盗作・高校殺人事件 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.21
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488405144

感想・レビュー・書評

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  • 〇 概要
     「作者は,被害者です。作者は,犯人です。作者は,探偵です。この作品は,そんな推理小説です。」というミステリ。スーパーこと可能キリコと,ポテトこと牧薩次が活躍するシリーズ第2弾。消失する幽霊騒動,2つの密室殺人事件…本格ミステリの魅力を詰め込んだ読者サービス満点のミステリ

    〇 総合評価
     作者が被害者で,犯人で,探偵であるというミステリを,作中作という形式を使って実現しようとした作品。構想先行型というか,大きな構成,プロットは悪くないのだが,作中作のトリックやキャラクター,文章が稚拙で魅力を感じないので,全体のデキは低調に感じる。この構成で,しっかりした文章,トリックを駆使すればそこそこの作品になったかもしれない。辻真先のこのシリーズ「課題・中学殺人事件」,「盗作・高校殺人事件」,「改訂・受験殺人事件」は,ミステリマニアとしては話のネタとして読んでおきたい作品なのだが,内容が子供だまし過ぎて大人の鑑賞に堪えるとはいいがたい。このアイデアで,大人向けに大幅改定してほしいと思ってしまった。デキとしては★2だろう。

    〇 サプライズ ★☆☆☆☆
     作者が被害者で,犯人で,探偵であるミステリを書こうと,とてもフェアな作品にはならない。この作品は,辻真先らしく,「作中作」を利用して,この奇妙な設定を成立させている。蘭百合子という女性が編集部に,「相馬崇」と「和谷京太郎」の意思を継いだミステリを持ち込んでいる。このミステリは,蘭百合子達がいる現実の世界で起こった殺人事件をモデルにしており,スーパーとポテトが登場している。作中作という形で密室殺人事件や幽霊消失事件が描かれている。密室殺人は2つ描かれているが,1つ目のトリックは犯行現場は別の場所で,密室に死体を運び,第1発見者として密室の出入り口を破壊したというもの。二つ目の密室のトリックはおもちゃを使って施錠したという物理トリック。いずれも,もともとジュベナイル小説だったとはいえ,ちゃちすぎる。この小説の仕掛けは,作中作という形を使って,作者の一人である相馬崇と和谷京太郎が被害者であり,作者の一人である蘭百合子が犯人,そして,もう一人の作者である石田正己が探偵という構造を作っているところにある。考えオチというか,よく考えられているが,正直,サプライズにはつながっておらず,「やられた」とはあまり思えない。

    〇 熱中度 ★★★★☆
     もともとジュベナイル小説だったので,文章が稚拙。ただし,子供の興味を引くためだと思うが,テンポはよい。幽霊騒ぎや鬼のお面,2つの密室殺人と立て続けに読者の興味を引く謎を描き,さらに「幕間」として登場する謎のの作者と編集者の関係も興味をそそる。全体的に,最後まで読まそうという試みに溢れており,ある程度成功している。もっとも,密室事件のトリックなど,真相がそれに見合っていないのが残念。

    〇 キャラクター ★☆☆☆☆
     スーパーとポテトというキャラクターが好きなら若干の加点はあるかもしれないが,もともとジュベナイル小説だったこともあって,キャラクターは非常にうすっぺらい。また,そもそもかなり古い小説というだけあって,今,子供がこれを読んでも,登場するキャラクターに感情移入することはできないだろう。逆に,大人が昔の,古き良き時代のアニメや子供向け小説を懐かしむならそれなりに楽しめるかも。個人的にはキャラクターの魅力は全く感じなかった。

    〇 読後感 ★☆☆☆☆
     作中作という形だが,蘭百合子が死亡した描写となっており,読後感はさほどよくない。そもそも,文章が稚拙な上,話がやや入り組んでおり,「え,どういうこと?」と思う点もあって,それほど話に入り込めない。キャラクターも薄っぺらいので,読後感は悪いものの,そこまで心に残らないというデキになっている。

    〇 インパクト ★☆☆☆☆
     読後感が悪いので,インパクトはあるのかと思えばそうでもない。キャラクターの薄さと筋の分かりにくさが原因だろう。結局,どういう作品だったか,すぐに忘れてしまいそう。

    〇 希少価値 ★☆☆☆☆
     辻真先は人気作家なので,それなりに手に入れるチャンスはありそうだが,内容がさっぱり面白くないので,将来的には,また手に入りにくくなる可能性はありそう。

  • 「作者が被害者で、犯人で、探偵」というのは、前作と同様に叙述トリックで、折原一なら何らかの手がかりを文中に残すと思う。本作は、それがないので、タネを明かされても、開き直っているように感じる(爽快感がない)。またもや二重構造になっているが、スーパーとポテトの活躍は劇中劇なの?このコンビは実在するの?起こっている出来事を含め、なんだかよくわからない。

  • 作者が犯人で被害者で探偵…
    成立してた、無理やりだったが!無理やりでもその場所に連れてってくれる感じが好きです。文体時代感じさせてキツくかなり勉強になる。

  • 新作が出るそうなので再読。
    青春三部作と言われる作品で、初読は朝日ソノラマ版。
    シリーズ1作目の謳い文句にも驚かされましたが、こちらは「作者は被害者です。犯人です。探偵です。この作品はそんな小説です!」と。
    そんなってどんなよ、と思わず突っ込んでしまいたくなりますが、読了すると感想としてその謳い文句がしっくりくる感じですね。
    構成の仕掛けが効いています。

  • 「作者=被害者=犯人=探偵」という困難な設定をどうやって成立させるのかが最大の見所ですが、とても良くで出来ていると思いました。
    しかし、トリックやストーリーはややお粗末な感じでした。「死んだ人間が幽霊になって現れた」という謎が魅力的だっただけに残念です。

  •  懐かしいなあ、というのが最初の印象。高校生くらいの時、こういうのをたくさん読んでいたような気がする。一番時間を感じるのがボキャブラリ。「ボイン」なんて言葉、まあ使わないよ。で、なんというか当時大人が考えていた(であろう)「今時の高校生」像っていうのが、今読むとものすごく恥ずかしい。それに理解を示すところのちょっと奥行きありげな大人たちも。たぶん、僕自身がここで描かれている高校生たちとだいたい同じ世代だからだろう。

     ミステリとしては凡庸。密室が二つ出てくるけど、どうでもいいようなものだと思った。それよりも、「作者が犯人、作者が被害者、作者が探偵」という趣向が気になったけど、個人的にはがっくりした。思いつきであることは認めるんだけどね。
    2008/5/19

  •  「作者は被害者です。作者は犯人です。作者は探偵です。この作品は、そんな推理小説です」というキャッチフレーズがまさしくぴったりな作品。 新宿の爆発事故に巻き込まれた主人公の一人、牧薩次が、探偵コンビの相棒である可能キリコと、同じく事故の被害者である青年の実家に訪れた際に発生した奇妙な密室殺人事件を解決する。 可能キリコと牧薩次の掛け合いや、二人が動き回る東京の都会的な雰囲気に、大層憧れたものです。

  • 前回に引き続き、ややひねりのある構成。今回は作者が被害者で犯人で探偵、なんですって。どういうことなのかは、読めば分かります。
    事件の謎はやっぱりシンプルめな印象だけれど、案外と騙されました。冒頭の寓話がラストで生きてくるのはいいなあ。

  • 2004年6月28日読了

  • 「作者は、被害者です。作者は、犯人です。作者は、探偵です。この作品はそんな作品です。」

    辻真先氏が贈る超ミステリ第二弾!!

    悲しい結末に涙せよ!!

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著者プロフィール

1932年、名古屋市生まれ。名古屋大学文学部卒業後、NHKに入社。テレビ初期のディレクター、プロデューサーをつとめたのち、脚本家に転身。『鉄腕アトム』、『エイトマン』、『ジャングル大帝』、『サザエさん』、『巨人の星』、『デビルマン』など、1500本超のアニメ脚本を執筆した。また、推理小説作家としても活躍しており、『仮題・中学殺人事件』、『迷犬ルパンの名推理』、『あじあ号、吼えろ!』、『完全恋愛』(牧薩次名義)など多数の著作がある。現在、デジタルハリウッド大学教授。国際アニメ研究所所長。本格ミステリ作家クラブ会長。

「2009年 『『鉄腕アトム』から『電脳コイル』へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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