作、、、

    著者は、もともと音楽雑誌のライターとして執筆活動をスタートさせただけあって、作中にもふんだんに音楽の話題が出てきます… 各部のタイトルや章題の全てがパンク/ニューウェーヴを中心とした実在するバンドやアーティストの曲名やアルバム名から採られていることも印象的な作品ですね。


    20年前、イギリスの海辺の町・アーネマスで起きた凄惨な殺人事件を巡り、DNAの検査技術が進歩したことにより、現場に未知の人物のDNAが残されていたことが判明し、勅撰弁護人「ジャニス・メイザース」の依頼で事件の再調査を進める元刑事の私立探偵「ショーン・ウォード」が当時のことを訪ね歩くという現在のパート(2003年~2004年)、、、

    少女「コリーン(リーニー)・ウッドロウ」の通う中学校に、この町の観光の目玉である海辺の遊園地の所有者「エリック・ホイル」の孫娘「サマンサ(サム)・ラム」がロンドンから転校してくる… 母親との折り合いが悪く、他に友だちのいない「サマンサ」が「コリーン」に近付いてくるが、徐々に彼女の真の顔が明らかになり、やがて殺人事件へつながっていく20年前のパート(1983年~1984年)、、、

    犯人とされた少女「コリーン」は、真の加害者だったのか!? 現在と過去が交互に語られながら真相に迫る傑作ミステリ……。


    殺人事件が起こるのは、なんと422ページ… ここまで誰が、どうして、どうやって殺されたかもわからない!?

    そして、現在と過去の括り付けが難しく、ややもどかしく感じる部分もありましたが… これも終盤を愉しく読ませるための仕掛けだと思えば納得。

    読後感はスッキリしていたし、愛情や友情、信念を感じられるエンディングも好感がもてたので、トータルでは愉しめたし、面白く感じた作品でした、、、

    「「リーニー」」彼女は言った。「もう大丈夫。行こう」   ←この最後の一行は、ホントに良かったなぁ。

    大好きなイギリスの1980年代のニューウェーヴ系のミュージシャンや曲名が出てくるのも嬉しかったなぁ… 「エコー&ザ・バニーメン」が多かったですが、お気に入りの「ザ・スミス」の曲"What Difference Does It Make?"も使われていたしね、久しぶりに当時の曲を聴きたくなりました。


    以下、主な登場人物です。

    「ショーン・ウォード」
     元刑事の私立探偵

    「ジャニス・メイザース」
     勅撰弁護人

    「フランチェスカ・ライマン」
     新聞社の編集長

    「マーク・ファーマン」
     キャプテン・スウィングの店主


    【1980年代当時の人々】

    「コリーン(リーニー)・ウッドロウ」
     <異形(ウィアード)>と呼ばれた少女

    「デビー・カーヴァー」
     コリーンの親友

    「アレックス・ペンドルトン」
     デビーの幼なじみ

    「ダレン・ムアコック」
     デビーのクラスメイト

    「ジュリアン(ジュールズ)・ディーン」
     デビーのクラスメイト

    「サマンサ(サム)・ラム」
     転校してきた少女

    「ニール・リーダー」
     クラスの不良少年

    「シェーン・ローランズ」
     クラスの不良少年

    「デール・スモレット」
     クラスの不良少年

    「ノージ」
     コリーンの友人

    「ジーナ・ウッドロウ」
     コリーンの母

    「マルコム・ラム」
     サマンサの父

    「アマンダ」
     サマンサの母

    「ウェイン」
     アマンダの恋人

    「エリック・ホイル」
     アマンダの父、遊園地経営者

    「エドナ・ホイル」
     エリックの妻

    「フィリップ・ピアソン」
     デビーたちの担任教師

    「シーラ・オルコット」
     ソーシャル・ワーカー

    「レナード(レン)・リヴェット」
     アーマネス署の警部

    「ポール・グレイ」
     アーマネス署の部長刑事

    「ジェイソン・ブラックバーン」
     アーマネス署の部長刑事

    「アンドルー・キッド」
     アーマネス署の部長刑事

  • 読みにくいわ

  • 初読

    英国、地方都市、労働者階級の若者の閉塞感。
    私の中で作品によって好きか嫌いかに分かれる題材だけど
    これはダメな方だった。ゴスに全く興味ないしな〜〜〜

    1983年と2003年、過去と現在が交互に描かれるのも
    犯人はおろか被害者も誰なのか読み進めないとわからない構成も
    結構好きな筈なのだけど、これは登場人物が多過ぎるのか
    その分一人一人の魅力に欠けるからなのか、
    中々読み進めるのに苦戦してしまった。
    過ちを取り戻そうとする大人って大好物なのだけど。
    まぁでも多分「(生まれつきの要因的に)邪悪な子供」が
    邪悪な存在として描かれるのが苦手なんだろうな。
    青春パートも悪くなかったけど、男の子達が誰が誰やらなままw

    うーん、これいつ面白くなるのかな。。。と思いながら
    最後の最後、本当にラスト1頁にはおおおお!?となりました

  • 登場人物が多くて、年代もコロコロ切り替わるので、慣れないとわかりづらい。慣れたら、とっても面白かった。

  • 20年前の凄惨な殺人事件との謎に挑む私立探偵。20年前と現在が交互に進行していく。20年前の殺人事件の内容が最後まで明かされず、また登場人物も結構いるのが、最初はなかなか20年前と現在で自分の頭の中でつながらず、序盤はかなり読みにくかった。中盤いろいろ明らかになっていって面白かったが終盤にかけていろいろ表現が抽象的で読者に想像させるような人間関係だったり、事件経過だったりするので若干もやもやしながら読了。私立探偵ももう少し目立っても良かったのでは。

  • イギリスの港町で20年前に起きた凄惨な殺人事件。犯人として捕まったのは“魔女”として周囲から異端視されていた少女だった。だが新たな証拠が出て、元刑事の私立探偵が弁護人から再調査の依頼を受ける。
    話は現在の探偵がこの街に乗り込んで過去を掘り起こしていくのと、20年前の事件に至る過程が交互に描かれる。大人の論理で判断される子どもたちが、苦しみから逃れようともがく姿が痛々しくて読むのが辛かった。ほとんどが弱さを持った善良な人々なのに、ごく一部の邪悪な人間によって支配された街の姿が明確になっていくのが恐ろしい。
    終わり近くまで被害者が誰か分からない書き方は読者を惹き付けるし、過去と現在の人物が繋がった瞬間はぐっときた。

  • 20年前の事件の調査を依頼され、海辺の町に来た私立探偵が軸の現在と、犯人となった少女が主人公の周辺の20年前と…物語は交互に進められていく。特に20年前の少女たちの方が読んでて辛く気分が悪い。小さな町を牛耳る権力者達の保身にも腹がたつ。読後は全て収まるとことろ収まったかに見えるが、モヤモヤが心に残りスッキリしない。

  • 過去の解決済み事件の洗い直しをする元刑事の探偵と、その事件の発生した当時の当事者たちのストーリーが交互に語られる。
    この前者に当たるいわば現代編で探偵に協力する人たちもそれぞれ別の思惑で動いており、各人が過去編で一体どんな役回りをしたのか、その後の20年にどういう仕掛けがあったのか、そして現代で登場しない人物はどうなったのかが徐々に明らかになっていく。
    この場面と視点がコロコロと入れ替わるのは、映像作品にすると映える気がする。

    ストーリーの見せ方として、犯人とされている少女がそうでないであろうことは序盤から分かるが、そもそも「どんな事件だったのか」が終盤まで明かされないのが面白い。
    確かに最初から「どこどこで誰それがこんな感じで殺されたんですよ」と言われているより、この方が進行形で語られている少年少女たちにどんな災厄が降り掛かってしまうのかが気になる。

    全部の真実が明らかになったとき、おぉ!となるのは本当のラストシーンくらいか。
    事件自体はそれほど驚くような展開ではない。

  • 凄惨な事件を背景とする1980年代と、
    探偵がその当時を調査する2000年代が交互に綴られる作品。
    初めのうちは登場人物の多さに辟易としたが、
    徐々にそれぞれのキャラクターがはっきりとしていき、
    後半から楽しく読めるようになった。
    といっても、内容が楽しいわけではない。とにかく重い。
    腐敗しきった社会が何十年も存在していた状況が、
    なんともおぞましい。
    警察も、家族関係も、学校もなにもかもが滅茶苦茶で…。
    主人公である私立探偵、メディアの力で、当時の冤罪は
    晴らせるのか…。
    前半は、1980年代の事件の具体性をあれこれ想像しながら読み進む。
    後半は、腐敗社会に切り込んだ人々の手腕に期待しながら進む。
    私立探偵の過去のいきさつが簡単に述べてあるだけで物足りなかった。
    彼(ショーン)を本筋とした作品があったら読んでみたい。

  • イギリスらしさが ふんだんにでた一冊だった。過去と現在が交互に語られ 誰が被害者だったのか謎のまま進む。最初の方は少しまどろっこしいが徐々に引き込まれていく。心理描写やイギリスの田舎の雰囲気など とても上手いと感じるし好きなのだが もう少し 余分な部分をそぎ落とし すっきりした文章にした方がいいような気がする。コーリーンについては もっと深く書き込んで欲しかった。

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