パーフェクト・ブルー (創元推理文庫)

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著者 : 宮部みゆき
  • 東京創元社 (1992年12月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (353ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488411015

パーフェクト・ブルー (創元推理文庫)の感想・レビュー・書評

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  • この物語が宮部みゆきの初長編小説だと知って驚いた。
    現在の作品と比べれば荒削りな部分もあるけれど、人物造形や心理描写、物語の展開、テンポの良さ。
    宮部さんの才能のきらめきを十分に感じられる物語になっていた。

    夜間に警備員が発見した焼死体。
    大騒ぎになるが、焼死体と思われた物体は人形が焼けたものだった。
    誰がいったい何故?
    序盤から一気に興味を引かれ物語に引き込まれた。
    伏線が徐々にひとつの線にまとまっていくところは読みごたえがあった。
    それにしてもマサのひとり言が面白い。
    文字まで読めてしまうなんてどれだけ優秀な犬なのだろう、と設定の飛び具合も楽しめた。
    それぞれのキャラクターがしっかりと書き分けられているためかとても読みやすく、内容も掴みやすい物語だった。

  • デビュー作で、宮部作品では一番好きかもしれません。
    読みやすい文体で、キャラクターに好感が持てました。

    タイトルを見ると、とても晴れた青空のイメージです。
    しかし、「パーフェクト・ブルー」という言葉には重大な意味が隠されています。

    語り手は元警察犬だったシェパード・マサです。
    ハードボイルドの探偵並みに格好良い性格をしています。
    頭が良くて頼もしいです。
    マサは蓮見探偵事務所で飼われていて、調査員・加代子とコンビを組んでいます。

    冒頭では、人のようなものが燃えるシーンが出てきます。
    正体は打者人形でした。

    加代子は進也という少年を家に連れ戻す依頼を受ける。
    進也と一緒に焼死体を発見するが、それは進也の兄・克彦だった。

    克彦は高校野球界では有名な実力者だが、数々の嫌がらせを受けていた。
    嫌がらせをしていた犯人であり、克彦を殺したと思われる少年・山瀬は自殺してしまった。
    これらの事件には、とんでもない事実が隠されていた。

    幕間の木原視点で、投薬実験のことが出てくる。
    大同製薬では、少年達に薬を混ぜたスポーツドリンクを与えていた。
    「パーフェクト・ブルー」は筋肉増強剤であり、筋肉増強剤を検査する薬でもあった。
    山瀬は「パーフェクト・ブルー」の副作用の被害者だった。

    進也の両親は、「克彦の実績は筋肉増強剤による影響だろう」と世間から思われることを恐れていた。
    克彦と山瀬を殺したのは、大同製薬をゆすっていた結城という男ではないかと思われていた。
    しかし、真犯人は…。

    進也くんが可愛いです。
    ワル振ったところがありますが、根は真っ直ぐで優しいコです。
    当作が出版されたのは'89年だからか、「カワイコちゃん」という言葉を久々見ました。

    進也と加代子の妹・糸子ちゃんとのやり取りは、お子様らしくて微笑ましかったです。
    糸ちゃんといえば、「集団緊縛ショー」という言葉に噴きました。

    進也の境遇は複雑ですね。
    進也は「スターの兄をやっかんで、皆の気を引く為に家出をした」と周りからは見られていた。
    実際のところ、兄弟仲はとても良かった。

    克彦が死んだ後、母親に詰られた時は辛かっただろうな。
    今は入院している母親に「克彦」と呼ばれていたし。
    父親は捕まって、母親は壊れ、兄は死亡かよ。

    ラストの進也のセリフがとても好きでした。
    続編の「心とろかすような」では元気だったので、ホッとしました。

  •  少し遠くの海に行く電車の中で読みたいなと思って読み始めました。
     犬目線という発想もですが、とても引きこまれる物語でした。つい、感情移入をしすぎてしまい、電車の中でホロリとしてしまった上に「自分の大好きな姉が死んでしまったら・・・」といらぬ想像をしてしまい、半べそ気味で道を歩いていました。
     なんとこの作品、宮部みゆきさんの初の長編作品です。
     犬のマサの話、とても面白い本でした。続編があるようなので、次はそれを読みたいと思います。

  • いまや現代女流作家の代表格となっている宮部みゆき氏。デビューしたての当時は同時期にデビューした高村薫氏が高村薫女史という呼称で呼ばれたのに対し、宮部みゆき嬢とかミステリ界の歌姫などと呼ばれていたのが非常に懐かしい。
    私が彼女の作品を読んだのは既に『火車』まで刊行されており、その評価は既に固まっていた時期。一連の創元推理文庫の日本人作家シリーズの一角にこの作品は名を連ねられていたが、当時私は本格ミステリの方に傾倒していたこともあって、どうも毛色が違うなぁと思っていたことと、ブルーのバックに赤いボールペンのような物で殴り描きされたような表紙絵がなんとも食指を動かされず(ちなみに今出回っている文庫本とは絵が違う)、ずっと買うのを躊躇していたが、『火車』が93年版の『このミス』に2位にランクインしたことを契機に手にとってみたのがこの作家との出会いだった。

    開巻していきなり高校野球児の焼身死体というショッキングな幕開けで物語は始まるが、そこから物語のトーンは一転してライトノベル調になる。もはや有名なので誰もが知っていると思うが、この作品は警察犬を引退して蓮見探偵事務所に変われることになったシェパード犬マサの一人称視点で物語が描かれるのだ。つまり語り手は犬という大胆な構成で物語は進行する。
    一人称叙述というのは作家の方なら誰もが知っていると思うが、実は非常に難しい。なぜなら主人公が関与した事柄でしか物語を進行させられないからだ。既に賞を受賞していたとはいえ、実質的にはデビュー前である宮部氏がいきなりその一人称叙述に挑戦し、しかも語り手は人ならぬ犬という二重のハードルを課していることに作家としての意欲よりも不安が先に立った。

    この文体についての感想は、よく健闘したなぁというのが正直な感想だ。綱渡りのような物語進行を感じ、物語そのものよりも作者が馬脚を現さないかとヒヤヒヤしながら読んだ記憶がある。しかしやはりこの奇抜な叙述を押し通すのは難しく、途中で三人称叙述を採用せざるを得なくなっているのは致し方ないところか。
    また大げさな比喩も気になった。物語に溶け込むようではなく、どちらかといえば、ページを繰る手を止めさせて、どんな例え?と考えさせるような比喩だ。大げさ度でいえば、チャンドラーを想起させるが、味わいは全く逆で、実に軽く、ライトノベル調をさらに助長させていると感じた。

    物語は焼身死体の高校野球のエースの家出した弟ともに進行する。内容は昔よく挙げられていた高校野球に纏わる不祥事の隠滅もあるが、さらに大きな陰謀もある。それがタイトルの由来ともなっているのだが、作者のストーリーのための設定という枠組みから脱しきれてなく、その嘘に浸れなかった。
    今まで書いたように宮部氏のデビュー作である本書は実は私にとってはそれほど面白かったものではなく、むしろネガティブに捉えられていた。恐らく『火車』の高評価が私に過大な期待をもたらしたのだろうとも思う。しかし読後感は悪くなく、前向きな気持ちにさせられる爽やかさは感じ取った。

    この作品を読んだからこそ、続く『魔術はささやく』、『レベル7』が面白く読めたのは事実。この2作品のテーマに挙げられた作者の嘘を許容する下地が本作を介して私の中に出来上がったといえる。そういう意味では宮部ワールドを理解するための毒味役ともいうべき作品なのかもしれない。

  • 宮部みゆきは、初期がいい!
    火車、蒲生邸、レベル7などなど。
    これも素直に書かれた佳作。

  • 宮部みゆきの長編デビュー作だそうです。もともと、文庫になる前は1989年刊、文庫の解説は鮎川哲也。時代的にも、そして解説者の名前も懐かしくて涙が出そう。

    ですが、作品の内容はまったく古さを感じさせません。携帯電話やインターネットがないくらいの違いで、そのことも作品の内容自体にはまったく影響がありません。

    作風は今も昔も、人情味のあるミステリ。ハッピーエンドとは限りませんが、どこかに必ず救いのあるストーリーはどれを読んでも安心できます。

    ただ、この人の作品に共通する欠点として、「いろんな要素を盛り込み過ぎ」っていうのがあると思っています。飼い犬視点で話が進むこと、親娘でやっている探偵事務所、犯行の動機、そして衝撃的なラスト…。
    もう少し削るか、もう少し長い作品にしてくれないともったいなさすぎです。贅沢すぎる言い分なのかもしれませんが…。飼い犬視点はさすがにもったいないと思ったのか、同じ舞台を使った連作短編集が出ています。でも、今だったら10冊ぐらいシリーズものが書けそうな舞台・設定を作っておいて、長編1冊、連作短編1冊では食い足りません。もっと読ませろ!って思ってしまいます。

  • 中のよい兄弟の兄の死亡。
    殺したのは誰か。

    探偵小説、運動競技小説の二本柱かと思って読み進みました。
    最後になって、社会派小説、家族小説だと分かりました。

    推理小説の王道を行く、だいどんでんがえしというか、
    種明かしというか。

  • 今月の10冊目。今年の55冊目。犬視点。

    面白かったですね。犬視点といのは斬新なような気がしますが、まあそれが活きてくるのは特に、後半部分ですね。初長編らしいのですが、読みやすく、ぐいぐい引き込まれて行きました。やっぱり、キャラクターの魅力が半端じゃない。細かい情景描写はあまり印象に残っていませんが、本当にキャラクターが印象に残る作品が多い宮部さんだと思います。おすすめ。

  • 宮部みゆきさんの作品で好きな作品は? と聞かれたら、私はこの本か『今夜は眠れない』シリーズのどちらかと答えます。
    宮部みゆきさんの熱心なファンの方からしたら「どういうチョイスだ」と言われてしまうかもしれませんが。

    特にこの『パーフェクト・ブルー』は、初めて読んだ時、兎に角号泣でした。
    家族の物語自体にすごく弱いのですが、ましてやこの切なくて胸が締め付けられそうな真実。
    もう何度読み返したことか。
    悲しいけれど、それでも好きな作品なのです。

    この作品が好きすぎて、私の中ではマサの物語はこれで完結してしまっているので、短編集の『心とろかすような』の方は読んでません。
    いつか、読む時は来るかも知れませんが。

    最後に。ネタバレ色が強いので引用の方には書けなかったこの小説で一番心打たれた部分を。

    「私はね、進也、克彦と同じくらい、お前のことを誇りに思ってきた。お前の一本気な気性が好きだった。だが、私にとって何よりも大切だったことは、お前たち二人がいることだった。一緒にいることだった。お前たち二人が、私と母さんといるときに、お前たちにだけしか分からない無言のサインで何かを通じあわせているとき、どちらか一方にしか話してないはずのことをいつの間にかもう一人も知っていることに気づくとき、私は本当に幸せだった」
    (p.337より)

    この台詞は、本を閉じていても蘇ってくる。時々不意に思い出す。
    本当に、色々な感情が交ざった、印象的な台詞だと感じます。

  • 犬の視点って何!?っていう驚きは特にはなかった。
    ただただパーフェクト・ブルーという単語が美しい。
    宮部さんの小説に溢れるせつなさがすごく特徴的に現れてる話かなと思います。

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パーフェクト・ブルー (創元推理文庫)の作品紹介

高校野球界のスーパースターが全身にガソリンをかけられ、焼き殺されるというショキングな事件が起こった。俺、元警察犬のマサは、現在の飼い主、蓮見探偵事務所の調査員、加代子と共に落ちこぼれの少年、諸岡進也を探し当て、自宅に連れ帰る途中、その現場に遭遇する。犬の一人称という斬新なスタイルで、社会的なテーマを描く、爽快な読後感の長編デビュー作、待望の文庫化。

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