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空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)

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著者 : 北村薫
  • 東京創元社 (1994年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413019

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)の感想・レビュー・書評

  • 恥ずかしながら北村薫さんを読むのは本作が初めて。
    ミステリーと言えば、殺人事件が起きて、謎に挑む刑事ないしは探偵が出てきて…というお話を想像しますが、全然そんなことはありません。
    日常生活の中で起こり得る(起こらないけど)不思議な出来事を描き、その謎を解いていく「日常ミステリー」なんです。
    主人公は女子大生、探偵役は春桜亭円紫さんです。
    女子大生は変に女女していなくて、そこが逆にとてもリアル(北村薫は当初は覆面作家で、本物の女子大生が書いているのだと勘違いした人が続出したそう。さもありなん)。
    それに何と言っても円紫さんです。
    個人的に落語が大好きですから、この設定は堪りません。
    本筋とは関係ないですが、円紫さんの高座や落語に関して薀蓄を傾ける場面が、私としては読みどころでした。
    たとえば、「鼠穴」という演目があります(私は談志のしか聴いたことがありません)。
    田舎から兄を頼って出て来た弟が、たった3文の銭を渡されて、そこから身を立てていく噺。
    3文を6文にし、6文を12文にして…と財産を増やしていくわけですが、円紫さんは「その間にだって食べるものは食べるだろう。別に金があるなら、三文から始める必要もない」と疑問を挟みます。
    いや、言われてみれば、なるほど、その通りです。
    落語ファンには、いろいろ気付かされることが多いのではないでしょうか。
    もちろん、謎が提示されて、それを快刀乱麻で解決し、大団円に至るというミステリーの醍醐味は十分に味わえます。
    パターンは概ね同じでも、1話ごとに趣が異なるのも魅力。
    たとえば、「赤頭巾」はシリアスで読後感も重いですが、表題作「空飛ぶ馬」は気持ちが晴れやかになる快作です。
    個人的には、「砂糖合戦」が気に入りました。
    冒頭にカッコ書きで「起こらないけど」などと書きましたが、これは十分に起こり得る日常ミステリー。
    卑小な人間の些細な悪意について書いていて、「あるある」といちいち得心しながら読みました。
    いろんな愉しみ方が出来る、実にお得なミステリーと言えましょう。

  • ◆ お風呂でミステリ ◆

    ・・・ 第六回 「空飛ぶ馬」 ・・・

    1989年にいきなり(という印象があります)登場してきた北村薫と「空飛ぶ馬」……。
    それまでミステリーといえば、ホームズ・クイーンの本格派か松本清張の社会派路線しかなかったところに、殺人が起こらないミステリーを出してきたのです。
    頭脳明晰、高潔な人格者である落語家の円紫さんを探偵役に文学好きの女子大生が語り手の、この連作短編ミステリーは、ほどよく文学や落語の蘊蓄が入り、読みごたえがあるのに爽やかないま読み返してもピカピカの一冊です。
    私は一番“きれいはきたない”の“砂糖合戦”が好きですね。
    シェイクスピアが好きだということもありますが……。

    あ、一応、お風呂でミステリー、と銘打ってありますが、別にお風呂でなくてもいいんですよ、もちろん。
    そうして、お風呂で読むときには必ず自分の本で読むようにしてください。
    うっかり落下……の事故は怖いですからね。

    2017年07月11日

  • ちょっと前まで大流行りだった「ある職業と日常の謎」シリーズ(ビブリアとか和菓子のアンとか真夜中のパン屋さんとか…)よりずっと前に北村薫で出ていたんだなあ、という感慨が一番深いかも。落語の解説は分かりやすい。

  • 日常ミステリーだけど、主人公が文学・文芸好きということもあって、いろいろな文学の引用がされていたり、謎解き役が咄家さんなので、落語のお話が要所要所で登場し、そちらの方にも興味がわきました。大学生の主人公のまだ少女らしさが残る感じだとか、円紫師匠の知的な優しい雰囲気が好ましく、シリーズを読み進めたいなと思いました。円紫師匠の落語を聞いてみたいです。

  • ほとんど純文学を読んでいるかのような心地だった。

    主人公の19歳の文学少女(敢えてそう呼ぼう)の、大人になりきる少し手前の繊細な感性が、淀みない文章で丁寧に表現されてゆく。
    日常のふとした出来事で、彼女の中にこれまで読んできた物語の一節が思い起こされ、重ねられていく。主人公が趣味で見に行く落語の物語も、日常の諸処でいろいろなことを教えてくれる。
    最も感動的だったのは、主人公が友達と夏の蔵王に旅行した際、深緑の山を見ながらまだ見ぬ錦秋の頃を想像し、かつて読んだ本の中にその風景を見いだし、疑似体験をする場面。
    物語は知らない風景だって見せてくれるのだ。
    読書はこうも人生を豊かにするのだ。
    主人公と同じくらいの時にこの本に出会いたかった。そうすれば若い頃もっと読書したのに!

    …で、矛盾するようだけど、私は純文学にちょっと苦手意識があって、この本も読むたびに居住まいを正さなければならない気分になって、引き込まれるように読むのとは違った関わり方をした本だった。
    でも、一度読んで終わりにするのは勿体無い。再読することで気づかなかった発見がある本だと思う。

    落語家の円紫さんが、類い稀なる洞察力で、日常に起こる謎な出来事を、状況を聞いただけで解決しちゃうライトミステリです、本来は。

  • 1.織部の霊
    2.砂糖合戦
    3.胡桃の中の鳥
    4.赤頭巾
    5.空飛ぶ馬

    日常の謎ミステリの代表格。
    初めはのんびりとしたストーリーと
    興味を惹かれない「謎」に
    あまり入り込めずにいた。
    女子大生3人が蔵王に旅行する
    辺りでは、ついに本を閉じて
    二月程寝かせる羽目になった。

    しかし、読み直してみると
    優しく味わい深い文体に
    徐々に魅了され、
    「謎」のちょっとピリ辛な所も
    良くて、結局気持ちよく読み終えた。
    本当に素敵な文章を書く作家だなぁ。

  • 「日常の謎」というジャンルが好きなのだが、その第一人者とでも言うべき彼の作品は実は初めてである。
    彼、と書いたが、この作品の発表時点では年齢も性別も出しておらず、主人公である女子大生に近い存在なのではないかという憶測があったらしい。
    今読むと前提知識が無くてもそうは思わないのだが、これは時代性だろうか。

    解説にもあるが、確かに超越者たる「名探偵」を現代の日常にどう落とし込むか、というのは難題だ。
    そこでこの「噺家」というポジションは絶好に謎の存在で、具合が良い。

    各話自体は正直なところあまり嵌まれなかった。
    面白くない、というより、何かピントが自分と合っていない様な。
    取り敢えずシリーズは通読する予定。

  • 北村薫のデビュー作。「人が死なないミステリ」の代表格とも言える(思い込みに基づく断定)作品です。

    どろどろとしたサスペンスとは無縁の、暖かな作品群…ってあれ、この本ってこんなに黒かったんでしたっけ?(汗)
    久々に再読してみて、ちょっとだけビックリしました。多分、加納朋子とイメージ混同してます(苦笑)。円紫さんの軽妙さに惑わされた面もあるかもしれませんね。

    改めて今更思うのは、ああこのシリーズって「私」の成長記録なんだなあと。「赤頭巾」を読んだ時に、「山眠る」(「朝霧」所収)をしみじみと思い出しました。

    「父の心が本当にそれを~」のくだりでゾクッとしました。北村さんって、時々何食わぬ顔で物凄い球を放ってきますよね…。

  • 落語好きで地味な女子大生「私」と落語家円紫師匠の名コンビ第一弾。
    「私」がぶつかる日常の謎を円紫師匠に持ち込み、解いてもらう短編集。
    円紫師匠、若い人でそのうち主人公と恋愛関係に?って思っていたけど、読み進めていたら結構なお年ですでに妻子持ち。大きな波のない淡々とした作品なので、好みが分かれると思う。

  • こういう文学少女って今も存在するのかはわからないが、ちょっと前はいた。その雰囲気が表紙の高野文子の絵とぴったりで、読んでいても高野文子の絵で脳内再生されてしまった。(正ちゃんは『るきさん』のえっちゃん)
    これがデビュー作なんだから驚くが、小説家にはこれくらいの教養はあってほしい。
    ミステリとは言いながら、謎解きより落語や文学に関する話の方が長いので、主人公の行動や語りを含め、そこが楽しめないと辛いかも。
    そこが楽しい人にはたまらない。
    読み手を選ぶ気もするが、上品で面白い、いい作品だと思う。

  • 円紫さんとわたしシリーズ。ずっと読みたかったのをようやく読了。
    日常のミステリを描いた作品。「胡桃の中の鳥」はちょっと考えさせられた。ゆきちゃんの境遇に同じくらいの子を持つ母としてはつらく感じた。
    落語は全くといっていいほど、知らないがこの作品を読んで落語にも興味を持つことが出来た。

  • 女子大生の「私」と落語家の春風亭円紫の二人が、ちょっとした日常の謎を解いていく、通称「円紫さんと私」シリーズの1巻目。中編5編を収録。

    【感想】
    落語家が主役級に据えられているだけあって古典落語のエピソードが沢山登場する。
    個人的には「胡桃の中の鳥」「赤頭巾」がとても良かった。「赤頭巾」は他の4作に比べて読後の印象が悪いが、5作目に配置された「空飛ぶ馬」のエピソードで上手く中和されている。

  • 北村薫さんのデビュー作だとか。

    お幾つでデビュー?と思わず
    ググってしまいました。
    なるほど…初老に手が届いておられる。
    老成した味わいはそのせいなのでしょうか。

    ジャンルを超えて、この本が大好きです。

    「私」はとても頭が良くて博識で
    ちょいと渋い好みでかっこいい。
    なのにそんな自分をかなり記憶の奥底の方で
    否定したままの日々を重ねているのですね。

    その「私」の心が、円紫と過ごす数少ない
    時間をきっかけに、ゆるゆると解けてゆく。

    一冊の中に収められたいくつかの小さな
    日常の謎が円紫によって解かれて行く。
    解かれた謎の波紋は、さらりと過去に
    流されてはゆかず、「私」の中の
    何かをひとつ柔らかくしては積み重ねられ。

    表題作に至るまでが、
    賢治童話の幻燈のように不思議な味わいで
    ひとつに繋がって映し出されていく感じ。

    高雅でもなく粋というのでもない。
    なんと言葉にすればよいのかまだ浮かばない。
    この上質さをなんと呼べばよいのだろう。

    もどかしさを抱えつつ
    シリーズ2作目に向かいます。

  • 読み始め…16.5.20
    読み終わり…16.5.23

    女子大生の私と、落語家円紫師匠の名コンビが人の死なない日常ミステリの謎を解き明かす「円紫さんと私」シリーズの第一作目「空飛ぶ馬」

    私は古本屋さん廻りが大好きな読書家で落語好き。なかでも円紫さんのファンという私は、ひょんなことから円紫さんと対面する機会に恵まれ以後知り合いとなり、私の出来わした日常のどこにでもありがちななにげない謎が、円紫さんの冴えた頭脳でみごとに解き明かされていくというほのぼのミステリ。。

    主人公の女子大生、私の趣味としている古書と落語がとにかくたくさん登場します。ことに落語は私の趣味でありながら、もう一人の主人公である円紫さんのお仕事でもありますからそりゃぁもう...。。

    落語には今までそれほど興味はありませんでした。ですけどこれもまたひとつの出会い。幸いにも登場するのが古典落語なら伝統的なもの。さすれば検索検索っとググってみれば、容易く動画でお噺を聴くことができました。

    「織部の霊」
    円紫さんはマジシャン??まるで手品の種明かしを見せられているようなみごとな謎解き。
    古典落語《夢の酒》円紫さんの解説があったおかげかとてもわかりやすくて、はじめてちゃんと聴いた落語にすんなりと大笑い♪

    「砂糖合戦」
    人間ウオッチングが招いた謎でした。こんな悪戯ありそでなさそな、なさそでありそう?
    古典落語《強情灸》こちらも単純でわかりやすくて笑えまました♪

    「胡桃の中の鳥」
    この謎だけはあまりにもすんなり解いてしまった円紫さんにえ~~っ!と疑念の一声。円紫さんはやっぱりマジシャンじゃないのかしら....
    古典落語《五人廻し》ひとつ前に読んだ本が遊郭のことだったから興味津々。専門用語にもほうほうとうなずけて、やっぱり読むということは読めば読んだだけの価値があるものだなぁとつくづくしつつ大笑い♪

    「赤頭巾」「空飛ぶ馬」
    こちらはブラックユーモアからのほのぼのおとぎ話。
    古典落語《一眼国》ミイラ取りがミイラになっちゃった~というお噺でした。(文中解説あり)

  • 面白かったけど、ちょっと文章が…
    後半の2編はあまり違和感なく読めました。

  • 読了。

    自分に文学的素養がないため、理解しづらかったり退屈だと思うようなところもあったけど、主人公の話を聞いただけでパパッとその謎を解いてしまう「神のごとき名探偵」、円紫さんの話を聞くのは愉快でありました。

    それにしても主人公(文学部の女子大生)の知識の深さ。自分は全然勉強しない大学生だったので感心するばかり。

  • 日常系ミステリーの先駆けとも言える北村薫さんのデビュー作です。主人公の女子大生と落語家の円紫さんが他愛のない日常の謎を解いていきますが、あまりそちらには関心が無いので、ほんわかした雰囲気を味わいながら読みました。後年の北村さんよりちょっと文章がとっ散らかってるような気がしました。

  • 円紫シリーズの第一弾。日常の謎ミステリーを扱った短編集です。
    主人公は女子大生の「私」なんだけど、知識のせいかあんまり女子大生っぽくはないなぁ(ちなみにお友だちふたりもいまどきの女子大生っぽくはない…かも。キャラはいいんだけど。笑)円紫さんという落語家が安楽椅子探偵で、そこかしこに落語はじめ古典とか文学とかの知識が出てくるのも楽しめました。ただ、はまる人とはまらない人はいそうかな。

  • 初北村。日常の謎と言われるものを初めて読みました(^^ 主人公の女子大生わたしと落語家の春桜亭円紫師匠との掛け合いが心地よいカンジで心温まりました!いつものミステリにちょっと飽きたら、こういうのを挟むと良いかも...(^^*

  • 「人間というのも捨てたものじゃないでしょう」円紫さんの言葉が心にしみる。

  • 最初からクセのある内容が続き、取っ付きにくい印象を持ったが、私の好きな落語の「鼠穴」が出てきてから俄然興味が湧いてきた。

    次回作も挑戦したい。

  • 2015年11月10日読了。
    2015年197冊目。

  • 殺人事件ではなく、日常の何気ない謎を解いていくミステリー。北村薫の読みやすい文体もあり、楽しめた。シリーズものであり続けて読みたいと思った。

  • 大学生の主人公と、若手実力派の落語家が、ちょっとした事件や不思議の謎を解いていくというシリーズ、推理よりも、季節のうつろいの描写や、文学作品や落語の引用の方が面白い。街並みやちょっとした小道具の描写(テレホンカードとか)が時代を感じさせる。なつかしい感じ。

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空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)の作品紹介

女子大生と円紫師匠の名コンビここに始まる。爽快な論理展開の妙と心暖まる物語。

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)の単行本

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