- Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488464028
感想・レビュー・書評
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目を覚ますと私の旨に猫が乗っていた。その猫のトムが話し出したのは、戦争が終わった後に起こった出来事だった。
実に伊坂幸太郎らしい構造の物語です。語られる全てのことが伏線となり繋がり収束へと向かう。でもいつもの伊坂作品よりも冗長に感じたのです。展開がゆっくりだというか。
そのためじっくりと読むことになり読みながら考えることとなり、大きな仕掛けは何となく察しがつきました。それだけで終わると今回は仕掛けが大きい割には衝撃が小さかったのかなで終わるのですが、何か引っ掛かるものがありもう一度考え直してみました。きっかけは松浦正人氏による解説です。
作者インタビューで「戦争って世の中で一番、僕には怖いものなんですよ」という言葉があったことを知りました。怖いから自ら書くことで乗り越えようとしたと。なるほど、ならばこの物語は大きな力に対峙することを語っているのだと思ったのです。それは現実として敵国の兵士がやって来て町を征服したこと、クーパーという謎の杉の怪物を退治したという逸話、猫を前にした鼠たちの策略などに寓話的に現れています。大きな力を前にした小さいものたちの行動や心理をじっくりと書くことで、自分の中の恐怖を処理しようとしたのかも知れません。
大きな力の前にした時どうするのか、それを考え形にすること。その作者の思考の流れを読むことこそが、この小説の醍醐味となるものかもしれません。
いつもの伊坂作品の型にはまっているため、スルリと気持ちよく読み気持ちよく騙されて気持ちよく物語の収束を味わうことができます。しかしそこに物足りなさを感じたのは、その型の外側に大きな枠が用意されていたからでしょう。そこに気付いた時、この小説の持つもうひとつの顔が見えたのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最後の種明かしは、そうだったのか~と、してやられた感が(笑)最初は謎だらけで、読み進めると続きが気になってしまう作品。伏線の張り方も流石です。
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猫の視点から見た話の紡ぎ方が面白い。鼠とのやりとりが伏線になっていて、後の方で成程なぁと思う。
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オーデュボンに近い雰囲気があって、なんか懐かしかった。好きじゃない人にとっては最初の方があんまり劇的な変化がないから、リタイアしちゃうかも。
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久しぶりに小説。
多分、オチに「え?」と思う人も多いかもだけれど、それすらふっとばすくらいの気になる伏線やら謎やらですらすら読めて相変わらずファンタジーと現実世界の線引きが素晴らしかった。 -
久しぶりにわたしの知ってる伊坂幸太郎が読めた気がする!最近の伊坂幸太郎の話はついていけなかったけど、オーデュボンの祈りあたりの感じが戻ってきてすごく好きかもしれない。
もやもやもやもやしてたものが、だんだん繋がっていって全体像を把握していく感じ!最後はスッキリと優しい気持ちになれる。 -
大人のおとぎ話。十分読み応えあり。冠人のような独裁者、鉄国のような軍事国にリアル感。
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戦争と猫の話。という帯の文章を読んで、正直戦争の話はあまり好きではないし文庫化するまで待っても良いかな、と思っていた。
やっぱり伊坂さんだった。
たいていいつも良い方に裏切ってくれる。
雰囲気としては「オーデュボンの祈り」のような感じ。
知らない場所に流れ着いた“私”が喋る猫から不思議な国の状況を聞かされる。
ストーリーとしては割とシンプル。
捻りはあるけどヒントも多いのである程度オチは読める。
先が読めても面白いし、何より作品に込められたメッセージが胸に響いた。
与えられた情報を鵜呑みにせず、何が正しくて何が間違っているのか自分で判断しろという言葉や、
どっちの側にも立たず、どの意見も同じくらい疑う事が重要、など現実世界でも、とりわけ今、実際に気をつけなければならないことだと思う。
考えることを放棄し与えられる情報を鵜呑みにしてしまうと、あっという間に世の中を動かすチカラを持った人たちに流されてしまう。
冠人にも鉄国にも支配されない国に、日本はなれるだろうか。 -
2015.5.6