- Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488414078
感想・レビュー・書評
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有栖川有栖といえば「学生アリス」と「作家アリス」のシリーズが二枚看板であり、互いが互いの小説を執筆しているというパラレル設定である(それにしたら学生アリスは多作すぎ作家アリスは寡作すぎるのだがそういうことを気にしてはいけない)。
「学生アリス」シリーズ初の短編集である「江神二郎の洞察」はもうタイトルそのまんま、謎の大学生名探偵江神二郎が深い洞察を披露してくれる短編集である。
連作短編ではなく、書かれた時期も相当バラバラだが、最初から通して読むと有栖川有栖くんがEMCに入部したところから始まり、1年を経て有馬麻里亜が入部するところで終わる。
短編はきちんと独立して謎を提示して解決しているものの「やけた線路の上の死体」(実質デビュー作)と「桜川のオフィーリア」の間に第一長編「月光ゲーム」の事件が挟まり、「桜川-」以降のアリスには常にその事件が影として差しているので、学生アリスの長編を全部制覇してからの方が多分面白いだろう(ちなみに「桜川のオフィーリア」は「女王国の城」と関連がある)。
有栖川有栖の名探偵は江神二郎にしろ火村英生にしろ背景に謎が多いのだが、江神二郎は、火村英生よりも情が濃い...人間愛が深い気がする。恐らく有栖川有栖という作家が若くして生み出した探偵というのも影響しているが、常に思索的であって、しかしそれをひけらかすでもなく、後輩たちを見守りいざというときは引っ張るという感じ。ああいう先輩が欲しい。
江神とアリスが延々ミステリについて語り合う「除夜を歩く」は、ミステリ研究の入口のようなテイストがある(それにしても望月作の短編は凄まじかった...)。
望月、織田の両先輩も好もしい。あのふたりの掛け合いには味がある。そしてこのふたりが実は事件呼ぶ体質なんじゃないかと思わされる(でもまあ「孤島パズル」を考えるとEMC全員事件体質なんだろうなと思うが)。
そして学生アリスの作品群には一種の青春小説的テイストがどこかある(長編は大学内で事件は起きないのだが)。EMCの面々のやり取りを見ていると「こういう学生時代って良いな」と思わされるし、勿論有栖川有栖が意識したわけではないのだろうが、昭和から平成への世相感をどことなく写した作品でもある。尤もその時代に書かれた作品は少ないのだが。
学生アリスシリーズは長編1作と短編集1作で完結すると有栖川有栖は明言している。早く読みたいものである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
良かった!
基本的には長編が好きなんだけど、このシリーズに関しては短編の方が好きかも!!
望月と信長の会話が良いし、気負わず楽しく読める。
どの短編も良かったし時系列なのがいい!! -
あまりの懐かしさに涙した。
いわゆる学生アリスシリーズなのだけど、ひと昔前にその長編を読んでいた。そして、この短編集。
ドラマ化された『双頭の悪魔』の記憶も朧気だが、マリア役の渡辺満里奈のことがこの本の最後で、思い出された。
それにても、悲しむべきか喜ぶべきか、再読したくなった学生アリスシリーズは手元にないので(実家にはまだあるはず)、電子書籍で購入してしまいそう。
あ、そうそう、昭和から平成に変わる時に、次の元号は何かを推理する話がある、ある意味、これはグッドタイミングな話だと思った次第です。 -
有栖川有栖さんの推理小説(短編集)。久しぶりの学生アリスシリーズだし、オイラにとって久しぶりの推理小説でもある。どの話も水準を超えていて面白かったけど、何より登場人物達の掛け合いが楽しかった。学生アリスシリーズは長編が4つあるんだけど、個人的には「双頭の悪魔」が今の所のシリーズベストかな、と思ってます。学生アリスシリーズも残りは長編と短編が1冊づつとの事ですが、残りも首を長くして待ちたいと思う。このシリーズの最大のテーマである江神さんの件が、どのような結末を迎えるのか、が今から楽しみでもあるし、怖くもある。
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学生アリス、初短編集。アリスと江神部長との出会いから、マリア入部まで。順に読んでいくと自分もEMCに入部し、アリスたちと一緒に過ごしてきたかのように感じる素敵な一冊でした^^ う〜 また一作目から読みたくなってきた!!個人的に『除夜を歩く』が一番好き。
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待ちに待った学生アリスシリーズの短編集の文庫版! ということで、買って2日で読了。
長編のシリーズありきの、アリスの入部からマリアとの出会いまでを書いた1冊。
これぞ本格ミステリ! という感じで、とても論理的で面白かった。書き下ろしの「除夜を歩く」は、有栖川有栖(作者)らしいミステリ談義が繰り広げられていてとても興味深い。
ミステリ好きはぜひ。というか定番か。 -
有栖が入学してからの1年で起きた出来事を時系列順に並べた短編集。
実際に作品が書かれた順ではなく、時系列順にしているのが良い。
作品内の時期的には長編1作目と2作目の間にあたる。
内容としては長編のように実際に殺人事件に遭遇して解決すると言うよりは、日常の謎であったり、殺人事件だとしても安楽椅子探偵的に推理していく内容なので、読者への挑戦状など長編作品のような内容はあまり期待しないほうがよい。