パーフェクト・ブルー (創元推理文庫) (創元推理文庫 M み 1-1)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488411015

感想・レビュー・書評

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  • いまや現代女流作家の代表格となっている宮部みゆき氏。デビューしたての当時は同時期にデビューした高村薫氏が高村薫女史という呼称で呼ばれたのに対し、宮部みゆき嬢とかミステリ界の歌姫などと呼ばれていたのが非常に懐かしい。
    私が彼女の作品を読んだのは既に『火車』まで刊行されており、その評価は既に固まっていた時期。一連の創元推理文庫の日本人作家シリーズの一角にこの作品は名を連ねられていたが、当時私は本格ミステリの方に傾倒していたこともあって、どうも毛色が違うなぁと思っていたことと、ブルーのバックに赤いボールペンのような物で殴り描きされたような表紙絵がなんとも食指を動かされず(ちなみに今出回っている文庫本とは絵が違う)、ずっと買うのを躊躇していたが、『火車』が93年版の『このミス』に2位にランクインしたことを契機に手にとってみたのがこの作家との出会いだった。

    開巻していきなり高校野球児の焼身死体というショッキングな幕開けで物語は始まるが、そこから物語のトーンは一転してライトノベル調になる。もはや有名なので誰もが知っていると思うが、この作品は警察犬を引退して蓮見探偵事務所に変われることになったシェパード犬マサの一人称視点で物語が描かれるのだ。つまり語り手は犬という大胆な構成で物語は進行する。
    一人称叙述というのは作家の方なら誰もが知っていると思うが、実は非常に難しい。なぜなら主人公が関与した事柄でしか物語を進行させられないからだ。既に賞を受賞していたとはいえ、実質的にはデビュー前である宮部氏がいきなりその一人称叙述に挑戦し、しかも語り手は人ならぬ犬という二重のハードルを課していることに作家としての意欲よりも不安が先に立った。

    この文体についての感想は、よく健闘したなぁというのが正直な感想だ。綱渡りのような物語進行を感じ、物語そのものよりも作者が馬脚を現さないかとヒヤヒヤしながら読んだ記憶がある。しかしやはりこの奇抜な叙述を押し通すのは難しく、途中で三人称叙述を採用せざるを得なくなっているのは致し方ないところか。
    また大げさな比喩も気になった。物語に溶け込むようではなく、どちらかといえば、ページを繰る手を止めさせて、どんな例え?と考えさせるような比喩だ。大げさ度でいえば、チャンドラーを想起させるが、味わいは全く逆で、実に軽く、ライトノベル調をさらに助長させていると感じた。

    物語は焼身死体の高校野球のエースの家出した弟ともに進行する。内容は昔よく挙げられていた高校野球に纏わる不祥事の隠滅もあるが、さらに大きな陰謀もある。それがタイトルの由来ともなっているのだが、作者のストーリーのための設定という枠組みから脱しきれてなく、その嘘に浸れなかった。
    今まで書いたように宮部氏のデビュー作である本書は実は私にとってはそれほど面白かったものではなく、むしろネガティブに捉えられていた。恐らく『火車』の高評価が私に過大な期待をもたらしたのだろうとも思う。しかし読後感は悪くなく、前向きな気持ちにさせられる爽やかさは感じ取った。

    この作品を読んだからこそ、続く『魔術はささやく』、『レベル7』が面白く読めたのは事実。この2作品のテーマに挙げられた作者の嘘を許容する下地が本作を介して私の中に出来上がったといえる。そういう意味では宮部ワールドを理解するための毒味役ともいうべき作品なのかもしれない。

  • いまいち
    犬はよく頑張りました

  • 宮部みゆきの初期の頃の作品。
    あれ?おかしいぞ?とおもったら、まえにも読みかけてくじけた作品だったので、頑張って読了。
    殺した動機が、あまり納得いかないし、製薬会社の狙いも分かりにくいし、なんだかあまり私には合わない作品だったなぁ。

  • デビュー作だからか他のに比べると深みが物足りない感じ。
    ただ、犬の視点で語ってる部分は面白い設定だし新鮮でよかった。

  • 久しぶりの宮部さんの本。デビュー長編という帯表紙で読む気になる。
    冒頭の???はやはり、宮部流。不気味な冒頭。人間が焼かれた、と思わせるが、実は、野球練習に使う人形だった。そして、次は、元警察犬が語り手になるという設定。ここらは、作者のしかけを十分に楽しめる展開。
    高校球児の殺人事件と、大製薬会社の新薬開発のために、野球少年たちを使った事件が、やがて、からみあう。
    最後の場面は、壮絶なバトルになる。犬マサも大活躍し、ピンチを脱する。会社側の傭兵?2人は死ぬ。最後の展開は、なんだか、ごちゃごちゃの末のハッピ―エンドという感じで、あまり好感はもてなかった。

  • 文庫で再読しても犯人の遺体の処理の仕方には納得できないな。
    自分の息子でしょ?そんなことできるのかな。まして愛していないわけでもないのに・・・そこがどうしてもひっかかる。
    でも、主人公(犬)を取り巻く人達の描かれ方には好感がもてる。(特に進也)続編も読んでみようと思わせる作品だと思う。

  • 宮部みゆき最初の長編小説。
    ある探偵事務所で飼われている、元警察犬の視点から描かれた、ちょっとユニークな推理小説です。
    少し読みにくいところもありましたが、最後まで結末がわからないストーリー展開には、思わずのめり込んで読んでしまいました。
    ただ、最後まで読んでみて、すごい面白かったという訳ではありませんでした。
    まあ、こんなものかなという感じでしょうか。

  • 視点はおもしろいですが、最後が説明的すぎて物足りないですね。

  • 探偵犬の目線から書かれた、ほんわかサスペンス

  • カワイコちゃんが通用するのはルパンだけ(ぇー)語り手が犬って…

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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