犬はどこだ (創元推理文庫)

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著者 : 米澤穂信
  • 東京創元社 (2008年2月29日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488451042

犬はどこだ (創元推理文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 『氷菓』に始まる古典部シリーズは大好きなのだけれど
    『儚い羊たちの祝宴』や『ボトルネック』などの作品では、滲み出る毒にあてられ
    何日も悪夢を見る破目になった、米澤穂信さん。
    今回は果たしてどっち?と読み始め、どうやら大丈夫そう♪ とほっとしたのですが。。。

    お好み焼き屋をやりたかったけど、ちょっと支障があったので
    犬捜し専門の調査事務所を開いた、やる気のない私立探偵、紺屋。
    トレンチコートとドライマティーニ、リボルバーという三点セットに憧れて
    探偵見習いに立候補し、紺屋S&Rに転がり込むお調子者のハンペー。

    ふたりの掛け合いもゆるゆると楽しく、犬捜し専門のはずが別件ばかり持ち込まれ
    紺屋担当の失踪人捜しと、ハンペー担当の古文書解読が
    いつしか絡み合って、絶妙な展開を見せるのですが。

    宮部みゆきさんの名作『火車』では、失踪した女性が許しがたい大罪を犯していても
    あまりに痛ましくて、なんだか感情移入せずにいられなかったのに、
    この物語の失踪人の桐子には、気の毒といえば気の毒なのに
    あんまり共感できないのはなぜ?と思っていたら、こう来るか!
    米澤さんらしい猛毒が、底にしっかり溜まっていました。
    これだから、油断ならない米澤穂信!(涙目だけど、誉めているのです、一応。)

    やる気なさげなわりにお茶目な一面も見せる紺屋や
    チャラチャラしてるのに、仕事はきっちり仕上げるハンペー、
    ネットを通じて紺屋に的確なアドバイスをくれるGENなど
    魅力的なキャラクターが揃っているので、
    今度はぜひ救いのある事件で再会したいところです。

    とりあえず、紺屋さん!
    成功報酬で可及的速やかに、強そうな番犬を買ってくるのよ!
    。。。と、言わずにいられません。

  • いやぁ~
    ひさびさの米澤作品だけど、
    読了後三日たった今も
    余韻を引きずるほど
    心に深く刻まれたなぁ~(^^)


    見事な伏線回収の妙と
    異なった2つの物語がリンクし合い
    やがて一つに繋がる快感、
    最終章であるChapter6からの怒涛の畳み込みに酔いしれ
    物語は驚愕の反転へ!

    そして、やるせなさが残る
    なんともほろ苦いラストに撃沈…( >_<)


    後味爽やかとはいかなかったけど

    これぞ小説とも言うべき読み応えと
    追い詰められた人間の怖さや狂気を描いた文句ナシの傑作だと思います。
    (あまりにも衝撃的で後引く結末ゆえに読む人は選ぶだろうけど…)

    タイトルから
    犬の話を期待したアナタ、
    実はそこんとこはメインではないのです(笑)
    (しかしタイトルはラストの一言からちゃんと繋がってきます)


    紺屋S&R(こうやサーチアンドレスキュー)は
    四階建ての古い雑居ビルに
    いましがた開業したばかりの
    犬捜し専門の探偵事務所。

    所長はのっそりと背か高く
    訳あって半年も部屋にこもっていた
    25歳の私(紺屋長一郎)。

    しかし初仕事は犬ではなく
    失踪した24歳の孫娘、桐子(とうこ)を捜して欲しいという老人から依頼。

    ほどなくして別件で
    古文書の解読の依頼も舞い込み
    長一郎は押しかけ助手である
    高校時代の後輩、
    ハンペー(半田平吉)と共に
    手分けして調査を進めるが…。


    反権力の象徴である
    イメージとしての探偵に憧れを持つタフさが売りのハンペーと
    何のこだわりも持たず病み上がりの新米探偵の長一郎との
    温度差のある会話がいい味出していて
    ニンマリできます(笑)

    そして、長一郎は『私』、
    ハンペーは『俺』と、
    それぞれの章を
    私と俺で交互に一人称で語る構成のおかげで
    失踪事件と古文書の解読という二つの物語は
    読者はかなり早い段階から
    密接してリンクしていることが分かるのだけど、
    二人は別々に捜査していて
    そのことにまったく気づいていないので(笑)
    ヤキモキ感を抱かせながら
    読ませる構成が上手いし、
    コレが読者を惹きつけるいい効果を生んでます。


    新米探偵を助けるキャラたちも秀逸で、
    傷ついて東京から出戻ってきた長一郎のために
    次から次へと依頼人を見つけてきてくれる(笑)
    おせっかいな友達の大南や、
    体は小さいが態度はデカい(笑)
    喫茶店を経営する主人公の妹の河村梓(かわむら・あずさ)や
    主人公長一郎のパソコンでのチャット仲間で謎の人物のGENなど
    シリーズ化を考えてか
    かなりキャラ設定にも力入ってます(笑)

    けれどなんと言っても
    長一郎の剣道部時代の後輩で
    愛車ドゥカティM400を乗りこなす
    ハンペーのキャラが颯爽として
    いいのですよ(笑)

    いまいちやる気のない長一郎と違い、
    お調子者の見た目とは裏腹に
    行動派で頭もキレる彼の活躍のおかげで
    物語にいいリズムが生まれ
    いかにもな(笑)ハードボイルドな触感を味わうことができます。


    米澤作品と言えば、受動的な生き方をしてきた主人公が
    事件を通じて変容を余儀なくされるパターンが王道だけど、
    この作品も社会からドロップアウトした長一郎の再生が一つのテーマ。

    そして、一人の女性の失踪の謎を探るうちに
    女性の生き様や苦悩が浮き彫りになり
    物語にはなかなか登場しない
    『彼女』の姿が
    読む者にありありと浮かび上がる構成は
    あの宮部みゆきの傑作『火車』を彷彿とさせて
    なんとも切ないし、

    物語の真相に近づくにつれて
    せっかく築き上げたモノを手放して逃げ続けるしかなかった桐子にシンパシーを感じ
    自分と桐子は同類だと気付く長一郎のシーンから
    俄然物語に惹きつけられ
    衝撃の結末を迎えるのです。


    英語のタイトルになった
    『THE CITADEL OF THE WEAK (弱者の砦)』がまた深いし、
    この悲劇の物語を見事に言い表していて
    読後ジワジワ染みてきます…( >_<)


    シリーズ化を想定して書かれたとのことなので
    コレはまた今後追っかけていきたい作品!

    タイトルで敬遠してる人、
    先入観で見過ごすには
    勿体ない作品ですよ~(笑)

  • 犬探し専門の探偵事務所を開いた主人公が、失踪した女性の捜索と古文書解読という、まったく畑違いの依頼に巻きこまれていくミステリー。一見、何の接点もないように見えたふたつの事象が終盤、ひとつのラストに向かって収斂されていくさまが面白い。登場人物の名前やハンドルネームなど、随所にちりばめられた細かい遊びも楽しい。そして、結末がじわじわと怖い。

  • 現代を舞台に職業探偵を書こうとすると、どうしてもマンガ的劇画的になりがちだが、この『犬はどこだ』はリアルと虚構のバランスが絶妙だ。そして田舎や中途半端な地方都市を描かせたら抜群にうまいなぁ、米澤さん。

    病気退職で都落ちしてきた元銀行員が地元でペット捜しの調査事務所を開く。開業二日で依頼は立て続けに2件。しかし『孫捜し』と『古文書の解読』という共に当初の予定を逸脱した案件に、困惑しながらも調査を始めるのだが...

    役場に勤める旧友が、じいさん達の苦情処理も兼ねて主人公の事務所に半ば押し付ける形で仕事を廻してくる設定が面白い。この役場の窓口が探偵と依頼人をつなぐパイプ役になっているのだ。そして小説や映画の世界の『探偵』に憧れるフリーターの後輩が臨時職員として加わり物語が始まる。

    心に瑕を負った主人公が事件に関わることによって本来の自分を取り戻していくというハードボイルドの定石を踏まえつつ、一見して脱力のストーリーが次第に不気味な様相を呈して、しかもミステリ的なツイストが幾重にも加わるという贅沢な作品。それを都会の路地裏や薄暗いバーカウンターなど出さずにやってのけるのが憎い。

    ラストに震える。
    『犬はどこだ』というタイトルも巧い。

  • 登場人物が良く描けていて皆に愛着が持てる。クライマックスの盛り上がりは一級品。最後に認識がひっくり返る快感を感じました。良作。

  • 体調悪化のせいで仕事を辞めて帰郷、
    犬を探す調査会社を立ち上げた男
    しかし舞い込んだ仕事は、人探しと古文書の調査。
    これがリンクしているのだが、報・連・相をしないので
    二人の間では、事件の繋がりに気づかないまま進んでいきました。

    タイトルは「犬はどこだ」だけど、
    一度も、犬を探す仕事はしないまま、物語は終了するのが
    笑える。

  • 誤解を恐れずに言うと、余韻が強い話や後味の悪い話を読んだ後の“箸休め”あるいは“お口直し”でよくお世話になる米澤穂信さんです。
    今回も絶妙なユーモアと予想の斜め上を行く着地で大いに楽しませてもらいました。

    犬捜しを専門とする調査事務所を立ち上げたところ、舞い込んできた依頼は「失踪人捜し」と「古文書解読」。一見何の関連性もない2つの事件がクロスし、事態は思わぬ方向に・・・。推理が淡々と進むので気負わずさっくり読めます。

    飄々とした主人公、熱血な男友達、気の強いヒロインは米澤作品の定番ですね。よく別作品の感想などでも「暗い」「重い」「陰鬱」といったキーワードが散見されますが、おそらく主人公の気質によるところが大きいのではないかと思います。読んでいて推理の邪魔にならないので私は気に入っていますが。

  • インシテミルよりこっちの方が、ドラマ性は低いかもしれないけど、面白かった気がする。
    最後の後味、確かにスッキリとはしないけど、狙われる様な事はないでしょ。
    何の証拠もなく完遂する計画は、彼女を追いかけてない限り無理だろうし。
    途中までは、バーにいる探偵さんとか、ディナーのあとの執事さんとかと同じく、シリーズものにならないかなと思ってたけど、読み終わったいまは、どっちでもいいかな^_^;

  • 20130818
    犬探し専門の仕事をしたかったのに、依頼は違うことばかりの新米探偵物語。
    ふたつの依頼のからまり具合が面白い。後味も好き系です。

  • 二つの事件の繋がり方が素晴らしい。
    後半の畳み込みと一筋縄ではいかない展開が堪らない。

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