皆殺しパーティ (創元推理文庫 M て 1-5 天藤真推理小説全集 5)

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  • 東京創元社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488408053

感想・レビュー・書評

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  • 全く以って天藤真氏は素晴らしい。またも我々ミステリ・ファンを興奮させる趣向でもてなしてくれた。前作の感想で天藤ワールドの開幕を宣言したが、それが疑いなく証明されたことが本作で明らかになった。
    今回は今までの三人称叙述から一人称叙述と、しかも少々ある種の緊張感を持った文体へ変え、新たな地平を目指しているのがまた頼もしい。題名はもう少しどうにかして欲しいというのが本音だが、内容は今までに比べ、結構ハードだ。何しろ題名のように7人もの死者が出るという虐殺劇である。更に今回感心したのが狙われる主人公が筋金入りの色魔で大会社の社長であり、街の大権力者という読者に同情を許さない人物に設定した点にある。
    これが故に本来ならば悪人が最後に笑うというざらついた読後感を残す所を従来の天藤作品同様、一種の爽やかさを備えている点、脱帽である。

    ただ贅沢な事を云えば、ここまでをしてもやはり5ツ星には届かない。『大誘拐』級の痛快さとかズドンと来る衝撃がなければどれほど巧みな設定であっても4ツ星止まりなのだ。
    ただやはり天藤作品はクオリティが高いのは心底痛感した。

  • 主人公を狙う男女2人組みを探せ!
    どんどんでん返しが楽しい作品。【大誘拐】でもそうだったが、登場人物たちのキャラクターがたっていて、読むのが楽しい。殺人がいくつも起きるし、主人公はとことんどん底へ落とされるのだが、どこか喜劇めいていて、天藤ワールドが展開されていた。

  • 多くの人に恨まれている吉川太平が何故か殺されず、彼の周りの人物が次々と死んでいくというお話です。二転三転するスリリングな展開で結末が最後まで読めません。鮮やかなどんでん返しもあるので、推理小説の醍醐味が味わえます。
    事件自体は陰惨ですが、洒落っ気とユーモアでカバーしているので読後が爽やかな作品です。

  • 不思議な読後感です。登場人物ほとんど同情できないしむしろ不快感が大きいのにミステリーとしての仕掛けはすごいです。

  • 偶然明るみになった殺人計画。命を狙われているのは富士川市の事業王、吉川太平。警察の警護と犯人探しにも関わらず、次々と起こる事件、見えない真犯人…。と、恐ろしい展開でありながら、命を狙われる吉川太平という人物が権力と金と女に汚い、殺されても仕方ないよね、という人物なので、重苦しさや緊張感は全くありませんでした。
     吉川太平だけでなく、登場人物達の大半が小悪党なので、悲しみや憤りをあまり感じないのですが、この軽妙さがかえって家族の絆の希薄さを表しているようで、ちょっと切ないです。

    吉川太平の手記という形式で物語は進み、語られる悪行の数々にはおもわずサイテー!と言いたくなります。悪行を悪行とも思っておらず、また他人の責めや恨みもどこ吹く風。なんて奴だ、と思いつつもどこか憎めないのは、皮肉とユーモアに溢れた作者の手腕です。

    手記形式を逆手にとり、刑事に推理させてからのどんでん返しがおもしろいです。決してハッピーエンドではないのですが、まだまだ俺はすごいんだぞ!と息巻く横暴な老人を生暖かく見守るような気分で、ま、これでいっか、と思ってしまいました。

  • 友達からこの著者の作品は面白いと教えてもらって買ってみた1冊。
    元々は30年以上前に書かれた作品なので多少話しに古臭いところは
    感じるのですが、典型的な探偵小説ということでそれなりに面白く
    読みました。

  • 先が読めそうで読めないミステリ。手記というスタイルなので、どうしても叙述的な仕掛けを危ぶんでしまう。相変わらず構成は巧いし、簡素で上質の筆致に押され気味になるので、頭で推理するよりページを繰る方が速く反応してしまうのだ。そしてラストでの驚き。ただ、犯人にとってコトが都合よく運びすぎるんじゃないかという懸念もあるけれど、最後のトリックなんかは同種の中でも非常に工夫を凝らしてあり、着眼点に斬新さを感じた。 ストーリー同様、人物描写にもきっちり時間をあけてあり、その影響は読後感に表れる。一見、中途半端なラストにも見えるが、それはそれでアリなんだと納得させるところが、この作者の魅力のひとつでもあるのだろう。

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