不思議島 (創元推理文庫)

著者 :
  • 東京創元社
3.25
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本棚登録 : 154
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488460013

感想・レビュー・書評

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  • ゆり子は子供の頃に誘拐され、付近の無人島に放置された経験があった。事件は未解決のままだったが、診療所に赴任してきた医師の影響で彼女は過去の謎と向かい合うことにする…
    瀬戸内海の伊予大島を舞台にした詩情あふれるミステリ。一貫してヒロインの視点で描かれているので恋愛小説、あるいはサスペンスという方が近いかも。
    村上水軍時代の謎を解くために漁師に舟を出してもらった時の綱渡り航法が面白かった。

  • 瀬戸内の島々、15年前の誘拐事件、10日間の恋人。
    なんとも火サスっぽい雰囲気。

    影を照らして明るみに晒しても、その周りには闇ができる。
    何もしないことが最上の選択である場面もあるのだ。

  • 不思議島
    220928読了。
    今年29冊目今月6冊目。

    #読了
    #不思議島
    #多島斗志之

    #黒百合 に続いて。
    この作家好きだ。
    帯のドラマ×トリックが言い表してる。
    なんとも言えない読み味。

    最終盤の展開や、登場人物評は賛否両論ある作品だと思うが、この読み味はむしろ狙ったものだと評価したい。

    世間知らずと断じれない程度には感情移入した。良作。

  • 瀬戸内の島を舞台にしたミステリー。

    主人公の一人 ゆり子は幼いころに誘拐事件の被害にあう、それが今回島の診療所にやってきた青年医師 里見との出会いをきっかけに暴きだされていく。

    里見医師はゆり子と付き合うようになり、何気なくゆり子の幼いころの誘拐事件の犯人を見つけようとする。

    里見医師の本当の目的が暴露されるのがミステリーをしての面白さである。

    誘拐事件は結局 父親たちの仕組んだ、里見の兄の死体を隠す為の偽装であり、里見の兄を殺したのはゆり子の母親であることが明らかになる。


    最後ゆり子と里見の確執は何となく和解されたような終わり方なのでドロドロした後味の悪い物語にはなっていないのが良かった。

  • 〇 トータル ★★★☆☆
     読み終わったときは,なかなかの作品と思ったが,時間が経つとさっぱり中身を思い出せなくなってしまった。ミステリとしては,メリハリのある展開ではなく,淡々と進む。その分,個々の登場人物の人間はしっかり掛けている。ミステリとしてメリハリを付けると,人間が描けなくなるので,痛し痒しといったところか。村上海賊の不思議な話を,誘拐事件の真相に掛けているところなど,小説としての完成度は高いと思うが,ミステリとしての完成度はそこまで高くないという感じ。

    〇 事件の概要
     15年前のゆり子誘拐事件の真相は,ゆり子の母,京子が小野沢一夫を殺害してしまったのを隠蔽するため。小野沢一夫の死体を九十九島に隠す理由を作る(小野沢を誘拐犯に仕立てる)と共に,ゆり子に,怪島を九十九島と誤解させて,アリバイを得た。
     15年前の誘拐事件の真相について,ゆり子の叔父である庄吾を犯人だと思わせ,ダミーの真相として,ゆり子の父が犯人と見せた上で,ゆり子の母が真犯人という真相になっている。

    〇 サプライズ ★★☆☆☆
     15年前に,小野沢一夫を殺害したのが,ヒロイン=ゆり子の父ではなく,母の京子であったという真相は,やや驚かされる。とはいえ,この物語のセールスポイントはサプライズではなく,15年前の誘拐事件のアリバイトリックであり,サプライズ部分はおまけだろう。里見がゆり子に近づいたのは,15年前の小野沢一夫の死の真相を知るため…といったところをうまく料理すれば,もっとサプライズがある作品にできたと思う。驚きより,小説としての完成度を重視したのだと思われる(そういう作風の作家とも言える。)。

    〇 熱中度 ★★☆☆☆
     ゆり子の視点から描かれる里見との関係の描写と,15年前の事件の捜査は,淡々と描かれており,先が気になって仕方ないという感じではない。全体的にコンパクトであり,冗長ではないので読みやすいが,そこまで入り込める作品ではない。

    〇 キャラクター ★★★☆☆
     キャラクターというとやや語弊があるが,主人公のゆり子を始め,登場人物の人間はしっかり描かれている。そのため,里見には「裏切られた」と感じさせられる。

    〇 読後感 ★★☆☆☆
     ゆり子と里見が,結ばれて終わるような展開なら読後感はよかったが,そうならない。里見だけでなく,弘にまで騙された感じなので…。ゆり子は,この後,ますます男性不信,人間不信になるのだろう。読後感は悪い。ただし,里見が生きていたのは救い。ゆり子が里見を殺害してしまい,京子のように人格が崩壊してしまうというラストよりは救いがある。

    〇 インパクト ★★★☆☆
    人間が描けており,読後感が悪いものの,ヒロインが信頼していた男に騙されるというインパクトがある展開。ただ,里見が生きていたので,少しインパクトが薄れているかな。

    〇 希少価値 ★★☆☆☆
    絶版にはなっていなさそう。古本屋でもちょくちょく見かけるので,少なくとも現時点では,手に入らないことはない。電子書籍版はなさそう。
     

  • 小さな島が作品の舞台となっていますが、その雰囲気がとても私好みでした。
    あのお医者さんは主人公を利用しただけではなかった、、、と思いたいけど、本当のところはどうだったのでしょう。
    ちょっと切ない気持ちになりましたが、それも最後で台無し。でもそれがイイ!・・のかな?

  • ミステリージャンルの2つ、
    フーダニット(誰がやったのか?)と
    ホワイダニット(なぜやったのか?)が融合した本格ミステリです。

    15年前に誘拐され
    身代金と引き換えにその日のうちに奪還された主人公ゆり子。
    ひどい目に遭った記憶も外傷もなく
    ただ犯人の正体だけがわからないまま大人になるんですが
    ”不思議島”について調べているという新任医師の里見と出会い
    ともに調査を進めていくにつれ
    目を背けたくなるような真実が徐々に暴かれて・・・。

    日本史に触れていたり
    乗り物トリックを絡めていたり
    伏線も謎解きの構成もしっかりしているので
    ミステリ好きのためのミステリと呼べる作品だとは思うんですが
    ストーリー性重視のあたし的には切なすぎて。
    しかも思わず涙ぐんでしまうような切なさではなく
    やりきれなさというか報われなさというか。
    登場人物たちのその後、を考えちゃう人は
    読後に軽い虚しさを覚える一冊のような気がします。

  • シンプルなトリックを複雑に絡めたミステリーです。風光明美な瀬戸内海の島を舞台にして、その島に生きる人々の人情や暮らしが叙情性豊かに描かれています。
    父親、祖母、医師、叔父、刑事など色々な人から話を聞いて、犯人を絞っていきます。疑惑が疑惑を呼ぶという展開で、サスペンスの度合いを高めています。
    残念ながらメイントリックはフェアとは言い難いですが、作中にある様々な事象やエピソードが巧妙に繋がっているので、完成度は高い作品だと思います。

  • 【書評】不思議島「多島斗志之」 http://blog.livedoor.jp/ecwebjapan-books/archives/21486561.html

  • 3 

    ゆとりのある筆致でとても上手く書けており、筋立てに感心させられるところもあるが、いまひとつ物足りない部分も。

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著者プロフィール

1948年大阪生まれ。広告代理店に勤務。1982年、小説現代新人賞を受賞し作家デビュー。主な作品に、『海賊モア船長の遍歴』『クリスマス黙示録』『仏蘭西シネマ』『不思議島』『症例A』などがある。

「2021年 『多島斗志之裏ベスト1  クリスマス黙示録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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