名探偵に薔薇を (創元推理文庫) (創元推理文庫 M し 1-1)

著者 :
  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488423018

感想・レビュー・書評

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  • 猟奇性を煽る序盤から案外あっさりとした解決に肩すかし、と思いきや、第二部で余りにビターかつ切ない展開が待ち構えている。その終盤の二転三転には、読みながら本当に足場がぐらつくような酩酊感を覚えた。明かされる謎自体に驚愕のトリックなどは無いものの、何とも忘れ難い余韻を残す一冊。

  • 帯の謳い文句で損をしている作品のひとつ。

    第二部で驚天動地の展開が待っている…くらいの煽りっぷりだったと思うが、読了してみるとそんなことは特にない。

    別に作品の質が悪いとか面白くないというわけではなく、もちろんミステリとしての体裁は整っていて、個人的にはこの結末好きである。
    しかし、帯の煽り文句で読み始めからハードルが高かったこともあり、正直拍子抜けしてしまったことも事実である。帯の文句など、たしかに大抵誇張著しいのでそのまま受け取ってよかったことなどそうそうなかったから、そもそもの構え方に問題があったのだといわれればおっしゃるとおりなのではあるが…。(どのくらい高いハードルだったかといえば、二度読み必須なのではとわくわくするくらいの高さであった。)

    この結末だったら、「名探偵に薔薇を」でなくて別の花でもよかった気がする。

  • 一部の話が好みだった。
    致死量の20倍以上の量を摂取すると苦味を感じてすぐに吐き出せば死なないってあったけど、口の中に残りそうなものだしそんなに致死性が高いのにそんなにうまくいくもんなんだろうか。

  • 「・・・のように」「・・・のような」
    あっと驚く衝撃のラストを期待しながら読み進めたが、独特の描写表現や執筆のテンポにつまずき、そもそも話が頭に入って来なかった。
    もう少し平易で簡潔に伝わる作風の方が個人的には好み・・・というか、こういったジャンルに小洒落た文体や巧い言い回しは求めていない(汗)。
    リアルでも耽美でもなく、漫画っぽいとでも言うか・・・、自分は苦手な感じでした。

  • お勧め度:☆7個(満点10個)。とりあえず、積ん読本になっていた小説でした。でも、設定といい、構成といい、良くできているなあと思います。解説にもあったように、第2部の方が先にできていたんですね。
    内容的には、第1部が前振りで2部が本編とういう形は面白いと思った。それに、1部の毒々しさに対して2部での名探偵「瀬川」の苦悩の対比が面白い。真実を追究すれば必ず、不幸が生じる探偵ミステリーにとって、これほど真に問題意識を持たせる小説はないと思う。ラストの二転三転は面白かったが、彼女の苦悩の方が勝っていた気がした。

  • 誰かが書いていましたが、理想の毒薬の最も下手な使い方という点が面白かった。第2部は本当に切ない

  • いやぁ、見事にしてやられた。もうこの言葉に尽きる。
    まさか第一部が第二部の布石だったとは思わなかった。
    第二部のための第一部だったと言っても過言ではない。
    自分が読んだ中で、今年一番のミステリー小説だった。
    チラッとなかなかのミステリー小説だというのは見たが、予想以上に本格ミステリーだった。

    第一部は、鶴田が際立ち過ぎてなんとなくではあったが、真犯人が鶴田であると分かった。
    でも、第二部ではその第一部での瀬川の活躍という先入観があったからこそ、瀬川の推理こそが真実たり得るのだと思っていた。
    そればかりに真相を全く見抜けず、瀬川同様、どんどん明らかになる事実に三橋の掌の上で転がされてしまった。
    瀬川の推理こそが物語の真実だと思っていたから、まさか単純に鈴花ちゃんが殺人を犯したとは…。
    それに動機も殺害に至るまでの経緯も明らかになればどうということでもなく、よくある悲劇的なものだった。
    まあでも、女性である瀬川に惚れていたってところはちょっとだけ特殊なことになるか。
    異性であれば本当によくある動機だった。
    恋しい人に会いたい、という。
    経緯も、単純に容量を把握してなくて誤った量を使っただけで悲劇が起こってしまった。
    構成力が見事過ぎた。

    瀬川の過去も悲劇的だよなぁ。
    まさか実の妹が名探偵になるきっかけの事件の渦中の人物だったなんて。
    てっきり友達とか入れ込み過ぎた事件の人かと。
    もっと瀬川の話が読みたい。
    過去のでもいいし、今後のでもいいし。

    これシリーズ化してくれないかなぁ。
    とにかくなんでもいいから続編なるものが読みたくて堪らない!続編求む!
    最後の瀬川が切なすぎて、救いを与えてほしい!

  • 小人地獄という特異な猛毒を巡って起こる事件。
    1部は2部への伏線と主要登場人物の説明といった感じで、1部のおかげで2部は物語にすっと入っていけた。
    どんでん返しに次ぐどんでん返しで、後半はスピード感があって面白かった。続編 を出して欲しい作品。

  •  第一部・第二部と二部構成になっているが、これは、一気に読まないともったいない作品である。どちらも、舞台や登場人物は一緒であるにもかかわらず、事件のトリックや心理描写・動機などは全然違うという、全く違うミステリーを味わうことが出来き、とても面白かった。

     第一部では、「メルヘン小人地獄」という犯人による犯行声明に沿って事件が起こっていき、その犯行で使われた毒薬が登場人物やその制作過程の闇を暴いていくというストーリー。探偵である瀬川みゆきがなかなか登場しないのも面白かった。

     第二部は、探偵の瀬川みゆきの葛藤がメインに描かれている。瀬川が唯一・友人と認める者が犯人かもしれない、自分が殺してしまったと思っている妹に似ている子が犯人かもしれない。この落としどころのないジレンマを上手に描いており、ただの探偵ものよりもワンランク上の作品になっている。また、この探偵が「真実は裁かれねばならない。たとえ無残でも、私は見逃すわけにはいかない」と第一部の終わりに行ってしまったからこそ生まれたジレンマに悩まされるという新しい問題提起には驚かされた。

  • 前半読んだとき、「おお、乱歩のようなおどろおどろしさ。こういうの好き」とかなりワクワク。
    名探偵の登場でワクワクは最高潮に達したのだが、その解決があっさりしすぎててちょっとがっかり。もうちょっと盛り上げようがあったんじゃないかなあ、と。

    この時点で、本書は「佳作」。悪くはない、むしろいいんだけど、まあ普通に良い、というくらい。
    しかししかし、最後が、あれですかー!!!ああなったあとに、またああなりますかー!!!

    いやもうびっくり。2つの中編を集めた本かと思いきや、1つの大きな物語が語られていたのですな。
    いやまあ、細かくは若干気になるところもあるんだけど、そんなものは小さい。小説としての完成度は高い。☆5つです。

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著者プロフィール

【城平京(しろだいら・きょう)】
奈良県出身。代表作に漫画原作『絶園のテンペスト』『スパイラル~推理の絆~』、小説『虚構推理 』『名探偵に薔薇を』『雨の日も神様と相撲を』など。

「2021年 『虚構推理(15)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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