ロートケプシェン、こっちにおいで (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.85
  • (25)
  • (41)
  • (35)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 455
感想 : 31
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488423124

作品紹介・あらすじ

酉乃との距離が縮まったような、そうでないような。悶々と過ごすポチこと須川くんが遭遇した、バレンタインをはじめ学内外の出来事。『午前零時のサンドリヨン』に続く第二集。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 女子高生マジシャン酉野初とその同級生須川君が高校の様々な謎に挑む、『午前零時のサンドリヨン』の続編となる連作ミステリ。

     前作ラストで須川君も成長したのかな、と思っていましたが、相変わらずですね(苦笑)。ヘタレで臆病ですが、でも変わらずに誠実で優しいです。

     そんな須川君の語りは相変わらず面白い。自虐的な言葉や特に2話目の「ひとりよがりのデリュージョン」の彼の受難っぷりは申し訳ないながらもとても笑えます。

     各話のミステリのロジックも面白いですが、この作品の読みどころはその動機だと思います。
    楽しいカラオケに行くはずが突然帰ってしまった同級生、入れ替わった封筒の中身の謎、教壇に集められたバレンタインチョコの謎
    それぞれの裏にあるのは、青春時代の甘さであったり苦さであったり、人への微妙な気遣いや人間関係、カーストであったり。

     そうしたものが不可思議な謎としっかりと結びついているのがやっぱりすごいな、と思います。

     そして連作としての仕掛けも見逃せません。読み終えるとある登場人物の振る舞いの裏にどんな思いがあったのか、ついつい考えてしまいます。

     謎を解いていく初も須川君も臆病で傷つくことを、傷つけることを恐れながらも、それでも謎の裏にある時に残酷な事実を明らかにします。

     その行動の根底にあるのは、何とかなるかもしれない、奇蹟は起こせるかもしれない、魔法はあるかもしれないという希望を、そしてその魔法を人のために使いたい、という優しさが二人は持っているからだと思います。

     臆病な二人が傷つき悩みながらも魔法を信じ行動し続けるからこそ、このミステリには単なるミステリを越えた”何か”が詰まっているように感じます。

  • 相沢沙呼先生なのでアタクシの苦手なアレだなと想定していたが・・・やはりそうだった(毎回罠に落ちる)
    太ももに気をとられ色々と無駄なコトに気が行く主人公須川君、でも妙に女の子と絡む生活をしているのが作者の現実をしらないトコロ
    (ボっち男はな!・・・さみしいんだぞ)
    胸が苦しくなる相沢先生のスクールカースト話、いじめ問題なのですがミステリになっても切ないですね
    日常の謎系ミステリというと「こんな日常は嫌だ」となる辛く重いテーマ
    視点がね・・・難しいのよ・・・ソレがこの作品の売りなんだけどさ・・・プロローグも各章も視点が・・・「叙述トリックなんて大嫌いだぁ~」(嘘です)
    ただ八反丸さんの行動は理屈が合わない

  • 好きなことを好きって言える居場所があることは本当に嬉しいことなんだな。

    自己防衛のために知らないうちに誰かを傷つけているかもしれない。

    『心の声と自分の声をまったく一緒にするだけのことなのに、どうしてこんなに難しいのだろう。』

  • 最後まで読んでよかった。

    前作に続き背中がムズムズするような青春モノでなかなか読み進められなかった。けど、最後の章で、自分がすっかり騙されていたことに気付き、この作品が一気に大好きな作品になりました。

    たしかに違和感はあったもんな。いや、どれが誰?って。
    構造がわかった上でもう一度読み返したい。

  • 【再読】須川くんの視点で語られるパートと、トモという女子高生の視点で語られるパートが絡み合い、一つになり、そして迎えるカタルシスに震える今回でした。この展開は本当に巧いなと感じます。キャラもの観点としては、やはりヘタレ須川君が誠実に頑張っているのが良いですね。再読ですがやっぱり騙されました。あと、ふともも愛の方向性はこの作品で確定したものと思われました。綺麗にまとめられた感じですが、須川君の酉乃さんへの恋の行く末が気になります。続編はでないのかな…。ともあれ傑作。未読の相沢ファンはこのシリーズもぜひ。

  • 『午前零時のサンドリヨン』の続編

    須川君はヘタレで思うことをハッキリと言えない。酉乃さんは、マジックのときは饒舌だけど、普段は孤独

    クラスの中の主流派と被疎外者の恐ろしい力関係。必死で主流派に食らいつく人。生まれる犠牲者

    犠牲者の気持ちが分かる須川・酉乃。優しさと勇気で奔走する

  • 一気に読んでしまいました。前作に続いてこちらもとてもおもしろかったです。

  • 2021/05/05 幅広帯バージョン読了

    須川くんと酉乃さんの付かず離れずのもどかしい関係にモヤモヤしっ放しでした。
    マツリカシリーズ、小説の神様に続いて読みました。
    本作は青春のほろ苦さが際立っていたと思います。
    またいつか続編が読めたら良いなと思いました。

    幅広帯バージョン
    http://www.webmysteries.jp/archives/24900123.html

  • 「アウトオブサイトじゃ伝わらない」
    突然変わった彼女。
    片思いしていた相手の事情を人伝に聞いてもショックな情報なのに、目の前で秘密裏に行われてた状況を見てしまった時は絶望だろうな。

    「ひとりよがりのデリュージョン」
    入れ替わった封筒。
    きっかけはちょっとした事だったのかもしれないが、ここまで貶す事が出来る人達の人間性を疑うと同時に群れなければここまでの事は出来ないのだろうなとも思うな。

    「恋のおまじないのチンク・ア・チンク」
    集められたチョコレート。
    確かにバレンタインとはいえ匿名のものを貰ったら、どうしてもそのチョコレートを渡してくれた人を知りたくなるだろうな。

    「スペルバウンドに気をつけて」
    連絡がつかなくなった訳。
    いくら自分がしてきた事が自分の憧れていた人を傷付ける事だったとはいえ、何故気づいた時点で謝らず罪を重ねてしまったのだろう。

    「ひびくリンキング・リング」
    謝りたい心。
    簡単な事ではないが彼女が自分の犯した事を認め謝りたいと思ったのなら、許して貰えるかは別として後は行動にどれだけうつせるかだろうな。

  • 登場人物の苗字しか出てこないから、誰と誰のことかなと思いながら読みつつ、普通に読んでいくと矛盾が出てきて、あぁ、これは騙されてるんだろうなと思いながら読んでた。
    わかったあとに読み返してみると、なるほどと納得。それでいくと、マックでトイレから出てきた織田が急に帰る件とかも、酉乃が言った理由とは違うことに気がつく。
    それにしても、シリーズこれで終わりですか?と思ったところで、続編を書きたくないとかなんとか、小説の神様に出てきたっけかなと思い出す(うろ覚えだけど)

全31件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1983年埼玉県生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で第19回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。繊細な筆致で、登場人物たちの心情を描き、ミステリ、青春小説、ライトノベルなど、ジャンルをまたいだ活躍を見せている。『小説の神様』(講談社タイガ)は、読書家たちの心を震わせる青春小説として絶大な支持を受け、実写映画化された。本作で第20回本格ミステリ大賞受賞、「このミステリーがすごい!」2020年版国内編第1位、「本格ミステリ・ベスト10」2020年版国内ランキング第1位、「2019年ベストブック」(Apple Books)2019ベストミステリー、2019年「SRの会ミステリーベスト10」第1位、の5冠を獲得。さらに2020年本屋大賞ノミネート、第41回吉川英治文学新人賞候補となった。本作の続編となる『invert 城塚翡翠倒叙集』(講談社)も発売中。

「2022年 『medium 霊媒探偵城塚翡翠(1)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

相沢沙呼の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×