心のなかの冷たい何か (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488417024

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいて、嫌な気分になる。
    あぁ、桐野夏生サンのミロシリーズに似ているんだ。
    やけに攻撃的で、自己顕示欲が半端なく強く、精神的余裕がない感じの女性が探偵業を始めるという話をハードボイルドに書くというね。

    プロットが古いのは、実際だいぶ前の作品だから仕方ない。
    でも文章の書き方は楽しめた。
    第1部は、話を複雑に仕組んであって、なおかつ読むのが楽しみなほどサスペンス。そして終わりに話の複雑さに気付き、やられた感を突きつける。その調子で読み始めた第2部で気分は消沈。
    ぐだぐだと探偵業がすすむ話は眠たくなった。
    主人公・若竹さんの人柄に好感もてないせいも多分にあるだろう。



    ( ・_ゝ・)<人の心理は謎だ、というミステリー。

  • 若竹七海に送られてきた、一ノ瀬妙子からの手記。彼女はガスによる植物状態になっていた。その中身は「ねえさん」へ訴えかける罪の告白であり、そこは瀬沼透の手記。最後には妙子が透を止めるシーンがあって、妙子は石井友代のことで会社に潜入していた、というところで終わる。 パニックになったけど、ここまでが妙子の手記で、第2章では七海が妙子の周りにあたって犯人を突き止めようとする。手記と人物が一緒なのに役割が違っていて混乱するけど、とめられないほど恐ろしいし、面白い。人の悪意とか自分よがりなところが出ている。救いは?

  • 若竹七海シリーズ二作目。

    前作「ぼくのミステリな日常」の明るさとはうって変わって、
    暗かった。
    社内報を任され重責にあえぎながらも楽しんでいたのに対して、
    今回は「悪夢のような出来事」があって
    その会社にいられなくなったせいなのか。
    (そういえば、前作の社内報で暴かれた殺人のせいなのか?)
    それとも、自分が勝手に前作の中に、
    バブルの香りをかいで浮かれていたのか。

    とにかく退職後ひきこもっていた七海が、
    突然箱根に旅に出たことから話がはじまる。
    ロマンスカーの中で一人の女性に出会い、
    後日彼女から手記を託されたために、
    彼女が勤めていた会社に勤め始める…、
    という話だと思っていた。
    なので、途中で驚いて、ちょっと訳が分からなくなってしまった。

    手記の中のサイコパスの自分語りは、
    かなりたんたんとしていて、本当にありそうな感じで怖かった。
    あとは、七海の大学時代の先輩=同級生=後輩で、
    バーでのバイトを誘ってくれた力也が
    いい味を出していた。

  • 葉村晶シリーズと葉崎市シリーズを読み尽くし、単発物を探していたときにこの作品に行きあたった。

    若竹七海の描く、コージーでありながらブラック、ユーモラスでありながら毒がある作品の虜なんだけど、この作品はなんだかよくわからなかった。
    確かに毒は効いている(毒殺犯が出てくるぐらいだから)、なんだけど〜作中作のような「手記」なるものの扱いに苦労したのだ。

    そして、たった1回会っただけで友達認定して、最後まで死者に翻弄された主人公も結局何だったのか。七海と友人・ラビの会話も暗示的すぎて手に負えず、敢えなく敗退。

    それでも社会がバブルで浮かれまくっていた時代に胡散臭さを感じ、「暗い話でも書いてやろうじゃないか」と暗〜いクリスマスの話を書いた若竹さんの姿勢が大好きです。

  • 一番に思ったことは、頬を引っ叩くシーンが多いなぁということ。こんなに人の頬を叩くことってありました?
    時代なのかしら。バブルの…。


    旅先で知り合った妙子からかかってきた電話で、クリスマス・イヴの約束をした七海。その数日後、妙子が自殺未遂をして植物状態に。しかも七海の元に彼女から手記が送られてきて――。

    真相を知るために七海が動きます。


    手記のところで勘違いをした私は二度読みしてしまいました(笑)

    全体的に陰鬱な気持ちでモヤモヤとしたまま読み終わりました。そういう作風で書いた小説のようですから読み方としては正しいのかなぁ。うーん。

  • 長らく入手困難だったそうで文庫化されたのも去年の12月中旬。
    すじもクリスマスイブに向かってにぎやかに、華やかに、怖くたどっていくもの。

    同時進行だとよかったのだが読み終わったのが年も明けてで、
    もう一度戻りかえったような気がした。

    バブル崩壊前とてさぞや派手なクリスマス週間だったろうと想像できる時。
    主人公「若竹七海」は恐ろしい「手記」を読むことになる。
    自殺未遂で植物人間になってしまった友の「手記」。

    二重にも三重にももつれもつれた人間関係。
    心の闇。

    その恐ろしさはしかし、現在普通のことである。
    いや、あまりにも見聞きする事件である。
    だから、怖ろしい!

    昨日も何ものかが閑静な住宅地で母娘を包丁殺傷した事件があったばかり。
    去年は東海地方で母を毒薬中毒に追い込んだ娘の事件。

    「心のなかの冷たい何か」
    バブル期の華やかさの中では一層悲惨だったろう。

    15年前に読んだ人はさぞや暗い気持ちになっただろう。
    と、思う慣れてしまった今が怖い。

    玄関のドアは注意して開けよう、いや、心のドアもやすやすと開けてはいけないんだ。
    なんて、嫌な世の中。

  • 「わたし」こと若竹七海の毒に当てられ、暴走気味の探偵行に若干引きつつも、その辺のイタさをまたしも逆手にとっていて感心することしきりである。そうはいっても奇策を弄して読者を煙に巻くというんではなく、その根っこには直球勝負を望んでいる作家像が見え隠れする。「わたし」の友人で、ロマンス作家でもあるラビのこんな台詞に若竹七海の作家魂をみた気がする。「でも映画や小説や音楽やそんなもののなかからストーリーや状況を使いながらも、もっとなにか本当のことを下敷きにして話ってのは作られていくもんさ」。

  • 若竹七海、ノンシリーズの初期作品。
    著者ならではの、探偵役のキャラクターがよい。表面はドライでクールな20代半ば以降の女探偵だが、他人とのコミュニケーションに悩み、自分の限界に苛立ち、世の中の理不尽さに憤慨する、つまりいかにも人間らしい内面を持っている。
    淡白になりすぎず、かといってクドクならない絶妙な書き口とこの人物描写によって、少しだけひねってある話をとても良好なエンタメに化かしていると思う。
    昔より、よさが分かるのが嬉しい。人物の造形は特に。
    3+

  •  再読。思っていた以上に薄暗かった……。

     最近のコージー的な若竹の印象が強かったからさ。そういえば初期はこういう系統だったっけな……。いやなんつーかまあ内容は全然覚えてなかったんですけどね。
     こう、救いがないよなぁ。等身大というか、そう簡単にハッピーエンドにはならないと思い知らされるというか、現実的に考えて、すべてが丸く収まるだなんてことがありえるはずもないのよねっていう。
     一部の部分は綺麗に騙されましたよね。どうにもこの「わたし」がなんか印象違うなぁと思ったらそもそも思ってた人物と違ったっていう。ありきたりな手なんだけど綺麗に引っかかった。上手いなぁ。
     いやに男と女の性別に関する記述が多い話だったなという印象。この時代はこれくらいが普通だったのかしら。男だからこう、女はこういうところがある、みたいな。読んでいてさすがにちょっといらっとくる。
     後半の自殺未遂について探っている部分も、ちょっといろいろと発想が飛び過ぎてないか、と。正直、宝石販売をやってたのが一ノ瀬妙子自身だった、とか、想像力逞しすぎやしませんかね。いろいろと強引なところがあるよなぁ。まあ素人探偵の一人称で、論理ガチガチの本格ものじゃないからこれはこれで「味」なのかなと思わなくもない。最終的には面白かった、っていう感想に落ち着くしな。
     毒殺魔の手記の部分がすごく好きです。若竹七海、こういうマッドっぽいのも書けたんだなぁ、と改めて。
     会話のやりとりとかところどころ笑える部分もあって、ああこのあたりは昔から変わってないなって思いました。
     抜粋。主人公のセリフ。


    「ねえ、リキ。おチンさまって、いったいなあに」


     聞いてやるなよそんなことをよww

  • 『ぼくのミステリな日常』の続編的?作品、主人公はリストラされたOL若竹七海。
    文庫化に15年もかかるとは!
    あの時代の推理小説なので、今は当たり前の小物が出てきません(携帯とかメールとか。
    あとがきで著者の若竹さんが書いているけれど、「パソコンが立ち上がるまでに、気絶するぐらい時間がかかった」そんな時代のミステリ。
    その頃はまだ子供だったけど、懐かしい空気です。

    若竹七海さんのシリーズでは他に、葉村晶が探偵役の物もおもしろいです。
    切れ味抜群。

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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