刺青(タトゥー)白書 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.55
  • (9)
  • (30)
  • (37)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 232
感想 : 25
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488459048

作品紹介・あらすじ

女子大生・三浦鈴女は、中学時代の同級生が相ついで殺害されたことに衝撃を受ける。彼女たちは二人とも、右肩に刺青痕があった。刺青同様に二人が消したかった過去とは何か。第一の、アイドル殺害事件のレポートを依頼された柚木草平は、鈴女たちの中学時代に事件の発端があるとみて関連性を調べ始めた-。鈴女の青春と、柚木のシニカルな優しさを描いた傑作、初文庫化で登場。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 柚木草平が嫌いということではないんだけど、樋口有介は、やっぱり青春真っただ中な主人公が事件を探っていく話の方がいい。
    それは、最初に読んだ著者の本が『ぼくとぼくらの夏』と『風少女』だからだろう(どっちを先に読んだのかはおぼえていない)。
    これは主人公が大学4年の女の子ということで、そういう意味でも樋口有介っぽくって、すごく好みの話。
    というかー。
    柚木草平って、このポジションの方がおさまりがいいと思うんだけど?w

    読み始めて、最初に感じたのが、え? 樋口有介って、こんな文学的に情景描写する人だったっけ!?ということ(^^;
    たしかに、変に詩的なタイトルwとか、ムダにキザなへらず口とかw(いや。どっちも好きなんだけどさ)、書きたがる作家だとは思っていたけど。
    でも、“細い地雨がフロントガラスをけぶらし、ワイパーの移動が隅田川の夜景を飴色に明滅させる……”みたいな描き方、記憶ないけどなーと、他の本を見てみたら、やっぱりないと。
    え? これ、なんなの!?なんて思いながら読んでいたんだけど、特にはわからなかった。
    ま、たんに他の柚木草平の話は、彼の語りで話が進むけど、これは三人称の文章だから、そういう風に書いたっていうことなのかな?
    ていうかー、樋口有介。こっちの描き方の方がよくない?(^^ゞ

    話は主に、主人公の三浦鈴女のパート、柚木草平のパートと進んでいくんだけど、それぞれ初めにその情景が描かれることで、二人の感情や思いがより鮮明になってくるっていうのかな?
    この話のやりきれない結末もあって、描かれた風景が無機的なんだけど、だからこそ、それらは誰にも平等で、優しくて、哀しい。
    そこが、すごくいい。

    唯一難点を言えば、左近万作の物言いが柚木草平と妙にダブることw
    いや。決してキザなへらず口をたたくわけではないんだけど、ぶっきらぼうな物言いがなぁー。
    もうちょっとバリエーションがあってもいいんじゃない?(爆)



    読み終わって、違和感を覚えたのが『刺青白書』というタイトル。
    だって、これって、刺青白書な話でないよね?w
    『刺青白書』ってタイトルを見た時、すごく樋口有介あるある的なストーリーをイメージしたんだけど、でも、これはそういう週刊誌的なセンセーショナルさが事件になっている話では全然ない。
    むしろ、事件の根本にあるのは、抑えきれない虚栄心の暴走(迷走?)みたいなものがきっかけになって起こっていく地味な話なのだ。
    地味だし、また、意外なところに配置されていた犯人も、実はこの手の話の定番の配置だったりするwんだけど、ミステリー小説に、すごいトリックも、驚くようなどんでん返しも、これっぽっちも期待していない自分みたいな読者からすると、そこがよかったりするのだ。
    ていうか、樋口有介のファンって、そういう読み方をする読者の方が多いような気がするんだけどな。
    『刺青白書』というタイトルは、無理に煽ることで売ろうとする最近の新書のタイトル(or帯)みたいで、すごくイヤ(爆)

    違和感といえば、もう一つ。
    三浦鈴女の最初のパートで、彼女が神保町でカラスアゲハが飛んでいるのを見る場面があるんだけど。
    神保町でアオスジアゲハが飛んでいるのよく見かけたけど、カラスアゲハは1回も見たことないんだよなぁ~(^^ゞ

  • 柚木草平シリーズ、4作目。
    今回は柚木草平目線は少なく、三浦鈴女(すずめ)という女子大生の目線で描かれる番外編的なシリーズ作。

    ハードボイルドな探偵の中年男性から女子大生の若い女の子に主人公が変わって、正直そういうのあんまり好きじゃなくて期待はしてなかったんだけど、意外とこのすずめちゃんが可愛くて、最初から楽しく読めた。不器用な恋愛模様も、ほのぼのとしてて、好印象。第三者目線から描かれる草平の姿も新鮮だった。事件の方は打って変わってドロドロした人間関係だったけど。
    主人公が変わって、それまでの3作とは雰囲気が違ったけど、これはこれで面白かった。すずめちゃんが再登壇することってあるのかな。

  • 柚木草平シリーズの番外編。
    主役がちょっと変わった女子大生で、いつもとだいぶ趣が違うが、主役に好感が持てる。
    真相の意外性はそこまでではないが、話は丁寧な作りで面白い。

  • 探偵ライター柚木草平シリーズ第四弾。
    前三作とは異なり、今回は「主人公」が別にいて、
    柚木のことは第三者目線で描かれる部分がある。

    そのせいか、前作と比べても「よりハードボイルド」で、
    シリーズ1・2作目で醸し出していたユーモラスさは
    主人公のスズメちゃんが担っている(?)。

    事件の発端がなかなか扇情的なのに比して、
    謎解き...と言うか事件の背景を掘り起こすくだりは
    かなり鬱々とした展開。
    スズメちゃんの淡い恋模様が救いか(^ ^;

  • 樋口氏の作風には、かなり強烈なクセがあります。
    古いし、ベタだし、クサいし、不自然だし。
    そしてぼくは、そんなクセが大好きなんです。

    既に希少種とも思えるほど、ど真ん中のhard-boiledです。
    決してmysteryではない、と思います。
    その独特の雰囲気に酔うための作品。
    それがつまり、hard-boiledというcategoryではないかと思います。

    柚木草平seriesものという位置づけのようでいて、実は違うらしい。
    あとがきで作者は、柚木はserviceであると述べています。
    確かに、別に柚木である必要性はないような気もします。
    けど、やっぱ良いんですよねぇ。柚木草平。
    既に絶滅危惧種ってくらいの、典型的なhard-boiledっぷり。
    思わず、読んでいるこちらの顔が赤らんでしまうような口説き文句とか。
    そしてそれが、決してサムいそれではなく、決まってしまう感じとか。
    もっともそれは、ぼくの感性がウブすぎるだけ、なのかもしれないですけれど。

    そして、痩せっぽっちで独特の雰囲気をもつheroine、スズメちゃん。
    この、不思議少女でありながら、不思議少女ではない独特のbalance。
    断言しますが、正統派からは遠く離れてます。
    けれど、スズメちゃんの可憐さだけは間違いない。
    この魅力に気付けるかどうか。
    それが、本作を楽しめるかにおいて、かなり重要です。

    貫くのは、醜悪で目を背けたくなるような事件。
    読んでいて、眉間に皺がぎゅうっと寄ってしまうような、凄惨な現場。
    そんなgrotesqueさをも緩和してしまう、爽やかで瑞々しい青春の香り。
    この見事なbalanceが、いつもと変わらない、樋口有介氏が紡ぐ物語です。
    人と人との繋がりから目を背けず、きちんと丁寧に書き出した感じ。
    だからこそ、きちんとしたrealityを持って、キャラが浮かび上がってくる。

    読む人によっては、樋口氏の作風に耐えられない可能性はあります。
    けれど、好きな人には堪えられない魅力を湛えているのも事実。
    そしてぼくは、繰り返しますが、そんな樋口氏の作風が、大好きなのです。

  • 2016.10.22 読了


    柚木草平シリーズです。

    今回は 柚木の他に
    女子大生のスズメちゃんという子も登場し、
    謎を解いてゆきます。

    ちょっとした どんでん返しもあって、
    嫌いじゃないです。

    読みやすかった。

  • 柚木草平シリーズだが,柚木草平はちょこっと活躍で女子大生のスズメちゃんが同級生の連続殺人を調べる。
    この作者の持ち味は,やっぱり若者の青臭い青春劇だなぁと感じさせる作品。
    スズメちゃん可愛い。

  • ミステリーと云う感じがしませんね。
    主人公の女の子は、変人から普通の女の子になっちゃったのがちょっと残念。

  • 会話のテンポとちょっと気恥ずかしい青春時代の匂い。
    すーっと読めて、読後感も良い。
    ミステリとしては物足りないなど関係ない。読んでて気持ちいがいいです。

  • 図書館の本

    内容(「BOOK」データベースより)
    女子大生・三浦鈴女は、中学時代の同級生が相ついで殺害されたことに衝撃を受ける。彼女たちは二人とも、右肩に刺青痕があった。刺青同様に二人が消したかった過去とは何か。第一の、アイドル殺害事件のレポートを依頼された柚木草平は、鈴女たちの中学時代に事件の発端があるとみて関連性を調べ始めた―。鈴女の青春と、柚木のシニカルな優しさを描いた傑作、初文庫化で登場。

    柚木が脇役状態でした。ちょっと残念。
    ただ鈴女からみた柚木が見れたかなという視点の違いがおもしろくはあったけど。
    中学時代を引きずる大学生。
    誰もが子供時代を引きずるけれど、それがあだとなることも、あるのね。
    鈴女と万作のこの後はないのでしょうか?

全25件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1950年、群馬県生まれ。業界紙記者などを経て、88年『ぼくと、ぼくらの夏』で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビュー。『風少女』で第103回直木賞候補。著書に『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の思惑』、「船宿たき川捕り物暦」シリーズの『変わり朝顔』『初めての梅』(以上、祥伝社文庫刊)など。2021年10月、逝去。

「2023年 『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の策略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

樋口有介の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部みゆき
宮部 みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×