太鼓叩きはなぜ笑う (創元推理文庫) (創元推理文庫 M あ 3-8)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488403089

感想・レビュー・書評

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  • 探偵の話を聞いたバーテンが真相を喝破するというアームチェア・ディテクティブもの。アリバイ崩しがメインで、多少の突っ込みどころはあるものの(「新ファントム・レディ」とか)、トリックそのものはどれもさすがというレベル。ただ、おじさん向けのユーモアミステリでもあるので、風俗描写やユーモアセンスの風化が激しい。今の感覚で言えば、不快でしかない描写が、ユーモアのつもりで延々続く。さすがにきつい。昭和のおじさんはみんなこうだったから、しょーがないんだけども。

  • 3番館シリーズの初編。
    大体どれも1972年前後の作品なので、今では死語となっている表現がたまーにあるが十分楽しめた。言われてみればそんな表現あったな、と思える年齢の私なので、懐古主義的なのかも。若い世代の人には古すぎるのかもね。

  • 殺人犯にさせられそうな人の弁護士が探偵に調べさせるんだけど、結局推理するのはバーテン。という4本。

  • 意外性    ★☆☆☆✩   
    熱中度    ★★☆☆☆
    読後感    ★★☆☆☆
    印象深さ   ★★☆☆☆ 
    キャラクター ★★★☆☆
    入手困難   ★★★☆☆
    トータル   ★★☆☆☆

    会員制バー「参番館」のバーのマスターによる安楽椅子探偵シリーズの第1集。5つの短篇からなる。

    ○ 春の驟雨
     デパートでカミソリ魔扱いを受けた須藤正樹の殺人の冤罪をはらすという事件。刑事弁護士から依頼を受けた私立探偵の「わたし」が,須藤正樹のアリバイを見つけ,被害者の亭主が真犯人であることを明かす。
     参番館のバーテンは,ペンキの色と被害者がなぜ濡れていたかという謎について真相を明かす。ペンキは青く塗られていたのではなく,二度塗りされ別の色になっていたのであり,被害者が濡れていたのは,屋外で殺害され,雨で濡れたのを隠すためだった。シンプルな構造。

    ○ 新ファントム・レディ
     「幻の女」をベースとした作品。殺人容疑を受けている増田謙介は,ナンパをし,中華料理屋にいたと証言するが,その中華料理屋には,そのようなカップルはいなかったと店員やほかの客が証言する。
     参番館のバーテンは,ピンタンフールーという中華料理のデザートが串に3本しか刺さってなかったというところから,増田が本当にいた店を見つける。

    ○ 龍王氏ぼ不吉な旅
     アリバイ崩し。古き良き時代の時刻表トリックという雰囲気。参番館のバーテンは,容疑者が電車内の騒ぎを録音しておき,聞いていたという真相を暴く。被害者の名前で犯人がキャバレーに通っていたことを最後でさらりと明かすちょっとした叙述トリックが隠し味。

    ○ 白い手黒い手
     画家が妻を殺すにあたり,楽器店のエリートを罠にはめるというプロット。参番館のバーテンは,画家の両手がパレットを持っていたことから,日焼けの状態が違っていることを見つけ,画家のひとり二役のトリックを暴く。

    ○ 太鼓叩きはなぜ笑う
     フーダニット。ゆすりやの財部を殺害したのは誰か。参番館のバーテンは,財部のいえの様子が分かるレストランの存在を見つけ,そのレストランを利用していた松崎というデスクジョッキーが真犯人であるという真相を見抜く。

    第一集ということもあり,最初のあたりの作品は安楽椅子探偵という構成が生かしきれていないように思うが,「太鼓叩きはなぜ笑う」は,アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」のような軽いミステリに仕上がっている。私立探偵の「わたし」と,各作品の登場人物のキャラクターが,ユーモアもありなかなかいい。鮎川哲也の作品の雰囲気は嫌いではない。ただし,トリック,プロットはそこまで面白いというほどでもなく…トータルでは☆2で。

  • 私立探偵の足を使う捜査パートと微妙なへっぽこ具合とバーテンによる謎の解明という物語の構成のコテコテ感が良かった。クライマックスで犯人へビシっと証拠を叩きつける春の驟雨と竜王の不吉な旅と中華料理知識が楽しい新ファントム・レディが好き。

  • 三番館シリーズ。

    やっぱり三番館シリーズ大好きです。
    特に「竜王氏の不吉な旅」はラストが最高!!
    全体的に文章も読みやすいしトリックも秀逸。
    昭和感の滲む文章が、今読むとまた素敵なんですよね。

    無性にバイオレットフィーズとギムレットを飲みたくなる作品です。

  • 元刑事の私立探偵が巻き込まれた事件を行きつけのバーのマスターが解決していくという安楽椅子探偵の元祖っぽい短編集。
    『謎解きは〜』とかはこういうところから派生したんだろうけど、こちらのほうが好感が持てるし、トリックもわかりやすく普通に楽しめる一冊。

  • 鮎川哲也氏の三番館シリーズ第1作。
    私立探偵が事件を捜査し、行き詰ると三番館へ行きバーテンの知恵を借りて解決していく。
    アリバイ崩しがほとんどで理論重視であるが、多様な作品があり楽しんで読むことが出来た。

    時代背景や言い回しが分かりずらい。

  • 4- 

    全体的にとても面白かったのだが、「白い手黒い手」だけ妙に唐突な展開で、会話文も噛み合っておらず、謎もいまいちな上、筋立も強引に感じられる。特に「竜王氏の不吉な旅」の切れ味鮮やかなラストの後に読むと、かなり物足りない。単純に発表順に並べたのだろうと思われるが、5編中の4番目にこれがあるのはあまり印象は良くない。

    「よろめき」という言葉が頻出するが、三島由紀夫など読んだこともないので、それが流行語だったとは知らなんだ。今では当時の意味ではほとんど耳にしないが、「不倫」以降は死語か。

  • 安楽椅子探偵物を大好きになったきっかけは<三番館>シリーズです。
    派手さはないけど、いつ読み返しても「おかえり」ってマスターが言ってくれている気がする作品。

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著者プロフィール

鮎川哲也(あゆかわ・てつや)
本名・中川透。1919(大8)年、東京生まれ。終戦後はGHQ勤務の傍ら、様々な筆名を用いて雑誌へ短編を投稿し、50年には『宝石』100万円懸賞の長篇部門へ投稿した「ペトロフ事件」(中川透名義)が第一席で入選した。56年、講談社が公募していた「書下ろし長篇探偵小説全集」の第13巻「十三番目の椅子」へ応募した「黒いトランク」が入選し、本格的に作家活動を開始する。60年、「憎悪の化石」と「黒い白鳥」で第13回日本探偵作家クラブ賞長編賞を受賞。受賞後も安定したペースで本格推理小説を書き続け人気作家となる。執筆活動と並行して、アンソロジー編纂や新人作家の育成、忘れられた探偵作家の追跡調査など、さまざまな仕事をこなした。クラシックや唱歌にも造詣が深く、音楽関連のエッセイ集も複数冊ある。2001年、旧作発掘や新人育成への多大な貢献を評価され、第1回本格ミステリ大賞特別賞を受賞。2002(平14)年9月24日、83歳で死去。没後、第6回日本ミステリー文学大賞を贈られた。

「2020年 『幻の探偵作家を求めて【完全版】 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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