メグル (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.46
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本棚登録 : 511
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488431112

作品紹介・あらすじ

なぜ、あの無表情な女性大学職員は強制的にアルバイトを紹介してくるのだろう? 不思議なアルバイトがもたらす五つの奇蹟。いま注目の著者が端整に描く、連作短編集。

感想・レビュー・書評

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  • この前読み終わった本の巻末に載っていた本の紹介(広告)を見て、ちょっと惹かれて買ってみた。

    学生部の女性職員・悠木さんから紹介された(一人は止められた)アルバイトに足を運んだ学生たちの顛末。
    お寺で寝るだけ、病院の売店での商品の入れ替え作業、犬の餌やり、食事を食べるだけ、とある家での庭仕事。
    怖い話なのに何だかコミカルだったり、心温まる話だったり、不穏なミステリーだったり、ファンタジーっぽい死者との交流だったり、色んなテイストの話が楽しめる。
    それぞれ面白い話だったが、ほっこり系の「モドル」と「タベル」が普通に良かった。
    美しいながら無表情で人間離れした存在を思わせる悠木さんのキャラはちょっと微妙かも。

  • メグルという題名と乾ルカさんの作品であることから、輪廻転生をイメージして表紙を開いた。
    5つの短編で構成されている。短編だがユウキによって連作になっている。そして5つの作品は順に読むことで読者に心理的影響を与えているように感じた。

    ヒカレルはライトなホラーだが、どこか暖かさを感じる。日本の将来を見通すと、死にゆく者の淋しさは一層拍車をかけると思うのである。奨学係のユウキという女性は何者なんだろう。この後も登場する。
    モドルは、ユウキから紹介されたアルバイトにより、失ったものが見つかる。
    アタエルでは、ユウキはいつもなら「あなたは行くべきよ。断らないでね。」というのに、今回は「本当ならあなたは行くべきじゃないわ。後悔しないでね。」という。アルバイトの内容は犬に餌を与えるだけだが、中を絶対見ては行けないという。そしてその中にあるのは・・・。

    タベルでは、ユウキが紹介したアルバイトの業務内容は食事。なぜ佐藤は食事をするだけの依頼をしたのか?優しさに包まれる。
    メグル、表題作。なぜかユウキが悠木になった。ユウキが悠木だったことが少しわかる。輪廻転生ではなかった。三瀬がアルバイトの依頼主、何年も風貌が変わらないミステリアスな女性。心温まる作品。

    私はグロいのは苦手だ。1つだけある。それ以外はほっとする場面のある作品だった。ホラーといえばそうなのかもしれないが、乾ルカさんの文筆力がドキドキさせながらも温もりを伝えてくれる。そして最後に意外な結末が待っていた。

  • R1.7.3 読了。

    H大学の学生と奨学係の女性職員から紹介された様々なアルバイトを通して語られる物語。連作短編集。読後感は勇気をもらえる物あり、温かい気持ちをもらえる物ありでした。巻末の大崎梢さんの解説も良かった。

    ・「そうやって笑いながら食うとさ、どんな飯でも結構うまいんだ。」
    ・「私がいなくても、きっと誰がいなくなっても、季節は当たり前にめぐる。今日みたいに心地よい日が必ずくる。空は高く晴れて、風は爽やかにそよいで、花たちはきれいに咲いて。
    それってすごく素敵だと思わない?」

  • 「あなたは行くべきだわ。断らないでね。」

    言われた当事者も、読者も、その場は流してしまってもあとで「何だったんだろう、どうして?」と考えることになる。

    このひとこと(反対のフレーズもありましたが)があるから、この小説が面白くなっている。
    運命を変えるような、仕事(アルバイト)。
    それを取り持つ窓口女性。
    いろいろと謎があって、つながっていきます。

    表紙の絵はどこかすぐわかる有名な場所ですね。
    思わず手に取りました。
    手袋ははめませんよね。

  • H大学学生部では、学生へアルバイトや家庭教師を斡旋する求人の仕事もしている。
    その中には、ちょっと奇妙な仕事も混ざっていて・・・
    「ヒカレル」「モドル」「アタエル」「タベル」「メグル」の5つの短編集ですが、全てに共通して登場するのが奨学係唯一の女性職員である悠木さん。

    ちょっぴりホラーで、ふんわり心温まるのは乾さんの作風なんですね。
    最初の「ヒカレル」はいい話ながら結構怖くて、ドキドキしながら読みました。
    亡くなった後に、生きている人をあの世に引っ張っていってしまうという「引く手」。それを阻止するために、一晩死者の手を握って添い寝をしてください。
    そんなアルバイト、想像するだけで怖すぎてもう・・・。
    おまけに斡旋する悠木さんには、「あなたは行くべきよ。断らないでね」なんて言われるし。
    結果的にはいい話ではあるんですが、とてつもなく怖かったです。

    振り返ってみると、どれもこれも温かさを交えつつも、奇妙で怖い。
    それでいて最後を美しい余韻で終わらせているのがさすがです。春を心待ちにさせてくれる表題作でもある「メグル」は、怖いながらもよかったですね。
    いつでも季節は巡り、美しい花が咲いて気持ちのいい日が訪れる。そう意識することで、なんとも心が晴れやかになるものですね。

    「タベル」で佐藤さんがあるものを失って、不思議な力を得たように、悠木さんも失ったものの代償として不思議な力を授かったのかもしれませんね。
    人と想いを繋ぐ、繋ぎ手のような力を。
    読み進めていくにつれて、少しずつ悠木さんの過去や人柄が見えてくるのもよかったですね。
    ちょっと怖いけど、また読みたくなる短編集でした。

  •  H大学の学生部に貼りだされる不思議なバイトの紹介。大学女性職員に勧められたバイトをする学生たちの姿を描いた連作短編。

     ファンタジーであり、ホラーでありミステリー。各話ごとに作品のジャンルが変わる何とも不思議な作品。しかし、ホラーやファンタジー要素が思わぬ形でバイトをした学生たちに影響を与える、という点があり、そうした意外性と結末が分かってからの暖かさが非常に雰囲気のいい作品でした。

     美しさという点では最終話の「メグル」が印象的。毎年庭の手入れのバイトを依頼する女性の真実が分かってからの切なさ。そして登場人物たちの優しさと最後の彼女の言葉と思いがとても綺麗です。

     この短編集では味わいの違う「アタエル」もなかなか強烈な作品。学生たちにバイトを進める女性職員は「あなたは行くべきよ、断らないでね」と毎回学生に声をかけるのですが、この短編に限っては「あなたは行くべきじゃないわ、後悔しないでね」と声をかけます。

     作品全体の雰囲気の不気味さ、そして結末に思わず背筋が凍りました。この学生はちゃんと注意を聞けよ、と思わずにいられなかったです(苦笑)。

     そうした短編もあるものの全体的には読後気持ちが少し明るくなる短編集でした。

  • ここから始まる小説なんだと知り直ぐに2冊購入してメグルを読みました。ユウキさんからメグルでは悠木さんになってた。断らないでね、あなたは行くべきよ、が毎回出てきて、毎回その通りだけど、悠木さんの長い髪の毛と足の怪我とやっぱり謎のままなんだよ。悠木さんの当たる予言が関係するのかな、とにかくバイトを受けて人生が変わるんだよ。おばあさんに手を握られて死の世界に行くのかと思ったら悪い腫瘍の病気を持っていくとか、素敵な結末。タベルが良かったな、1人で死なないだけましだと言い、黒歴史とか思うのを、実は笑い話でいいじゃ

  • 2013.10.19読了。「メグル」乾ルカさんの本は初めてでほっこり感動物かと思い手に取りました。想像とは少し違って映像化しやすそうな「世にも奇妙な物語」っぽいかな。大学の学生部にて紹介されるアルバイト…突然声を掛けられる学生達それぞれ指定されたお仕事。ヒカレル、モドル、アタエル、タベル、メグルの5つからなるお話。どれもいいお話で、タベル…はほっこり出来て1番好き♪メグル…は、アルバイトを紹介する女性職員にふれていて…少し繋がった…。不思議だけどまた読んでみたい、そんな作品です。

  • アルバイトをめぐる小説というものを読んだことがなかったのでいいなあと思った。古本屋でたまたま巡り合って読んだ。まさにタイトルそのままだ。バイト中にこの本を読み終わり、いい時に読めたなあと思った。
    ハートフルな話からちょっと闇を垣間見る話まで、「仕事」と名がつくものは様々で、バイトを探すときの楽しい気持ちを思い出させてくれた。バイトなんて実際入ったら数ヶ月で飽きちゃうのにね。でも大学時代にどんなバイトをしてるかって自分でも全然予測できなかったバイトをしてたし、巡りあわせだよなとほんとに思う。

  • 舞台が北大でなんか親近感が湧くし、なんとも言えない感情にさせられる短編ばかり。

    ふっと不思議な国に迷い込んだかと思ったら、突然血生臭い匂いがしたり、側と思えば青春真っ盛りだったり、人情み溢れてみたり。

    それぞれの過去を背負って、未来の扉を開くそのそれぞれの瞬間がたまらなく刺激的な本。

    面白い。

    短編だけど一冊通して出てくる人がまた謎で、笑うセールスマンの綺麗で無口な女バージョン的存在。

    各所に札幌の某所がでてきて、それまた読んでて面白かった!!!!

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著者プロフィール

乾ルカ
一九七〇年北海道生まれ。二〇〇六年、「夏光」でオール讀物新人賞を受賞。一〇年『あの日にかえりたい』で直木賞候補、『メグル』で大藪春彦賞候補。映像化された『てふてふ荘へようこそ』ほか、『向かい風で飛べ!』『龍神の子どもたち』など著書多数。8作家による競作プロジェクト「螺旋」では昭和前期を担当し『コイコワレ』を執筆。近著の青春群像劇『おまえなんかに会いたくない』『水底のスピカ』が話題となる。

「2022年 『コイコワレ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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