月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)

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  • 399レビュー
著者 : 有栖川有栖
  • 東京創元社 (1994年7月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488414016

月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 休火山が二百年ぶりに大噴火。
    なんともダイナミックなクローズド・サークル。

    吊り橋の落下でも、トンネルの落盤事故でも、繋いでいた船が流されたわけでもない、人為的介入がまったく不可能な状況。
    そして嵐や大雪とも違う、ほぼ予測不能な事態。
    これは作者有栖川有栖氏のフェアプレイ精神に則った選手宣誓。
    大地の震動と山の咆哮に「本格ミステリ」の開幕宣言を聴いた。

    大学の推理小説研究会の夏合宿が舞台で、主人公が作者と同名の「有栖川有栖」 そしてサブタイトルに冠した「Yの悲劇」
    長編デビュー作への意気込みというか熱気というか「ミステリ愛」がビシビシ伝わってくる。

    「ミス研」メンバーの小旅行ということもあって、列車内で交わされる「しりとり」に始まるミステリ談義や、ときおり挿まれる蘊蓄や小ネタが面白く、また嫌味にならないところもいい。
    キャンプ場で出会った他大学の男女と親睦を深めるために行なった「マーダーゲーム」なる遊びは初めて知ったが、これも楽しそう。
    しかもその後の殺人事件において、このゲームが読者を疑心暗鬼にさせる効果を発揮するのもうまい。

    さてミステリ本編。
    閉鎖空間での殺人。複数の容疑者。純粋な犯人探し。
    登場人物がたくさんいてなかなか覚えられないところはあったが、そこが醍醐味でもあるので仕方がない。
    ことごとくミスリードにひっかかって「いいお客さん」だった。
    後半の推理合戦の迷推理に「それ全部考えたよ」と苦笑い。
    証拠品や状況を論理的に整理していって真相に行き着くのは、やっぱり気持ちがいいし面白い。
    指摘されて「ああっ」と気づく悔しさと喜び。

    冒険小説、パニック小説、そして青春小説としての味わいもあった。
    爽やかさと可笑しさ、そしてちょっぴりの切なさが入ったラストがいい。

    二作目の『孤島パズル』読みたさにデビュー作を手に取ったが楽しませてもらった。
    さていよいよ次に、と行きたいところだが、クイーンも読みたい。
    『Yの悲劇』しか読んだことがないが「国名シリーズ」に興味津々。
    派手なトリックもいいが、巧緻なロジックも好きだ。

    (作中で、都筑道夫さんの言葉が引用されているのに個人的にはグッときた。
    都筑さんの『七十五羽の烏』はロジック好きにはお薦め。
    現在はおそらく絶版なので、古本か図書館で是非。)

  • めっさスリリングな舞台設定!
    休火山の噴火、下山出来ない状況で減っていく食料、その中で起きる連続殺人…。
    これでもかと追い詰められていく主人公達。

    こんなに苛酷な状況に置かれているのに、登場する大学生達はみんなマイペースでどこか楽天的。
    そのせいかドキドキはするけどあまり怖くなくて、怖がりな人間にはちょうど良い塩梅。
    誰が犯人なのか、無事に下山出来るのか…と気になって気になって、仕事中も早く続きが読みたくてなかなか集中出来なかった。

    第6章の前の「読者への挑戦」を読んだ時には、遂に謎が解かれるんだなと(そういう趣旨ではないのに)とても嬉しかった。
    ちょっと考えてみたけど自信がないまま読み進めて、もちろん予想は大外れだった。
    でもいいんです。
    すごくワクワクしたことの方が大事。

    語り手・有栖川有栖(アリス)の所属する英都大学の推理小説研究会(EMC)のメンバーがとても魅力的。
    特に江神部長とモチさんが好き。
    アリスは、思い込みの激しい子なのかな?という印象。最後のシーンがとっても不憫…(涙)。
    EMCのメンバーが大活躍してくれるであろう学生アリスシリーズを読み進めるのがとても楽しみだ。

    そして「平成のエラリー・クイーン = 有栖川有栖」という紹介文と「Yの悲劇'88」という副題を見ていると、エラリー・クイーンの『Yの悲劇』も読みたくなる。
    学生アリスシリーズの続きと『Yの悲劇』、どちらを先に読もうかなと悩むのもまた楽しい。

  • 月光ゲーム―Yの悲劇’88 (創元推理文庫)

    夏合宿のために矢吹山のキャンプ場へやってきた英都大学推理小説研究会の面々―江神部長や有栖川有栖らの一行を、予想だにしない事態が待ち構えていた。矢吹山が噴火し、偶然一緒になった三グループの学生たちは、一瞬にして陸の孤島と化したキャンプ場に閉じ込められてしまったのだ。その極限状況の中、まるで月の魔力に誘われでもしたように出没する殺人鬼。その魔の手にかかり、ひとり、またひとりとキャンプ仲間が殺されていく…。いったい犯人は誰なのか。そして、現場に遺されたyの意味するものは何。

    ・レビュー


    面白い。
    苦労したが(数時間悩んだ)、7割ほど推理は正解だったかな。
    フーダニット (Whodunit = Who (had) done it)
    誰が犯人なのか
    ハウダニット (Howdunit = How (had) done it)
    どのように犯罪を成し遂げたのか
    ホワイダニット (Whydunit = Why (had) done it)
    なぜ犯行に至ったのか
    といった三要素で考えるならば、フーダニットとハウダニットに関してはかなり苦戦しつつ当てることができた。ホワイダニットはまるっきり外してしまった。当てられる人がいるかどうかは微妙なところかもしれない(笑)

    新本格は綾辻行人の『十角館の殺人』以来で、その前になると近い形だと坂口安吾の『不連続殺人事件』とか筒井康隆の『ロートレック荘事件』とかがフェアな勝負ができる小説だったんだけれど、『十角館の殺人』はほぼ完勝(かなり苦労した)、『不連続殺人事件』は犯人は判ったけどそれ以外が判らなかった。『ロートレック荘事件』はトリックは見破ったけど考えてる間に読み終わってしまった(笑)という感じ。今回は多分今までで一番キツかったなぁ。

    十角館やロートレックはかなりトリックが大掛かりで、逆に言えば突飛な発想さえできる人なら後の理詰めはなんとかなる。この有栖川有栖の『月光ゲーム』はいろんな人の感想を聞くと「地味」と返ってくることが多い作品だ。だがそれは逆に考えるべきだと思う。全く欠点ではない。もちろん好み云々は抜きとして。
    というのもトリックが大掛かりであるほど、それは本来誰も行わないようなものだ。実現性と虚構線のバランスが大いに崩れているからこそ面白い。一方この『月光ゲーム』は実現性は非常に高い。純粋にタイムテーブルに登場人物の行動を書き込んでいけば犯人を導くことができ、その他の謎も発想力で突き止めることができる。
    これを前述の実現性と虚構線のバランスが大いに崩れている面白さと比べて劣っていると考えるのはどうだろうか。僕はどちらかと言えば地味ながらも大いに事件が身近になり得るこういった推理小説こそ、本来の本格ミステリじゃないかなと思う。

    さて僕が今回謎解きがキツかったと感じたのはそこに由来するだろう。
    普段から突飛な発想で物事を考えたりしているからかなんとなく大掛かりなトリックは見破りやすいのだけれど、純粋に犯罪の実行が可能な特定の一人を論理で導くのは当然難しい。それができたら探偵になれる理屈になるので(笑)
    派手な事件はやはり面白いが、そういう小説が増えてきた中でこういう理詰めの作品を読んで挑戦するのは楽しい。

    ストーリーに関しては、先日読んだ『闇の喇叭』とはまた別の形で「青春」が織り込まれた内容だ。主人公である有栖川有栖と探偵役の江神二郎は英都大学推理研究会のメンバーで群馬の眠りついた火山へキャンプにやってきた。そこでたまたま居合わせた他の大学のキャンプ客と意気投合し楽しいキャンプ生活を送る。そこで起きた殺人や失踪、そして現場に残された「y」の文字。更に眠っていたはずの火山が噴火し、山に閉じ込められてしまう。
    僕は群馬出身なのでだいたいどのあたりの山がモデルなのかわかって面白かった。
    まさにクローズドサークルの典型とも言えるこの状況で、若い学生たちの恋と殺人事件とが見事に交差していく。登場人物が非常に多く、そこが多くの不評を買っていたりもするのだが、アダ名で登場人物たちが名前を呼び合ったりするのでそこまで混乱はしないのではないだろうか。それにそれも便宜以上の意味がある。
    動機がやや不評だが僕はそこまで気にならなかったかな。クローズドサークルではしょうがない一面もある。

    そして、青春小説的な部分も面白いが、何と言っても作中の「マーダーゲーム」というゲームや、推理小説談義、月の話など、登場人物同士のやりとりもなかなかおもしろい。
    まさにタイトル通り「月光」が見事に作品をまとめあげていたりする。そういう意味で非常に美しい構成の物語といえるだろう。
    もちろん推理の部分も本格らしい面白さがある。

    これはネタバレするような話も少ないのでこのへんにしておこう。ミステリファンじゃなくとも難しいパズルを解くような感覚で楽しめる小説になっているんじゃないだろうか(ちなみに英語圏ではこの手のミステリを「パズラー」という)。

    次回は予定が変わらなければ、学生有栖川有栖が主役の同シリーズ2作目『孤島パズル』のレビューを書こうと思います。実はもう半分くらい読んでいるのでいまもまさに謎解きの最中だったり……

  • 衝撃。
    ロジックの美しさといったらない。
    この作品は、所謂「クローズドサークルもの」だ。
    推理小説を読むのは好きだけど、ジャンルについてはあまり詳しくはない。しかしこの作品を読むと、ミステリ用語の知識が増えていく。なぜなら主人公ら4人は推理小説研究会という大学サークルのメンバーだからだ。読んだことがあるものや初めて聞いたタイトルなど彼らはかなりマニアックなミステリーマニアといえる。
    主人公の有栖川有栖は大学1年生。たまたまであった推理小説研究会の部長江神と出会い、サークルに入会することになる。サークルには口の立つ望月、ハードボイルド好きの織田がおり、日々ミステリ談義に花を咲かせている。
    彼らが夏合宿(何の?)と称して矢吹山へ向かう道中、同じキャンプ地へ向かう大学生たちと親しくなる。総勢17人でキャンプファイヤーを囲み楽しくすごしていたが、そのうちの一人、女子大学生の山崎小百合が行方不明になってしまう。さらに矢吹山が噴火したことで救助を待つことになるが、そのなかで殺人事件が発生し…。
    犯人が分かったときにびっくりし、犯人を探偵役の江神部長が特定した過程にもびっくりした。推理物として、論理的な犯人当てを楽しむためには警察が介入できない必然性が要求される。それがこの噴火なのだけど、その噴火でパニックになった状況も利用して事件が起こるのが面白い。指紋や、正確な死亡推定時刻などが分からないなか、犯行の状況を論理的(ロジカル)に推理していく江神部長かっこいい…。
    推理物なのでもちろん人が死ぬ。でもなんと言うか、優しいんです。おそらく作者の有栖川さんが優しいからだと思う。読んだ後、「犯人分かったー!まじかー!」ではなくて切なさが残る。でもちゃんとパズルがカチッと嵌るカタルシスもあって、正直癖になりますね。そして学生アリス2作目へ日を置かず飛び込むことに成ります。
    作家アリスシリーズとはまた違う面白さ。作家アリスシリーズを読んでいると学生アリスシリーズが読みたくなり、学生アリスシリーズを読んでいると作家アリスシリーズが読みたくなる…。どうしよう、エンドレスです。

  • 最近、「ミステリー」と銘打った本が多すぎる。日常モノも、キャラクター重視のものも好きだけれど、なんとなく物足りなさを感じ始めた今日このごろ。

    思えば、私のミステリーの入り口は、アガサ・クリスティでした。

    というわけで、原点回帰で本格ものを、ならば今こそ、一時あえて避けていた「新本格」と呼ばれるものに手を伸ばしてみようと思い立った一冊目。

    まずは、登場人物の名前から懐かしい香りがします。が、彼らみんな、洋モノに出てくるような際立った個性のキャラクターの持ち主ではなく、普通の大学生ばかりなので、登場人物の区別が難しい・・・

    強引だなと思える部分もありましたが、大学生だから起こってしまった事件、と思えたり。全体的に、イメージが「青い」感じの作品です。

    やっぱり「謎解き」は良いなと思い知らされる一冊。

  • 日本ミステリー界の重鎮有栖川有栖先生のデビュー作にして、学生アリスシリーズ第一作品です。
    論理的な謎解きと言えば有栖川有栖先生をリンクするのは私のだけでしょうか⁈
    あっと驚く要素は無いものの、論理的に推理しながら謎を解き明かすところがまた堪らないです。
    さて、この作品の最高の見どころはやはり、読者への挑戦状じゃないですか?王道なクローズドサークルもので、読者に対して完全にフェアです。
    鋭い方ならトリックを解けるのではないでしょうか(私はダメダメでした)。
    また、主人公が探偵役ではなくワトソン役というところもこの作品の魅力の一つだと思います。
    登場人物がやや多くて混乱しがちであるため、分けて読むよりは一気に読む方をお勧めします!
    探偵役の江神先輩のロジック的な推理はかなりの見どころです!
    推理に自信を持っている方、まだ未読の方は是非ご覧になって下さい!

  • 有栖川有栖のデビュー作である。
    「学生アリス」としてシリーズ化される最初の物語でもある。
    噴火によって孤立したキャンプ場を舞台としたクローズ・ド・サークルもの。

    本格推理小説を意識しすぎたためか幾分固さを感じるけれど、ミステリーとしてのロジック的完成度は高いと思う。
    登場人物が多く個々に描ききれていない部分もあるけれど、いかにも推理小説研究会らしい会話などは読んでいて楽しかった。
    すべてが明らかになったときに思ったのは、「そんな馬鹿な!!」ということ。
    反面、案外こんな人っているかもしれない・・・という気もした。
    人とは理解しがたい存在だ。
    だからこそより相手を知り、互いに理解しあいたいと願うのではないだろうか。
    短絡的な恋をする人は、短絡的思考をする人かもしれない。
    悲観的にしか未来を見ることができない人は、悲劇的な未来が待ち受けているだろう。
    危急のときには、その人間が本来持っている資質のようなものがあらわれると言う。
    青春ミステリーといった感じが強く、初々しいアリスが可愛らしい。
    読みやすさという点からいっても、推理小説初心者でも楽しめる物語だと思う。

  • 久しぶりに本格ミステリを読んだ。不幸にも隔離されてしまった場所で17人から生存者の数が減っていく。よくあるミステリと言えば、を体現したかのような小説。ありきたりと言えばそれまでだけれど、それでもワクワクしてしまうのはミステリ好きの性というものだろうか。
    人が死んでいく緊張感、その中でも求められ、実現される虚構の安息がちゃんと描かれていて、読んでいて取り込まれる。
    誰がどのようにどうやって、を考えながら読み進めていたが、皆目見当がつかない。不可解なことを起こした動機が綺麗に回収されて、そこでやっと自分の視野の狭さを実感した。
    一発逆転のどんでん返し物ではない。単純で、複雑で、見抜くには論理的思考と感情的想像、多くの目線を必要とする本格ミステリ本。
    苦言を呈するならば、殺人に至る動機が少し弱い気がしないでもない。まぁ、ミステリはすぐ人を殺すからね。こんなものでも不満は大きくないけれど。
    シリーズ物だそうなので、続編も読んでいきたい。

  • 登場人物が多い…キャラクターをたてるという流行は最近のものなのだなぁと改めて思う。キャラクターをたてるより、容疑者としての行動を明確に記述する。
    久しぶりの本格推理ということで、間に挟まる挑戦状でしっかりじっくり考えてみたが…いけないなぁ。しかし、傍点のつくたった一文で否定されてしまうとぐぬぬ。。ってなるね!いやでもちゃんと否定してくれたことをありがたく思うべきか。
    ミステリの部分ではない地の文に魅力があると思う。江上シリーズはまた挑戦しても良いかなぁと思いました!

  • 以前読んだ「双頭の悪魔」は、
    同シリーズ3作目で
    著者の最高傑作と謳われる作品だが、
    物語もトリックもさほど良くなかった。

    その為、有栖川作品自体を敬遠していたが、
    ラノベとして読めばなかなか楽しめた。

    後半に差し掛かっても、
    真相が全く見えて来ず、
    最後まで楽しんで読めた。

    真相自体は驚くほどのものでなく
    残念だったが、
    本格ミステリを備えた
    青春ストーリーとしては
    なかなかだと思う。

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