秋期限定栗きんとん事件 上
著者:米澤穂信
発行:2009年2月27日
創元推理文庫
秋期限定栗きんとん事件 下
著者:米澤穂信
発行:2009年3月13日
創元推理文庫
*書き下ろし作品
ブックオフのサイトを見ていて、タイトルが面白いので買ったが、ちっとも読まずに危うく「秋期限定」を逃すところだった(いや、もう立冬は過ぎてしまっているか)。僕はエンタメ、ましてやミステリーはほとんど読まないので、恥ずかしながら著者を知らなかったが、読み始めて気づいた、今年2022年に「黒牢城」で(2021年下期の)直木賞を取った人だった(もう一人の受賞者は今村翔吾)。岐阜県出身だそうで、「栗きんとん」といえばなんと言っても岐阜だし、近所で見つけた岐阜県のメーカーが作った鬼まんじゅう様のお菓子を食べながら読んだ。
「小市民シリーズ」三部作の三作目とのこと。小佐内ゆきと小鳩常悟朗という、付き合っている高校生が、小市民的に生きると誓い合って別れたりまた引っ付いたりして、ミステリーを解決していくシリーズのようだ。今回は別れた状態でスタートし、新聞部を舞台にしたミステリー話に関わっていく。ただし、この2人は新聞部ではない。
高校がある都市で連続放火事件が起きる。月に1度、ボヤ程度だが起きている。新聞部の1年生である瓜野高彦が詳細を調べるうち共通点を見つけ、来月起きる放火事件の場所を高校の新聞コラムで予想、的中させていく。2年になり部長となった彼は、なんとか新聞部で犯人をつかまえようとする。そこに、小佐内ゆきが絡む。小説の始まりのところで、2人はつきあい始める展開。しかし、瓜野は小佐内が放火犯ではないかと疑い、やがて確信する。そして、最後、火災現場で彼女と対峙し、お前だろうと指摘するが、違うと言われて恥をかく。
小佐内ゆきは、瓜野に復讐をしたかったと、最後、秋期限定くりきんとんをカフェで食べながら、関係が復活した小鳩に言う。
真犯人は、瓜野の一番の親友で、彼の推理とは一番遠いところにあった友達だった。このあたりはミステリーの王道だった。
なお、タイトルからして、また高校生の話だし、ライトノベルズかと思って読んでいたが、解説によるとこの人はラノベでは決してない、バリバリミステリー作家のようだ。