パーフェクト・ブルー (創元推理文庫) (創元推理文庫 M み 1-1)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488411015

作品紹介・あらすじ

高校野球界のスーパースターが全身にガソリンをかけられ、焼き殺されるというショキングな事件が起こった。俺、元警察犬のマサは、現在の飼い主、蓮見探偵事務所の調査員、加代子と共に落ちこぼれの少年、諸岡進也を探し当て、自宅に連れ帰る途中、その現場に遭遇する。犬の一人称という斬新なスタイルで、社会的なテーマを描く、爽快な読後感の長編デビュー作、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 宮部みゆきさんの長編デビュー作は犬目線のミステリー。
    高校野球界のスーパースターがガソリンをかけられ焼き殺される、という謎多き残忍な殺人事件を、探偵事務所調査員・加代ちゃんと元警察犬・マサが解決していく物語。
    物語の展開は二転三転、社会問題や時代背景もしっかり取り入れ、まるでドラマを観ているように映像が目に浮かんだ。
    マサに語らせることにより、事件を俯瞰的に見れて分かりやすいし、加代ちゃんとの息のあったコンビで和ませてもくれる。
    これがデビュー作とは思えない程ぐいぐい読ませてくれた。
    さすがは宮部さん、と感心させられっぱなしの一冊だった。

  • 宮部みゆきさんの長編デビュー作!
    ワンちゃんが、賢すぎる!
    うちのワンちゃんも、こんなぐらい賢くならんかな。多分、犯人とか見たら逃げる…ワンワン吠えるけど、遠巻きに…

    物語は、元警察犬のマサの目線で、話は進む。
    高校野球界のスーパースター・諸岡克彦が殺される!弟の進也が疑われたりもするが、結局は、犯人探しを探偵事務所の加代子らとすることに…
    結構、ツライ結末なんやけど、全体に悲壮感はないな。ええ感じ。
    でも、普通は、そんな結末なら、悲壮感しかない気がするで。

  • 宮部みゆきさんの本が読みたくて買った一冊

    犬の視線からも物語が語られているちょっと変わった内容だった。
    こうゆうファンタジーじゃないけど非現実なものは好きではないが、この本はあまり気にせず読めた。

    意外なかたちで事件は解決した。
    全く予想してなかった。

    ただ、隠そうとしなければ良かったんじゃないかなとも思った。

    事件事故は隠せば隠そうとするほど発覚した時事が大きくなると改めて感じた小説でした。

  • 1989年刊行なので約30年前のものだが、あまり違和感なく読めた。おや?と思う比喩はご愛嬌...。話自体はなかなかに面白い。伏線も上手くちりばめられていて、後半での回収具合も爽快感がある。解説を書いている鮎川氏の男尊女卑的な表現には閉口...。

  • 犬のマサシリーズの2作目を読んだときに、それほど面白いとも思わなかったが、この1作目は、それほど犬中心でもなく推理小説としての醍醐味の味わえる本。初期の秀作とのことだが、まさにそう思う。このあと、作品が増えすぎて、質が・・

  • 宮部みゆき初の長編ミステリー

    宮部みゆきは、昔火車とか読んだことあり、面白かった記憶があるので、久しぶりにこの作者の本を読んでみようと思って手にとって見た。

    読み始めると、警察犬の視点から物語が進んだりするので、若干読みづらい。
    今まで人以外の視点の本を読んだことなかったので、そこがとっつきにくかった。

    でも読み進めると、話は面白く、どんどん読み進めることが出来た。

    物語冒頭に有名の高校生ピッチャーが殺されてしまうわけだけれど、誰が犯人なのか、徐々に分かってくる。
    私の感想としては、物語の登場人物の誰もが怪しいような気もするが、結局あなたが犯人でしたか。。という結果でした。

    この本は、宮部みゆきにとって初のミステリー長編らしいので、火車とかより前に書いた本だけど、面白く読みやすかった。

    さすが宮部みゆきと思う本だった。

  • この物語が宮部みゆきの初長編小説だと知って驚いた。
    現在の作品と比べれば荒削りな部分もあるけれど、人物造形や心理描写、物語の展開、テンポの良さ。
    宮部さんの才能のきらめきを十分に感じられる物語になっていた。

    夜間に警備員が発見した焼死体。
    大騒ぎになるが、焼死体と思われた物体は人形が焼けたものだった。
    誰がいったい何故?
    序盤から一気に興味を引かれ物語に引き込まれた。
    伏線が徐々にひとつの線にまとまっていくところは読みごたえがあった。
    それにしてもマサのひとり言が面白い。
    文字まで読めてしまうなんてどれだけ優秀な犬なのだろう、と設定の飛び具合も楽しめた。
    それぞれのキャラクターがしっかりと書き分けられているためかとても読みやすく、内容も掴みやすい物語だった。

  • 宮部みゆきの長編デビュー作だそうです。もともと、文庫になる前は1989年刊、文庫の解説は鮎川哲也。時代的にも、そして解説者の名前も懐かしくて涙が出そう。

    ですが、作品の内容はまったく古さを感じさせません。携帯電話やインターネットがないくらいの違いで、そのことも作品の内容自体にはまったく影響がありません。

    作風は今も昔も、人情味のあるミステリ。ハッピーエンドとは限りませんが、どこかに必ず救いのあるストーリーはどれを読んでも安心できます。

    ただ、この人の作品に共通する欠点として、「いろんな要素を盛り込み過ぎ」っていうのがあると思っています。飼い犬視点で話が進むこと、親娘でやっている探偵事務所、犯行の動機、そして衝撃的なラスト…。
    もう少し削るか、もう少し長い作品にしてくれないともったいなさすぎです。贅沢すぎる言い分なのかもしれませんが…。飼い犬視点はさすがにもったいないと思ったのか、同じ舞台を使った連作短編集が出ています。でも、今だったら10冊ぐらいシリーズものが書けそうな舞台・設定を作っておいて、長編1冊、連作短編1冊では食い足りません。もっと読ませろ!って思ってしまいます。

  • 進也と姉妹のやり取り交えて軽快に進められる物語り。犬目線で語るマサの案内。しかし結末はとても虚しく寂しい。



  • 長編デビュー作でよくこんなのをかけるなぁと思った
    ふつう犬の一人称かつ高校野球ネタを一発目で書こうとは思わないだろう
    真犯人はいやーきついっす

  •  少し遠くの海に行く電車の中で読みたいなと思って読み始めました。
     犬目線という発想もですが、とても引きこまれる物語でした。つい、感情移入をしすぎてしまい、電車の中でホロリとしてしまった上に「自分の大好きな姉が死んでしまったら・・・」といらぬ想像をしてしまい、半べそ気味で道を歩いていました。
     なんとこの作品、宮部みゆきさんの初の長編作品です。
     犬のマサの話、とても面白い本でした。続編があるようなので、次はそれを読みたいと思います。

  • いまや現代女流作家の代表格となっている宮部みゆき氏。デビューしたての当時は同時期にデビューした高村薫氏が高村薫女史という呼称で呼ばれたのに対し、宮部みゆき嬢とかミステリ界の歌姫などと呼ばれていたのが非常に懐かしい。
    私が彼女の作品を読んだのは既に『火車』まで刊行されており、その評価は既に固まっていた時期。一連の創元推理文庫の日本人作家シリーズの一角にこの作品は名を連ねられていたが、当時私は本格ミステリの方に傾倒していたこともあって、どうも毛色が違うなぁと思っていたことと、ブルーのバックに赤いボールペンのような物で殴り描きされたような表紙絵がなんとも食指を動かされず(ちなみに今出回っている文庫本とは絵が違う)、ずっと買うのを躊躇していたが、『火車』が93年版の『このミス』に2位にランクインしたことを契機に手にとってみたのがこの作家との出会いだった。

    開巻していきなり高校野球児の焼身死体というショッキングな幕開けで物語は始まるが、そこから物語のトーンは一転してライトノベル調になる。もはや有名なので誰もが知っていると思うが、この作品は警察犬を引退して蓮見探偵事務所に変われることになったシェパード犬マサの一人称視点で物語が描かれるのだ。つまり語り手は犬という大胆な構成で物語は進行する。
    一人称叙述というのは作家の方なら誰もが知っていると思うが、実は非常に難しい。なぜなら主人公が関与した事柄でしか物語を進行させられないからだ。既に賞を受賞していたとはいえ、実質的にはデビュー前である宮部氏がいきなりその一人称叙述に挑戦し、しかも語り手は人ならぬ犬という二重のハードルを課していることに作家としての意欲よりも不安が先に立った。

    この文体についての感想は、よく健闘したなぁというのが正直な感想だ。綱渡りのような物語進行を感じ、物語そのものよりも作者が馬脚を現さないかとヒヤヒヤしながら読んだ記憶がある。しかしやはりこの奇抜な叙述を押し通すのは難しく、途中で三人称叙述を採用せざるを得なくなっているのは致し方ないところか。
    また大げさな比喩も気になった。物語に溶け込むようではなく、どちらかといえば、ページを繰る手を止めさせて、どんな例え?と考えさせるような比喩だ。大げさ度でいえば、チャンドラーを想起させるが、味わいは全く逆で、実に軽く、ライトノベル調をさらに助長させていると感じた。

    物語は焼身死体の高校野球のエースの家出した弟ともに進行する。内容は昔よく挙げられていた高校野球に纏わる不祥事の隠滅もあるが、さらに大きな陰謀もある。それがタイトルの由来ともなっているのだが、作者のストーリーのための設定という枠組みから脱しきれてなく、その嘘に浸れなかった。
    今まで書いたように宮部氏のデビュー作である本書は実は私にとってはそれほど面白かったものではなく、むしろネガティブに捉えられていた。恐らく『火車』の高評価が私に過大な期待をもたらしたのだろうとも思う。しかし読後感は悪くなく、前向きな気持ちにさせられる爽やかさは感じ取った。

    この作品を読んだからこそ、続く『魔術はささやく』、『レベル7』が面白く読めたのは事実。この2作品のテーマに挙げられた作者の嘘を許容する下地が本作を介して私の中に出来上がったといえる。そういう意味では宮部ワールドを理解するための毒味役ともいうべき作品なのかもしれない。

  • 宮部みゆきは、初期がいい!
    火車、蒲生邸、レベル7などなど。
    これも素直に書かれた佳作。

  • 中のよい兄弟の兄の死亡。
    殺したのは誰か。

    探偵小説、運動競技小説の二本柱かと思って読み進みました。
    最後になって、社会派小説、家族小説だと分かりました。

    推理小説の王道を行く、だいどんでんがえしというか、
    種明かしというか。

  • 今月の10冊目。今年の55冊目。犬視点。

    面白かったですね。犬視点といのは斬新なような気がしますが、まあそれが活きてくるのは特に、後半部分ですね。初長編らしいのですが、読みやすく、ぐいぐい引き込まれて行きました。やっぱり、キャラクターの魅力が半端じゃない。細かい情景描写はあまり印象に残っていませんが、本当にキャラクターが印象に残る作品が多い宮部さんだと思います。おすすめ。

  • 宮部みゆきさんの作品で好きな作品は? と聞かれたら、私はこの本か『今夜は眠れない』シリーズのどちらかと答えます。
    宮部みゆきさんの熱心なファンの方からしたら「どういうチョイスだ」と言われてしまうかもしれませんが。

    特にこの『パーフェクト・ブルー』は、初めて読んだ時、兎に角号泣でした。
    家族の物語自体にすごく弱いのですが、ましてやこの切なくて胸が締め付けられそうな真実。
    もう何度読み返したことか。
    悲しいけれど、それでも好きな作品なのです。

    この作品が好きすぎて、私の中ではマサの物語はこれで完結してしまっているので、短編集の『心とろかすような』の方は読んでません。
    いつか、読む時は来るかも知れませんが。

    最後に。ネタバレ色が強いので引用の方には書けなかったこの小説で一番心打たれた部分を。

    「私はね、進也、克彦と同じくらい、お前のことを誇りに思ってきた。お前の一本気な気性が好きだった。だが、私にとって何よりも大切だったことは、お前たち二人がいることだった。一緒にいることだった。お前たち二人が、私と母さんといるときに、お前たちにだけしか分からない無言のサインで何かを通じあわせているとき、どちらか一方にしか話してないはずのことをいつの間にかもう一人も知っていることに気づくとき、私は本当に幸せだった」
    (p.337より)

    この台詞は、本を閉じていても蘇ってくる。時々不意に思い出す。
    本当に、色々な感情が交ざった、印象的な台詞だと感じます。

  • 犬の視点って何!?っていう驚きは特にはなかった。
    ただただパーフェクト・ブルーという単語が美しい。
    宮部さんの小説に溢れるせつなさがすごく特徴的に現れてる話かなと思います。

  • この作品、宮部みゆきさんの長編第一作です。
    宮部みゆきさんの本も大好きですが31冊目にして長編第一作目を読むとは(汗)
    元警察犬のマサが語る殺人事件の顛末は・・・
    面白かったです!

    • honno-遊民さん
      テレビドラマにはがっかりしましたが、原作は面白そうですね。今度読んでみます。
      テレビドラマにはがっかりしましたが、原作は面白そうですね。今度読んでみます。
      2012/12/05
    • azu-azumyさん
      hongoh-遊民さん
      コメントありがとうございます。
      ドラマはやはり・・・でしたか。
      原作は面白かったです。
      hongoh-遊民さん
      コメントありがとうございます。
      ドラマはやはり・・・でしたか。
      原作は面白かったです。
      2012/12/15
  • 最初は、よくある青春もののミステリーかと思ってて、第一章で「なーんだ。もう解決~?」って思ったんだけど、それがどっこい!
    その裏には隠された真実が隠されていて、それも社会性のあるすっごい真実が!
    こういうとこ、宮部さんだよね~。
    しかも、最後、諸岡氏の口から語られた真実にまたもや驚かせられて、してやられてしまった~。
    久しぶりの本格ミステリで、入り込んで読んでしまったわ~。

    進也と克彦の兄弟愛。
    普通、兄弟のどっちかが有名になると、もう片方がひねくれるというのがパターンなんだけど、これはそんなことがなく、性格は違うけど根本的には一筋通った少年たちでお互いを信頼してた。こういう兄弟愛。いいね~。なんか、それだけでも泣ける。。。

    それぞれのキャラもちゃんと設定してあって、どれも好感がもてるのよ。
    私としては、もうちょっとマスターを登場させてもらいたかったけど。。。。
    なんか読み終わってちょっと興奮しています。

    しかし、人体実験とか、動物実験とかって最低。
    命のあるものが命のあるものの命を奪うのはとっても悲しいことです。
    しかも、それが子供であると特にそう思います。
    今の製薬会社にはこんなことがありませんように。。。。

  • 宮部みゆきの長編第1作。やっと初期の作品を読めました。2つの話が最後につながり、急展開、以外な真犯人、しかも動物目線。人物の掘り下げはその後の作品ほどではないかもしれないが、真似のできない宮部ワールドを発揮している。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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