赤ちゃんをさがせ (創元推理文庫 M あ 5-2)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 204
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488431020

感想・レビュー・書評

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  • これは面白いぞ!
    助産婦(2002年3月の法改正により現在の名称は助産師。著者注有り)の推理劇なんて読んだことがない!
    しかも、「お母さんをさがせ」「お父さんをさがせ」「赤ちゃんをさがせ」と、物語それぞれのタイトルは端的。
    でも実はその単純 
    さゆえに思いがけない展開に驚かされる作品だ。
    人が死ぬミステリ、日常の謎、人が死なないミステリーは当たり前。
    でも、人が産まれるミステリーなんて聞いたことがない。

    若手助産師(本編で使用される助産婦はここではあえて使わない)の陽奈、先輩の聡子、この二人のコンビが謎をとくのかと思いきや、この二人は謎にぶつかる方。
    特に陽奈は猪武者ならぬ猪助産師で、待ち伏せをしたり、さらに謎を深めてしまったり、「任せてください」の言葉が信用ならない愛すべき登場人物だ。
    聡子はそれに対するツッコミを入れるが、自分自身が謎の一部になってしまうこれまた探偵とは言い難い人物。
    では誰が?
    安楽椅子探偵は彼女たちの師匠、推定70歳の明楽先生。
    助産師としてのアドバイスもさることながら、その人生経験に基づく「家族」の謎を解き明かしてしまう。
    しかし、彼女の解決方法は、あくまでサポート。
    真実に気付くのは本人たち、というのだからハイレベル。

    私自身は病院出産、しかも管理入院(予定日超過及び胎児発育不全)だったので自宅出産には縁がなかった。
    だから自宅出産という方法が目新しく感じたし、何より、本書は単純に病院対助産師(管理対自然)という図式でないことに安心した。
    対立を煽るより、子供、そして母体の安全を考えることが重要だというメッセージに共感するからだ。
    これについては『コウノドリ』三巻を参照されたい。

    しかしだ。
    そんな難しいことを考えずとも、純粋にミステリーとして楽しめるので、設定の珍しさも含めて是非一読をお勧めする。

  • 助産婦が主人公の日常の謎系ミステリ。伝説のカリスマ助産婦の明楽先生が探偵役。自宅出産専門の出張助産婦の聡子と見習い助手の陽奈がさまざまな事件に巻き込まれる。3つの短編からなる作品。
    男の子がほしいので,実子として届出をするために,三人の女性に子どもを産まそうとする男の企みを阻止するために,誰が「サツキさん」という女性なのかを見破る「お母さんをさがせ」,女子高生が,ボーイフレンドである男の子どもを産もうとしているが,「父親は自分かも知れない」,30歳の家庭教師やら,ふとしたことで知り合った中年男性が,自分が父親かもしれないといったことを言い出す「お父さんをさがせ」,聡子のもと旦那があらわれ,もと旦那が聡子の仕事を妨害していると考えた陽奈がいろいろと嗅ぎ回る「赤ちゃんをさがせ」の3つの作品からなる。
    ミステリといっても,謎やトリックがあるわけではなく,叙述トリックで読者を錯覚させる系。話全体がキレイごとではない。「お母さんをさがせ」では,黒幕的な存在の家政婦の和さんが,「何だかんだきれいごとを言ったってね,結局,お金で買うんですよ,何もかも。」といって,この企みをしている点だとか,「お父さんをさがせ」で,女子高生の理帆が,ろくでもない家庭教師の米村という男を懲らしめたり,中年男性の立場を取り戻すためにいろいろ画策する点だとか,「赤ちゃんをさがせ」で,聡子と旦那がヨリを戻すというオチとか,男性作家ではあまり考えない話のように思える。現実的な話というか,キレイごとでない話で,こういう話は結構好み。トータル評価は★3かな。

  • ジャンル分けするのなら・・・・「ほのぼのミステリ」。創元さんってこのジャンル、好きですよね。北村薫を筆頭に、加納朋子、大倉崇裕などなど。巷では<日常の謎>派と呼ばれているようですが。青井氏作品初挑戦なのでありますが、こういうほのぼのミステリも全然悪くありません。

    女三人よるとカシマシい、とは言いますが、本書のヒロインたちは助産婦さん。それも自宅出産を専門としている助産婦さんたちで、と~っても真面目な聡子先生とボケ役の見習い助産婦・陽奈。この二人が仕事絡みで謎に接近。

    聡子がつっこみ役で謎を解いていくわけなのですが、最後に登場するカリスマ助産婦で今は引退し自由を謳歌している明楽先生が、アームチェアーディティクティブでありまして、謎を解明し問題を解決していくわけです。
    このヒロインたちの会話がこれまたと~っても楽しいのです。
    本書はこの3人が活躍する短編3編を収録しています。

    本書の魅力は妊娠しているというこの特別な期間じゃないと思いもつかない心理や問題を扱っているところにもあります。そういう意味では青井氏の設定作りは凄いなぁ~と感じさせます。
    楽しいだけじゃなく、現代家族のあり方や管理出産へのアンチテーゼ的ニュアンスも覗うことができます。

    これまた・・・シリーズ化しているとのこと、読みたいっす! あ~~読みたい本がどんどん増える・・・。

  • 読書完了日2013年03月03日。
    お話ごとに赤ちゃんが生まれ(予定もあり)ます。

  • 20120211読了
    面白かった。
    続編の長編のほうを以前読んでいたので、
    やっと読むことができてよかったー

    第一話 お母さんをさがせ
    立派なお屋敷へ行くと、そこには三人の妊婦がいた。
    第二話 お父さんをさがせ
    若い妊婦のもとへ、三人の父親候補があらわれた。
    第三話 赤ちゃんをさがせ
    自宅出産のキャンセルが相次いだ。

  • 助産師達の日常の中の謎解き。
    3人の助産師が謎解きをしていくが、それぞれに味があって読みがいがある。
    続きも読んでみたい。

  • “日常の謎”的なミステリーに一時期はまっていた頃に読んだものの一冊。安楽椅子探偵がカリスマ助産婦(しかもおばあちゃん)ってのがよかった。

  • 自宅出産専門の出張助産婦コンビの前には何故かいつも謎が。気軽に読めてちょっとほのぼの。

  • 限られた舞台の中でこんなにバリエーションができるのかと感心。

  • タイトルはパット・マガーのもじりっぽいが、読みやすいライトミステリ。
    安楽椅子探偵物。

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著者プロフィール

小説家

「2013年 『丘の上の赤い屋根』 で使われていた紹介文から引用しています。」

青井夏海の作品

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