強欲な羊 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
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本棚登録 : 799
感想 : 95
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488448110

作品紹介・あらすじ

さる旧家の美人姉妹の恋のさや当ての果てに〝強欲な羊〟はこの世に生まれた。圧倒的な筆致で、第七回ミステリーズ!新人賞を受賞した「強欲な羊」を収録。女性ならではの狂気を描いた連作集。

感想・レビュー・書評

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  • 5篇の短編集。
    どの話もドロドロと嫌な後味を残すがやめられない。読みながら女達の印象は二転三転する。誰が羊で誰が狼なのか。いや、羊のまま羊を食べてしまったような、、、。
    特に胸悪だったのが「ストックホルムの羊」塔に幽閉されている王子と4人の側女の閉ざされた生活は、、、。
    それと「背徳の羊」ラストの犯人に驚くが、三人目の子にまた、驚いた。あぁやっぱりそういうことなんだ。

  • 背徳の羊:我が子と友人の子が似すぎていて,男は妻の不貞を疑う。思っても見なかった結末。
    ストックホルムの羊:塔に幽閉された王子と4人の側仕えに1人の女が加わる。真相がわかると不快感が増す。

  • 完全にやられました! 滅多打ちのノックアウト! ホラー&イヤミス&どんでん返し...。特に「ストックホルムの羊」には絶句...。そりゃあ生きている人間(女性)の方が怖いよねぇ...。
    クセになる面白さ。他作を手に取ることは必然だ!

  • '22年7月10日、Amazon audibleで聴き終えました。美和和音さんの作品、初です。
    好きなブックチューバーの方が紹介していて、気になって…audibleに有ったので(ラッキー!)、トライしてみました。

    いやぁ…お見事!ミゴトに、持っていかれました!

    連作短編集で、最後の「生贄の羊」で、ミゴトにつながる…好きなタイプの短編集、でした!

    二作目「背徳の羊」に、「オエッ」っとなってしまった(ᗒᗩᗕ)かなり、気持ち悪い…。
    でも、五作品、どれも素晴らしい出来!の、いわゆる「イヤミス」で、芦沢央さんの「火のないところに〜」を、思い出しました。読後感は、僕的にはかなり近かったかな┐(‘~`;)┌
    余談ですが…表紙のイラストも、素晴らしい!と感じました。

    今迄、全然知らない作家さんでしたが…他の作品も、トライしてみます!

  • 表題作の「強欲な羊」が1番好みだったかなぁ
    短編集だけど、最後の「生贄の羊」で
    それまでの作品とリンクしているのは驚いた。

    不快と面白さは同居するんだなって
    イヤミス作品は数あれど、今作を読んで再認識しました

  • 2022年2月23日読了。

    初読み作家・美輪和音氏の作品。

    『強欲な羊』
    巷で呪われていると噂される屋敷。
    この屋敷にはある姉妹が暮らしていた。
    薔薇のように艶やかで、気性の激しい姉の『麻耶子』
    桜のように可憐で、優しい妹の『沙耶子』
    ある日、何者かによって姉の麻耶子が殺害されてしまう。
    その容疑者として警察に連れて行かれてしまったのは妹の沙耶子だった。

    「あの優しい沙耶子様が人を殺める事など出来るわけがない。」
    屋敷に仕える女中が沙耶子の無実を証明するように告白を始める。


    『背徳の羊』
    どこにでもある幸せそうな家族。
    篠田と妻の羊子。
    双子の兄妹・真と実。
    羊子のお腹には3人目の子供が宿っていた。
    真と実は双子だが二卵性だからか全く似ていない。
    娘の実は父親似で、角張った顔に細い目、低い鼻と美人とは言えないが愛嬌のある顔立ちをしている。
    一方、息子の真は母親譲りの大きな瞳が印象的な美男子で、性格の面でも父親とは少しも似たところがないのだった。

    ある日、家族ぐるみの付き合いをしている水嶋夫妻の別荘にお邪魔し、息子の理くんの顔を見た瞬間、篠田の体はぞくりと震えた。
    真とそっくりなのだ。
    だが篠田以外の皆は何の反応も示さない。
    自分だけが感じる違和感なのかもしれないと考えるのを辞めた。

    後日、水嶋の妻・初音から呼び出された篠田は衝撃的な質問をされる。
    「真くんは本当に篠田さんと羊子さんのお子さんなんでしょうか?」
    やはり初音も同じ違和感を感じていたのだ。
    初音の元に届いたある一通の手紙で、旦那とある人物の浮気を疑っているのだという。
    一文だけの短い手紙。
    『ご主人のすぐそばに、「背徳の羊」がいます』
    篠田は『羊』という文字から目が離せなかった…


    『眠れぬ夜の羊』
    小室塔子は酷い夢から目を覚ました。
    自分から婚約者を奪っていった幼馴染・『須藤明穂』を灰皿で殴り殺し、公園の植込みに掘った穴へ埋めるという残忍な夢であった。
    寝汗で全身がぐっしょりと濡れ、灰皿を振り下ろした衝撃や掘った土の匂い、明穂が着ていたゼブラ柄の服の記憶まですべて覚えている生々しい夢だった。

    住居の一階部分で経営しているコンビニの開店準備を進めていたところ、店の前を警察車両や救急車が次々と横切って行く。
    何事かと野次馬に尋ねると、すぐそこの公園で死体が見つかり、その身元は昨夜の夢に出てきた須藤明穂だというのだ。
    塔子の心臓はビクリと跳ねた。
    『あれは夢だったはず。私は殺してなんかいない…』
    そう思いながら見た自分の手の、爪と皮膚の間にわずかな土が入り込んでいた。

    その日は店の経営コンサルタントを頼んでいた『丸岡幸弘』の娘を預かる約束になっていた。
    丸岡が連れてきた娘・花ちゃんと挨拶を交わしたその時、その子は誰もいない壁を指差し思いもよらない事を口走った。
    「あのおうまさんの服を着た女の人はだれ?」
    お馬さん、シマウマ…そんな、まさか…


    『ストックホルムの羊』
    20年もの間、塔に幽閉されているある国の王子。
    その王子に仕えて働く4人の女。
    古株でまとめ役のカミーラ。
    料理番のヨハンナ。
    掃除係のイーダ。
    洗濯担当のアン・マリー。
    王子だけでなく、仕える女達も塔の外へ出る事を禁じられ、外界の人間と一切関わりのない生活を続けてきた穏やかな日々を破ったのはマリアという1人の若い女だった。

    他国から来た姫君だというマリアは、働きもせず王子のそばにいるだけ。
    それについて王子は何も咎めたりもしないのであった。
    そんな待遇を良く思わない女達と、王子を交えた愛憎劇が繰り広げられる。


    『羊』というワードをテーマにした短編集。
    上記の4つの短編が独立した話だったので純粋に短編集だと思っていたら、ラストの作品『生贄の羊』で全てが絡み合い、連作短編集である事に気付かされた。

    ホラー要素もありのイヤミス作品で自分的に各々の作品が正直、及第点といったところだったが『生贄の羊』で上手くまとめられていたので高評価。

    続編『暗黒の羊』も評価の高い連作短編集らしく、今作を読んでから読むのが正解らしいので是非とも読みたい。

  • 〇 概要
     「着信アリ!」など,映画のシナリオを「大良美奈子」という名義で書いていた著者の短編集。デビュー作「強欲な羊」など「羊」をタイトルに含む短編が5つ収録された短編集。いずれも,企みと悪意に満ちた「イヤミス」であり,読後に,忘れがたい印象を残す作品がそろっている。

    〇 総合評価 ★★★★☆
     全く期待していなかったが,かなり面白かった。全体の肌触りは,米澤穂信の「儚い羊たちの祝宴」に似ている。
     女性作家らしい女性の描き方というか…描かれている女性がリアルに恐怖を感じさせる。
     特に,「背徳の羊」の「羊子」という女性の描かれ方が強烈。恐怖を感じずにはいられない。
     小説巧者でもある。「眠れぬ夜の羊」は,叙述トリックがあると知らずに読み,久しぶりに気持ちよくだまされた。叙述トリックのある作品を,叙述トリックがあると知らずに読むことができるのは幸せだと改めて痛感した。
     「ストックホルムの羊」は,服部まゆみの「この光と闇」に似ている。全体的にオリジナリティに欠ける嫌いはあるが,小説として十分面白い。相当なイヤミスぞろいなので,嫌いな人は嫌いだろうが,個人的には非常に好みの作品だった。
     
    〇 メモ
    〇 強欲な羊 ★★★☆☆
     大輪の薔薇のように艶やかで,気性の激しい麻耶子が,桜のように可憐でどこか儚げな沙耶子に殺される。物語の語り手は,その家の女中。聞き手は,麻耶子の夫の恭司だが,そのことは終盤まで伏せられている。
     語り手は,沙耶子が麻耶子を殺害するはずがないと言いながら,沙耶子がいかに麻耶子からひどい仕打ちを受けていたか,昔話を語り出す。麻耶子と沙耶子の祖母が,片足が切断された状態で遺体で発見されたこと,沙耶子の家庭教師だった榊が行方不明になったこと,石神という医師が行方不明になったこと,屋敷の旦那が精神を病んでしまったことなどを語る。
     終盤で,語り手は,沙耶子こそが「強欲な羊」だったのではないかと言う。最後には,語り手が正体を現す。語り手は,麻耶子と沙耶子の腹違いの妹であり,語り手が,沙耶子と麻耶子に嫌がらせを行い,麻耶子と沙耶子の祖母を殺害し,榊と石神を殺害し,屋敷の旦那の精神を病ました犯人である「強欲な羊」だった。語り手は,聞き手である恭二を屋敷の座敷牢に閉じ込め,恭二の足を切断していた。最後に,語り手は恭二に言う「ねぇ,恭司様,約束してくださいね。わたくしのことを誰よりも美しく描いてくださるって。麻耶子よりも,沙耶子よりも,綺麗に…。あら,そんなことをお願いしてしまう私って,少しだけ欲張りかしら……?

    〇 背徳の羊 ★★★★★
     篠田には双子の子どもがいる。娘の実は父にそっくりで,娘の真は美しい母,羊子にそっくりである。家族ぐるみで親しくしている水嶋家には,夫の和馬と妻の初音と,子供の理がいる。
     理は,真にそっくりだった。篠田は,初音のところに,「ご主人のそばに背徳の羊がいます。」と書かれた手紙が届いたと聞く。初音と篠田は,和馬と羊子が不倫をしているのではないかと疑う。
     調査を進め,羊子がかつて和馬とつきあっていた事実や,羊子の過去の評判などを聞く。篠田は,羊子がだんだんと信じられなくなっていく。また,経営している会社の経営状況が芳しくなく,羊子の紹介で知り合った喜田川弁護士と相談し,忙しい時間を過ごしながら調査を続ける。
     そんな中,初音の子である理が川に落ちる。羊子と初音が一緒にいるときに事故がおきたのだが,篠田は羊子が犯人でないかと疑う。
     篠田の会社の最大の取引相手であるノギハウスが破たんし,篠田は喜田川から破産するように勧められる。篠田は羊子と和馬が不倫をしていたと考え,羊子を殺害しようとする。
     最後に,理を殺害しようとしたのが初音だということが分かる。理は,体外受精により初音が生んだ子であり,卵子を提供したのが羊子だった。初音は,和馬と羊子の関係を疑い,篠田を巻き込みながら破滅していったのだ。
     篠田と羊子は分かれる。最後は,羊子が喜田川と再婚し,幸せそうに過ごすシーンで終わる。
     強烈な印象を残すイヤミス。ミステリ要素は少ないが,世にも奇妙な物語などで映像化したら,かなりの反響になりそうな気がする。傑作レベルの作品

    〇 眠れる夜の羊 ★★★★☆
     塔子は須藤文彦と婚約するが,29歳の塔子と10歳以上も年齢が離れていること,須藤が妻子持ちであったこと(すでに離婚をしている。)などが原因で,塔子の両親の反対にあい,結婚には至らなかった。須藤は,塔子の友人だった明穂と結婚する。
     塔子は,須藤と結婚できなかったことから母である静子を恨む。塔子は,明穂を殺害した夢を見る。実際に明穂の遺体が発見され,塔子は夢か現実か,判断がつかなくなる。
     塔子は再婚を考えている丸岡という男の娘である花(4歳)を預かる。花には,幽霊が見えるという。塔子が見ていた幽霊は明穂ではなく,塔子の母の静子だった。塔子は静子を殺害していたのだ。
     明穂を殺害したのは須藤。目撃証言などで,20代くらいの男と描写されていたが,須藤は,塔子より10歳以上年下の男だったのだ。
     須藤文彦の年齢の叙述トリックを巧妙に使った佳作。最後の最後でどんでん返しがある。叙述トリックがある作品は,叙述トリックがあると知らずに読みたいと改めて感じた。久しぶりに気持ちよくだまされた。★4。

    〇 ストックホルムの羊 ★★★☆☆
     服部まゆみの「この光と闇」のような作品。「この光と闇」を読む前に読んでいたら,評価が変わったかもしれない。「この光と闇」は,1998年の作品であり,ストックホルムの羊は,「この光と闇」を読んでから作られた可能性もあるが…。
     誘拐犯人が監禁している女性をだましているという設定。読者には中世ヨーロッパの頃の作品だと誤認させる叙述トリックが仕掛けられている。「この光と闇」は,性別誤認トリックまで仕掛けられていたが,この作品はそこまでの展開はない。ただし,監禁されている女性が4人であり,新たに1人加わるという展開である。
     ストックホルムの羊というタイトルは,「ストックホルム症候群」=加害者と被害者が閉鎖された空間で非日常的な体験を長い間共有し続けると,被害者が犯人に共感し,信頼や愛情を感じることがあるという事例をテーマにしているものであり,改めて読み返すと相当なイヤミス。嫌悪感まで感じてしまう。そういった意味では,この光と闇に優る部分もないではないが…この光と闇の完成度には遠く及ばない。★3どまり。相手が悪かった。

    〇 生贄の羊 ★★★☆☆
     「強欲な羊」,「背徳の羊」,「眠れぬ夜の羊」,「ストックホルムの羊」の4作品をつなぐという位置付けの作品。
     夜の公衆トイレで,足首に手錠を掛けられ,さびた配管につながれている複数の女性が登場する。
     女性のうちの1人は「あきりん」。これは,「眠れぬ夜の羊」の被害者である須藤明穂である。
     別の1人は,チコと呼ばれている。これは,「背徳の羊」で登場し,かつて水島和馬とつきあっていて,行方不明になったという九鬼千砂子である。
     もう一人は女子高生。この人物が何者かはここでは明かされない。
     いずれも,羊目の女の羊館=「強欲な羊」の舞台となった洋館(今は廃墟になっている。)に忍び込み,羊目の女を呼ぶという都市伝説を実行していた。生贄にすると宣言した人物を殺害しないと,自分が羊目の女の生贄になるという。
     九鬼千砂子は,実際は9年前に死んでいた。須藤明穂も,須藤文彦に殺害され,既に死んでいる。
     女子高生は,麻里亜(ストックホルムの羊の「マリア」)。麻里亜は,大路憲人…身代わりの羊とした人物だ。この人物を殺さないと,自分が生贄になる。
     最後は,麻里亜が「これから行く―」と答えるシーンで終わる。ここから「ストックホルムの羊」につながるのか…。
     全体と通じた趣向を用意したかったのかもしれんないが,やや消化不良。ミステリというよりホラー。個々の作品の登場人物が登場し,別の視点から語られたり,後日談が語られたりするのは悪くないが…もう少し練ってほしかった。★3

  • それぞれの話の羊が狂気に満ちて怖かった。

  • 羊をモチーフとした短編集。どの話も羊、女が怖すぎる。どの話も最後にゾワっとするのに、それが癖になる。うわぁ、と思いながら読みつつ、ラストには思わず唸った。どいつが羊の皮を被った狼や、と全方位に疑いを掛けながら読むのも楽しい。

  • 強欲な羊、背徳の羊、眠れぬ夜の羊、ストックホルムの羊、生贄の羊の五篇からなる連作集。
    表紙のデザインも雰囲気があって良いです。
    表題作の「強欲な羊」が一番好みでした。
    ミステリーというよりホラー?のような。
    大輪の薔薇のように艶やかで希少の激しい麻耶子と桜のように可憐どこか儚げな沙耶子。
    姉妹が殺人事件の加害者と被害者になってしまうなんて、この屋敷は本当に呪われているのかもしれないという使用人の女性の語りで始まる物語。
    徐々にあれ、これって…もしかして…と気付かされていく過程が楽しめました。

    「ストックホルムの羊」の王子の正体を知ってものすごく不快な気持ちになりました。

    全体的に少し前に読んだ米澤穂信さんの「儚い羊達の饗宴」と雰囲気が似ていて、面白くて続きが気になり、一気読みしてしまいました。

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