- Amazon.co.jp ・本 (394ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488439026
感想・レビュー・書評
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素行不良の《妊婦探偵》が活躍する、シュールな笑いにあふれたSFテイストのミステリ。
舞台は、東京都第七特別区。人呼んで「バルーンタウン」。そこは、「人工子宮(AU)全盛の世の中で、妊娠・出産という過程をへて子供を持つことをあえて選んだ女たちが、天然記念物なみの保護をうけて暮らす」妊婦の町である。そのちいさな、しかしかなり特殊な町で発生するさまざまな事件を、「妊婦のことは妊婦にきけ」とばかりに、見事な「亀腹」をもつ《妊婦探偵》暮林美央が鮮やかに解決する連作もの。
この妊婦探偵、厳密にいえばちがうのだろうが、分類としては《安楽椅子探偵》に入るのだろう。じっさい、電話口から示唆するだけのものもあるからだ(『バルーン・タウンの裏窓』)。「妊婦は透明人間なの。お腹以外は」などなど、全編をとおして名言(迷言)にもことかかない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
◆ お風呂でミステリ ◆
・・・ 第一回 「バルーン・タウンの殺人」 ・・・
バルーン・タウン、というのは人口子宮が当たり前の時代に(だからこれは一応近未来SFです。発表されたのもSF誌)古風にも自分のお腹で赤ちゃんを育てたい、という女性たちのためにつくられた、妊婦しか住んでいない町のことです。
高い塀で囲まれ、パスがなければ入れない、厳重に守られている町の出口で男が一人、妊婦に殺されます。
目撃者は何人もいるのに、突き出たお腹に驚愕して(だって、ほら、妊婦なんて見たこともないわけですから)誰も顔を覚えていない……。
町のなかに逃げ込んだのだから本物の妊婦のわけですが、見かけたほかの妊婦たちも、お腹の大きさ(8ヶ月だと思うわ)と形(みたことないほど立派なとがり腹でした……)しか覚えていない……。
“妊婦は透明人間なの、お腹以外は……”という、ミステリ史上かつてない驚くべきトリック!?
かつ
“エレベーターは満員だった。といってもぎっしりなのはお腹の回りだけで顔のところはすいている”というような描写で満ち溢れた、抱腹絶倒ユーモアミステリーです。
タイトルも“亀腹同盟”とか“なぜ助産婦に頼まなかったのか?”とか、ミステリファンなら誰でも笑えるお遊びがいっぱい……。
でもそのオリジナルを二重三重にひねり、やがてはさまざまなジェンダー系の問題が浮かび上がってくる、という素晴らしくよくできた一冊です。
これがデビューなんて、信じられない。
解説は有栖川有栖ですが、これまた絶品です。
2017年05月30日 -
人工子宮の利用が普通になった世界の中で、それでも敢えて母体での出産を望んだ女性たちが暮らす長閑な別天地バルーンタウンでの妊婦探偵・暮林美央事件簿シリーズ。
設定が面白いです。近未来SF・・・というほどでもないパラレル的な。そもそも人工子宮(AU)についても作品内世界では常識化していても結局はAUを利用しない人の街でのお話なのでトリックとかにあんま関係なかったりしていても、そういう背景がしっかりと構築されているせいか話に深みがあるような。 -
とにかく設定が絶妙。
トリックが、妊娠&育児のあるあるネタの話もあるのでミステリとしては微妙だが、お話としておもしろい。
随所に散りばめられた「女性が、社会が要求する何かから本当の意味で自由になって、人として自立して生きていくこと」へのメッセージもすばらしい。それでいて、1話ずつ気楽に軽く読めるバランスもよい。
そして、有栖川有栖さんの解説もよかった。 -
近未来/SF/ユーモア/ミステリー
設定が見事!
派手なトリックはないが、独自の設定により魅力的な解決を迎える。
探偵役も個性的で好印象。 -
SF世界のライトミステリ
可もなく不可もなくって感じでさらさら読んで終わり。 -
最初の数話は面白かった。
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設定の面白さ、発想の独特さ、所々に見受けられる僕等へのメッセージ。素晴らしい作品だと思います。解説での有栖川有栖さんの考察も興味深いです。
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元々SFとして発表された作品ですが、創元文庫という事で、ミステリとして読みました。
ジェンダー目線やらSFやら色々で評価が低いのかなと思いますが、個人的には推します!
当方子持ちですが、面白いですよこれ。マタニティライフもニヤリです(笑)女性が書かれてるからだと思いますが。
ミステリとしてもほのぼの。でも??でヤラレタ感もあります。特に経験者として悔しいのもあり。
但し、、、
軽く読めますが、問題として提起されているものは深い。と思います。 -
2004年2月10日購入。
2005年4月16日読了。