林檎の木の道 (創元推理文庫) (創元推理文庫 M ひ 3-6)
- 東京創元社 (2007年4月12日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488459062
感想・レビュー・書評
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樋口センセの作品には夏が似合う〜読んでいて暑さがジリジリと伝わってきます。でも、この暑さとは正反対に主人公の男子は妙〜に冷めている 夏の暑ささえ遠くから見ているような距離感が読んでいて心地よかったりするんです。 悦至くん、どうかそのまますくすく大きくなって立派なハードボイルドおやじになってね〜
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主人公の少年のクールさと暑さが不器用に混在しているところ、淡々としているのに妙にストーリーとマッチする風景描写、登場する勝気な少女の存在感、もの悲しい事件の真相など、樋口作品の魅力が十二分に堪能できる作品でした。
今まで読んだ彼の作品の中でNo.1かも。 -
図書館の本
内容(「BOOK」データベースより)
十七歳の暑く単調な夏休み、広田悦至は元恋人の由実果が、千葉の海で自殺したことを知る。事件の日、渋谷からの彼女の呼び出しを断っていた悦至。渋谷にいた彼女がなぜ千葉で自殺を?再会した幼なじみの涼子とともに事件を調べ始めると、自分たちの知らなかった由実果の姿が、次第に明らかになってくる―。悲しくも、爽やかな夏の日々の描写が秀逸な、青春ミステリの傑作。
みんな淡々と飄々と生きていて、それがとても面白い。お母さんとかマツブチのスピンオフを期待してしまうくらい、回りの登場人物がおもしろい。
バナナは世界を救うのか?
それより、飄々としつつ、しっかり高校生男子の悦至がとてもいいかんじ。
それにしてもこの作者が書く「おじいちゃん」って好きだわ。 -
1996年の樋口有介作品で、この2007年創元推理文庫版は中公文庫版に加筆した再文庫版。
樋口氏のデビュー作『ぼくと、ぼくらの夏』と同路線の、男子高校生が夏休みの間に女子高校生の死の謎を解く、というストーリー。
ですが、『ぼくと、ぼくらの夏』と比べて、だいぶハードボイルド風味が増しています。男子高校生・広田悦至が「ぼく」という一人称で語るスタイルがまずハードボイルドですが、新宿に近いやや寂れた街『梅園銀座商店街』という架空の街を舞台に、クールな主人公とその主人公を取り巻く個性的な人々を配置、ということからわかるとおり、私立探偵が男子高校生に置き換えられたハードボイルド小説、という雰囲気です。
ただ、男子高校生・広田悦至を取り巻く人々の騒がしい雰囲気に引っ張られること無く、クールな変人キャラである広田悦至君が持つ雰囲気が終始作品を支配していて、暑い夏休みであるのにどこか陰鬱な作品になっています。
文庫本の内容紹介にあるような、「青春ミステリ」という言葉からイメージする甘酸っぱさより、だいぶ苦めの味わいでしたが、自分にはこの苦さが快い読み心地となっていました。 -
20190407
ぼくは友崎涼子の平べったい尻にたっぷりとアジシオをふりかけてやり、葡萄棚の影を吸い込むつもりで、大きく深呼吸した。飛んでいたヘリコプターは姿を消し、風が欅にかすかな葉音をひびかせていた。
友崎涼子が休戦を宣言するのは妥当として、ぼくのほうがいつ宣戦を布告したのか、ぼくには思い出せなかった。 -
再読。
でも以前はそこまで面白いって感じなかったんだけどなー。
どこを面白く感じたのかって、主人公と女の子の軽妙洒脱な会話。
もちろん樋口有介センセの作品はそこが魅力のものが多いんだけど、今作のリズム感はその中においてでも白眉なのではないかと再読で感じた次第。
また、他作で米澤穂信センセが指摘されていた「主人公の臆病さ」というのも、これは逆に軽妙洒脱が過ぎるがゆえに強く表れているようにも感じた。
心の内を隠すために、言葉が多くなる…みたいな。
自分にはそうした主人公の気持ちが強まっているように感じられるところも、今回再読して面白いって思えたのかもなー。
あと今作はそれなりに推理ミステリの体裁を整えようとしたのかなーって印象も。
それが功を奏しているという意味では無く、ちょっとムリクリ感が浮かび出てしまったかなー…というマイナス面。
ギミックがね、ちょっと大味な感。
それでいてハウダニットを証明させようと、樋口センセらしからぬ主人公が強く探偵色を出しちゃってるかなー…て。
まあしかし、それでも樋口センセの「夏」らしい作品ではありましたなー。 -
青春溢れるhard-boiled。
夏の気怠い暑さや、くっきりと鮮やかに彩られる風景を、感じられます。
そんな中で語られる、哀しく淋しい一つの事件。
そしてやっぱり、その背後で展開する、甘酸っぱいような爽やかさ。
登場するのは、とことん不自然極まりない人物たち。
けれど、何故か不思議と、ストンと納得して、リアリティを感じてしまう。
これが、樋口氏の話術の巧みさなのかなぁ、と思います。
なんて言うか、青春って、綺麗なものだけじゃないだろ?って作品です。
描かれがちなのは、遠い夏の日、その輝かしくも儚く過ぎ去った日々、って感じの物語。
樋口氏の描くのはそんな夢物語じゃなく、もっと身近な、どろどろした青春。
だからこそキラリと光る、ほんとに美しい一瞬の風景。
それを、瞬間的に切り取ってくれたかのような作品です。
無知で無謀で単純で、だからこそ、見えたものや感じたもの。
それを、一歩離れた場所から、coolに眺めているかのような。
それでいて、その場の「空気」を感じさせてくれるかのような。
読了後に残る、仄かな香り。
かつては、自分のその中にいたのだな、と思い出させてくれます。 -
主人公の気持ちや思いを情景で表現しているところが素晴らしい。
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ピースが衝撃的だったのでファンになった作者の青春小説。バナナや屋上の池など世界観、タイトルの理由など全体的に少しモヤっとした作品。