太宰治の辞書 (創元推理文庫)

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著者 : 北村薫
  • 東京創元社 (2017年10月12日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488413071

太宰治の辞書 (創元推理文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 17年前に完結したシリーズのまさかの追補。書店の棚で見かけた時には目を疑い、間違いではないとわかった時に小躍りしてしまった。
    ただし、今回の主役は《私》ではなく本であり作家(芥川龍之介、太宰治)。そこは少しがっかりしてしまった。学生時代の親友、正ちゃんの出てくる第二章は二人の会話のピンポンが楽しくかつてのシリーズを思い出してなごむ。でも他の章は(前作『六の宮の姫君』で出ていた方向性ではあったけれど)本の謎、作家の試行錯誤を追いかける謎、複数の作品を結びつける謎を追いかけるミステリーになっている。
    ちょっとモヤモヤしていたけれど、米澤穂信の解説を読んで納得。前作の円紫師匠との会話を引用して、成長小説としての私と円紫シリーズは終わっているのだ、という。これにはお見事、と拍手。本のミステリーの見事な実践。
    ちなみに、解説は米澤穂信がミステリーというジャンルに進もうと思ったきっかけか北村薫の本シリーズを読んで「ミステリーは懐の広い豊かな可能性のあるジャンルだ」と思ったからと記してあって、胸が熱くなります。

  • 10代の半ばから読み始めたこの「円紫さんと私」シリーズには途中で幻滅した。文学をまとうように暮らす多感な「私」の生活に現れる謎を解き明かす物語から、文学そのものに関する謎を、生活の断片をまといながら解き明かす物語に様変わりしたからだ。
    久々の高野文子の表紙にひかれて思って手に取ったものの、『太宰治の辞書』も表題通りその手の物語で、私はあくびを噛み殺しながら読んだ。70年前に亡くなった作家の一編における矛盾がどうであろうが、興味は引かれない。
    ただ中にひとつだけ、謎が謎として意味を持つ掌編がおさめられている。これだけを読むのでよかったと思った。

  • ずっと待って、さらに文庫化を待っていた作品。
    「舞踏会」なんだか知っている話だと思っていたら、高校の教科書に載っていた作品だと思い出した。こんな背景があったとは。あらためて、読んでみたら、確かに印象深い小品。
    「女学生」これも既読。元ネタがあったことは知らなかった。単なる女学生の日常を描いてみただけかと思っていた。
    「太宰治の辞書」上野の鈴本演芸場にも行きました。ようやく円紫さんが登場。でも、謎解きはしてくれない。辞書を追いかけることになるとは。

    面白かった。
    シリーズを読み直そう。

  • 難しかったなー。
    小説という気がしなかった。

  • これは贅沢な本だった。
    電車の中や仕事の合間など
    今の私は隙間時間にしか
    読書ができない境遇にあるが
    片言隻語も見過ごしたくなくて
    何度も戻りつつ夢中でページを繰った。

    シリーズへの懐かしさから手に取ったが
    そんな郷愁を一掃してしまうほどの
    新たな驚きと意外な出会いが
    太宰愛用の「掌中新辞典」を巡り
    私を訪れた。

    クラフト・エヴィング商會の吉田篤弘さん
    古典部シリーズの米澤穂信さん

    北村薫氏と合わせて
    私がその文体を敬愛する作家たちが
    この本に、いるのである。

    もちろん「わたし」と円紫さん
    それに正ちゃんとの再会は
    かつてと変わらない懐かしい部分も
    歳月を経て変わったところも
    北村さんのあの聡明で抑制の効いた
    美しい文体で大いに堪能した。

    歳月の中で変わるもの変わらないもの。
    そんな当たり前のことを
    当たり前に受け止めさせてもらえた。

    物事の「定義」の時代ごとの変遷。
    このことの正しさは
    国語教育に携わる者として
    心に強く刻みたい。

    文学の謎を追う旅。
    その豊かさに羨ましさと憧れを
    いつまでも持ち続ける人でいたい。

    これから読まれる方にはかならず
    解説まで残らず目を通されることを
    お勧めします。

  • 書く者がいて
    読む者がいる。
    語る人間がいて
    聴く人間がいる。
    歌う奴がいて
    踊る奴がいる。

  •  一応、読書が趣味のつもりの自分であるが、本作を読んで思う。読書が趣味と言える資格とは、何だろう? 案の定、自分には難しい作品だった。

     本作は、苦手な北村薫作品の中でも、特に苦手な「円紫師匠と私」シリーズの、実に17年ぶりの新刊である。最初は学生だった主人公の「私」も、前作『朝霧』では出版社に就職しており、本作では結婚して中学生の息子がいる。

     このシリーズは、前々作の『六の宮の姫君』から、文学論的色合いを濃くしていく。文豪の代表作すらろくに読んだことがない自分には、これらの「謎」に興奮したり、胸を躍らせたりすることはできなかった。本作もまた然り。

     自分よりはるかに格上の読書家である「私」が、太宰治のある作品の記述に疑問を抱き、様々な文献に当たっていく。図書館や出版社、縁の地を訪ね歩き、やがて「私」なりの結論に達する。これもまた、「謎」を追究するミステリーの形には違いない。

     普通の読者が気にかけない部分に反応するのは、出版に携わる者の資質の1つだろう。自分はエンタメ作品ばかり読んでいるが、エンタメにだって作者のこだわりやメッセージがあるはずだ。おそらく、自分はそれらをほとんど読み流している。

     それにしても、あんなに依存していた円紫師匠の出番はすっかり減った。シリーズ初期とは違い、謎解きの主体は「私」になっている。学生時代の「私」が、恋心を抱いていたのかどうかわからないが、2人にとっては、今のような関係がベストなのだろう。

     創元推理文庫化に当たり、北村さんによる後日談的なエッセイが収録されているが、その事実には驚いた。わざわざ明かす必要はないのに、北村さんらしい。この事実が、本作の価値を毀損することはない。むしろ、高めてさえいる。

     自分には本作のよさが理解できていないという点で、星3つとしたい。星5つをつける資格はあるまい。

  • 単行本でも読みましたが、文庫で再読。
    前回は久々の新刊に興奮していましたが、
    今回は落ち着いてじっくり読みました。

    改めて、私の執念にビックリ。
    世の中の大半の人には、
    そんなこと調べて何の役に立つのかと
    思われるのでしょう。
    でも、そうやって知的好奇心を満たしては
    次を求めていくことでしか得られないものがある。
    その心の余裕が必要なのだ。
    分かる、本当に解る。

    米澤さんの解説もいい!

  • 「円紫さんと私」シリーズの最新作。大学生のとき「六の宮の姫君」まで読み切った私は、小説を読んで時の流れに驚く。
    本格ミステリを期待する方には拍子抜け感が凄いかもしれない。何より円紫さんは謎を解いてくれる名探偵からが退いており、これは「私」の探索の旅である。「六の宮の姫君」を読んで興奮した記憶が蘇った。いつでも謎を愉しむ感覚を与えてくれる。素晴らしいミステリである。

  • 前作、「朝霧」を読んでから何年が経ったのか、もはや思い出せない。

    私の記憶では、まだ就職したてだった「私」は、いつのまにかオトナになり、結婚し、中学生の息子までいた。

    「私」の成長を表すかのように、円紫さんの登場回数は減り、謎を解くのは「私」自身になる。

    そして、「一年後の『太宰治の辞書』」を読むと、「私」が辿った謎解きの足跡は、北村薫氏の足跡だったのだと気付く。


    過去の著名な作家が、何を想って、それを書いたのか。
    想像、予想は出来るけれども、真実は永遠に分からない。
    でも、だからこそ、残っている資料から、掘り下げていく作業は面白いのだと思った。
    たった数十年のことだけれど、歴史を紐解く歴史学者のよう。

    作家というよりも、文学者だなぁ、と、感じさせる一冊だった。

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太宰治の辞書 (創元推理文庫)の作品紹介

みさき書房の編集者として新潮社を訪ねた《私》は新潮文庫の復刻を手に取り、巻末の刊行案内に「ピエルロチ」の名を見つけた。たちまち連想が連想を呼ぶ。卒論のテーマだった芥川と菊池寛、芥川の「舞踏会」を評する江藤淳と三島由紀夫……本から本へ、《私》の探求はとどまるところを知らない。太宰が愛用した辞書は何だったのかと遠方にも足を延ばす。そのゆくたてに耳を傾けてくれる噺家。そう、やはり「円紫さんのおかげで、本の旅が続けられる」のだ……。《円紫さんと私》シリーズ最新刊、文庫化。

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