十三番目の陪審員 (創元推理文庫 M あ 9-4)

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  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (429ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488456047

感想・レビュー・書評

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  • ー もとより依頼人の無実をかちとる戦いにおいて、弁護士は何も検事だけを相手にしているわけではない。本当の〈敵〉とは、どこかにいる真犯人であることは言うまでもないが、それとともに無数に絡まり合った人間の感情であり、複雑に折り重なった状況そのものでもある。まして冤罪事件となれば、依頼人を陥れた何者かの悪意に加え、司法組織の病根までを〈敵〉としなくてはならない。森江はそのことを骨身にしみて知っていた。 ー

    圧倒的に不利な状況で、冷静に挽回していく法廷のやり取りが面白い。なかなか良くできた法廷ミステリ。
    芦辺拓の作品も面白いなぁ〜。なんか、シリーズ全部読みたくなってきた。

  • どんなに怪しげな話だったとしても、己の欲望が勝ってしまえば、簡単に危険を承知で飛びついてしまう。
    あとからどんなに後悔しても後の祭りで、どうにもならない状態に追い込まれていることも多い。
    物書きとして世に出ることを望んでいた鷹見は、いとも簡単に怪しげで胡散臭げな話にのった。
    現在は裁判員制度が法的に施行されているが、「十三番目の陪審員」が書かれた当時は、実際の制度が実現するかどうかもわからない頃である。
    一般の法知識も何もない人たちが裁判に関わる。
    それだけ挑戦的な試みだったのだろう。
    DNA鑑定の精度もあがり、かつてのようにDNAを絶対視することもなくなった。
    骨髄移植をすれば血液型すら変わってしまうことも現在では知られている。
    トリックの肝にDNA鑑定を含む科学捜査が据えられているが、科学の進歩により、捜査の現場も変化していくのだろう。

  • DNAトリック、冤罪、原発事故、陪審制度(本書の初刊は1998年)… いずれも大技が絡み合う力技の作品。森江春策の期待に陪審員が応えたときは、感動してぞくっとした。

    どんなマスゴミも、作中のマスコミほど露骨に酷いことを言いはしないだろうが、本作では本筋ではない原発事故について同様に誇張して表現されたと思われる当局見解とそっくりな言葉を聞くことになったことを思うと…

  • 壮大な動機だなあ
    政府サイドでこのような方法で犯罪をするわけもないが
    法廷の場面は秀逸です
    面白い!

  • 架空の殺人事件を演出し、その容疑者として冤罪の実態を取材する「人口冤罪」。
    計画の犯人役に志願した鷹見瞭一は、DNA鑑定すら欺く偽装を経て、予定通り警察に連行された。
    全く身に覚えのない現実の殺人容疑者として!
    弁護士・森江春策と十二人の陪審員が、影から事件を操る悪意と壮大なトリックに挑む。
    この小説は、今の陪審員制度の法ではなく、英米その他の諸国で実施され日本でも戦前の一時期採用されていた陪審員制度の導入を前提としているとの事。
    ってか、日本は2009年にスタートした陪審員制度が初めてではなく、以前にも陪審員制度があったのに驚いた。
    この本の面白かった所は、現行法でなくとも陪審員制度の大まかな内容が知れた事、身に覚えのない「架空殺人」をどう無罪にもっていくか。
    ただただ、真犯人を見つけて解決って訳ではなく、裁判で素人と呼ばれる陪審員に対してどう伝えていくか、陪審員が加わる事によって何が変わるのか。
    難しい言葉が出てきてとか、最後の結末があやふや、とかではなく、最後はハッキリとした結末でめっさオモローやった。
    自分が陪審員に選ばれたら・・・、なんて想像しんがらも読んでみたりして、めっさ勉強になった小説やった!!

  • 2008年10月2日、天神のジュンク堂書店にて購入
    2011/5/30〜6/1

    久しぶりの芦辺作品。
    作家を夢見ながら現在失業中の鷹見瞭一は、高校の先輩船井信から、人工冤罪の犯人にならないか、と持ちかけられる。夢を実現するために犯人役を引き受けた瞭一は、DNA鑑定を欺く手術を受け、犯行のまねごとをし、警察に逮捕される。が、かけられた嫌疑は全然知らない強姦殺人事件であった。この裁判は最近導入された陪審員裁判として裁かれることになり、非常に注目を集めることとなる。瞭一の弁護人となった森江春策は彼の無実を果たそうと奮闘するが、その裏には...
     原発のメルトダウンシーンから始まる本作。いったいどういう風に本編と絡むのか、と思っていたが、そういうことだったのか。本作は陪審員制度が始まる前に書かれた作品なので、現行の制度とは違うシステムであるが、陪審員制度に関わる問題点、冤罪、科学捜査の限界など、非常に多くの事項をうまく絡めてストーリーは進む。ぐいぐい引き込まれる名作!

  • おりしも裁判員制度施行のタイミングで文庫化。
    法廷ミステリはたまに読むと面白い。

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著者プロフィール

一九五八年大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。
一九八六年、「異類五種」が第2回幻想文学新人賞に佳作入選。
一九九〇年、『殺人喜劇の13人』で第1回鮎川哲也賞受賞。
代表的探偵「森江春策」シリーズを中心に、その作風はSF、歴史、法廷もの、冒険、幻想、パスティーシュなど非常に多岐にわたる。主な作品に『十三番目の陪審員』、『グラン・ギニョール城』、『紅楼夢の殺人』、『綺想宮殺人事件』など多数。近著に『大鞠家殺人事件』(第75回日本推理作家協会賞・長編および連作短編集部門、ならびに第22回本格ミステリ大賞・小説部門受賞)。

「2022年 『森江春策の災難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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