背が高くて東大出 (創元推理文庫 M て 1-16 天藤真推理小説全集 16)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (438ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488408169

感想・レビュー・書評

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  •  ショート・ショートから中編まで10編収録の作品集。

     天藤さんの作品のイメージは『大誘拐』のほのぼのとしたユーモアミステリのイメージだったので、収録作品のちょっとブラックな感じは少し意外でした。

     一番好きだと思ったのは「父子像」主人公が父親の職業を調べる短編です。
     これはどちらかというと天藤さんのイメージ通りの短編。宮部さんの初期作品と似たような明るさとほのぼのさがあったと思います。

     「背面の悪魔」は少しエロティックでブラックな短編です。手記が少しホラーっぽくも感じられて面白かったと思います。

     「日曜日は殺しの日」と「死神はコーナーに待つ」はどちらも100ページほどある中編。「日曜日は~」は犯人が最初から分かっている倒叙サスペンスとなっていて、犯人視点、刑事視点と視点の切り替えが面白く、それによって追い込まれていく過程、事件のほころびに気づいていく過程、どちらも楽しめました。

     「死神は~」発作的に女性を殺してしまった男が主人公。それなのに文体や男の言動のおかげで主人公はなんとも憎めないキャラになっています。
     事件の目撃者と思われる女性との不思議なやり取りや産業スパイが絡んできたりと、なかなか動きの多い作品でこちらも楽しめました。

  • 今回の天藤作品も粒揃いの傑作ばかりで、嬉しくなる。
    今回は特に構成に凝った作品が多かったような印象が強いのだが、振り返ってみると実際に構成が凝っていたのは中編の「日曜日は殺しの日」と「死神はコーナーに待つ」のみだった。ということは如何に印象が強かったかという証左になるわけだ。特にこの2編は所謂倒叙物の体を成しており、大体犯行の目星がついているのだが、それを約100ページ強を費やして何を書くのだろうと思いきや、自明の理だと思われていた事件が他人が探るに連れ、全く予想外の証言や真相が出没し、正に頭の中を揺さぶられる感覚がした。著者の企みは正にそこにあり、読者にストーリーのあるべき方向を示唆させ、先入観を抱かせることで真相を覆い隠してしまう、この効果が物凄かった。
    また他の作品も非常によく、ちょっと狙いが浅かったかなと思わせる表題作はともかくとして、今流行の “日常の謎”ものである「父子像」やミステリアスな結末の「背面の悪魔」、ストレートな「女子校生事件」、実に深い余韻を残す「三枚の千円札」など今見てもすぐに内容が思い出せるものばかり。
    一番良かったのは、人間の厭らしい部分を描いても後期の長編群のように嫌味な印象を全然感じなかったこと。どこか人間を観る目に以前よりも優しさが感じられ、読後非常に爽やかだった。
    天藤作品も残るはあと一冊。う~ん、読みたいやら、読みたくないやら。

  • 短編集。表題作「背が高くて東大出」が良い感じにひねりがきいててお気に入り。あとは「父子像」。ネタバレになるので詳しく書けないが、素晴らしい。
    あとこの短編集、エロ要素が含まれている作品も多いですな。

  • 題名に惹かれて読んでみました。

    「父子像」は特によかったです。

    父親の職業を知らない僕(主人公)がそれを探ります。

    最後に明かされる父親の職業が良いですね。

    是非他の作品も読みたいです。

  • やっぱり面白いなぁ。天藤真は凄い。乱歩の設定した本格の形式とは離れているんだけど、これは明らかに本格。日本のミステリが如何に乱歩の影響下にあるかだね。収録短編どれもこれもユーモアに富んでいたり、展開が巧妙でぐいぐい引っ張っていったりと読んでて飽きることがない。すばらしい。

  • (収録作品)背が高くて東大出/父子像/背面の悪魔/女子高生事件/死の色は紅/日曜日は殺しの日/三枚の千円札/死神はコーナーに待つ/札吹雪/誰が為に鐘は鳴る

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